2014年2月17日(月)
『ドラッグ オン ドラグーン3』開発者インタビュー:今後はゼロ以外のウタウタイが主人公のストーリーDLCも配信!【電撃DOD3】
好評発売中のPS3用アクションRPG『ドラッグ オン ドラグーン3』。発売から1カ月以上が経過した現在、その狂気のストーリーや爽快なアクションを体験し、衝撃のラストシーンを目撃した人も多いだろう。
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今回は、そんな本作の開発を統括する柴貴正プロデューサーを直撃! 今だからこそ語れる開発秘話から、プロモーション戦略の狙い、クリエイティブ・ディレクターのヨコオタロウ氏との唯一無二な関係性について語ってもらった。なかには柴氏からヨコオ氏への愛あふれるエピソードも!? シリーズファンは必読の内容だ。
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▲柴貴正氏:『DOD』シリーズのプロデュースを担当するプロデューサー。『電撃DOD3』のニコニコ生放送特番にもたびたび出演し、本作の魅力を語ってきた。最近、ヨコオタロウ氏とのサシ飲みを計画中だが、なかなか実現できないのが悩みの種とか。 |
■批判はむしろエネルギー? 想像のナナメ上を行ってこその『DOD』
――『DOD3』の発売から、約2カ月ほど経過しましたが、ユーザーさんからの反響はいかがですか?
柴:好評の声も、厳しいご意見もたくさんいただいています。そのどれもが、カロリーの高いリアクションばかりで、とてもありがたいです。好意的な意見はもちろんうれしいのですが、個人的には厳しいご意見も、とてもありがたく感じています。
“好き”の反対は“嫌い”じゃなくて、無視や無関心だと思うので。“ここがダメ”と指摘してくださるということは、それだけ作品を愛してくれているからだと思うんですよ。いただいたご意見を真摯に受け止め、今後の課題にしたいと思います。
――厳しいご意見というのは、具体的にはどんな意見が多かったのでしょう?
柴:何より多かったのは、ロード時間の長さに関するご指摘ですね。これは技術的な問題なので、なかなか対処が難しく、本当に申し訳なく思っています。
あとは、“ゲームとして『DOD』らしくない”という意見もありましたね。クリエイティブ・ディレクターは『DOD1』を開発したヨコオタロウさんですし、キャラクターデザイナーは藤坂公彦さん、そしてプロデューサーは僕と、オリジナルメンバーがかかわって作っているのに、そういう意見が届くというのは、それだけ熱烈なファンが多い証拠なのかな、と思います。
――それはどういう意味でしょうか?
柴:これはヨコオさんもおっしゃっていたことなのですが、『DOD』らしくないってご意見が出るということは、ファンの方の中に『DOD』という作品がしっかり定着していて、ある意味一人歩きをしている証拠だと思うんですよ。これはすごくいいことだと思いますし、単純にうれしいです。愛されているコンテンツだということを、自覚できますからね。
ただ、“ユーザーさんの想像のナナメ上を行くものを作る”というのが、『DOD』シリーズのコンセプトであり、ヨコオさんのスタンスだとも思うんです。そういう意味では、狙い通りといえるのかもしれません。
――とはいえ、シナリオの随所にヨコオ節はしっかり残っているとも思うんですよ。すべてを表現しないというか、どこか含みを持たせるところとか。登場人物たちが、やっぱりおかしいところとか(笑)。
柴:そうですね。そういったヨコオ節が好きな方にとっては、「本作は『DOD』っぽくないけど、それでもやっぱり『DOD』だった」と、納得していただけている部分もあるようです。ファンの方に少しでも楽しんでいただけたのであれば、本作を世に送り出せてよかったと思いますね。
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▲イベントシーンはもちろん、ちょっとした会話でもヨコオ節がてんこ盛り。これらを聞いているだけでも『DOD3』は楽しい。 |
■昨今のゲームの風潮にもの申す! これが『DOD3』スタッフのこだわり
――本作のアクション部分は、難易度が高めに感じられましたが、その点についての反響はいかがでしたか?
柴:そういうご意見も届いています。アクションRPGというものの、レベルデザインの難しさを痛感しましたね。普通のRPGなら、プレイヤーの技量はさほど気にせず、ゲームの進行に応じて敵のレベルを設定すればいいのですが、アクション要素が入るとプレイヤーのテクニックがかかわるようになるため、一気にチューニングが難しくなるんです。
ただ、これは僕の持論ですが、アクションゲームとしての性質上、簡単すぎるのはつまらないと思うんですよね。ですから、ある程度歯ごたえがあるレベルに仕上げたいとは、最初から考えていました。とはいえ、難易度が高すぎると“ストーリーの続きを見たいのに、アクションが難しくて挫折する”という方もでてきてしまいますし……。このへんの難易度調整は、今後の大きな課題の1つだと考えています。
――個人的には、最終ステージはやや難易度が高すぎたように感じられましたね。慣れればいけるんですけど、昨今のゲームにしては珍しい難しさかな、と。
柴:それについては、ヨコオさんをはじめとする開発スタッフ全員の狙いどおりなんです。あの難易度だからこそ、クリアした時の気持ちよさも格別だと思いますので。
たしかに、最近のゲームにしては難易度が高めかもしれませんが、僕らが小中学生のころに遊んでいたゲームって、それこそ理不尽に感じるほど難しいゲームもたくさんあったと思うんです。それをクリアするというのが、ゲーマーにとっての1つのアイデンティティだった部分はあったじゃないですか。
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▲ボス戦をはじめ、後半は難関ステージのオンパレード。アクションゲームとしての評価も上がっている。 |
――おっしゃっていることはよくわかります。
柴:あの最終面に関しては、そういったクリアの手ごたえを感じてほしくて、あのレベルデザインになっています。手ごたえはバツグンだと思いますが、ぜひ何度も挑戦してクリアし、そこにおとずれる快感と、物語の余韻を楽しんでもらえるとうれしいです。
――柴さんたち開発スタッフにとって、『DOD3』は何を表現することを重視して制作したものなのでしょう?
柴:最近は、ゲームのビジネスモデルやマーケットもいろいろと変化してきて、据え置きハードのソフトというものは、ものすごくぜいたくな嗜好品になりつつあると感じています。ユーザーさんの目が肥えていることもあり、残念ながら、お金を出してソフトをプレイしてくれる人が減ってきているな、と。
ですが、そういった傾向から逃げずに、正面からぶつかってみたかったという思いがありました。“ニワトリとタマゴのどちらが先か”という話ではありませんが、据え置き用ハードでソフトを出さなくなれば、当然ユーザーさんはいなくなりますし、ユーザーさんがプレイしてくれなければ、据え置き用ハードのソフトも出なくなるわけです。現在の状況は、そういった負の連鎖におちいりかけていると思うので、少なくとも僕は、そこに一矢報いたかったという思いはありましたね。
売上的な結果がよくても悪くても、『DOD3』のような据え置きハード用のソフトを出すことで、ユーザーの皆さんとコミュニケーションを取っていくということは、今後も続けていくべき大切なことだと思っています。
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――では、そんな柴さんがプロデューサーとして、本作で一番こだわった部分はどんな部分でしょうか?
柴:ヨコオさんがやりたいことを、できるだけ実現させるという部分ですね。もちろん、プロデューサーとしてできないことは「NO!」と言わなければならないので、なかなか大変でしたけど。
正直、ヨコオさん自身もやりたいことをすべてやり切れたとは思っていないでしょうが、それでも、ある程度は自由にやってもらえたのではないかと思っています。ヨコオさんの色が前に出る作品を作らないと、『DOD3』という作品を出す意味がないと思っていたので。
――メインキャラクターたちの会話など、際どい表現も多々ありましたが、この点についてはどのように考えていますか?
柴:たとえば下ネタ表現や、ファイブとの戦闘中にいきなり画面がお花畑になるなど、いろいろと際どい表現は盛り込んでいます。賛否両論ではあると思いますが、価値観というものは時代によって変わりますし、こういった部分をおもしろいと感じる人もいるわけでして。
『DOD』では、これまでも表現のギリギリのラインまで踏み込んできましたし、逆にギリギリじゃなくなってしまったら、作っている僕たちの存在感も薄くなってしまいます。プロデューサーとしては、こういった部分を許容し、周囲からの批判の矢面に立つことで、スタッフ一同がその先にあるものへ挑戦できるのなら、それでいいのかなと考えています。
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■好きなキャラはヨコオタロウ!? あふれんばかりの“ヨコオ愛”
――では、柴さんから見て、どんな部分がヨコオさんの魅力というか、色だと思いますか?
柴:彼自身が表現したいことや、こちらからオーダーしたことをしっかり自分の中で咀嚼して、そのうえで彼独自のおかしな解釈を交えて、アウトプットしてくれるところですね。
たとえばウタウタイの設定についても、ちょっとおかしいじゃないですか。あんなに美人ばかりなのに、総じて性的に奔放だなんて、ゲームではなかなか見られない設定です。でも、彼女たちがそうである理由も、ちゃんと考えてあるという。そういう部分がおもしろいなと感じています。
あとは話していて、僕がいいと感じるものを、彼はダメだと感じることが多いのも、一緒に仕事をしていて楽しい部分ですね。自分が気づかない部分に、彼が気づいてくれるということでもありますから、こういう価値観の違いも大切だな、と。
――柴さんはヨコオさんのことが大好きなんですね(笑)。
柴:ええ、好きですね(笑)。今までたくさんのクリエイターさんとお仕事をさせていただきましたが、彼との距離感は唯一無二のものなんです。正直、話す時はなんだかちょっと緊張したりしますし、好きすぎて逆にちょっと嫌いになることだってある。これは、ヨコオさんからしてもお互いさまだと思うんですけどね。
いや、僕の片思いかもしれませんけど……。今後も一緒に仕事をしていきたい人であることは、間違いありませんね。
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――では、ゲーム中で柴さんが気に入っているキャラクターや、印象的なシーンについても教えてください。
柴:いや、ダントツでヨコオタロウさんなんですけど。開発中に彼とからんだ時にも、印象的なエピソードが語りつくせないほどありますしね(笑)。
極端な話、彼をもっと上手にプロデュースできるようになれれば、僕はもう、それだけで満足しちゃうんじゃないでしょうか。なぜだかちょっと悔しいですけど、それだけでプロデューサー冥利に尽きるというか……。
――まるで恋する乙女みたいじゃないですか(笑)。
柴:そんないいもんじゃないですけどね(苦笑)。でも、そういえば彼にこういう気持ちを正面向かって伝えたことはないですね。先日、彼にサシで飲みに行こうと誘ったのですが、断られたばかりなので、ここでも伝えさせてください。
ヨコオさん、読んでる? 今度2人で飲みに行きましょうよ!
……って、なんだかインタビューを私物化しちゃったみたいでごめんなさい。
――いえいえ。メッセージ、届くといいですね。あと、できればゲーム内で好きなキャラクターも教えてもらいたいんですけど。
柴:ゲームの登場キャラで好きなキャラ……うーん、基本的にはみんなおもしろくて大好きなんですが……強いてあげるならアコールかな。彼女は誕生エピソードがおもしろいんですよ。
実は彼女は、藤坂さんが描いたイラストから設定が広がったキャラなんです。彼がある日、「武器などのアイテムを売ってくれる商人を描きましたー」ってイラストを描いてきてくれたんですよ。「あの世界観の中で、普通に買い物ができるのはおかしい。たぶんこういう人が売りに来るんだよ」みたいなことを主張されていて(笑)。
そこから、ヨコオさんを中心に味付けをしていった結果、ああいうキャラになったんですよね。
――そんな開発秘話が! 藤坂さんも本当にすごい人ですね(笑)。
柴:そうなんですよ。以前の藤坂さんのインタビューでも触れましたが、ゼロの右目の花の設定を生み出すなど、彼の発想には毎回本当に助けられています。
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▲ゼロの右目の花は、藤坂公彦氏のラフ画から生まれたもの。『DOD3』のキャラクターはもちろん、世界設定についても、彼なしでは生まれなかったものも! |
■メディアミックスにニコ生出演……プロデューサー業で東奔西走
――今回はゲーム以外に、小説やコミックなどでも『DOD3』の物語が描かれています。これらのメディアミックス展開について教えてください。
柴:これらについては、早いうちから展開させていただきました。これが『DOD3』における、僕のプロデューサーとしての主な仕事でしたね。
『DOD3』の世界観は、ゲームだけではとても描ききれないほどの内容だったので、いろいろなメディアの力を使って展開させたかったんですよ。小説やコミックを読んで、そこからゲームに入ってきてほしいという狙いはあります。ただ、それ以上に、キャラへの感情移入に役立ててほしくて。
小説でもコミックでも目にしていただければ、ゲームをやる前に事前情報としてユーザーのみなさんに伝わります。そうすれば、登場人物の個性などもより深くユーザーに伝わりますし、ゲームに出てきた瞬間から、すぐに感情移入しやすいと思いまして。ファイブとかフォウとか、最初にやられちゃうようなキャラは、ゲーム中での出番がどうしても少なくなりますので、そのフォローという側面もありましたね。
本作のプロデュースでは、こういったフレームワーク作りに執心したわけですが、個人的には、昨今のJ・RPGのプロモーションの手法として、とても有意義なものだったと自負しています。
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▲公式サイトなどに掲載されている、各キャラのサイドストーリー。これを読むことで、より深くそのキャラを知ることが可能となり、感情移入しやすくなる仕組み。 |
――『DOD3』はサウンドトラックも好評発売中ですが、『ニーア』の時のようなライブイベントなどは考えていますか?
柴:ライブ、ぜひやってみたいですね。以前、藍井エイルさんにニコニコ生放送でライブをやってもらったじゃないですか。あれ、すごくよかったと思うんですよね。またニコ生でもいいし、どこかのホールでライブを行うというのも興味があります。
熱いファンが多くいるタイトルですので、なんらかの形でその思いをぶつけてもらえるファンイベントなどを行えればと思います。まぁ、まだ何も具体的にはなっていませんけど……。これはぜひ、ファンの皆さんの声を聞かせてほしいところですね。
■DLC情報解禁!? 『DOD3』の今後の展開について
――以前、“電撃DOD3”のニコニコ生放送で、柴さんが追加DLCの構想をお話しされていましたね。こちらの動きについて教えてください。
柴:はい。実は今日はこれを言いにきました。……って、まだ詳細は話せないのですが(苦笑)。
ニコ生でも少しお話しましたけど、近々、追加のストーリーDLCを配信することができそうです! 詳細は近日中に発表できると思いますので、もう少しだけお待ちいただければと思います。コンテンツ自体は、もうマスターアップ寸前なので、それほどお待たせせずに皆さんに遊んでもらえると思いますよ。
内容としては、ウタウタイたち1人1人が主役のシナリオで、彼女たちを操作して戦うことになります。物語的には『DOD3』の前日譚と思ってもらえれば! ぜひご期待ください。
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▲DLCは、ウタウタイの妹たちそれぞれが主役のシナリオになる!? 詳細が気になるところ!! |
――これは爆弾情報ですね!! じゃあ、DLCの配信前に、またニコ生放送を配信しましょうよ!
柴:そう来ましたか。ゲームの発売後にニコ生に出るというのは、いろいろな意味で勇気がいるんですけど……それがユーザーさんのためになるのなら、頑張りますよ(笑)。
――ちなみに、今後も『DOD3』スタッフで何かゲームを制作してみたいという構想はありますか?
柴:藤坂さんに絵を描いてもらったり、サウンド・ディレクターの岡部さんに音を作ってもらったりするのは、僕のほうである程度なんとかできる気もしますが、ヨコオさんについてはちょっと扱いが難しいかもしれませんね(苦笑)。
鍋にたとえると、ヨコオさんは入れれば必ず味が変わってしまう貴重な素材。それが入ることで、すごくおいしい鍋に仕上がることもあれば、中身がまったくわからない闇鍋になってしまう可能性もあるわけで……。この味付けをいかにして整えるかが、プロデューサーである僕の力量なのかもしれませんけど。
とはいえ、ヨコオさん、藤坂さん、岡部さん、僕の4人で何かを作るというのは、今後もぜひやりたいと思っています。どんなものをやるかという模索も、もちろんしています。この4人が集まってやることで何が求められているのか、ユーザーの皆さんからヒアリングしないとダメだと思いますね。4人が並んで写っている写真集とか、誰もいらないでしょうし(笑)。
――いや、ぜひゲームを作ってほしいです(笑)。では最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
柴:ゲームは出しました。次は、今出したものをもとに、一度再構成し直した新しいものをDLCとして出します。
『DOD3』は、ユーザーの皆さんと向き合うことを念頭に置いて、これまでやってきたプロジェクト。ファンに喜んでもらえるDLCに仕上がっていると思いますので、興味が沸いた人はぜひプレイしていただきたいです。そして、プレイしたうえで、感想を世の中に発信していただければと思います。
――本日はどうもありがとうございました!!
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▲“電撃DOD3”のニコニコ生放送にも、前向きなお返事が!? こちらにもご期待ください。 |
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Character Design : Kimihiko Fujisaka.
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