2014年3月23日(日)
『どうぶつの森(英題:Animal Crossing)』シリーズは、今や任天堂の看板と言っても過言ではないタイトルだろう。3DS用ソフト『とびだせ どうぶつの森』は、老若男女、世代や性別を問わずに支持され、2012年の発売から現在まで全世界で738万本を売り上げている。
“Game Developers Conference 2014”(GDC)の3日目となる現地時間3月19日(水)に、『How to Turn a New Leaf at the Animal Crossing』と題する講演が行われた。この講演では『とびだせ どうぶつの森』の事例から、フランチャイズを成長させるのに必要なことを説明した。
▲スピーカーとして登壇した任天堂の江口勝也氏(右)と京極あや氏(中央)。江口氏はプロデューサーの視点、京極氏はディレクターの視点から経験を語った。 |
発売されるたびに大ヒットを飛ばす『どうぶつの森』シリーズ。しかし、動物や家具は増えても基本の流れは同じであることが続き、作品を重ねるごとに“飽き”という問題が具現化していった。『とびだせ どうぶつの森』の制作は、そこに正面から向き合い、“『どうぶつの森』とは何か?”を見つめ直すところから始まったという。
すべてを変えてはシリーズではなくなる。では、『どうぶつの森』の守らなければいけないお約束とは何なのか? そこで行きついたのが、“『どうぶつの森』はコミュニケ―ションツールである”ということだったと京極氏は語る。日々の暮らしを楽しみ、お互いの村を訪問して、誕生日を祝う。ゲームの中でのコミュニケーションが、現実の世界でのコミュニケーションにつながり、それこそ『どうぶつの森』が持つコンセプトだ。
▲開発の終盤でもピリピリしたムードはなかったという。それは、『とびだせ どうぶつの森』でスタッフもコミュニケーションを楽しんでいたからと語り、「今、ピリピリしているチームはぜひプレイしてください」と笑いを誘った。 |
京極氏は「ゲームだからこそ、気軽にコミュニケーションが図れる」と強調する。例えば、現実では家に行きたいと言えなくても、ゲームなら気軽に言える。その関係がやがてゲームを飛び出し、コミュニケーションのきっかけとなる。制作では1つ1つの要素をコンセプトに照らし合わせ、拾うもの、捨てるものを選択した。
プロジェクトチームでは、各パート間で仕様を共有するだけではなく、その仕様の本質を共有することに努めたという。思想を共有することで、デザインを変更する際もその根本が揺らぐことはなくなったそうだ。
▲プランナーだけでなく、デザイナーやプログラマーも仕様のアイデアを出し、それを社内webでプレゼンして本質を共有したという。スタッフの多様性がさまざまなアイデアにつながった。 |
幹を見極め、共有し、変化を恐れず新たな種を蒔く。そうしてフランチャイズはやがて大きな樹へと成長をとげていく。京極氏のスピーチはこう締めくくられた。モデルハウスや夢見の館、ベストフレンド機能など、『とびだせ どうぶつの森』では過去のシリーズで咲かせた花を摘み取り、そこに新しいコミュニケーションの種を蒔いた。シリーズを成長させるうえで必要なのは、まさにこのサイクルである。
最後に江口氏は、マネジメントの立場からフランチャイズの発展に重要なことを述べた。この『とびだせ どうぶつの森』では、性別から経験まで、開発スタッフの構成を偏らないように調整した結果、ゲームの多様性につながったという。
「フランチャイズの発展はプラットフォームの規模を広げ、さらにそのプラットフォームで展開されるほかのフランチャイズの発展につながる」と江口氏は語る。お互いのフランチャイズを成長させあい、ゲーム業界を盛り上げ、世界中のゲームファンを笑顔にしましょうと述べ、本セッションの幕を閉じた。