News

2013年11月23日(土)

迫力の拳法アクションとコスプレ美少女が交錯する『ファイティング☆ウィッチ』逢巳花堂先生にインタビュー!【Spot the 電撃文庫】

文:てけおん

 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第95回となる今回は、『ファイティング☆ウィッチ』を執筆した逢巳花堂先生のインタビューを掲載する。

『ファイティング☆ウィッチ』
▲魔太郎先生が描く『ファイティング☆ウィッチ』の表紙イラスト。

 本作は、迫力の拳法アクションが見どころの、武道一筋な少年&コスプレ美少女たちによる爽快青春ストーリー。幼少のころから拳法に打ち込んできた実直な少年・初真。男子校で武道一筋だった彼が、転校先で拳法部に入部すると、驚くことに、部員はすべて女の子! ハーレムに……などという甘い展開はなく、力試しのため乱捕りに引っ張り出され、ボコボコにされる。周囲から呆れられるが、実は初真には秘密があって――。

 逢巳先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 石川県が大好きなので、何か北陸を舞台にした作品を書きたい、と思ったのが最初です。その後、拳法の経験を素材に、高校拳法部の話を作っていきました。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

 特に拳法の練習シーンや、バトルシーンの描写についてはこだわりを持って書いています。「この本を読めば明日から武道の練習ができる!」くらい細かい描写を心がけてますので、そのあたりに注目しながら読んでもらえれば嬉しいです。

 そして、それ以上に推したいのは――魔太郎さんの艶のあるイラスト! 作者自身が口絵の深沙を見てズキューンとハートを射抜かれてしまいました。キャラ紹介のカラー絵はとにかく圧巻。ぜひ現物をお手に取って、ご覧になってください!

――作品を書くうえで悩んだところは?

 題材が題材なので、気を抜くと非常に硬い話になってしまう、という懸念は常にあります。その上で、派手なアクションシーンや、ちょっぴりHなシーンなどを、世界観を壊さずにどう織り込んでいくか……ということに非常に頭を悩まされました。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 全部で1年2カ月ほどです。Web連載で約半年、電撃大賞応募用の書き直しで二ヶ月、応募原稿の直しで約半年かかりました。

――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

 あとがきにも書いたんですが、僕は女の子の使う金沢弁が大好きなんです。

 で、もともと鏡子の金沢弁を「ガチ方言にするぞ!」と思って、石川県の知り合いとかにも相談したりしながら、かなり凝ってセリフ書いたんですが、担当編集の黒崎さんより「あんまりかわいくないので簡潔にしましょう」と言われ、アドバイスしてくれた知り合いたちからも「ガチ金沢弁は小説向きじゃない」と指摘され、泣く泣く(笑)今の形へ落ち着かせました。力の入れどころというものについて考えさせられた、貴重な経験です。

――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 向卯山高校の竜虎道拳法部は、実在する某高校の某拳法部をモデルにしています。そこは例年女子しかいない拳法部で、たまに男子が入ってきても1人か2人。コーチをしていたある日、ふと「この状況、マンガやラノベっぽいな」と思ったことが、そもそもの始まりでした。

 初真は、大勢の女子の中に混じった男子、まっすぐで、困難にも立ち向かえる王道タイプの主人公、という以上の設定は(最初は)特に考えていませんでした。とにかく僕にとって大事なのは、ヒロインたちの描写だったのです。

 基本的には、かつて自分がコーチした女子たちの姿を参考にしているので、ひたむきな性格や、女子同士の仲良さなど、明るい部分をメインに描きました。教えている側が教えられるくらい、純粋で、技術の習得に熱心な真面目な子たちでしたから、そういった彼女たちの姿を小説に落としこみたいな、という気持ちがありました。

 一方で、ヒロインズが嫌われるリスクも覚悟の上で“負”の部分もあえて描写しました。(この“負”の部分についてはもちろん創作ですよ! 上記の子たちは無関係です!)やっぱり過ちを犯してこその人間。全員いい子ちゃんだったら、おもしろくないですしね。できるだけ人間くさい部分を際立たせるように意識して書いています。その中でもキラリと光る彼女たちの魅力に、ぜひ目を向けていただければ幸いです。

――小説を書こうと思ったキッカケは?

 キッカケと呼べるほどの出来事はありません。中学生のころから物書きの魅力に取りつかれ、気がつけば執筆をしていました。

 人生1回限り、普通の人は、自分という人間の一生しか体験できないわけです。ところが小説家は、書いた作品の数だけ、様々な人物の人生を体験できる。そして何よりも素晴らしいのは、その小説を読んでくれた読者の皆さんにも、同じような体験を共有してもらえるというところです。

 こんなにおもしろくてやり甲斐のある仕事が他にあるでしょうか?(僕にとってはこれ以外ありえないです)

――初の商業作品というところで、その感想は?

 読んでもらえることへの感謝の念は、アマチュア時代と全然違うな、と思います。みんな一所懸命生活している中、特に学生さんは少ないお小遣いやバイト代をやりくりして、僕の本を買ってくれたわけですよね。しかも、多くの新刊の中から選んでくれて。そのことだけで、これ以上ないほど感謝と感激の念でいっぱいです。

 だからこそ満足してもらえたらうれしいし、逆に不満に思われたらすごい申し訳なく思う。その思いの強さも、Webで好き勝手に書いていた頃とはレベルが違います。読者あっての、商業作品としての小説。今後もそのことを肝に銘じながら、頑張って書いていきたいと思います。

――今後、どういった作品を発表していきたいですか?

 まずは今の『ファイティング☆ウィッチ』を長く書き続けていきたいです。その上で、チャンスがあれば、いつか中国古典を題材にした物語を書きたいです。三国志ものはすでに電撃文庫で出てますので、水滸伝をネタにしたものか、それとも完全オリジナルのチャイニーズファンタジーか。書きたいネタはいっぱいあります。デビューしたてで至らぬ点も多々あるでしょうが、今後ともよろしくお願い致します!

――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?

 魔法や超能力が飛び交う世界観であろうと、大事なのは“リアルさ”。その“リアルさ”は、特にキャラクターの心理をどれだけていねいに描くか、そこにすべてかかってくると思って、注意して書いています。

 なので、同じ酷評でも「この小説嫌い! なぜならこのキャラのこの性格が嫌いだから!」と言われていれば、嫌われるくらいリアルなキャラが書けた、という点ではむしろ成功。逆に、例えば「なんでこの人、急に改心してるの? 不自然だよ」とか思われてしまったら、作品として高評価だったとしても、それは失敗だと捉えています。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 煮詰まった時は、映画を観たり、音楽を聴いたりします。それも評価の高いものだけど、まだ自分が手を出していなかった作品などです。傑作が持つオーラに当てられ、いい感じに脳味噌が刺激されます。映画『AKIRA』を観た直後は、3時間で一気に原稿用紙60枚分書き上げました。

――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?

 人物は、友人Hです。年に1,000冊も読書するような男で、知識豊富、誰よりも大人びていて、すごいやつでした。そんなHは、僕の書いた小説を読んでは、いつもけんもほろろに酷評してました。その度に「なにくそ、次こそはギャフンと言わせてやる!」と思って次々と書いていたものです。

 今、こうして出した『ファイティング☆ウィッチ』をHが読んだらなんと評価するのか、あいつのことだから、きっとまた容赦なくこき下ろすんだろうなあ、と思ってます(笑)。そんなHのことを思いながら、今日もまたあいつを「ギャフン」と言わせる日を夢見て、執筆活動に励んでいます。

 作品だと『三国志』や『水滸伝』です。当時はこれら中国古典を題材にした小説を書いてました。現代でも通じる練りこまれたプロット、個性豊かなキャラクターたち、深みのある世界観。どちらも最高に読みごたえのある大傑作です。

――現在注目している作家・作品は?

 この世界に存在する、あらゆる作家さん、作品に注目しています。が、あえて1人挙げるなら、万城目学さん。あこがれの作家さんの1人です。あの方の書いた作品を読むといつも、よくもまあ、あんな不思議な世界観を、破綻させることなく上手くまとめているなあ……と驚かされます。軽妙洒脱で、毒がなく、それでいて味わい深い。まさにエンタテイメント小説の鑑。特に好きなのは『鴨川ホルモー』と『ホルモー六景』! 早く続きを読みたいです。

――今熱中しているものはなんですか?

 もちろん執筆活動です。何をやっていても、小説のことばかり考えています。

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。

 『ペルソナ』シリーズ。全作品、自分の青春の1ページに刻みこまれるくらい、好きです。特に『ペルソナ2』は(『罪』も『罰』も)最高傑作だと思っています。今はPS Vitaで『ペルソナ4』を少しずつプレイ中。クマ、かわいすぎ。

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 本作品は、武道一筋の少年とコスプレ美少女たちが青春まっしぐらに大暴れする、痛快アクション物語です! “明日から使える武道の知識”も読めて超お得!? ぜひとも応援よろしくお願いいたします!

(C)逢巳花堂/KADOKAWA CORPORATION 2013
イラスト:魔太郎

データ

▼『ファイティング☆ウィッチ』
■発行:KADOKAWA
■発売日:2013年10月10日
■価格:662円(税込)
 
■『ファイティング☆ウィッチ』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト