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2014年1月23日(木)

『東京魔人學園伝奇』インタビュー:學園ジュヴナイルの名手・今井秋芳監督のルーツを探る【最新作『魔都紅色幽撃隊』発表記念特別企画】

文:長雨

■陰と陽、2つの物語を描いた『東京魔人學園外法帖』

――2作目となる『東京魔人學園外法帖』は、どのように物語を作っていったのでしょうか?

今井:幕末という時代を描きたいと思った時に、佐幕側と倒幕側両方に正義があっただろうなと考えたんですよ。当時の時代から考えると、両方に大義名分があります。前作でも陰と陽を描きましたが、本作ではそれをよりしっかりと描こうと思いました。

 佐幕には佐幕、倒幕には倒幕の戦う理由がある。その物語を作るには、両方の視点の物語を同じ時間軸で展開していく必要があると考えたんです。佐幕側の“龍閃組”が何かをしている時に、倒幕側の“鬼道衆”も動いているという感じで。同じテーマを陰と陽から描いたのが、『外法帖』です。

――陰と陽どちらの勢力からでも始められるのが斬新なシステムでした。

今井:好きなほうから始められて、物語の都合上13話で必ず時間が巻き戻ります。そして今度は、最初に選択しなかった方の勢力の物語を進めていくことになるんですよね。『外法帖』では、歴史を変えるのは陰だけでも陽だけでもダメなんだということを描きたかったんです。

 2つの勢力の物語をクリアすることで、本来は絶望的な展開になったはずの物語が大きく変化する。2つの勢力の架け橋を、主人公が取り持っているという物語になっています。

“學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”インタビュー “學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”インタビュー
▲『東京魔人學園外法帖』には、陰と陽という2つのシナリオが用意されている。陰と陽の勢力は敵対関係にあり、主人公がどちらのシナリオを選んだかによって仲間になるキャラも変化。また登場人物は、前作の仲間や敵と縁のある人物たちになっている。

――終盤の展開はすごく熱いですよね。PS2でリメイクされた『東京魔人學園外法帖血風録』の追加要素・北欧神話編の物語もおもしろく、ボリュームも満点でした。

今井:北欧神話は神々の黄昏・ラグナロクから始まる光と闇の戦い。その雰囲気が、すごく幕末に似ているなと考えて、描こうと思いました。これについては、まだまだ世界観を掘り下げられる気がしています。

“學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”インタビュー “學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”インタビュー
▲PS2でリメイクされた『東京魔人學園外法帖血風録』には、北欧神話の神々が登場。神々の黄昏が、主人公たちの物語に大きな影響を与えた。

■個性的なバトルシステムは、武道を表現するために作られた

――続いて、システム面についてお話をうかがっていきます。ADV+SLGというシステムも当時としては斬新でしたよね。

今井:自分でゲームを作ろうと思った時、ジャンルの主軸としては誰でも遊べてストーリーを見せやすいADVがいいかなと。あとはバトルパートをどんな形で表現するかだったんですが、対戦格闘のようなアクションは人を選ぶのでちょっと違うなと思ったんです。RPGはフィールドで敵とエンカウントしたり、移動したりするのが楽しい作品なのでそれも少し合わないなと。

 いろいろと考えていく一方で、『東京魔人學園』では実在する武道を多く取り入れる形になっていきました。そして、武道の技には上段、中段、下段という概念があります。こういった要素をうまく表現できるのはSLGしかないと思いました。

――武道の上段や下段の技を、ゲームとして表現するのは難しいですよね。

今井:格闘アクションで表現しようとすると、上段コマンドや下段コマンドのようにどうしても複雑になってしまいます。またヒット関係も、精密に設定するのが難しいです。右上段の蹴りをしたら、相手の左側頭部に技を当てないといけない。そういう部分をちゃんと表現できるのは、SLGだなと考えたんです。

“學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”インタビュー
▲キャラクターの使う技には、ちゃんと上段や下段などの攻撃位置が設定されていた。頭や足など相手の弱点と、攻撃の位置を組み合わせることで大ダメージが狙える。(画面写真はPS2『東京魔人學園外法帖血風録』)

――バトルが行動ポイント(AP)制というのも、かなり珍しかったです。

今井:当時のゲームは、敏捷度でスピードを表した作品が多かったですね。ただ武道の場合は普通なら1人しか倒せないところが、達人ならあっという間に3人倒してしまうこととかあるじゃないですか。そういう同じ一瞬でも、連撃を撃っているとか、3回攻撃しているというのを表現したかったんです。

“學園ジュヴナイル伝奇ADV+RPG”インタビュー
▲バトルでは、移動や攻撃ごとに設定されたAPを消費して行動できる。そのためキャラを育てると1人で敵を全部制圧するなど、まさに武闘の達人のような活躍ができた。(画面写真はPS2『東京魔人學園外法帖血風録』)

 そのためにAP(行動ポイント)というパラメータで、行動も、攻撃も、すべてを表しました。APのある限り1ターンで何度でも攻撃ができるし、移動して攻撃をしてさらに移動するなんてこともできるんです。うまく伝奇モノらしい武道を表現できたと思います。

→プレイヤーの想像力を刺激する感情入力システムが生まれたワケ(5ページ目へ)

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データ

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■発行:KADOKAWA
■発売日:2013年10月24日
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