2014年1月23日(木)
――『魔都紅色幽撃隊』は、ファン待望となる今井監督による“學園ジュヴナイル伝奇ADV”の最新作となります。“學園ジュヴナイル伝奇ADV”というジャンルは、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
今井:1作目の『東京魔人學園剣風帖』を作ろうと思った当時、ゲームの學園ものという設定はギャルゲーと一部のPCアダルトゲームくらいにしかなかったんです。でも小説や映画など他のメディアで學園ものといえば、若者たちの友情や恋愛を描く作品が多かった。だから他のメディアのような、青春を描く學園ものが作りたいなと思ったんですよ。
でも当時は青春ものというジャンルがなかったので、ゲームとして出しても失敗するだろうと言われていました。でも他のメディアで、青春もののすばらしい作品はたくさんあります。ジュヴナイルといえば小説や映画で話題になった『ねらわれた学園』や『時をかける少女』が有名ですし、NHKで放送された少年少女ドラマシリーズからもヒット作がたくさん生まれました。
そんな背景があったので、“ジュヴナイル”というジャンルはゲームをやったことのない人にも広く受けいれられるんじゃないかなと思ったんです。
――確かにジュヴナイル小説などは、男女問わず幅広い層に人気がありますよね。
今井:はい。そこでジュヴナイル作品を作ろうと思ったんですが、ただの青春ものでは少し設定が弱いなと思ったんです。リアルな青春ものにエンターテインメント要素を加えたくて、伝奇的要素をプラスしました。
伝奇ものというジャンルも、当時のコンシューマ業界には少なかったんですよ。あったとしても、きちんとした文献調査に寄らないオリジナル性が強いものばかりでした。オリジナル性が悪いわけではありませんが、勝手な解釈ばかりで世界観を作ると、それは伝奇ではなくファンタジーになってしまいます。なんにせよ、『東京魔人學園』を作ったころは、コンシューマゲーム業界がまだまだ若かったんですよ。
――『東京魔人學園剣風帖』の発売は、プレイステーションが発売されて2、3年ほどの時期でしたね。
今井:ファミコン時代から数えても、10年ちょっとのころですよね。すごく若い業界でファンタジー作品が全盛の時代だったこともあり、物を調べて作るクリエイターって少なかったんですよ。ゲームの書籍の巻末に、参考文献がばーっと並ぶ作品はあまりなかったんです。
そこで『東京魔人學園』は、そういうところを徹底的に調べて作ろうと思いました。あとから伝奇ものが発売されたとしても、『東京魔人學園』は越えられないようなものにしたくっていろいろ調べました。その意気込みは、スタッフ全員にありましたね。やるんだったら、伝奇ものの古今東西のエッセンスを全部入れようと思って作りました。
▲學園ものならではにぎやかな雰囲気と、伝奇もののもつオカルトチックな雰囲気がうまく融合して1つの世界観を生み出している。(画面写真はDS『東京魔人學園剣風帖』) |
――きっと潜在的な需要は高かったんだと思います。興味を持ったユーザーはみんな飛びついた感じでしたね。
今井:新しいジャンルなので、興行的な面では初速はあまりよくありませんでしたね。でもユーザーの口コミやゲーム雑誌に取り上げられて、かなり広がっていきました。『電撃PlayStation』にもだいぶプッシュされた思い出があります。
――当時としては珍しい、長く売れ続ける作品の代表でしたね。
今井:そうですね。クライアントも、ロングセラーとなったことに驚いていました。あのころのゲームは発売後数週間や1カ月で結果が出て、あとは伸びないというのが普通でした。それが、ずっと売れ続けたのはすごいと思います。
――金沢さんは、今井さんに『東京魔人學園』の話を聞いた時、どんな印象を持ちましたか?
金沢:そのジャンルを本当に今井さんしか作っていなかったですからね。今井さんは、他のゲームを参考にすることもしませんでしたし。今井さんの好きな作品を作っているんだろうなと思って見ていました。
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