2014年5月15日(木)
アニメ版『アイマス』錦織監督独占インタビュー! 劇場版BD/DVD発売決定の今だから話せた制作裏話や劇中での演出意図
アニプレックスは、BD/DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』を10月8日に発売する。商品形態は、『「シャイニーフェスタ」アニメBlu-ray同梱版(完全生産限定版)』(11,000円+税)、BD/DVD『完全生産限定版』(10,000円+税/9,000円+税)、DVD『通常版』(6,000円+税)の4種類。
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本品は、1月より全国の劇場にて上映された同名の劇場用アニメ作品を収録したもの。本編Discにはその他、CM&トレーラー集、オーディオコメンタリー(キャスト版/スタッフ版)も収録されている。また『完全生産限定版』には、舞台あいさつのドキュメントやキャストによる座談会を収録したDVD、音楽CD“PERFECT IDOL THE MOVIE”、2種類の冊子が同梱されている。
さらに『「シャイニーフェスタ」アニメBlu-ray同梱版(完全生産限定版)』には、PSP/iOS用ゲーム『アイドルマスター シャイニーフェスタ』に用いられたオリジナルアニメエピソード全3話を収録したBDも同梱される。
■BD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ! 「シャイニーフェスタ」アニメBlu-ray同梱版(完全生産限定版)』概要
【仕様】4枚組(本編Disc+特典Disc3枚)、特製本2冊
【価格】11,000円+税
【品番】ANZX-11501
【Disc収録内容】
Disc1:本編Disc
・映画本編
・CM&トレーラー集
・オーディオコメンタリー(キャスト版/スタッフ版)
Disc2:特典BD(PSP/iOS用ゲーム『アイドルマスター シャイニーフェスタ』アニメエピソード全3話)
・『ハニーサウンド -Music in the world-』
・『ファンキーノート -Music is a friend-』
・『グルーヴィーチューン -Music of love-』
Disc3:特典DVD
・舞台あいさつドキュメント映像
・キャスト&スタッフによるアイマス史を振り返る座談会
Disc4:特典CD“PERFECT IDOL THE MOVIE”
・『M@STERPIECE』新録リアレンジVer.
・『虹色ミラクル』新録リアレンジVer.
・『ラムネ色 青春』新録リアレンジVer.
・録り下ろしCDドラマ(本編では描かれなかったアリーナLIVEのアンコールパートドラマ)
【限定版特典】
錦織敦史描き下ろし特製BOX仕様(B5サイズ)
錦織敦史描き下ろしジャケット
錦織敦史&A-1 Pictures完全編集豪華ムック本(B5サイズ)
・錦織監督とA-1 Picturesによる完全編集。
・劇場版の新規設定や絵コンテなどの資料を大量掲載。
・誌上コメンタリー形式による監督自身による各シーンの解説、各スタッフへのインタビューなどを掲載。
・TVシリーズ終了後に制作されたスタッフ本『OGI☆STAR MEMORIES』の第2弾を完全新作描き下ろしで同時掲載。
ビジュアルコレクションBOOK(B5サイズ)
・劇場版やTVシリーズ、『アイドルマスター シャイニーフェスタ』などで描かれたアニメイラストから、これまでのイラスト集に未掲載のものを中心にセレクトして掲載。
■BD/DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!(完全生産限定版)』
【仕様】3枚組(本編Disc+特典Disc2枚)、特製本2冊
【価格】BD:10,000円+税/DVD:9,000円+税
【品番】BD:ANZX-11505/DVD:ANZB-11501
【Disc収録内容】
Disc1:本編Disc
Disc2:特典DVD
Disc3:特典CD“PERFECT IDOL THE MOVIE”
【限定版特典】
錦織敦史描き下ろし特製BOX仕様(B5サイズ)
錦織敦史描き下ろしジャケット
錦織敦史&A-1 Pictures完全編集豪華ムック本(B5サイズ)
ビジュアルコレクションBOOK(B5サイズ)
■DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!(通常版)』
【仕様】1枚組
【価格】6,000円+税
【品番】ANSB-11501
【Disc収録内容】
Disc1:本編Disc
※仕様は予告なく変更となる場合がある。
本日5月15日、BD/DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』の購入予約と、PS3用ソフト『アイドルマスター ワンフォーオール』の発売が開始された。この新たな『アイマス』が始まる日を記念して、TVアニメ版&劇場アニメ版『アイドルマスター』の監督・錦織敦史氏と、アニプレックスのプロデューサー・鳥羽洋典氏を迎え、インタビューを行った。
インタビューでは、アニメシリーズを総括し、キャラクターの心情や演出を中心に、錦織監督が劇場版アイドルマスターに込めた想いを語っていただいた。なお、劇場版のネタバレ要素が多く含まれるので、未見の方は注意してほしい。
●錦織敦史監督プロフィール
日本のアニメ監督・演出家・アニメーター。代表作に『天元突破グレンラガン』、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト 』、『アイドルマスター』、『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』などがある。2011年の『アイドルマスター』で初めて監督を務め、著名アニメ情報誌の2012年度アワードにて、監督賞、キャラクターデザイン賞を受賞した。
■アニメシリーズ『アイドルマスター』監督・錦織敦史氏インタビュー
●短編のOVA企画がいつのまにか劇場版に
――劇場版の話が持ち出て来たのはいつぐらいのタイミングだったのでしょうか? 発表自体は2013年2月、幕張で行われたライブでの告知でした。
錦織監督(以下、錦織):時期はけっこうボンヤリしていて、『シャイニーフェスタ』の作業が終了したあたりの2012年の秋ぐらいかな? 『シャイニーフェスタ』が終わったあたりに「新しいアニメの話が来そう」だと、アニプレックスの鳥羽さんから伺っていました。そのときの話ではまだ劇場版ではなくて「OVA的な中編を1本作ってくれないか?」というお話でした。
――『シャイニーフェスタ』の時は、TVアニメ最終話付近の繁忙期に依頼が来て非常に大変だったというお話でした。
錦織:今回もやっぱり終盤の忙しい時期に来ました(笑)。石原さん(石原章弘氏、バンダイナムコゲームス アイドルマスタープロジェクト総合ディレクター)は、僕が作業中の仕事を終えないと次の仕事を引き受けないことを理解しているので、そのままキレイにオーバーラップできるようにお話がきましたね。
鳥羽プロデューサー(以下、鳥羽):私のほうからは2012年の横浜アリーナの7周年ライブの前あたりからOVA的な新作アニメの話はしていたのですが、正式に錦織監督と一緒に決めたのが2012年の秋という感じでした。
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――劇場版の脚本は錦織敦史監督と髙橋龍也氏が務めています。テレビ版から引き続きのストーリーであることは最初から想定していたものでしょうか。
錦織:TVの時からプロットも書いていたので、「じゃあ1本きりだし、脚本も自分で書いてみましょうか」と1人でやるつもりでした。でも、だんだん尺が伸びてきて規模が大きくなり、これは1人じゃ手がまわらないなと(笑)。前半の合宿パートあたりは誰かに割り振れそうだと考え、内容的にも髙橋さん向きとなったので、お願いしました。
――元々のOVAという構想から劇場版へシフトしたのは?
錦織:当初は60分前後のOVAの製作を考えてました。でも、色々なアイデアや要素を盛り込んだら伸びていった感じですね。僕のほうでも「単館上映して皆でイベントっぽく楽しめたらいいね」という話をしていたのですが、それがいつのまにか「普通の劇場版にしませんか?」ということになってしまった(笑)。せっかく作るなら単館といわず、少数館でもいいから全国の劇場で楽しめるイベントになればいいなと、そのつもりで劇場版化をOKしたのですが……。どんどん本格的なボリュームになってきて「困ったな、こんなはずではなかった」と(笑)。劇場版にシフトしたことで、これまで組んでいたスケジュールや内容、“劇場版”という看板が付いたことによる折り合いの付けかた、落とし込みへの戦いが始まった感じです。
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●劇場版はTVアニメの延長で“一歩進んだもの”
――TVアニメ版放送開始時は「群像劇としてキャラ全員に光があたるように」という方針を取られていました。劇場版の構成で心がけされた部分はどのような点ですか。
錦織:基本はTVアニメ版の延長なので、TVアニメ版と全然違うことを言ったり、もしくはまったく同じことをやったりしても仕方ない。そこで今回は、群像劇という描き方は変わらないのですが、今度はそこから進んで、一人ひとりが“いちアイドル”として成長しているのがわかる構図になるように心がけました。
TVアニメの最後は“765プロである”ということに対してのお話でまとまりした。そこからもう一歩成長して欲しい。でも大きく成長しすぎてTVアニメを見てきた皆さんの感覚からズレてしまうのも嫌だった。劇場版はTVアニメに対して一歩なり半歩なり進んで見えるといいな。それも個人個人が自分の意志として踏み出せる作品になればいいなと。
実は、僕は劇場版で何を描いていいかわからず最初は渋っていたんですよ。TVの5話のようなみんなでワイワイするだけの話ならなんとか……くらいの消極的な感じだったかも。でも石原さんのほうから「ドラマがほしい」ということと、「群像の中でもどのキャラかにスポットが当たる話にしたい」ということを話されて。ちょっと迷ってしまったんですよ。一歩先のことがイメージできなくて。そんな中、「『ミリオンライブ!』組を入れませんか?」とお話を頂いて。結構ビックリしたんですが……自分でもとても新鮮に感じて。後輩のダンサー組と先輩としての765プロ、その構図を通してならTVアニメから進んだことができるかもしれないと自分の中で思えました。
――アイドルの成長を軸にしたテーマをTV版の続きから描くというのは、脚本当初から考えていたプロットでしょうか?
錦織:そうですね。TVアニメからパラレルとしてキャラクター設定等をイチから始めることも可能ではあったのですが、愛着を持って作ったドラマをリセットして、キャラクターをまた新しく作るまでには戻れないという感覚がありました。だったらTVアニメで作ったものに責任を持ち、その次の作品を見てもらおうと考えました。TVアニメはなかったことにして「また違う765プロのお話を見てください」と言うことはできなかったんですね。
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――『ミリオンライブ!』から参加したメンバーの人選について。どういう経緯でバックダンサーの7人を選ばれたのでしょうか?
錦織:劇場版はあくまで765プロのお話なので、バックダンサー陣は個々のキャラ立ちより“塊”に見えて欲しかったんです。バックダンサーが3人でも4人でもお話は作れたのかもしれませんが、そうすると今度は個々のキャラが立ちすぎてしまい“先輩・後輩”の構図になり辛いかなと。バックダンサーは後輩集団として認識できる人数、ライブパート等で踊った時のバランスやヴィジュアルを考慮してあの7人にしました。
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錦織:ただ、765プロのメンバーと合わせると20人近くになってしまい、描いていて「これは増やしすぎたな、5人でも良かったかな」と途中で思ったこともありました。でも7人で行くと自分で決めたことなので(笑)。結果的に7人にしてよかったです。
鳥羽:多数いる『ミリオンライブ!』のキャラから今回の7人を選んだ基準としては“年齢感”もありました。春香たちよりあまりにも年齢が離れている子は避けようとか、そういう部分を考慮してバックダンサーの7人を決定しました。
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――TVアニメ版からの続きということで、765プロのアイドルは最初から成長した状態で登場していました。バックダンサーたちの反応をみても、劇中で765プロは既にトップアイドルになっていると考えていいのでしょうか。
錦織:バックダンサー組から見た765プロのアイドルは、もうトッププロ。憧れの存在であり、自分たちもその位置に到達したい存在です。映画を見ている人たちにも、冒頭の『眠り姫』から続くオープニングや美希のハリウッド行きの話から「お、765プロ成長したな。ランクアップしたな」と思ってもらえるように心がけました。
その一方で内側から見た765プロの中身は今までと変わらないと言うか、等身大であり、まだまだだなぁと。映画を見終わった後で「765プロはトップアイドルになっても変わっていなかったな」と感じてもらえるように、その対比がうまく出るように作りました。
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●TVアニメとの対比構図をとる先輩・後輩
――劇場版のキーとなるキャラについてお聞きします。春香はリーダーとして選ばれ、最終的に可奈をアイドルに引き戻す役割をします。ですが、途中はリーダーとしてどう動けばいいのか迷いがあるように感じました。劇場版の春香という女の子はどういう子だったのでしょうか。
錦織:今回、春香には新しくリーダーという役職をつけました。そのリーダーという言葉や役割について揺れ惑います。春香自身はTVアニメの最後のほうで自分なりにアイドルとしての答えを出しているので、新しく葛藤を描くのに外側の要素が必要だなとなりました。「リーダーはこうじゃなければいけない」という縛りのようなものですかね。「アイドルとは」「仲間とは」「自分らしさってなんだろう」、そういう葛藤を春香を通して他のメンバーが、『ミリオンライブ!』の子たちが、考えるきっかけになってくれればと思いました。
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――中盤の核となる矢吹可奈は、アイドルに憧れていてスタートラインに立つところまで来たけど諦めようとしている、という子でした。可奈からみて春香は、春香からみて可奈はどういった存在だったのでしょうか。
錦織:可奈からみて春香は憧れの存在であり、春香にとっても憧れや夢に対してはまっすぐな可奈は、自分を見てるようで共感できる存在として描いています。可奈をストーリーの中核に使ったのは春香との対比です。今回の劇場版は、バックダンサー組の中で上手くいかなかった可奈がアイドルを辞めそうになるお話でした。仲間とともにいろんなものを乗り越えてきた春香だから、仲間の大切さや、ちょっとしたすれ違いに気づけたんです。これは裏を返せば“春香に765プロの仲間がいなかったら”という“if”の意味もあります。春香も、もしかしたらバッドエンドに陥っていた可能性があったかもしれない、そういう存在として春香と可奈を並べていきました。
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――北沢志保は正論を押し通す一匹狼のスタイルでした。言葉や行動は厳しいものがありましたが、その反面、緊張で震えてるなど弱い面もあったように見えました。
錦織:志保は憎まれ役に見えてはいますが、ダンサー組の中では理路整然として道理にかなっていることを言う、ある意味いちばん正しいことを言っている人間です。志保自身も新人であるし弱さを抱えている子ですが、その中でも自分を奮い立たせ、先輩に物申したり。
ただ、志保のその考えは経験を伴っていなくて、アリーナに入った時には、1人だけではステージを支えられない、重圧に耐えられない恐怖を覚えます。大事なのは他の人との力であったり、支えあうこと、高め合う仲間ということで、それを765プロから肌感覚として感じてもらう、というのが志保の大きな役割でした。
これはTVアニメ版の千早も少し似たような構図ではあったのですが、劇場版では新人からの構図として追体験してほしい。765プロに触れることによってアイマスの世界観がもつ“765イズム”を表現できるといいなと。それが映画の狙いで、志保はその一端を担ってくれてよく頑張ってくれたと感謝しています。
誤解されやすいキャラだけに、志保が単なる嫌なキャラに見えないようできるだけ気をつかいました。
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――最後に、もう1人だけキーキャラを挙げるとしたら伊織でしょうか。志保に対して理解を示しつつ諌める伊織。志保の気持ちを伊織が受け止めて、伊織が春香を奮い立たせるというシーンがありました。伊織にとって新人や、リーダーとしての春香はどう映っていたのでしょうか。
錦織:伊織は実はそうとうヤキモキしていたかと(笑)。リーダーに春香が選ばれたことも悔しいと思っただろうし、口を出したいこともあっただろうと。それは伊織だけがそう思っていることではなくて、765プロ全員にそれぞれ考え方、見守り方はあるんだと思うんです、カメラを振っていないだけで。春香に厳しい言葉を向けられるのもある種の信頼ですよね。悩んでもちゃんと春香は答えを持ってくると信じてるっていう。 そういう部分で自分が正しいこと思ったことを怖れず言える志保に対して、伊織は共感したんだと思っています。
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●劇場版で印象的だった演出の意図を探る
――合宿最終日にプロデューサーがハリウッドに行くことを告げられますが、春香や美希があまり狼狽しなかった印象を受け、意外に感じました。ここの演出について教えてください。
錦織:何も言わないことによる春香と美希の特殊性というか、言葉にしないことで他の子たちとの対比を出しています。みんなプロデューサーへ対して行ってほしくないという気持ちがあります。他の子はワイワイ言ったり、自分に言い聞かせるような言葉を言うような子が多いなか、春香と美希はそれに対して直接には言葉を発しません。
春香は喫茶店のシーンで「プロデューサーさんもハリウッド行っちゃうのに」とポロッとこぼしたように、何とかプロデューサーを送り出さなきゃ、私がリーダーなんだからとか、そういう自分の使命を全うすることをずっとグルグル迷ってます。そして、合宿所では言葉にならなかったことが、だんだんと自分で考えて想いを固めていくんです。
美希はいかにも騒ぎそうな分、かえってショックが大きかったんだなと思ってもらえれば。「ハリウッドはボンキュッボンがいるんだよ」みたいにフザケつつも、美希なりに考えて、「美希は美希にできることを頑張るから」というセリフにもあるように、美希なりにプロデューサーにしてあげられることを考えていたんだと思います。
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――合宿中に練習してるステップから彼女達が『MUSIC♪』を練習しているのがわかりました。合宿中では、律子を入れて『GO MY WAY!!』を踊りました。そして、ラストの『M@STERPIECE』。これらを含めて劇中で描かれたダンス(ライブ)パートでこだわった点、TVの時から変えた点などがありましたらお教え下さい。
錦織:『GO MY WAY!!』は“今までのアイマス”です。律子を含めて踊っていますし、Xbox 360版を代表する楽曲ですよね。TVアニメでもエンディングで楽曲は流れたのですがダンスはやれなかったので、“今までのアイマス”としてのダンスを入れました。
『M@STERPIECE』は、3DCGを使ったりライブの演出だったりなど“テレビでやれなかったダンス”をやっているパートです。元々の『MUSIC♪』のステージは『シャイニーフェスタ』というパラレルなゲーム内アニメですが、それを繋いで『アイマス』の歴史や広がりを音楽パートで出しています。オープニング曲も『THE IDOLM@STER』ですしね。その時の象徴的な曲をつかってTVアニメ版からの流れと総括、そしてこれからの『アイマス』を表現できれいばいいなと思い配置しました。
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――劇中の雑誌やポスター、中吊り広告で765プロ以外のアイドルの姿が出て来ました。彼ら・彼女らの劇中でのスタンスはどの様なものでしょうか。
錦織:各グループが細かく今どういう状況なのかを描き始めてもキリがなくなるし、中途半端に描いてもそのグループに申し訳ないという気持ちはあって。お話はあくまで765プロ中心のカメラで進んでいくのですが、その世界でもジュピターだったり876プロ、新幹少女も頑張っていて、「各グループのドラマもそちらにカメラを振ればあるんだよ」と。彼らを詳しく説明するほどの情報量は入れられないのですが、ちゃんとアニメから世界がつながっていることは感じてほしくて要所に入れてます。
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――「アイドルやめます」といった可奈。“食べ過ぎて太ったために仲間を避けていた”という演出について。個人的には少し小さな理由だったので驚いたのですが、そうした意図をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?
錦織:単純に「そんな理由だったの?」と思ってほしかったんです。でも、大事なのは太ったことではなくて、可奈や新人ダンサーたちが持っている弱さなんです。「太ってしまったから」という理由にしたのは大げさな理由にして誤魔化したくなかったからです。可奈やダンサー達の弱さを見せるため、「そんな小さなことで?」と思わせたかったんですよ。
傍から見ると「太るなんて自己管理できてないじゃん」と思うところですが、可奈にとっては「自分で頑張らなきゃ」という重圧があり、でも自分は1人だと上手く踊れなくて、プレッシャーで過食してしまう悪循環に陥ります。これはプロのすることではない、つまり“春香”になれなかった可奈の弱さです。同時にそれはダンサーたちの弱さなんです。可奈の悪循環を見落としていたり、練習がイヤで辞めたんじゃないかと見捨ててしまったりという状況に、ダンサー全体での意識の弱さ、結びつきの弱さが現れてるんですよね。
「じゃあ痩せればいいじゃん、また練習できるよ」って思うとこですが、本人にとっては弱いがゆえに大きいことなんですよ。痩せて練習すれば解決できることですが、ここで描きたかったことはそういうことではなく「その弱さに対して自覚できているか」ということです。可奈は自覚できなかったんです。
でも春香だけは可奈の弱さに気付いてあげられた。それが春香であり765プロが培ってきた強さです。春香はリーダーとして正しい判断をしたかどうか解らないけど、自分らしい考えに自信を持てたのは仲間が後ろで支えてくれたからです。それは伊織が最後にいう「支えてあげるわよ」という言葉に出ています。
このシーンはどうしても可奈が太ったビジュアルが強かったので、いろいろ悩んだのですけど……。でも誰もが同情できる悲惨な理由にしてしまうとそれに対するケアと対処の話にすり替わってしまうので、ここはあくまで弱さからくる“些細な理由”にしたかったんです。パート担当の高雄さんもコンテで相当デリケートに描いてくれて、本当に助かりました。
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――エンディング直前の春香のセリフ「誰かひとりでも欠けたら次のステージには行けない」。これはアニメ版25話でプロデューサーが言った言葉とほぼ同じでした。ここで劇場版もアニメ版と同じテーマがあると感じましたが、どうでしょうか?
錦織:言葉は一緒ですがプロデューサーが言うのと、アイドルが実感して発言するのとでは異なりますよね。TVでのプロデューサーの言葉が765プロに浸透していき、やがてまた誰かの糧になっていく。仲間の大切さがわかったからこそまた各々のアイドルとして自分の仕事に向かっていけるんです。劇場版はあくまでもTVアニメから一歩進んだ話なので、つねにTVアニメとの対比として作っていますね。
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――アイドルたちのさまざまなカットが使用されたエピローグですが、監督としてさらに成長した彼女たちへ伝えたい想いや願いなどはありますか?
錦織:エピローグでは、『アイマス』のこれから広がる世界を描けたらなと思いました。ジュピターや876プロをはじめ、『シンデレラガールズ』や『ミリオンライブ!』のキャラクターも登場して、これから新しい芽として伸びてくるかもしれない。「負けてられない。765プロもプロデューサーも。ハリウッドから帰って来てますますパワーアップするぜ!」という感じで。
映画が終わってそこで世界が閉じてしまうのではなく、「アイドルたちは第2・第3のスタートとして、広がった世界で活躍していくんだろうな」、「『アイマス』が持っている可能性がエンディングで広がればいいな」など、そんな願いというか……祈りのようなものがエピローグに込められています。
――アイドルと役者の関係性についてです。『アイマス』はキャラクターに声を当てる役者の想いが大きく反映される事がよくありますが、そこを気にされた事はありますでしょうか?
錦織:皆さんそれぞれ自分のキャラクターへの強い想いを持っているので、可能な限りは汲んで行きたいとは思っています。それが分かる分、自分のキャラクターとのズレがでてないか、納得してやってもらえてるか、とかアフレコの時ははいつも緊張してしまいますね。台詞を聞けばやはり解ってしまうので。
キャラクター面へのフィードバックでは、今までもラジオや役者さんの個性などの表面的なネタは拾っていますが、キャラクターと役者さんを同一視するのはちょっと違うと思っているので、切り離して考えています。でも、ラジオを聞いているとにじみ出るものはありますし、「キャラクターと近くなっていく」と思うことはあります。ただ、意識して盛り込んでいくことは考えてないですね。
――『無尽合体キサラギ』や『眠り姫』も“生っすか”のオマケだけでは勿体ない高クオリティでした。これらがスピンアウトしたOVAを望む声がありますが?
錦織:そう言ってもらえるのはとても嬉しいのですが、あくまでお遊びですからね(笑)。短い尺で頭をカラッポにしておもしろいことだけをやれていたので、あれをまたちゃんとOVAとして作れと言われると……おもしろくないんじゃないかなと(笑)。
ただ、ああいうお遊びは嫌いではないですし、『アイマス』世界はああいうノリも許容してくれるほど懐が深いので、真剣にアニメを作る中で息抜きがあったのは僕にとっても幸せでした。アニメーターたちもイキイキしていましたしね(笑)。
個人的な考えとしては1本30分なりで作るよりかは、色々なシチュエーションの細かいお話をいっぱい描いてみたいですね。音楽PVや映画予告など短いものが好きなので。
鳥羽:ちなみにOVAではないのですが、『無尽合体キサラギ』は『ボイノベ』というモバイル用の小説アプリで配信予定です。是非そちらでお楽しみ頂けると嬉しいです。
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――4月時点で観客動員は約46万人、興行収入は約6億7千万円でした。数字だけでも大ヒット作ですが、39館という上映館数の少なさからすると驚異的な数字です。ここまでのヒットを記録したことについて、どのような感想をお持ちでしょうか?
錦織:正直、こんなに入ってもらえるとは思ってませんでしたね。「○回行きました!」という声を聞くことも多くて。上映時間も2時間となった時点で「これはリピートするのも大変だろうな」と思っていたのですが、プロデューサーの皆さんはモノともしませんでしたね、本当に凄かった。
『アイマス』はみんなで盛り上げていくファン参加型のコンテンツなので、上映期間中のファンの応援が非常にありがたかったです。キャストの方々も忙しいなか相当な数の舞台挨拶やイベントをこなしてくれましたし、宣伝もこれでもかというくらい。ファンやスタッフの熱量がここまで『アイマス』を引っ張ってきたのだなあと、あらためてジーンと来てしまいましたね。
――来場者特典も非常に力が入ってました。途中に追加されて最終的に8週連続プレゼントとなりました。来場者プレゼントについてはどのように決定したのでしょうか。4週目と8週目の色紙について、担当者に各キャラクターが割り振られた経緯についても教えてください。
鳥羽:追加の特典は、原作のバンダイナムコゲームスさんからのご協力や『ミリオンライブ!』組を描いた来場者特典がなかったので、「せっかくダンサーとして参加してくれた子たちの特典も用意してあげたいな」と思い、監督と相談して企画しました。
錦織:特典については基本的に鳥羽さんやアニプレックスにお任せしていてます。毎回、「こういうものを特典にするんだ」と僕も楽しみにしています。4週目の色紙のキャラ分けも、僕が考えるといつも同じような組み合わせになってしまうので、鳥羽さんと相談して決めました。
8週目の色紙に関しては僕の方から志願して、『ミリオンライブ!』の子たちも頑張っていたので1枚だけでもいいから描きたいと入れました。また、『眠り姫』の小冊子も僕からのアイデアでした。基本的に、自分が欲しいと思えるものを特典につけるようにしました。
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●『アイマス ワンフォーオール』で錦織監督は“プロデューサー”に戻る
――インタビュー公開予定の5月15日、家庭用ゲーム『アイドルマスター ワンフォーオール』が発売されます。アニメ版の監督として、今後の『アイマス』の展開で期待したいことは?
錦織:『ワンフォーオール』には劇場版の衣装提供がありますが、アニメスタッフからの関与はありません。なので、いちプロデューサーに戻れるかなと思います(笑)。仕事として自分の関わっていないものだと純粋に楽しめるので幸せですね。
展開で言うと、今はいろんな人のいろんな『アイマス』が見たい感じですね、純粋に。また違う角度からアイマスが見てみたいです。もちろん公式のゲームの展開が一番楽しみにしてるところではあるのですが。
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――錦織敦史監督について。監督はご自身もゲームやライブを楽しむプロデューサーですが、最近のプロデュース業はいかがでしょうか?
錦織:やぁ~、甘々ですね……。アニメに関連する『アイマス』だと、プロデューサーとしてよりも“お仕事モード”になっちゃうので。『アイマス』的に本業と副業が一緒というか……(笑)。なので『ワンフォーオール』はいちプロデューサーとして出直しです、野生を取り戻さないと(笑)。 ライブでサイリウムを振ってても。今やもうスタッフも立派なプロデューサーとなってきたので……ライバルがいっぱいです。
――初めて劇場作品を監督して、感じたTVアニメとの違い、難しさはありましたか?
錦織:劇場版の監督はもちろん初めてなので、どうなれば映画になるのかとか、どこまでやれば映画になるんだろうといった「劇場版アニメとはこうあるべきだ」という部分ですごく悩みました。映画っぽくなるには、このシーンにコレを入れなきゃいけないかな……みたいな、そういう考えで最初はやっていました。でも、“こうあるべき”というものではなくて、2時間を使って“自分がどうしたいのか”をキッチリと作ろうとしたのが今回の映画です。ちゃんとした映画になっていたかどうかは今でもよくわからないのですが、2時間の中で自分がやりたかったことは伝えられたかなと思っています。
また、映画だとお客さんの反応が見えるし、みんなと一緒にスクリーンで見るというイベント性というか、お祭り感があってすごく楽しかったです。いろいろ大変でしたが、映画にしてよかったです。
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●BD/DVDは今すぐポチらずにいられない豪華なメモリアル仕様
――BD/DVDの限定版は4枚組(本編ディスク1枚+特典ディスク3枚)に本が2冊という大ボリュームです。製品の詳細について教えてください。
鳥羽:パッケージがデカイです! 特典のムック本とビジュアルBOOKがB5サイズなので、外箱もそれが入る大きさとなっています。そこに、2冊の本、4枚のディスクが入った“メモリアル仕様”となっています。錦織監督には外箱、ディスクを収納するデジケース、ムック本表紙へのイラストをお願いしています。
錦織:ムック本ではイラストのほか監修、編集も行います。現場の熱や空気感が伝わる本にしたいと思ってます。
鳥羽:特典のムック本の内容ですが、TVアニメの際に発売したムック本『BACKSTAGE M@STER』や、その特装版に掲載したスタッフ本『OGI☆STAR MEMORIES』の2点から、コンセプトを引き継いで劇場版に当てはめたものとなります。ですので、“ムック本+スタッフ本”という形になっています。
特典CDには、劇中で使用した『M@STERPIECE』『虹色ミラクル』『ラムネ色 青春』の新録リアレンジ版に加えて、通常なら新曲が入る部分に“今しかできないこと”としてボイスドラマを追加しています。そのドラマは、“アリーナLIVEのアンコールパート”です。“劇場版本編で描かれなかったことを描こう”というコンセプトで書かれています。劇場版のラストで行ったアリーナライブは、当然アンコールが行われたはずです。「じゃあドラマCDという形でアンコールを再現してみよう」という内容となっていて、実際のコンサートと同じようにMCや掛け合いも入れていきたいと思っています。
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――BD/DVDでは映像のリテイク(修正)なども行っているのでしょうか?
錦織:直せる限りはできるだけ直そうと(苦笑)。制作期間上、至らない部分が多かったので、可能な限りなんとか期待に応えられるようにと頑張っています。
――BD/DVDでお客さんにアピールしたいこと、ぜひここは注目して見てほしいという部分はありますか?
錦織:繰り返し見ることで「こういう絵があったんだ」という絵的に気づく部分や、キャラクターやセリフの印象の変化が変わってくる部分があるかもしれません。あとはリテイクした部分に気付いてもらえるといいですね。劇中のプロデューサーの言葉ではありませんが、10年後に見返したときに違った見えかたができるといいなと。それは自分でも楽しみにしています。
――最後に、長い間『アイマス』に関わっていらっしゃいますが、今の気持ちをお聞かせ下さい。
錦織:TVアニメから始まり劇場版まで長々と関わってきて、本当に『アイマス』とキャラクターが好きだったので幸せな時間でした。大変な作業ばかりでしたが、スタッフもファンも愛にあふれていて、前向きに『アイマス』と向き合っていられました。これからも、そういう人たちに支えられながら、ずっと『アイマス』が続いてほしいと思っています。本当にありがとうございました!
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(C) BNGI/PROJECT iM@S
データ
- ▼BD/DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ! 「シャイニーフェスタ」アニメBlu-ray同梱版(完全生産限定版)』
- ■メーカー:アニプレックス
- ■品番:ANZX-11501
- ■発売日:2014年10月8日
- ■価格:11,000円+税
- ▼BD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!(完全生産限定版)』
- ■メーカー:アニプレックス
- ■品番:ANZX-11505
- ■発売日:2014年10月8日
- ■価格:10,000円+税
- ▼DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!(完全生産限定版)』
- ■メーカー:アニプレックス
- ■品番:ANZB-11501
- ■発売日:2014年10月8日
- ■価格:9,000円+税
- ▼DVD『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!(通常版)』
- ■メーカー:アニプレックス
- ■品番:ANSB-11501
- ■発売日:2014年10月8日
- ■価格:6,000円+税