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2014年3月5日(水)

『穢翼のユースティア』がPS Vitaで2014年に発売――ハードなストーリー展開が魅力の本格ファンタジーADV。キャラクターや世界設定を紹介

文:キャナ☆メン

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■物語の背景と世界設定

 ここでは、世界の始まりから浮遊都市“ノーヴァス・アイテル”の誕生、そして“牢獄”という最下層社会が生まれてしまうまでの経緯を紹介していく。また、作品の世界観にリアリティを与える設定の数々も掲載する。

~はじまり~

 遥か昔のこと。
 世界は、神の御遣いである天使によって創造されたという。
 祈りの言葉を持つ唯一の生物“人類”は、天使の力を借り、大いなる進歩を遂げた。

 だが、豊かさに満ちた時の中で、人々は祈りを忘れてしまう。

 最初の悲劇は、約500年前。人類の傲慢(ごうまん)さに激怒した神は、天使を世界から引き上げさせた。秩序を失った大地は、瞬く間に混沌の濁流に飲み込まれていく。無数の都市が崩壊していく中、世界でただ1人、祈りを忘れていなかった聖女が、神に許しを請うたという。

 神は聖女の祈りを聞き入れた。最後に残った都市を空に浮かせ、人類を滅亡から救う。それが、この都市。浮遊する人類最後の都市、ノーヴァス・アイテルである。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

 以来、聖女は贖罪(しょくざい)の祈りを代々引き継ぐことで、巨大な都市を空に留めてきた。平穏な時代が続き、かつての繁栄には及ばぬものの、都市は漸進的に発展する。

 しかし、聖女の代を重ねること二十と八。再び悲劇が起こる。

 突如として、都市の一角が浮力を失ったのだ。崩落する岩盤とともに、数千とも言われる人々が大地の混沌へと吸いこまれていった。“大崩落(グラン・フォルテ)”として記憶される未曾有の大災害がこれである。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

 大崩落は都市の姿も一変させる。元々、この都市には、貴族が住む上層と一般民が住む下層という2つのエリアしかなかった。だが、崩落に伴う地震で下層の一部が沈降し、絶壁により隔絶されたもう一段低いエリアが生まれたのだ。

 そこが現在“牢獄”と呼ばれている区画である。

 崩落直後の牢獄は、控えめに見ても地獄だった。路地は遺体と負傷者であふれ、物資の不足はさらなる死者を生む。何とか秩序を取り戻すまでの数年で、牢獄はまるで新しい社会となっていた。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

 牢獄の隅々にまで貧しさが充満し、わずかな金のために人命が失われる。
 盗みや暴力はもはや話のネタにもならない。
 苦痛が苦痛を呼び、悲劇が悲劇を呼ぶ。
 積もる絶望の澱は人々から光を奪い、多くの者は沈むに身を任す。

 だが、誰が彼らを責められようか。
 それこそが、牢獄の日常=“生き方”なのだから。


~世界設定~

●ノーヴァス・アイテル

 遥か昔、この世界は神の遣わした天使が作ったという。人類は天使の力を借り、他の動物が持たぬ知恵や技術を獲得し栄華を極めた。しかし繁栄は長く続かない。人々はいつしか感謝の祈りを忘れ、それに怒った神は、天使たちを天上へと引き上げさせたのだ。世界の礎たる天使を失った大地は瞬く間に混沌の濁流に呑み込まれる。

 都市が次々と滅亡していく中、聖女が神に許しを請うた。神は、聖女の必死の祈りに心を打たれ、彼女と彼女の敬虔な信者を許し、都市を天空へと浮かせることで人類を滅亡から救ったという。その都市こそが、浮遊都市“ノーヴァス・アイテル”だ。この街は、聖女に祈りを捧げる者のみが乗ることを許された、聖なる方舟なのである。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』 『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

●政治形態

 ノーヴァス・アイテルが大地を離れた時から、この都市はノーヴァス家から輩出される国王が支配しており、今日に至るまでその血統は途絶えていない。国王には数多くの貴族が仕え政務を補佐しているが、地理的条件から領土が拡大できないため、貴族に目立った恩賞が与えられることは少ない。したがって貴族の国政や地位に対する意欲は低く、政変はおろか権力争いもほとんどない。

 良く言えば安定した治世が続いている。国民の王家や政治に対する関心も低く、現国王が病にふしていることを知っている者は多くないだろう。次期国王となる第1王女はまだ若く、執政と呼ばれる地位の貴族が彼女を支えながら政務を執っている。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』
▲王城にある謁見の間

●貴族と上層

 国王や貴族など地位の高い人間が住むのが、俗に“上層”と呼ばれている区域である。一般民衆が住む“下層”に比べて起伏が激しく急峻(きゅうしゅん)な斜面も多い。住宅地として適した地域ではないが、伝統的に貴族たちはこの地を選んで住んでおり、頂には都市を睥睨(へいげい)するように王城が聳(そび)えている。

 その高さゆえに王城はいつも霞の彼方にあり、王家の有り様と同じく澄明(とうみょう)にうかがい知ることはできない。聖女が祈りを捧げている聖堂も上層にあるため、ここはノーヴァス・アイテルに住む者にとってまさに高き場所であり、憧れの対象でもある。そのぶん警戒は厳重で、牢獄では稀にしか見ることができない衛兵も、上層ではいたるところで見ることができる。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』
▲王城の前庭。

●ノーヴァス・アイテルの信仰

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』
▲教会の総本山である大聖堂。

 ノーヴァス・アイテルに存在する宗教組織は“聖イレーヌ教会”ただ1つである。この組織は、信仰の頂点に聖女を置き、彼女へ祈りを捧げることが日々の平穏な生活につながると説く。

 民衆はほぼ例外なくこの教えを受け入れており、人々が就寝時や食事の前に聖女に祈りを捧げる姿はごく当たり前に見受けられるものだ。その日の糧を得るために人道に外れた行為を続ける牢獄民であっても、聖女への祈りだけは純粋で偽りがない。

 宗教施設としては、上層に教会の総本山としての大聖堂、下層や牢獄には一定の地域ごとに教会施設が配置されており、祈りや布教の場として利用されると同時に、集会場や簡単な医療施設として、また災害時の避難所としても利用されている。


●大聖堂と聖域

 大聖堂は上層にある建造物で、聖教会で最も格式の高い祈りの場だ。多くの尖塔を持つその荘厳な姿は都市の各所から見ることができ、人々の無意識下に見上げるものの象徴として存在している。

 ここでは多くの聖職者が居住し、日々の祈りを捧げると同時に、聖職者としての訓練も行われているが、その実態はほとんど知られていない。一部の区域は住民に開放されているものの、警備が厳しく、入ることができる時間は限られている。また、入るにはそれ相応の寄付が必要となるようだ。

 大聖堂の奥には聖域と呼ばれる区域があり、聖女が不断の祈りを捧げている。大聖堂と聖域を繋ぐのはただ1本の橋のみで、聖域へ入ることが許されるのは聖職者の中でも最高位に近い者に限られているという。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』
▲聖域にある祈りの祭壇。

●聖女の島

 ノーヴァス・アイテルの浮遊から約500年。聖女イレーヌはその敬虔な祈りの力で、巨大な都市を空中に留め、下界の混沌から人々を守ってきた。祈り、都市を浮かせ続けること。これこそが代々の聖女に課せられた最も重要な役割である。

 大崩落発生後、時の聖女イレーヌは信仰の不純さを疑われ処刑されることになった。聖女はまさに命を賭して都市を浮かせ続けているのである。初代から数えて29代目に当たる現在の聖女イレーヌは、盲目の聖女と呼ばれ、これまでの聖女たちの中でも特に強い尊崇を集めている存在だ。彼女は今日も、神聖な聖堂の奥でノーヴァス・アイテルと住民たちの平和のために不断の祈りを捧げている。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

●大崩落

 10数年前、この都市を大規模な崩落が襲った。“下層”と呼ばれていた一般民衆の居住区の一部が、突如として崩れ落ちたのだ。岩盤とともに下界へ落ちていった人間は数千とも言われ、生き残った人間も家族や財産を失った。火災や地震といった災害と違い、崩落事故はなんの痕跡も残さない。まるで初めから何もなかったように、すべてが一瞬にして消失するのだ。

 犠牲者を弔うこともできず、被災した人々の胸には今なお癒えることのない喪失感が拡がっている。そして何より、防ぐことができないこの災害は、都市に住むすべての人々に“都市は墜ちる”という強烈な恐怖を刻みつけた。都市の浮上から500年以上続いた安寧(あんねい)の時代は、もう戻って来ない。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』
▲大崩落の跡地。

●牢獄の成立

 “大崩落”により、大地の一部をそこに住んでいる者ごと喪失したノーヴァス・アイテル。その際、崩落こそせずに踏みとどまったものの、下層と切り離され一段低い大地と化したのが“牢獄”である。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

 下層との間は高い崖(断層)で隔てられ、大崩落直後は行き来すらままならない状態が続いた。そのころの牢獄は、難民が多数存在した上に食料供給も途絶えていたことから、一時は完全な無秩序状態に陥っていた。

 にもかかわらず衛兵などによる秩序回復が行われなかったため、牢獄の住民は国に見捨てられたという印象を未だに持っている(その際に牢獄で秩序を構築したのが“不蝕金鎖”である)。

 今でも月に1度は地震が起き、いつまた崩落が発生するかわからない。高度が一段低いというだけでも住人には大変な恐怖感を呼び起こしており、そのためか牢獄の人心は乱れ、回復の見込みすら立っていない。


●牢獄の生活

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

 牢獄と下層の間に関所が作られ、人や物の流れは再開されているものの、基本的に牢獄の生活は大崩落直後から変化してはいない。即ち、堅苦しい法律などもない代わりに、貧困と暴力の街であるということだ。

 牢獄に物資が入ってくる関所前広場と対をなす街の中心部が、歓楽街である。上層や下層からも客を集めるこの大歓楽街の派手で下品な賑わいと、裏路地に入ればそこら中に広がっているスラムの混沌が、牢獄の両面の象徴だ。

 だが、いずれにせよ住民の大部分は貧しく、1日1日を生き延びるのが精一杯である。なお、下層住民が牢獄に来て帰ることはできても、牢獄住民が用もなく下層に行くことはできず、関所を通り抜けることはできない。貧しい者や犯罪者などの都市の澱みは、牢獄に流入することはあっても流出することなくたまり続ける。


●酒場“ヴィレノタ”

 “ヴィレノタ”は、歓楽街の入り口に位置する酒場。夜の帳が下りるころ、人々は光を求める羽虫のようにここへと足を運ぶ。そして、薄暗い店内でひたすらに酒をあおり、混濁した意識の奔流に身を任せる。ある者は、未来への恐怖から逃れるために、ある者は、失った家族を忘却するために。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

●不蝕金鎖

 牢獄の裏社会を握り、実質牢獄の法を司っているとも言えるのが“不蝕金鎖(ふしょくきんさ”である。元は、大崩落直後の無秩序・食糧不足状態の中で、崖の上の下層から買い入れる物資を仕切る集団だった。

 その後、国から半ば見捨てられた牢獄の秩序回復を担ったことから、住人からは一定の信頼を得ている。今では国から治安維持のために派遣されている衛兵も形ばかり存在するものの、実力も住民からの信頼も不蝕金鎖には遠く及ばず、いくらかの賄賂(わいろ)によって骨抜きにされているようだ。

 なお、数年前に初代の頭が亡くなり息子であるジークが正式に跡目を継いだが、その際に副頭派が組織を割って独立し、現在も縄張りや商売の上での衝突が絶えない。本拠地は、歓楽街で最も大きな店“リリウム”の上階。

『穢翼のユースティア Angel’s blessing』

●羽つき

 大崩落以降に発生が確認された、背中に羽が生える病気である“羽化病”。その患者が、一般的に“羽つき”と呼ばれている。羽化病は伝染するとされており、また老若男女を問わず発症するため、羽つきはほぼ全ての住人に忌避されてきた。

 しかし、羽つきが現れてから10数年を経た今でも、患者を全員隔離するには至っていない。発症すると最初は背中に小さい羽が生え、それが徐々に育ち、最終的には大きな羽となる。大きく育った羽は服などで隠せる大きさではなく、家族などに匿われている場合でも表を出歩くことは不可能だ。なお、その羽によって飛ぶことができた羽つきはいない。


●羽狩り

 羽化病の患者である“羽つき”を捜し出して保護し、治癒院へと連行・隔離することを任務とする組織が“羽狩り”である。正式名称は“防疫局”だが、その強制的な手法を揶揄(やゆ)して羽狩りと呼ぶのが一般的だ。

 なお、伝染病である羽化病の患者を隔離することは国としても喫緊の課題であるため、羽狩りには“羽化病患者の保護を妨害するものの強制排除権”が認められている。この“強制排除”には、鍵(かぎ)の掛かった扉を蹴破ることから悪質な妨害者の斬り捨てまでが含まれるが、強制的な隔離への反発も特に牢獄では大きいことから、隊員には荒くれ者が多い。

 防疫局の責任者は、最近頭角を現してきた若手貴族のルキウス卿、牢獄隊の隊長はフィオネが務めている。

(C)AUGUST/dramatic create

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