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2013年11月27日(水)

『ブレイブリーデフォルト』×『英雄伝説』×『コンセプション』クリエイター特別鼎談――日本のRPGの過去・現在・未来は?【前編】

文:まさん

■RPGにおけるレベルデザインの重要性とは?

――皆さんは、お三方それぞれの作品をプレイされていますか?

齊藤:まだクリアまでは行ってないのですが、ちょうど今『ブレイブリーデフォルト』を遊んでいますよ。

近藤:お2人が作ったゲームは、雑誌の誌面で見ていても、広告を見ていても、このタイトルはしっかり魂を削って造られているんだな、というのがにじみ出ていますよね。広告やイメージボードを見ているだけで伝わってきて、確実にいいタイトルを作られているなという印象があります。

浅野:『軌跡』シリーズは、すごく息の長いシリーズなので、なかなか入るのに足踏みをしていたのですが、今回の鼎談が決まったのを機に始めてみました。この機会が得られてよかったと思っています。

近藤:『空の軌跡』から数えると、もう9年になりますか。大きな枠組みはシリーズとして続いていますが、舞台が変わるごとに最初から話をリセットして作っています。ただ、それでも浅野さんのおっしゃるように、途中から入りづらいと思われる方もいますので、『軌跡』シリーズになってから『英雄伝説』としてのナンバリングを辞めることにしたんですよ。ナンバリングはシリーズものとしての安定感が出るのですが、『軌跡』シリーズの場合、根底の部分の話がつながっているので、数字が大きくなるほど新規の方が入りにくくなってしまうんです。

齊藤:『軌跡』シリーズは『空の軌跡』を少し遊んだだけなのですが、たびたび『イース』のリメイクを遊んでいるんですよ。その時に、ファルコムさんのゲームで一番感動するのがレベルデザインなんですよね。レベルが1上がると敵を倒しやすくなっていたり、この装備を取ると今まで苦戦していたあの敵が倒せたりですとか、バランスが本当にうまいんです。新しいタイトルを作る時って、あれもやりたい、これもやりたい、と風呂敷を広げてしまいがちになっちゃうじゃないですか。そうならずに、遊びの本質的な部分でしっかりバランスが取れているのはすごいことだと思います。

近藤:ありがとうございます。私は、RPGのレベルデザインは時間さえあれば、どなたでもできるものだと思っているんですよ。基本のシステムが固まってからでも調整が利くので、そこで凶悪なゲームにも、ものすごい親切なゲームにもすることができます。さらに極端な話をすれば、システムに多少の不備があっても、最終的なレベルデザイン次第でおもしろいものに仕上げられるんです。

RPGクリエイター特別鼎談
RPGクリエイター特別鼎談
▲齊藤さんが手掛ける『コンセプション』シリーズ2作目『コンセプションII 七星の導きとマズルの悪夢』。

齊藤:『コンセプション』の制作時も、こちらが意図した流れ以外のプレイスタイルに対して、穴ができてしまわないように埋めていく作業がすごい大変でした。そういった誘導やレベルデザインのバランスをスムーズに作れるファルコムさんは、本当にすごい!

浅野:『コンセプション』を遊ばせていただいたのですが、開始から1~2時間くらいのつかみがバツグンにおもしろかったですね。世界観のユニークさによってぐいぐい引き込まれます。

近藤:キーワードもかなり尖ってましたよね。“愛交ノ儀”って……。しかも、“W愛交ノ儀”までできる(笑)。

浅野:言葉遣いもすごいセンスでしたよ。“Sランクのマレビトは100%受星できる”とか(笑)。

齊藤:あのゲームは、居酒屋で話すような悪乗り、悪ふざけをちゃんと製品の中に落とし込もうという発想で作りました。逆に、1歩間違えると、ただの悪ノリだけで終わっちゃうのですが……。

近藤:そこを、ちゃんと成立させているバランス感覚が素晴らしい。

齊藤:させられてるのかな~? 内心、不安なんですよね……。自分はできているつもりでも、他の人から見たら、ちょっと頭がおかしいと思われるんじゃないかと(笑)。

近藤:そういう不安があるからこそ、バランスが取れているのだと思います。「これでいいのかな?」というさじ加減は、実際にゲームを出してみて、ユーザーさんが反応するまでわからないんですよね。私たちのレベルデザインもそうなんです。自分たちではベストのバランスだと思っていても、それがお客様にとってどうなのか? という部分は何度作っても悩みますね。

齊藤:担当のプログラマーがちょうどいいと言っても、他の人が触ってみると鬼のようなバランスだった、なんて話はよく聞きますね。

近藤:『イース』でも、そういう話はよくありますよ。プログラマーが「バランス取れましたよ!」と言って出してきたものの誰もクリアできないので、調整したプログラマー本人にやらせてみたらゲームオーバーになったという逸話が(笑)。

――『ブレイブリーデフォルト』では、体験版を何回も出してユーザーの意見を吸収するという試みをしていましたが、これをやろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

浅野:先ほど近藤さんがおっしゃった通りで、実際に出してみないとわからないことって多いんですよ。だから『ブレイブリーデフォルト』では、あのような形で体験版を出してみました。あとは個人的に、オンラインゲームのユーザー反響を受け取り、改善を続けていく体制がうらやましいと思っていたというのも理由ですね。『フォーザ・シークウェル』で一度出した商品を別の形で再度出すというのも、オンラインゲームのリリース的な考え方の延長線上に立っているんです。

――『ブレイブリーデフォルト』は体験版をすべてプレイしてから製品版を遊びましたが、製品版は物語が本当に楽しくて、体験版と全然違う印象を持ちました。

浅野:そのあたりは体験版で何を楽しんでもらうのか、ということですね。『ブレイブリーデフォルト』の体験版では、システムを体験してもらうために、あえてストーリーを入れませんでした。

――一方『コンセプション』では、本編の序盤が遊べてデータも引き継げる『序盤まるごと体験版』を出していましたよね。

齊藤:『コンセプション』の時は、やってもらわなければわからない要素を散りばめてしまったので、1つの部分だけを切り取って提供してもわかりにくいと思ったからです。1章をクリアするまで遊んでもらい、それが楽しめて続きが気になるというのであれば、製品版をぜひ遊んでくださいねという形でリリースしました。

 逆に『コンセプションII』の時は、『序盤まるごと体験版』の前にバトルシステムやヒロインとのイベントの流れを見せる体験版を出しました。これは、前作からハードが変わったので、“こういう見た目で、これぐらいのクオリティになります”というのをまず体感してもらいたかったんです。

近藤:それにしても、RPGの体験版って本当に難しいですよね……。

浅野:『ブレイブリーデフォルト』の場合は、最後の体験版が基本的なシステムのすべてを楽しませるという形で作ったのですが、結果、10時間以上遊ぶものになっちゃいました。

近藤:逆に言うと、今のRPGは10時間以上プレイしてもらわないと中身がわからないってことですよね。チュートリアルだけでも1時間かかる作品がザラですから。

浅野:その辺りもRPGの課題だと思います。だからと言って、いきなりあれやこれや新システムを言われると、きっとユーザーさんは面倒くさくなっちゃうと思うんですよ。

齊藤:それに、序盤で主人公に自分を投影してみたり、感情移入したりするための物語部分も外せないですし、毎回序盤を作るのが一番悩みますね。

→新規RPGをヒットさせ、シリーズ化していくために大切なこと(4ページ目)

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データ

▼『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』前作所持者向け優待DL版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:3DS
■ジャンル:RPG
■配信日:2013年12月5日
■価格:2,900円(税込)

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