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2014年4月1日(火)

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』には褐色エロスなお姉さんと金髪ツインテJKも登場予定だった!? 誕生にまつわる裏話を制作陣に聞いてみた

文:カワチ

 プラネットGから配信中のPS Vita用ダウンロードソフト『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』の開発者インタビューをお届けする。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』

 『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』は、仮想空間に構築された市街を縦横無尽に駆けめぐり、ライバルたちとキーアイテム(アタッシュケース)を奪い合う“追いかけっこ”アクション。プレイヤーは近未来のデジタルスポーツ“DASH”に参加する選手を操って、他3人のプレイヤーとバトルしていく。

 そんな『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』がどのようにして作られたのか? 開発に携わった3人のキーマンにインタビューを敢行した。インタビューでは、開発途中の貴重な資料とともにさまざまな裏話を語っていただいたので、ぜひチェックしてもらいたい。

■『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』インタビュー参加者

沓澤順一氏……『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』のプロデュースを担当。スーパーファミコンの時代からさまざまな作品の開発に携わる。

杉山裕起氏……本作の開発および運営のディレクションを担当。他にもPVの制作や公式サイトのデザインなども手掛ける。

植木直敬氏……プロモーション担当。またプロモーションだけでなく、キャラクターや世界観の設定・構築にも参加。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲写真左からプロモーションの植木氏、ディレクターの杉山氏、プロデューサーの沓澤氏。

■『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』は公園で生まれたゲームだった!

――まず企画立ち上げの経緯からお聞きしたいと思います。なぜPS Vitaの基本プレイ無料ソフトとして、アクションゲームを制作しようと思ったのでしょうか?

杉山氏:PS Vitaでフリーミアム(※)のゲームを制作するという部分は最初から決まっていました。ただ、ソーシャル系のゲームはすでに多くのメーカーが提供していたので、違うアプローチでゲームを作りたいと考えたんです。そこで、しっかりと遊べるアクションゲームを手掛けることにしました。

(※フリーミアム……基本的なサービスや製品を無料で提供し、その他の機能を有償サービスにすることで収益を得るビジネスモデル)

――『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』は、フリーミアムならではの手軽さとゲームとしてのおもしろさを兼ね備えた作品だと思います。この2つのバランスを保つことは大変だったのではないでしょうか。

沓澤氏:そのバランスは運営型ゲームの経験が豊富な杉山がメインになって、うまくかじ取りしてくれました。私はずっとコンシューマ向けのゲームを作ってきた人間で、さまざまなゲーム性を作品に組み込みたいと思っています。杉山のかじ取りがなかったら、こんなに手軽なゲームではなかったかもしれません。

植木氏:沓澤が出してくる多彩なアイデアを、ソーシャルの枠組みにどう落とし込んでいくのかという部分は、制作における大きなテーマでしたね。何度も会議を開き、制作陣で話し合いました。

――ハードにPS Vitaを選んだ狙いはどこにあったのでしょうか?

植木氏:インディーズ市場やフリーミアム市場の盛り上がりをはじめ、“ユーザーとパブリッシャーが一緒にゲームを育てていく”という部分において、優れたハードだと判断したからです。

沓澤氏:それに、“追いかけっこ”がテーマのゲームですので、手軽に対戦環境を整えることができる点も魅力でした。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』

――実際にPS Vitaで開発を行ってみた感想を教えていただけますか?

杉山氏:いわゆるスマートフォンと違い、ボタンで操作をできるので、アクション性を深く追求することができました。

――実際にプレイさせていただきましたが、ボタンの割り振りもかなり意識されていると感じました。キャラクターの育成部分などはもちろん、バトル部分も快適にプレイできました。

杉山氏:ありがとうございます! どのボタンにどの操作を割り振るか、それに画面のレイアウトについても、どの部分に何を表示させるかは試行錯誤して決めていったので、そう言ってもらえるとうれしいです。

植木氏:ゲーム機で作る以上は、ユーザーインターフェイスを画面上には置きたくなかったんですよ。ただ、メニュー部分などはボタンだけでなくタッチパネルも使用できるようにしています。

――“追いかけっこ”を題材にした理由を教えていただけますか?

沓澤氏:「遊びってなんだろう?」と考えた時に、我々の中で原点として出てきたものが“追いかけっこ”や“鬼ごっこ”でした。それで「追いかけっこをゲームの形に落とし込んでみよう」というところまではすんなりと決まったのですが……。そこからの仕様がなかなか決まらなかったんですよ。

 そんな日々が何日も続いたので「ゲームは会議室で考えるんじゃない! 公園で考えるんだ!!」と言って、公園で企画会議を開きました(笑)。

杉山氏:一応“遊びの原体験を思い出すため”という理由で、公園まで出かけたんですけどね(笑)。でも、そのおかげで“追いかけっこや鬼ごっこのどの部分が楽しかったのか”と見直すきっかけにもなりました。

 単純にアタッシュケースを追いかけるだけでなく、マップに潜んで相手の考えを読むおもしろさも、公園で再発見した楽しさですね。ゲーム性は異なりますが、相手の思考を読むという点では“かくれんぼ”と似ているのかもしれませんね。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲物影に潜んでいたプレイヤーが急に現れて、アタッシュケースを奪っていくことも。アタッシュケースを持った瞬間から油断は禁物。

沓澤氏:さらにそこから、実際の追いかけっこではできないけれど、バーチャルの中であれば実行できるであろうアイデアも生まれてきたので、舞台を仮想空間にしたんです。

――仮想世界という設定が生まれたことで、どのように変化していったのでしょうか?

杉山氏:パワーアップアイテムが落ちていたり、地面から相手の行動を制限する壁を出現させたりという部分ですね、仮想空間であればアリなのではないかと思ったんですよ。

沓澤氏:アクション部分もだいぶ変わりました。最初はマップ上にいくつか落ちているフラッグを拾ってゴールに持っていく……というものでした。

――今のゲームよりも、追いかけっこの要素がだいぶ弱かったんですね。

植木氏:その他にも、“電脳世界のスポーツ”という設定にしておけば、後から自由にマップなどを追加できるかな、という考えもありました。この設定であれば、マップに“江戸”があってもさほど違和感がないだろうと(笑)。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲現在選べるマップは秋葉原、渋谷、江戸となっている。

――確かに(笑)。最初に“江戸”が出てしまったら、今後はどんなマップが実装されるのか、ちょっと予想がつかないですね。続いて開発中に苦労した部分を聞かせていただけますか?

杉山氏:ゲームのテンポには気を使いました。特にバトルの部分は試行錯誤しました。

沓澤氏:ウェイト(待ち時間)が発生してしまうのがイヤだったので、武器はエンカウント前に選択するスタイルにしました。

杉山氏:そうですね。また、バトル終了直後の弱った状態のプレイヤーを狙い撃ちしづらくなるようにしているのですが、それもゲームのテンポや、プレイヤーが感じるストレスを考慮した結果です。

沓澤氏:他にはゲージを消費することで素早く動ける仕様にするかについて悩みました。導入したことによって、追いかけっこの戦略性が増したので結果的によかったと思います。最初は本当に幼稚園児たちが追いかけっこをしているような絵になってしまっていましたから(笑)。

――全プレイヤーの速度が一緒で、しかも変えられないとなると、そうなってしまうかもしれませんね。

沓澤氏:そうですね。こうしたダッシュ機能などのギミックなどを搭載することにより、どんどんゲームらしさに磨きがかかりました。

杉山氏:他に苦労した点は、仕様を変更するたびにNPCのAIを変えなければならないところですね。ちなみにNPCはトラップやアイテムを使ってこないので、対人戦よりも楽に勝てるはずです。

 NPC戦に慣れたらぜひ対人戦にも挑戦してみてもらいたいですね。やっぱり対人戦ならではの駆け引きはおもしろいですよ。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲攻撃力アップのアイテムを積極的に拾うNPCやひたすらアタッシュケースを狙うMPCなど、さまざまなタイプのNPCが存在している。

■杉山ディレクターをモデルにしたキャラクターとは?

――本作に登場するキャラクターは、デザインがスタイリッシュですよね。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』 『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』 『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲榛東京哉(しんとう きょうや) 声:櫻井孝宏▲寺園(てらぞの)ひより 声:内田真礼▲天坂茉莉愛(あまさか まりあ) 声:沼倉愛美
『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』 『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』 『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲仮沢仮令(かりさわ たとえ) 声:柿原徹也▲旭信因(あさひ のぶより) 声:遊佐浩二▲美南見・H・友璃夏(みなみ H ゆりか) 声:豊口めぐみ

杉山氏:私がもともとストリートダンスをやっているので、そういうデザインに寄らせてもらいました。そのため、サウンドのほうもハウス系などが得意な“ZARIGANI.REC”に発注しました。他にはキャラクターのイラストについてもいわゆるアメコミ調になるように、描線を太くするなど気を使っていただきました。

――それぞれのキャラクターの誕生秘話についても教えてください。まずは京哉から。彼は入院中の妹を治すために“DASH”に参加したというわかりやすい設定ですね。

■キャラクター紹介動画“榛東京哉”

杉山氏:そうですね。主人公格のキャラクターですので奇をてらわずにわかりやすい設定にしています。性格も、流行のクールなヤレヤレ系主人公ですね。

植木氏:妹はもともと元気な性格だったのですが、今は病気で入院しています。彼女の手術費用を稼ぐため、京哉は“DASH”に参加しています。

――“榛東”は、変わった名字ですね。

植木氏:名前の中に東京の文字を入れたかったんですよ。

杉山氏:京哉という名前は語感で選んでいます。

――ファッションについてはいかがでしょうか?

杉山氏:あまり派手にならないよう気を付けました。集合イラストなどで中央に彼が立っている時にあまりゴテゴテしているとバランスが悪くなってしまうので。バランスを考えると、中央はスッキリさせておきたかったんです。

――なるほど。続いて、ひよりについてお聞かせください。

■キャラクター紹介動画“寺園ひより”

杉山氏:京哉とは反対におだやかな女の子ですね。誰にでも優しく、頼まれるとイヤとは言えない性格です。優しいだけではキャラクターとして弱いので“失踪中の兄を追っている”という設定が加わりました。

植木氏:人気が出れば兄も操作キャラクターとして追加したいですね。

――服装はいかがでしょうか?

杉山氏:これはひよりに限った話ではないのですが、最初にあがってきたイラストがイメージ通りだったのでほぼ修正していないんですよ。そのため帽子も最初から被っていましたね。

植木氏:この南半球が見えちゃう服装も初期案から変わらないです。杉山の妄想通りです。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲こちらが南半球が見えているひよりのグラフィック。わからない方に説明すると、南半球とは下から見えているバストのこと。

杉山氏:そんなことはありません(笑)!! では続いて茉莉愛の誕生秘話にいきましょうか。

■キャラクター紹介動画“天坂茉莉愛”

杉山氏:彼女はイラストが先に上がってきて、そこからインスピレーションを受けてストーリーを考えていきました。また、天才という設定のキャラクターだったので名前に“天”という字を入れています。

植木氏:名前はもともとマリもしくはアンヌだったのですが、もうちょっと今風のかわいい名前にしたいと考えて、現在のものになりました。

――名前について言うと、仮沢仮令も変わっていますよね。西尾維新さんの作品に出てきそうな名前です(笑)。

■キャラクター紹介動画“仮沢仮令”

杉山氏:実は私が西尾維新さんの大ファンなんですよ(笑)。

植木氏:ちなみに、この仮令(たとえ)という漢字は当て字ではないんですよ。きちんと辞書に登録されている文字です。

杉山氏:彼の性格は私自身の性格を投影している部分があります。実は人見知りで暗い一面があるので、それを隠すために明るく振舞っているんです。本当の自分とは違う仮面を着けて生きているということで、名前に“仮”の文字が入っています。

――旭信因は、この中では比較的目立たないようなデザインに思えるのですが、何か理由はあるのでしょうか?。

■キャラクター紹介動画“旭信因”

杉山氏:信因、そして次に紹介する友璃夏もそうなのですが、年齢が高めなキャラクターを入れたくて作ったんです。信因は軍曹のような男らしさ全開のマッチョな性格にするか、飄々(ひょうひょう)としていてつかみどころのない性格にするか迷ったのですが、デザインを考慮して後者にしました。

植木氏:大人になるべき何かを乗り越えている人ですが、大人なのでそれを見せないんです。

杉山氏:「どうしていい年齢をしたおじさんが追いかけっこをやっているのか?」という理由付けをしっかり描きたかったので、彼の設定は暗めな設定になっています。

――それでは、もう1人の年長者・友璃夏についても誕生秘話をお願いします。

■キャラクター紹介動画“美南見・H・友璃夏”

沓澤氏:彼女は、私の趣味が具現化された素晴らしいキャラクターですね! ダイナマイトボディで優しく包んでもらいたい!!

――ひよりは杉山さんの好みとのことでしたが、友璃夏は沓澤さんの好みが反映されていたんですね。ところでミドルネームのHにはどういう意味があるのでしょうか?

植木氏:いろいろな意味が込められていますが、1番は“ハイスコア”ですね。そしてHカップです(笑)。

杉山氏:Hカップはさておき、大人の女性をイメージするようなデザインになっています。

――ここまでキャラクターのことをお聞きしてきましたが、本作は内田真礼さんや櫻井孝宏さんなど、出演している声優陣も豪華ですよね。どのようにキャスティングしたのでしょうか?

杉山氏:私がキャラクターに合う声優陣を選ばせていただきました。ただ、男性キャラクターについては、公式コスプレイヤーの神坂琉菜さんに相談してアドバイスをしていただきました。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲本作の公式コスプレイヤーとして活躍する神坂琉菜さん。なんとアドバイザーとしても本作に参加していたとのこと。

――そんな経緯があったんですね。ちなみに制作途中でボツになったキャラクターなどはいるのでしょうか?

杉山氏:ボツというわけではありませんが、最初にイラストレーターが仕上げてきたイメージビジュアルには、褐色で露出度高めなダンサーと、クールなイメージの女の子がいました。初期はどことなくカラーギャング的なイメージがありましたですね。

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』 『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
▲今回特別に初期デザインのイラストを公開していただいた。本編には登場しないキャラクターが2人いるが……?

植木氏:キャラクターの年齢や性別のバランスを考慮したうえで、その2人をけずって信因と友璃夏を入れました。

――本作ではキャラクターだけでなく武器の種類も豊富ですが、これはどのように考えられたのでしょうか?

杉山氏:武器は剣や銃などカテゴライズに分けて作っていたのですが、大変だったのは名前です。数百種類の名前を考えなければならなかったので……。最終的には海外の地名や池の名前などを組み合わせて作りました(笑)。

沓澤氏:ナイル川とバコン川を組み合わせてナイバガンとか(笑)。

杉山氏:スタッフに武器の一覧を渡したら「独特な名前ですね!」と驚かれました。

■ゲームに対する要望を開発陣に送れば実装の可能性も……!?

――今後のアップデートについてお聞かせください。

杉山氏:まずは3月末のアップデートで全キャラクターの“FACE(フェイス)”が増えます。今までとは異なるおもしろい衣装を着ているので、ぜひ楽しみにしてください。また“ダッシュディスクガチャ”に“スペシャルディスク”というものが追加されますので、こちらもチェックしてみてください。

沓澤氏:また、4月末には新たなマップを追加予定です。皆さん見たら驚くと思いますよ。

植木氏:ヒントは「でも、お高いんでしょう?」です。DLCそのものが高いというわけではありませんので、そこはご心配なく(笑)。

――私も楽しみです。では最後に『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』を遊んでいるファンにメッセージをお願いします。

杉山氏:すでに本作を遊んでいるユーザーの皆さんは、今後も定期的にイベントを開催していきますし、アップデートでマップなども追加されますので、楽しみにしていただければと思います。まだプレイしたことがない人は、少しでもプレイしていただければおもしろさがわかると思いますので、とりあえずダウンロードしてみてください。

植木氏:ガチャを回したりレベルを上げたりと1人でじっくりと遊ぶこともできます。3G環境でもプレイ可能なので、屋外でも楽しんでいただきたいですね。

沓澤氏:皆さんのご意見を送ってくださるとうれしいです。「あんなキャラクターを追加してほしい」や「こんなマップを導入してほしい」という感想をドシドシ送ってください。実現に向けて検討いたしますので!

『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』

(C) Planet G Co.,Ltd.

データ

▼『大乱走 ダッシュ or 奪取!!』
■メーカー:プラネットG
■対応機種:PS Vita(ダウンロード専用)
■ジャンル:ETC
■配信日:2014年2月27日
■価格:無料(アイテム課金制)

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