2014年3月19日(水)
近年の“Saga-Style”ゲームの隆盛、および、いくつかの“鉄板”なFree to Playモデルの確立により、F2Pゲームのデザイン戦略は固定化されてきている。
GDC 2014の初日にあたる3月17日に行われたセッション“Design and Monetization Strategies in Highly Successful F2P Games”では、各ジャンルごとに成功したF2Pタイトルを引き合いに出し、それがどんなゲームデザインで、どのようにしてゲーマーたちにプレイを継続させているのかを分析した。
▲スピーカーはPlaymaticsのCCOであるNick Fortugno氏。Playmaticsはインターネットやソーシャルメディアででゲーム開発を手掛けるデベロッパーだ。 |
まず大前提として、ゲームに課金してもらうには、そのゲームがプレイして楽しいものであることが必要だ。それでも、大半の人はまったく課金しない層といえる。課金の大部分は、プレイヤーの中でも特にコアな数パーセントの層からもたらされるものであり、彼らががどういうプロフィールを持っているかを素早く分析し、彼らのためにゲームのデザインを組むことが、F2Pタイトルの成功の秘訣だという。
セッションでは、F2Pプレイヤーを(1)Single Player、(2)Social Multiplayer、(3)Hardcore Multiplayerの3タイプに分類し、それらの層が主にプレイするゲームのサンプルと、その戦略を見ていった。
(1)ゲームは基本1人で黙々と進める
(2)スコア比較やシェアをする方法があってもおかまいなし
(3)代表的なゲームは『Candy Crush Saga』など
彼らにとってのゲームをプレイするモチベーションは、とにかくゲームを前に進めること。saga-styleのゲームにおいては、すべてのレベル(=難度)をコンプリートすることと言い換えてもいい。
それゆえに、このタイプのゲームでは、先に進むことが楽しいと思わせるようなデザインにする必要がある。レベルデザインをバラエティ豊かにし、“壁”となるようなポイントも随所に配置。コアプレイヤー向けに、加速度的に先へ進める方法(課金要素)も用意します。プレイヤーがその瞬間に必要なアイテムの購入を促す(強敵に挑む際のパワーアップアイテムなど)ことも有効だという。
(1)ゲームは時間を十分にかければ誰でも先へ進められる
(2)ゲームの進行は“敵を倒せば先に進める”という単純なものではなく、いくぶん複雑
(3)マルチプレイは非同期ながら、回数は豊富に行われる
(4)代表的なゲームは『Clash of Clans』など
彼らは自分が所属するチームを前進させることをモチベーションにしており、個人の上達もすべてチームありきのものとなる。ライバルチームを蹴落としたいという意識も持っている。
このタイプのゲームに重要なのは、“時間”と他のごほうび要素とのバランス。時間をお金で買うのはF2Pタイトルでは珍しくないが、そのバランスが取れていないとゲームがすぐに廃れてしまう。また、他のプレイヤーと協力することの利点が理解できるようなデザインにすることも重要。戦いに負けてもリベンジが可能な構造を構築することも、課金のモチベーションにつながる。
(1)プレイヤースキルの上達がゲームの進行に直結する
(2)ゲームシステムは戦術的に深く、マスターが難しい
(3)マルチプレイは同期しており、入り組んでいる
(4)代表的なゲームは『League of Legends』など
彼らはとにかく“自分の腕前を見せたい”“自分は他のプレイヤーとは違うことを顕示したい”という欲求を持っている。課金はプレイヤースキルを手にするという意味では不要なものだ。
それゆえ、このタイプのゲームの課金は、ワンランク上のプレイを可能にするスキルを手に入れられるものや、自らを着飾って自慢するためのアバターやファッションアイテムなどが主となる。チーム報酬などを設けると、各自に自己研鑚の圧力が増し、さらなる課金につながることも。
以上、セッションではF2Pプレイヤーを3つのタイプに分類して、課金の傾向について分析していた。最後に総論として「(課金しない)カジュアルユーザーも楽しめるゲームを作ること、そのなかで、ゲームをプレイしたくなるような強力なモチベーションを構築すること、プレイヤーの声を聞き、今どのような状況で何を求められているのかを正確に理解することが必要」だと述べ、セッションを締めくくった。