2013年12月13日(金)
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聖グロリアーナのフラッグ車として活躍したのが、重戦車【Churchill VII】。ドイツの低地諸国とフランス侵攻に失敗して、史上最大の撤退作戦となった“ダイナモ作戦”の結果、イギリス軍は深刻な戦車不足に陥ります。連合軍の40万人の将兵を海路を使って撤退させるという、過去に例を見ない作戦だったため、重い戦車は置いていかざるを得なかったというのがその理由です。なにせ艦船だけでなく、ヨットやはしけまで動員されたということで、そのあわてた撤退ぶりがわかるというものです。幸いにして36万人は撤退できたのですが、今度は乗る戦車がない。そこで開発されたのが【Churchill I】です。
これはもともと、A20という試作車両を急ごしらえで戦車に仕立てたもの。電撃戦のスピード感にあおられたのか、この戦車はろくな性能テストもできないまま正式戦車として採用されました。搭載する砲も開発が間に合わず、I型は、【Matilda】に搭載されている2ポンド砲をそのまま積んでいます。前のページでも紹介した通り、2ポンド砲では榴弾が使えません。そのため、【B1】や【M3Leeと】同様に、車体に固定する方式で3インチ榴弾砲を搭載しています。
また、【Matilda】を超える厚い装甲を持っていため、さらに鈍足戦車になってしまいました。この欠点は、【Churchill VII】へ発展するとともに、さらにひどくなってしまいます。
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▲車体固定の3インチ砲は、改良の後に旋回砲塔が6ポンド砲へと強化されたため、廃止されました。そのため、空いた穴には7.92mm機関銃を装備しています。 |
では、失敗戦車だったのかと言えば、そんなことはありません。この戦車、低速のギア比が大きく、かつ車体前部の誘導輪(フロントアイドラ)が高い位置に設置されていたため、超壕能力と超堤能力(どちらも段差を乗り越える能力)が異常に高かったのです。第一次世界大戦のような塹壕戦を想定していたのかと突っ込みたくなりますが、このおかげで不整地の走破性能が高いという、怪我の功名的な性能を発揮します。
さらに、連合軍によるフランス奪還作戦“オーバーロード作戦”(ノルマンディー上陸作戦)では、制空権が連合軍にあったため、航空から攻撃される心配がなく、大活躍を見せました。ドイツ軍の機動防御を封殺するほどの物量を連合軍が揚陸していたので、機動戦闘が行われないことも幸いしました。機動防御については前回の記事で、戦線に開けられた穴に、高火力と高機動力を持つ部隊を急行させることで、火消しを行うのが目的だと書きましたが、圧倒的な物量で戦線全体を押し進められると、防衛側は成す術がないのです。
戦車は、基本的に機動打撃に使われるべきなのですが、こんな戦況なので、歩兵の行ける場所ならどこへでもついていける、移動要塞としての性能が重宝されました。ちなみに【Churchill VII】の最大速度は20km/hだったそうです。人より速く、原付バイクより遅いくらいのイメージですね。なお、車両名のチャーチルはCから始まりますが、Cで始まる名前は巡行戦車の流れをくむという法則の例外となっています。
さて、鈍足でも戦車としてやっていけることがわかったので、イギリスはこの戦車の装備のバージョンアップを続けます。最初は2ポンド砲だった主砲も、6ポンド砲、そして17ポンド砲へと強化され、バリエーションも多数製造されました。3インチ榴弾砲を装備していた位置に火炎放射器を装備した“クロコダイル”、海岸線のような軟地形にカーペットを敷設して味方車両の移動をスムーズにする“ボビン”、トーチカなどを排除する280mm砲を積んだ“AVRE”などです。なお、VII型は新設計に近く(型番はA22F)、車体全体に防御力の高い溶接装甲を採用し、側面装甲も95mmと、より強力になっています。
★開発ルート:【Vickers Medium Mk. I】→【Vickers Medium Mk. II】→【Vickers Medium Mk. III】→【Matilda】→【Churchill I】→【Churchill VII】
あるいは【Vickers Medium Mk. I】→【Cruiser Mk. I】→【Cruiser Mk. II】→【Valentine】→【ChurchillⅠ】→【Churchill VII】
【Matlda】における懸案点であった低火力が解消され、やっと重装甲、高火力の重戦車の面目躍如となった【Churchill VII】。ですが、やはり足の遅さが気になります。とはいえ、【Matilda】よりは取り回しが容易と言えるでしょう。装備も、前段階の【Churchill I】と共有するものが多いので、開発を進めていくと、前の戦車からそのまま使えるというメリットがあります。
なお、【Churchil VII】への開発ルートは、中戦車のルートか、【CruiserⅠ】からの軽戦車ルートで【Churchill I】に乗り換えるというステップになります。どちらがオススメかは、各プレイヤーの好みの分かれるところ。防御力を重視するなら中戦車ツリーの【Matilda】から、攻撃力を重視するなら軽戦車の【Valentine】からのルートがオススメとなります。
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ちなみに小官としては、【Valentine】からのルートのほうがメリットが多いと思います。砲の互換性があるため、この戦車の開発を進めておくと、【Churchill I】を取得した時に楽ができます。【Churchill I】は最初、2ポンド砲しか装備しておらず、ここから6ポンド砲であるQF 6-pdr Mk. IIIの開発まで、砲塔の開発などを行わなければならないためです。また開発順位も、砲の強化より、エンジンと足回りを優先することになるので、【Matilda】ルートからだと、満足な攻撃力を得るまでにかなり時間が掛かります。
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