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2014年4月23日(水)

『アルノサージュ』土屋ディレクターにネタバレ有の濃密インタビュー! 7次元先の世界や調合アイテムのアイデアはファミレスから生まれる!?

文:kbj

 発売中のPS3用RPG『アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~』を手がけた、土屋暁ディレクターへのインタビューを掲載する。

“サージュ・コンチェルト”インタビュー

 『アルノサージュ』は『アルトネリコ』シリーズ(発売元:株式会社バンダイナムコゲームス)や『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』で知られる土屋さんが手がけた新作RPG。詩が魔法の力になる世界を舞台に、秘められた真実を追い求めるキャラクターたちの物語が紡がれていく。

“サージュ・コンチェルト”インタビュー
▲土屋暁ディレクター

 今回のインタビューは『電撃PlayStation Vol.564』(KADOKAWA刊)に掲載されたものに、誌面の都合上、掲載できなかったトークを加えた“完全版”となっている。発売後の今だからこそ明かせる“サージュ・コンチェルト”の設定や開発秘話、調合アイテムの制作過程などについて語ってもらった。さらに、以前にファンから募集した質問についても回答していただいている。

 なお、このインタビューは『シェルノサージュ』や『アルノサージュ』のネタバレを含むため、現在プレイしている最中の人や、これからプレイを考えている人は注意してほしい。

■ユーザーから好評だった要素や人気キャラを紹介

――発売されて、ユーザーからはどのような意見や反響がありましたか?

“サージュ・コンチェルト”インタビュー

 自分で言うのはちょっとアレなんですが……予想以上に楽しんでいただいています。一番のコンセプトであった“7次元先とのかかわり合い”は今までになかったようで、「新鮮だった」という感想の他にも、『シェルノサージュ』を遊んでいただいた人からは「感情移入できて、向こうにキャラや世界が存在しているのを感じた」という感想が届き、うれしかったです。

 今作は、プレイ後にいい意味での虚無感を感じさせるような作品にできたかなと思っています。すごく感動する作品とか、のめり込んだ作品って、終わると喪失感があるじゃないですか。その“喪失感という名の感動”を自分の手で創造したくて、今の仕事をしていると言っても過言ではないのですが、今回は自分なりに、そんな作品に仕上げられたのではないかと思ってます。

――ご自身の満足度としても、ユーザーからの手ごたえとしても満足できるものだったと。

 もちろん人によると思うんですが、これまでに寄せられている感想や評判を見ると、これまでで一番多いですね。それは個人的にもうれしくて、感動しました。

――土屋さんの中で印象的だった感想があれば、教えてください。

 やっぱり、●●●が端末で話しかけてくるところは泣けたというのは、すごく聞いています。実は前にニコニコ生放送の時に「自分で書いていて泣ける」と言っていたうちの1つがそこだったので、よかったと思います。

 あとは、これは『アルノサージュ』と『シェルノサージュ』を連動させている人だけになるのですが、▲▲▲のエンディングの1つを迎えると、ボイスメールが来るんですよ。あれは、“サージュ・コンチェルト”を立ち上げた時、最初にネタ帳に書いたネタなんです。それを実現できて、なおかつ、メールを受け取った人から感動したという意見をいただけました。そこは一番感無量だったところです。

――現状ユーザーの中で、人気のキャラは誰ですか?

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▲ネロ

 名指しであげるのであれば……ルックスが理由なのかもしれませんが、ネロが一番多いです(笑)。他には、イオンとキャスはやはり多いですね。話題にあがるのは、そのあたりですね。

――ネロはビジュアル的な変化もありつつ、ストーリー上でも重要なポジションということで、印象的だったのかもしれませんね。

 急にドジっ子属性が出るのも、人気なのかもしれません。『シェルノサージュ』の時から、ネロは物語的には敵対するような位置づけにしています。そこでのキャスとのやり取りは、『アルノサージュ』に伏線としてつながっています。本来のネロは、いろいろな気持ちや考えを持っていたのですが、ショッキングなことによって自分の殻に閉じこもっていました。それが彼女の心を開いて感情を出していくのは、キャラ設定における目標でした。そこが皆さんの琴線に触れたのかなと思います。

――イオンとネロの差別化は、設定する際から意識していたのですか?

 もちろん意識をしました。2人の根本的な差は、向こうの世界にいる年数だと思っています。基本的にはネロもイオンもすごく優しい子なんですが、ネロは堪忍袋の尾が切れているんです。どんなに根が優しくても、1万年もいろいろなことをやられていたら、感情がなくなってしまう。そうでないと精神が破たんしてしまうんですよ。ただ、それは心を閉ざしているだけで、開けてあげる人がいればもとに戻れるんですね。

“サージュ・コンチェルト”インタビュー “サージュ・コンチェルト”インタビュー

 イオンは本来持っている素質が隠れていない状態で、ネロは完全に扉が閉まっているところからのスタート。エンディング近辺までくると、ネロの心も大解放状態になるわけです。ネロには自分の世界に還(かえ)りたいという強い気持ちがあるんですが、還るためにはあの世界のすべてを破壊しなければいけないという矛盾から、逃避が起きてしまう。すべての出来事は自分の世界に戻る材料としてだけ考えることで、自己崩壊を回避しているわけです。それを正当化するために、「裏切られた」とか「約束を破られた」とか理由づけして、世界はつぶれていいと正当化しています。自分を洗脳して感情を消している状態がずっとあったわけです。その最終段階は、今後の『シェルノサージュ』で描かれます。

――イオンはまだそこには達していないのですね。

 そうです。潜在意識では同じような気持ちを持っていても、表面上ではまだ希望が勝っているのです。2人は同じ本質を持っていながら、出ている部分が完全にひっくり返っているように描いています。

■必ずゲームオーバーになるシナリオ!? ボツになった要素を激白

――本作のウリの1つである、『アルトネリコ』とのつながりについての反響はいかがでしたか?

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▲アルトネリコタワーの管理者として生み出された、レーヴァテイル(人工生命体)の少女・シュレリア。

 『アルトネリコ』の過去を描き、“グラスノインフェリア”前の世界やテル族のルーツなどは、コアなユーザーの中では話題になりましたね。

 それよりも自分とイオンの関係や、インターディメンドを通して向こうの世界につながっているという感覚の斬新さが受けている感じですね。「イオンがこの後にどうなったのか」や「ここでこうなったらイオンはどうなっていた」とか、「自分はどういう存在なのか」など、向こうの世界に介在するコンセプトだからこそ生まれた意見や議論が、特に多かったです。

――『シェルノサージュ』の時から7次元先に影響を与えているという認識でいたものの、『アルノサージュ』で自分がどれだけ影響を与えてきたのかがわかった瞬間、引き込まれました。

 多分、最初のきっかけはネロとの会話ではないでしょうか。ザッピングが売りであることは発売前から言っていたんですが、同時に「本作のザッピングはシステムではなくて“世界観”です」とずっと言っていました。そこがネロとかのかくれんぼで初めて開示されます。そこからは完全に世界に組み込まれて、登場人物も頼りにするレベルまでなっていく。ネロはそれを最初から知っている数少ない1人で、かつプレイヤーに話しかけてくる最初のキャラなんです。

――ネロの「かくれんぼをしましょう」というセリフから、一気に気持ちをあの世界に持っていかれた人も多かったのではないでしょうか。

 あそこは、本作における最後の砦でした。だから皆さんの反応を知るのが気になっていました。結果論から話すと、体験版であそこまでやれるとよかったと思っています。遊んだ人を引き込んだ瞬間に終えるのが理想でしたね。

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――『シェルノサージュ』をやっていない人でも、このイベントまでに世界観を把握できるのかが気になるのですが、反応はどうでしたか?

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▲『シェルノサージュ』では、『アルノサージュ』よりも以前の物語が描かれた。

 これも結果論になりますが、人によるという印象です。未経験者だけど楽しめている人もいれば、置いてけぼりと感じている人もいます。ただ、ここの部分は1年以上、議論を続けた結果の脚本となっています。脚本をお願いしている人に説明して、いろいろな人に「わかりにくくないでしょうか?」というリサーチを延々とやっていたものです。たぶん大丈夫だろうと判断して発売したのですが、やはりわかりにくいという人もいらっしゃるので、反省すべきところもありつつ、消化できている人もいるので、難しさを感じている状況です。

――ユーザーがゲームに介入するゲームデザインは、開発のいつごろに生まれたのでしょうか?

 『シェルノサージュ』という名前ができる前からありました。『シェルノサージュ』と『アルノサージュ』は一緒に企画書を出して、社内許可が下りた作品なんですが、初期企画書は現在実現できていることよりも、さらに突っ込んだことをやりたいという内容がひたすらに詰め込まれていました。しかし、どうやっても実現できないので入れなかった要素も多々あります。

 ゲームは並行世界の産物であるというコンセプトから、“サージュ・コンチェルト”はできあがっています。右に進んだ人と、左に行った人では、6次元上における別の座標に自分がいる。そういうコンセプトを説明するために、必ずゲームオーバーになるシナリオを作りたかったんですね。

――必ずゲームオーバーになるシナリオ……ですか!?

 そのルートでシナリオを追っていくと100%ゲームオーバーになってタイトルに戻るんですが、ゲームオーバーになってタイトル画面を見たことは記憶しておきます。その状態でやり直して特定のキャラに話しかけると、「どうして気付いたのか?」と展開が変化するんですが、それは別の可能性軸で見てきたからなんです。セーブしてロードするというのが、6次元的には卑怯な技。それが可能だからこそできる技だと思ったのですが、問題も多く、それを回収できなかったので削除しました。他にもあるんですが、このようにいろいろなネタを企画当初からすごく練っていました。

――他の考えていたネタで言えることがあれば、教えてください。

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 一番やりたかったのは、フィールド上にイオンとアーシェスが別モデルで表示されていて、別々に行動することです。イオン自身は勝手に歩く。アーシェスが移動したらイオンはついてくるんですが、プレイヤーが何も入力しないとふらふら歩いたり、探索したりする。イオンは自分ではないことを表現したかったんです。

 あと、アーシェスの当初のモデルは、キャラの横に浮いているビットのようなものや、もしくは神様のように見えない存在にしようと。それでイオンを頑張ってはげましてボスを倒させる。そのように、想いを伝えて、イオンに頑張ってもらう仕組みにしようかと。それぐらいのところからいろいろとアイデアを出して、今の形に落ち着いていきました。

――あちらの世界は、我々の世界の延長にあるものなのでしょうか?

 正直、そのあたりについては細かく意識していません。単純に世界の法則が全然違い、向こうの世界はすべて波でできているところから始まっています。精神についてはこちらの世界よりもわかっているけど、逆にこちらの世界で当たり前になっている物理法則が向こうでは解明されていないこともあります。精神に干渉することは向こうでは普通だと感じていますが、こちらの世界ではタブーなものになります。概念が異なるので、別の世界なんですよ。

■調合アイテムのアイデア出しやネーミングの秘密とは!?

――今回の調合アイテムのアイデアはすべて土屋さんが出されたそうですが、アイデアはどのようにして出すのでしょうか?

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 アイテムのネタ出しの作業をするのは、ファミレスが多いですね(笑)。全体的なバランスを取る必要があるので、手順的にはまずカテゴリを決めます。今回はカテゴリごとに35ぐらいの調合アイテムがあり、さらに採取アイテムを含めて50アイテムになります。それが5カテゴリあるんですね。カテゴリごとに担当するキャラがいるのですが、それ以外のキャラにも枠を与えています。25が担当キャラで、3つずつくらいが他の3人ですね。

――例えば、薬のカテゴリであればタットリアが25で、他のメンバーが3つずつくらいだと。

 そうです。そこまで作ったら、次はネタ出しです。頭の中で考えていると、アイデアが狭くなるんですが、ファミレスは元ネタとなるものがたくさんあるんですね。世の中にあるようなつっこみどころが多いもの、「これはどうなの?」というものをストックしていきます。例えば料理であれば、おいしそうなものとネタ的なものをバランスよく混ぜていきます。機械であれば設定が好きな人が気になるものや、某ひみつ道具のようなネタの詰まったものをバランスよく用意することを考えています。

――名前の元ネタについて、教えていただけますか?

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 ネーミングだけでなく、どういうアイテムを作ったらいいのかは、逆算的に作っています。例えば入浴剤であれば、「こういう効果があれば笑える」という考えからスタートして、それにマッチした名前を当てはめるわけです。“バスムージー”がまさにそれで、泡風呂とスムージーって見た目が似ているじゃないですか? あそこまで徹底的にアワアワになったらおもしろいんですが、スムージーは冷たくて風呂とは相反するもの。それをあえてあわせるのは笑えるだろうといった具合です。

――カソードも「コレとコレは組み合わせないのでは?」というものが多いですね。

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 実はカソードだけは、他の4カテゴリーとは違う作り方をしています。絶対にあわないことがわかっているんですが、カソードを料理で作らないといけないので、ほとんどが名前をもじって作っているんですよ。素子やクラスを名前に入れるルールなので、“七味唐辛素子”みたいな名前になっています。

――“焦らずのんびりクラス”もすごい名前ですよね。

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 “焦らずのんびりクラス”は、“焦らずにのんびりと暮らす”というワードをかけているんです。“連結する謎のアイス”は見方を変えると、“連結(R)する謎(N)のアイス(A)”のようにRNAを展開したものになるんです。ユーザーさんで「RNAを見ると、“連結する謎のアイス”にしか見えない!」とコメントされている人もいました。

 すべてのアイテムにネタを仕込むので、多角的に考えていきます。「さっきは入浴剤を作ったので、次は栄養剤かな。栄養剤だったらどんなネタがあるかな」とやっていくのですが、必ず突っ込むネタを作ってから、名前をつけていきます。それらのアイデアがベースとなって、イベント会話が構築されていきます。この時点でオチまで考えてあるので、プロットのようなものですね。

――“無慈悲な洗剤”はオチを含めて無慈悲でしたね。あとは“超合金あなた”もおもしろいアイテムですね。

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 それらのように、出オチ系のアイテムもありますね(笑)。“超合金あなた”は、もうちょっとカッコいい名前にしようかとも思ったのですが、「あなたと言っているので、あなたしかないな」とこの名前になりました。

――トークマターにもつながるような仕組みも用意されていて、連係する遊びも見られました。アイテムと物語をからめて伏線を回収していく流れは、随所に仕込まれていましたね。

 『シェルノサージュ』もそうですが、伏線の回収はリストを作って、取り逃さないようにしています。ゲームにもよるのですが、本作を楽しんでくれる人は、そういうところをかなり気にする人が多いと思っています。最終的につながるところにカタルシスを感じてくださる方が多いのに、伏線を投げっぱなしだとガッカリされてしまうじゃないですか? 作ったからには最後までにまとめることは、しっかり気を使っています。

■“原初のオルゴール”やアルシエルとのつながりについて改めて解説

――今回の『アルノサージュ』は土屋ワールドの集大成となっていましたが、ここから世界としては『アルトネリコ』につながります。“祖”ではないとしても交わった以上、『アルトネリコ』にも影響があると思うのですが、その間の話は描かれるのでしょうか?

“サージュ・コンチェルト”インタビュー

 今まで縦の棒だった『アルトネリコ』シリーズに“サージュ・コンチェルト”シリーズが加わることで、梯子型になりました。“サージュ・コンチェルト”では新しいラシェーラができて、それはそれで何かが起こる仕組みになっています。ワームホールは一度閉じましたが、“原初のオルゴール”はいまだにエネルギーを吸い続けているので、人が行き来できなくなってもつながっているんですね。

 もうちょっと説明すると、もともとアルシエルとラシェーラの間ではエネルギーが行き来しており、“Class::DISTLLISTA;”ディストリスタで人が通れるサイズの穴を開けていた。その座標が新生ラシェーラの中心に戻り、アルシエルに行けなくなっただけで、両者の魂の奥はつながっている状態。なので、「まったくさよなら」ということはないですよね。

――片方は詩魔法として成り立っていたけど、もう片方ではヒュムノスとして詩っている。言い方こそ違えど、本質こそ近いものがあるわけですね。“原初のオルゴール”についてお聞きしたいのですが、ホワイトホールでつながっているとされていた先は、新生ラシェーラで間違いないでしょうか?

 それ以外に、言いようがないです。“アルシエル・テクニカルデータ編纂室”に書いた時点では「うまく説明できませんが、ホワイトホールということは、吸い込み口があるんですよね」とお茶をにごしていましたが、構想はほぼ変わっていません。その裏側を見せた形になります。

 “原初のオルゴール”の音の波動は、物理的なワームホールではなくて、空間がつながっていて、エネルギーが行き来しているものを、受信機のように誘導して拾えるようにしたイメージ。エネルギーは物理的な座標があるわけではなく、物質ほど明確なスケールがない。あの空間に存在しているものと、ラシェーラに存在している部分でつながっている以上、距離的にはほぼゼロなんですね。エネルギー的にほぼゼロの部分で、矛盾している状態……説明しにくいですね。

――お手数をおかけします。

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 ある空間からエネルギーを取ると、周りから減るんですね。でも、“原初のオルゴール”はその場所ではなくて、向こうにつながっているところからエネルギーを取っているので、いくら取っても周りのエネルギーは減らないんですね。だからこそ無限機関になっている。どこからエネルギーを吸い取るかが、詩の効力に入っているのは、偶然なのか、意図したものなのか……ともあれ、ワームホールの部分からエネルギーを取ってこられるようになってしまったのです。

――なるほど。

 数学的に話すと、虚数座標をエネルギー修得ポイントにしているという感じですね。虚数平面は、この実空間上に存在しないけど、そこにあるアドレスなんですね。“原初のオルゴール”がエネルギーを持ってきているのは“3+2i、4+5i”という場所です。

 穴としては小さいのですが、概念的にはラシェーラがある空間面と、アルシエルのある空間面が表裏状態になっていると言えばいいのでしょうか? そのために、距離に関係なくエネルギーをやりとりできます。あとの問題は、その距離を示す詩魔法を作れるかだけかになります。

――以前に土屋さんが作られた『アルトネリコ』とのつながりが描かれ、テル族の起源も判明しました。『アルトネリコ』の制作時点で、この構想はあったのでしょうか?

 『シェルノサージュ』をすべて作れるほどはありませんでしたが、近いものはできていました。それもあったので、テル族についてはずっとミステリアスなままでいました。ファンの方ならご存知だと思うのですが、『アルトネリコ』シリーズでは“テル族”と“原初のオルゴール”以外のものはほとんど明かしていますが、その2つについては『アルトネリコ』3部作では出すつもりがありませんでした。伏線として取っておく、という言い方にはできないので、当時は「そういうものが説明できない存在がいてもいいのでは?」とごまかしていましたが。

“サージュ・コンチェルト”インタビュー
▲『シェルノサージュ』のマイクロクエーサーの画像。

――『シェルノサージュ』のマイクロクエーサーでユーザーが協力して送ったエネルギーを、『アルノサージュ』EXボスの“母■■■”戦でユーザーが協力して削るという、循環機関のような仕組みも本作を語るうえで欠かせないと思います。こちらの導入経緯について説明していただけますか?

 結果的に受け入れてもらっているのですが……正直な話、実装の直前まで悩みました。設定上はこの仕組みしかないのですが、ゲームシステムとして考えると「何、それ?」ととらえられてしまうので。

――まさに“賽の河原”ですよね。一方で積み上げているものを、もう一方で崩しているという。

 そうですね。世界観的にはこれ以外ないのですが、受け入れられない可能性も覚悟していました。必死に考えたのですが、設定を崩さずにマイクロクエーサーを両側で平和利用する方法が、これ以外に思い付かなかったんです。

――マイクロクエーサーにエネルギーを送れば送るほど、『アルノサージュ』で削らないとという焦りや、自分がしてきた罪の意識を感じますね。

 イオンのためにやってきたはずが、実際はその外側のプログラムのためだったわけです。ただ、そのエネルギーの為にシャールが実体化できていたわけで、あながちイオンにとっては悪いことではなかったのです。『シェルノサージュ』の“あなた”はバーコードでシャールを設計し、マイクロクエーサー送信でシャールの製造をしていた、ということになります。真の“シャールの生みの親”というわけですね。こういった状況を理解してくれていたのか、怒る方は思っていたほどは多くなかったです。

――ショッキングな内容なので、反発も大きいだろうという心配があったのかもしれませんね。

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▲物語にも深くかかわってくる、『アルノサージュ』の“母■■■”。

 批判されるのは、覚悟のうえで出しています。ぶっちゃけてしまうと、ディスクを割る人が出ても仕方ないと思っていたほどです。それはそこまで感情移入して遊んでくれた結果なので、しっかりと受けとめようという覚悟はできていました。

 開発中には、何度も「これはやばいんじゃないか?」と思いましたし、何度も「システム上で変更できないのか?」と考えました。ただ、最終的にこれ以外はないという結論に至っています。

■マイクロクエーサーの仕組みやユーザーからの質問への回答を掲載

――ユーザーが気になっているネタについて、お聞かせください。まず、『シェルノサージュ』でマイクロクエーサーに送るエネルギーと『アルノサージュ』側のマイクロクエーサーのエネルギーの関係はどうなるのでしょうか?

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 母■■■とのバトルで、『シェルノサージュ』側のマイクロクエーサーが減り始めていますが、減っても次の特典までのノルマは減りません。送った通算は別に計算されていて、特典用のゲージは伸びているので安心してください。

 『シェルノサージュ』と『アルノサージュ』を遊ばれている人で、「ボスを削らないとダメだが、特典をあきらめるか、あえて送るのか」と選択している人もいますが、それは大丈夫です。どちらも遠慮しないでください(笑)。

――今後『シェルノサージュ』でアイテムが増えた際に、『アルノサージュ』でも使えるようになるといった連動もあるのでしょうか?

 連動します。最後のプラグインまで考えてあるので、ぜひ楽しんでください。

“サージュ・コンチェルト”インタビュー

――本作の開発、シナリオの執筆などをする際に参考にした作品があれば教えてください。

 直近で、というのはあまりありませんが、原点という意味では、皆さんご存知の『天空の城ラピュタ』『攻殻機動隊』から、海外ドラマの『フリンジ』『チャック』などは、いろいろと参考にしています。ギャグパートは私のバイブルとも言える『魔法陣グルグル』の影響が大きいと思いますね。人間関係は『CLANNAD(クラナド)』、物語構成の仕掛けは『Ever17 -the out of infinity-』が挙げられます。

――“くすりすく”などの踊りは土屋さんが実演したのでしょうか?

 あれは、モデル&モーションを制作していただいたフライトユニットさんの、優秀な振り付け師さんの腕前です。私はまた踊りに行かなければならないかと思っていましたが、先に素晴らしい踊りが上がってきてしまいました。社員の2名がこの踊りを見た瞬間に、サーリに転びました(笑)。

――自分で工作をしてみたいので、“TxBIOS”やプラグインのおおよその大きさが知りたいです。いくつか教えていただけませんか?

 基本的には手のひらサイズですよ。武器とかにカセットのようにガチャンとセットするものですので。真空管的な形をしていたり基板の形をしていますが、そのままイメージ通りです。マザボほど大きくはありません。グラボくらいでしょうか。

――ダウンロードコンテンツ(DLC)によるコスチュームチェンジはないのでしょうか?

 DLCかどうかはわかりませんが、ないとは言い切れません。今後のリリース情報をお楽しみに。

――公式の七次元通信が終わってしまったのでそれに代わる投稿企画はできないのでしょうか? ファン交流の場は必要だと思うのですが。

 要望が多ければ復活もあり得ますよ! ぜひ要望を送ってください!

――“サージュ・コンチェルト”の今後は、どのような展開があるのでしょうか?

 皆さんがもっとも共感できる人の精神世界が追加されます。

 あと、1日1回しか戦えない母■■■ですが、5月4日までの期間限定で1日10回戦える“フルボッコキャンペーン”を実施しています。あわせて、“オーバーキル”の仕方について、公式の謎文章を出しています。「オーバーキルはできないように作ってあるけど、バグでできているのでは?」という意見もあるようですが、あえてそういう仕様にしています。法則のヒントを見て、大ダメージを叩き込んでください。

――生放送も考えているとお聞きしました。

 そうですね。生放送についてはやりたいと思っています。発売前から、終わった後に皆さんと対談したいと話していたので!

 他のキャラとの禊ぎパックを渇望する声も聞こえているので、こちらは検討させてください。

“サージュ・コンチェルト”インタビュー

――現在、調合ダンスは特定のキャラが踊りますが、こちらを自由に変更できるようにすることは難しいのでしょうか? そもそも曲を歌っている必要がありますが。

 なるほど(笑)。ここで即答はできないのですが、持ち帰って検討するという答えでいいでしょうか?

――お願いします。では最後に、記事を読んでいる読者へメッセージをお願いします。

 “サージュ・コンチェルト”としては、『シェルノサージュ』がこれから完結に向かっていき、世界がつながります。すごく熱心にプレイしていただいている方には、まだ見えていない歴史の部分があって、そこが気になると思います。最終的には、そこを含めてすべてが解決するようなところまで持っていくつもりなので、長い目で見ていてください。

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(C)GUST CO.,LTD. 2010 (C)2010 NBGI

データ

▼『アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~』ダウンロード版
■メーカー:ガスト
■対応機種:PS3
■ジャンル:RPG
■発売日:2014年3月6日
■価格:6,000円+税
▼『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~(PlayStation Vita the Best)』ダウンロード版
■メーカー:ガスト
■対応機種:PS Vita
■ジャンル:その他
■発売日:2013年10月10日
■価格:3,048円+税

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