2014年4月11日(金)
あの三式中戦車とご対面! 『World of Tanks』の“ミリタリーバスツアー”に参加してきました【めざせ! 戦車道免許皆伝 第27回】
皆さんは『若鷲の歌』という軍歌をご存知でしょうか? 「♪若い血潮の予科練の七つボタンは桜に錨(いかり)」ってやつです。もともとは映画のテーマソングでしたが、戦争中に大ヒットした曲です。歌詞に出てくる“予科練”というのは、当時は土浦にあり、パイロットの育成を行った土浦海軍航空隊と海軍飛行予科練習生のことを指します。海軍航空隊のパイロットなので桜に錨なんですね。ここが戦後に“陸上自衛隊 土浦駐屯地 武器学校”となり、現在に至ります。
今回は、この土浦駐屯地で行われた“Wargamingミリタリーバスツアーin土浦駐屯地”の模様をレポートします。主催はもちろん、オンライン戦車ゲーム『World of Tanks』(以下、『WoT』)を運営するウォーゲーミングジャパン。武器学校だけあって、土浦駐屯地には陸上自衛隊に配備されているさまざまな兵器が保管されています。日本のクビンカ(ロシアの基地に併設された戦車博物館)みたいなものです。“お花見”が目的のツアーだったのですが、桜より戦車のほうが多かったかも……?
■土浦は桜と戦車の天国でした!
このツアーは、8時半に東京駅へ集合してバスで土浦に移動します。ちょっと早めのスタート時間が夜型生活の小官にはチト厳しいものの、向かう先が土浦ですから「寝てる場合じゃねぇ!」とばかりに、きちんと遅れずに集合場所へ到着しました。参加者はプレス関係者も含めておよそ30名。バスの車内ではレクリエーションの一環として、参加者の皆さんに『WoT』でのプレイヤーネームと好きな戦車を順番に披露していただきました。出てくる戦車の名前は、見事にバラバラ。強い弱いに関係なく、皆さん戦車が大好きで、独自のこだわりがあるようです。まぁ当たり前か……。ちなみにバスの運転手さんも、なぜかこのトークに参加。残念ながら、クルマを盗みまくる某オープンワールドゲームで戦車に乗ったことがあるだけで、特に戦車には詳しくないとか。いやいや、そのゲームを遊んでいるだけでも十分すごいことですよ!
そんなこんなで、皆さんの戦車に対するこだわりを伺った後は、普段はお目にかかることのない特性グッズがもらえるじゃんけん大会が行われました。『WoT』のニット帽やタンブラーなど、なかなか豪華なプレゼントが提供されていましたよ。そして、途中でサービスエリアに寄って休憩したら、あっという間に土浦駐屯地に到着です。
▲大型駐車場から駐屯地の入口へ向かう途中、見事な桜並木が出迎えてくれました。 |
簡単な荷物検査を受けて駐屯地の敷地に入った後は、ウォーゲーミングジャパンのスタッフが用意してくれたブルーシートを拠点にして自由行動。なお今回の花見では、同社でミリタリーアドバイザーを務める宮永忠将さんによる展示戦車の解説ツアーも行われました。午前と午後、合計2回行われたのですが、小官は午後の部に参加することにして、まずは駐屯地内をあちこち散策してみました。一般向けに開放されていたのは敷地内のごく一部ですが、それでも結構広い。売店も出てまして、焼きそばやから揚げ、焼き鳥などなどが売られておりました。なお売店をやっていたのは自衛官やそのご家族のようで、商売っ気もなく、どれも100円とか200円の激安価格!
▲ポテトを揚げていた器具は、自衛隊で使われている野外炊具のようです。うーんさすが。 |
売店で腹ごしらえを済ませた後は、これまた自衛官の皆さんによる常陸太鼓の演奏を楽しみました。さまざまなリズムとパフォーマンスを組み合わせていて、なかなか素晴らしいショーでした。
▲“SL”と題する演目があったのですが、機関車が右から左へと走っていく様や、正面に近づいてくる様がイメージできるようになっていました。すごい! |
■90式戦車をはじめとするミリタリー車両の迫力は圧倒的!
この日は基本的に、地元の方や駐屯地に勤める自衛官、そしてOBのための開放日で、そんなに各種イベントが目白押しというわけでもありません。皆さん気ままに桜の下で飲んでるし……。そんな中、われわれは戦車マニア垂涎のミリタリー車両の数々を見学します。見学と言っても、野ざらしの車両を自由に眺めるだけですが。一応は時代順に並べてみましたので、順番にどうぞ!
●155mm加農砲M2
いきなり戦車じゃないのですが、アメリカ軍の供与品として野戦特科部隊で保有されていた155mmカノン砲。加農砲はカノン(キャノン)砲の当て字です。
●203mm榴弾砲M2
こちらもアメリカ軍からの供与品。ちなみにカノン砲というのは、目標を直接照準で狙う砲のことで、低進性が良い(弾が真っ直ぐ飛ぶ)ものを指します。現在では榴弾砲にまとめられて、加農砲はほぼ姿を消しています。宮永さんの解説によれば「自走砲の登場で役割を分ける理由がなくなり、今ではほとんど榴弾砲に統合されています」とのこと。
●M24
ここで紹介する最初の戦車は【M24 Chaffee】です。自衛隊の前身である警察予備隊に、アメリカ軍から供与されたもの。『WoT』では、アメリカの開発ツリーでTier Vにて登場します。ハンドル操作のため自動車の運転操作感覚に近く、免許を持っているだけの新兵でも簡単に扱えたとか。先進的なテクノロジーの塊だったようで、当時の日本ではコピーすることができなかったそうです。
●M4A3E8
イージーエイトの通称でも知られる、シャーマン戦車の派生型。『WoT』だと、アメリカの開発ツリーでTier VIにて登場します。シャーマンは、基本の仕様だけを決定して、それを基に多くの企業に発注したため、バリエーションがいろいろとあるのだそうです。ガソリンエンジンのものは陸軍に、ディーゼルエンジンのM4A2は海兵隊に、それぞれ配備されたとか。
●M36戦車駆逐車
駆逐戦車の【M36 Jackson】です。この1両は、朝鮮戦争後に置いていかれた車両を自衛隊で保管しているものだとか。『WoT』ではアメリカの開発ツリーでTier VIにて登場します。
●LVT(A)5装軌式水陸両用車
アメリカ軍の水陸両用車。こちらも研究用としての置き土産のようです。『Warld of Warships』のサービスがスタートしたら、『WoT』との連動キャンペーンなどで登場したりすることがあるかも? 夢がふくらみます!
●40mm自走高射機関砲M42
M41ウォーカーブルドックをベースに40mm高射機関砲2門を搭載した対空戦車です。通称はダスター。アメリカ軍からの供与品です。『WoT』には対空戦車は登場しませんが、実は優秀な装甲貫徹力を誇る車両となっており、ベトナム戦争では地上掃射でも威力を発揮しました。そのうち『WoT』でも実装されるかもしれません。されるといいなぁ。
●60式自走106mm無反動砲
ここからは純国産の車両になります。無反動砲というのは、砲弾の進行方向とは逆方向に砲弾と同じ質量の物体や爆風を発射することで、発射時に発生する反動を軽減した砲のこと。反動が少ない反面、バックブラストが発生するため敵に発見されやすく、撃ったらすぐに逃げないと、あっという間にやられてしまいます。基本的に駆逐戦車以上に待ち伏せに特化した兵器。自衛隊では、敵軍に上陸された場合には山岳での迎撃を想定していました。普段は砲を畳んで窪地などに潜み、敵が見えたら砲をせり上げて発射、その後にすぐさま陣地転換を行うという運用を考えていたようです。
▲「実際に運用されたら……」というシーンを再現したジオラマの展示。攻撃時にはこのように砲をせり上げて射撃します。なお2発撃ち切ると、乗員は次弾装填のためにいったん車外に出ないといけません。 |
●60式自走81mm迫撃砲
81mm迫撃砲を積んだ自走砲。砲が後部にあるため、エンジンは前部にあります。「敵に撃たれたら……」と想像すると、ちょっとオソロシイです。
●73式装甲車
いわゆる兵員輸送車です。戦車の敵は、戦車だけではありません。バズーカなどの歩兵携行兵器でも多大な損害を被ることがよくあります。そういった事態を避けるため、戦車と同じ速度で進軍し、会敵時に瞬時に歩兵を展開できる車両が必要とされたわけです。
●99式装輪装甲車
73式装甲車の後継車。こちらは無限軌道(キャタピラ)ではなく、8輪の装輪式です。国内で展開することを前提にした車両なので、道路で素早く移動することが重視されています。
●74式自走105mm榴弾砲
105mm榴弾砲を搭載した自走砲です。この車両は『WoT』には登場しませんが、Tier IVやVあたりで105mm榴弾砲にヒドイ目にあわされている方も多いのでは?
●75式自走155mm榴弾砲
105mmよりもさらに強力な155mm榴弾砲を積んだ自走砲です(自動装填装置付き)。砲塔の脇にちょこんと取り付けられているのは、12.7mm重機関銃M2を搭載するための器具(銃架)ですね。
●99式自走155mm榴弾砲(試作)
74式自走105mm榴弾砲の後継型として登場した自走砲。愛称はロングノーズで、1999年に制式採用されました。非常に高価な車両だそうで、まだ74式の全車両との交換が終わっていないそうです。
●75式130mm自走多連装ロケット弾発射機
宮永さんいわく「高価なカチューシャ」だそうです。ロケット弾は命中率こそ低いものの、安価で面制圧に向いているため、この車両も66両が生産されました。
●87式砲側弾薬車
203mm自走榴弾砲に弾薬を供給する車両。砲の側で供給するから、砲側弾薬車なんです。宮永さんによれば、「この車両が破壊されているようでは戦争は終わり。戦車が破壊されるより、よほどショックが大きい」とのこと。
●73式牽引車
自力で移動できない重砲を牽引したり、兵員を輸送したりする多目的な車両です。いわば、縁の下の力持ち。
●61式戦車
自衛隊としては初の純国産戦車です。試作車である【STA-1】からの発展型だという事実は、賢明な『WoT』ユーザーの皆さんには今さら説明する必要はないでしょう。1966年の当時で考えても非力な90mm砲を装備していますが、「開発に時間のかかる105mm砲を積むために5年待つより、その時点の技術で実現できる戦車を作ろう」というコンセプトだったそうです。それだけ当時のソビエトは脅威だったのです。
非力ゆえに、正面からの撃ち合いを想定しておらず、60式自走106mm無反動砲とのクロスファイヤー(連携による十字砲火)で敵戦車を撃破するよう、隠蔽率は高めにという思想で設計されています。この戦車が何より有名なのは、あのゴジラと死闘を繰り広げたことでしょう。いつも一方的にやられますが……。
●74式戦車
純国産戦車の第2世代です。当時の標準だった105mm砲を装備し、世界水準に到達することを目標に作られた戦車です。詳しくは第13回の記事をご覧ください。
主砲はイギリスの名門ロイヤルオードナンス製。シャーマンファイヤーフライの17ポンド砲を開発したメーカーと言えばお分かりになられるかと。『WoT』でイギリスの開発ツリーにある77mm HV砲や17ポンド砲は、このメーカーが製造したものです。さて話を戻しまして、砲身部に覆いがあるのがお分かりになるかと思いますが、これはサーマルジャケットと言いまして、砲身の上部と下部の温度を一定にするための装備品です。大きな砲になると、直射日光などで砲身上部と砲身下部の温度差から砲が歪んでしまうことがあるのですが、それを防ぐためのものです。
●90式戦車
国産戦車の第3世代。戦車の配備更新というのは、そんなに頻繁に行われなくなってきているので、現在でも世界最高峰の戦車の一角を占めると言われています。ここまで来ると、砲も120mm滑腔砲でライフル砲ではなくなります。ライフル砲というのは、砲身内にらせんの溝(ライフリング)を刻んで砲弾を回転させ、直進性と貫徹力を増すためのもの。これだと、回転させると貫徹力が逆に落ちるHEAT弾の射撃には向きません。また、砲弾についてもAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)が開発されたため、現在ではライフリングが必要なくなったわけです。
そもそも90式戦車は、北海道の原野でソビエト戦車に対抗するための戦車なので、デカくて重くて、街中での運用に向きません。車重も50tあるので、渡れる橋が限られますし。そこで、あまり広くない場所での戦闘を想定してコンパクトにまとめたのが最新鋭の10式戦車です。残念ながらこちらは、まだ土浦駐屯地には展示されていませんでした。
●90式戦車回収車
90式戦車の車体を流用した戦車回収車です。戦車の回収だけでなく、予備砲身も装備していて、90式戦車の砲身交換も可能となっています。土浦駐屯地では毎年秋に駐屯地創立記念行事が行われますが、こちらの模擬戦では他の自衛隊施設では見られない、戦車の砲身交換も生で見られるとか。
■この日のメインディッシュ! 三式中戦車とついに対面!!
さて、ここ土浦駐屯地には世界で唯一、『ガールズ&パンツァー』にも登場したあの三式中戦車チヌが現存しています。戦後、すべてがスクラップにされてしまい、2両だけが残されましたが、そのうちの1両はアメリカで射撃訓練の的にされ、穴だらけになってしまったとか。
▲『ガールズ&パンツァー』の劇中では、三式中戦車は学園艦の駐車場においてあります。あの光景は土浦駐屯地の実車を再現しており、そのままの風情を感じることができました。車体が朽ちかけているのも同じです。 |
すでに交換用の補修パーツもなく、整備の予算もつけられずに、展示施設(火砲館)の脇にある学校の駐輪場のようなところでたたずんでいるのが、なんともわびしい限り。宮永さんは三式中戦車の中に入ったことがあるそうですが、鉄サビの匂いが体中に染みつき、帰りの電車の中で周りから人がいなくなったとか。ついでに、女子高生からは「なんか臭くない?」と言われて、いたく傷ついたそうです。
▲砲身下部に駐退機が見えています。射撃時の反動を、この駐退機を滑らせることで緩和するのですが、日本軍の対戦車砲は砲身の後退幅が長くて、すべてを車内に収納することができなかったとか。 |
▲車体後部の様子。エンジンルームなどが見られます。砲塔の後ろにあるハッチにはひび割れが起きています。 |
▲転輪にはゴムがはめられており、そこには“ヨコハマ”の文字が。どうやらヨコハマタイヤ製のようです。 |
■土浦駐屯地で見つけたフシギな掘り出し物?
●76mm野砲(ソビエト)
鹵獲品でしょうか? ソビエトのZiS-3 76mm野砲も展示されてました。バルバロッサ作戦の序盤に大量の76mm砲をドイツに鹵獲されてしまったソビエトが後継型として生産した野砲です。ちなみに、バルバロッサ作戦で鹵獲されたF-22 76mm野砲は、【Marder II】の主砲などに転用されました。そして、ZiS-3の車載型は【SU-76】に搭載されています。砲弾の初速が高く、着弾後に発射音が聞こえることから「ラッチュ(擦過音)・バム(発射音)」とドイツ軍に恐れられました。
●九四式三十七粍砲
旧日本軍の37mm砲です。【Type 95 Ha-Go】の主砲も九四式三十七粍戦車砲となっていますが、こちらは元から戦車砲として開発されたものなので、派生型ではありません。その証拠に、砲弾の互換性はありません。
●一式機動四十七粍砲
日本軍の47mm砲です。こちらは戦車砲に転用され、【Type 97 Chi-Ni】や【Type 1 Chi-He】に搭載されています。
というわけで、大興奮の花見ならぬ戦車見は無事終了し、一路東京駅へ。渋滞にも特に巻き込まれず、つつがなくツアーは終了しました。ウォーゲーミングジャパンではこれからも、こういったユーザー参加型のイベントを多数企画していくとのことなので、興味を持たれた方はぜひともご参加ください!
(C) Wargaming.net
データ
- ▼『World of Tanks(ワールド オブ タンクス)』
- ■メーカー:ウォーゲーミングジャパン
- ■対応機種:PC
- ■ジャンル:ACT
- ■配信日:2013年9月5日
- ■価格:無料(アイテム課金)