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2014年8月13日(水)

『閃乱カグラ』のイラストにスクエニのレーティングアドバイザーが動いた!? 『拡散性ミリオンアーサー』安藤P×『閃乱カグラ』高木Pの胸躍る対談

文:マスクド・イマイチ

 スクウェア・エニックスがiOS/Android/PS Vitaでサービス展開している『拡散性ミリオンアーサー』。このPS Vita版において、『デカ盛り 閃乱カグラ』とのコラボイベントが8月3日より開催されている。『閃乱カグラ』シリーズとのコラボは、昨年夏に行われた『閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-』に続いて2度目となる。

 『デカ盛り 閃乱カグラ』はPS Vita用ダウンロードタイトルとして販売され、そのお色気とそれを超える奇抜な演出で注目を集めた。8月7日には3DS用ソフト『閃乱カグラ2 -真紅-』が発売。今、ゲーム業界を盛り上げている注目すべきアツいシリーズということで『ミリオンアーサー』との2度目のコラボが実現した。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
▲左から古川雄樹氏、高木謙一郎氏、安藤武博氏。

 このコラボ企画を記念して、スクウェア・エニックスの安藤武博プロデューサー、PS Vita版『ミリオンアーサー』の古川雄樹プロデューサー、そしてマーベラスからは『閃乱カグラ』シリーズの高木謙一郎プロデューサーの3者による対談が実現。前回のアークシステムワークス・森利道プロデューサーとの対談に続き、今回も安藤氏や古川氏から高木氏に時に鋭く時にゆるく質問が飛び交った。というわけで、前回同様にフリーダムな3者対談をお届けしていく(※インタビュー中は敬称略)。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』 『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
▲対談の前にコラボイベントをチェックする高木プロデューサーから、「これは、なんで“チェリー”を集めるんですかね(笑)」という質問が飛び出していた。
『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』 『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』 『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
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『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
▲8月7日に発売された『閃乱カグラ2 -真紅-』の限定版“にゅうにゅうDXパック”の特典であるフィギュアを組み立てる高木氏や安藤氏。

■場外乱闘ができる者同士の対談がスタート

古川:今回のPS Vita版『拡散性ミリオンアーサー』と『デカ盛り 閃乱カグラ』のコラボレーションイベントでは、強敵戦のレイドバトルの音楽も差し替えて『閃乱カグラ』から使わせていただきました。また『閃乱カグラ』のキャラクターや声優さんのボイスも数多く使わせていただき、それらのカードを複数枚デッキに入れることでコンボ“デカ盛り”が発動するなど、すごいことになる感じで仕上がっております。

安藤:今までのコラボと比べても、ハマり具合がすごいよね。『ミリオンアーサー』は基本的に戦闘に入ったら見ているだけのゲームなんですが、今回の『閃乱カグラ』コラボは見ているだけでも相当楽しいと思いますよ。

高木:確かにレイドを見ているだけで、こんなに気分が盛り上がったのは僕も初めてですね(笑)。

安藤:それはやっぱり“キャラクターの力”ありきだと思います。普段と本当に雰囲気が違う。音楽も夏っぽくていい感じ。

安藤:『ミリオンアーサー』と『閃乱カグラ』のコラボは2回目ですが、お目にかかるのは今回が初めてですね。初めまして! 今日はすごく楽しみにしてきました。僕が高木さんに興味を持ったのは『閃乱カグラ』よりも前、『勇者30』からだったんですが、いろいろな雑誌を見ていて、すごいプロデュースワークが攻撃的というか「目立つために仕掛けまくってやろう!」っていうのが伝わってきて。キャラクターデザインに小林智美さんもいれば、コザキユースケさんもいて、音楽では桜庭統さん、古代祐三さん、さらには“THE ALFEE”の高見沢俊彦さんもいたり、とにかくすごかった。

 僕は主にフリーゲームのプロデュースをやっているんですが、どうすれば無料のゲームでお金を取れるバリューを生み出せるのかと考えることが多くて。しかもオリジナルタイトルで、どうやって大きなタイトルに対して目立っていこうかと考えたり。僕がスクウェア・エニックスに入ったのは、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』に負けない新しいゲームを作ってくれ、というミッションを受けてなんです。

 そういった大型タイトルに「どうやって噛みつこうか」とつねに思っているんですけど、高木さんの『勇者30』の1枚の広告から、同じような“かみつき感”のようなものを感じたんです。その後の『閃乱カグラ』を見ても「ああ、噛みついてるなー」って思っていたんですよ。決して体制側ではない、プロレスラーで言うと“場外乱闘ができる人”だなって。僕もそっち側です。革命戦士の頃の長州力のような。今日はそんな、場外乱闘ができる者同士の対談になるのかなと思ってきました。いきなりそんな風に定義付けて……はたしてよいのでしょうか?(笑)

高木:はい、いいと思います(笑)。

古川:本日は“おっぱい”が大きなテーマですので、革命のようなお話になりそうですね(笑)。

安藤:僕は『ケイオスリングス』というRPGで、『閃乱カグラ』のシナリオをやられた北島行徳さんと仕事をさせてもらっていまして。僕が北島さんをいいなと思ったのは、『428~封鎖された渋谷で~』の衝撃もありましたが、元々『忌火起草』とか『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』とか、かなりレベルの高いしっかりとしたシナリオを作られていたからなんです。当然発表されるまで、他社さんからどんな仕事を受けているか北島さんは話してくれないんですけど「おもしろそうなことをやっている雰囲気」があって。何をやっているのかなぁと思ったら、“おっぱいのシナリオ”だったという。あれは、すごいビックリしたなー。でも、『閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-』までしっかり伏線張ってあったりして、さすがだなと思わされました。

古川:北島さんもすごいプロレス好きな人なので、高木さんとシンパシーが合ったのかもしれませんね。今、かみつきの手応えはどうですか? 『閃乱カグラ』が漫画にもアニメにもなってみて。

高木:そうですね……『閃乱カグラ』開発当時、マーベラスエンターテイメント(現マーベラス)はゲームメーカーとしてはまだまだ知名度が低くて、ブランドも環境も大手のメーカーさんに比べると弱かった。「それでも俺は負けないよ!」っていう気持ちはすごくありました。そういう気持ちは今も強いですね。

安藤:なんか『閃乱カグラ』で突き抜けた感じがあったんじゃないかなと思うんです。マーベラスさんは、特にここ数年、いろいろと積極的にチャレンジングなプロデュースをしているなと思っていました。『朧村正』のようなオリジナルタイトルを次々としかけ、どうやったら新規で当たるのか?、そういう試みを何本も並行してやられていた。そしてついに『閃乱カグラ』のおっぱいで「突き抜けたな!」と思うんですよ。

高木:やはりマーベラスは『牧場物語』シリーズが中心にあって、その他がまだ弱いなかで、いろいろな人が新規コンテンツを立ち上げていきました。この数年でやっと、自分の好きなジャンルで1つ芽が出たので、ありがたいと思っています。

安藤:僕自身も作品がヒットして目が覚めるような突き抜け方をしたのは、ここ5年ぐらいの話なんですね。僕と高木さんは世代的には近いですよね。これまでは、なかなか業界に入って、大きなタイトルにかみつけども倒すチャンスがなかったじゃないですか。今はコンシューマゲームがピンチで、モバイル系のアプリが伸びている時期で、マーベラスさんだったらコンシューマでは『閃乱カグラ』があって、アプリは『剣と魔法のログレス』がバーンと伸びていて。バランスの良い勢いがある。僕らがスマホやVitaで『ミリオンアーサー』や『ケイオスリングス』を仕掛けている志とよく似ているなと。

 といかく、どこか突き抜けられるところがないかと壁を叩き続けてて、ついに! しかも! “おっぱい”で! 突き抜けたというのが痛快でした。会社は違っていても、そういう風に狙いを持ってやっている人にシンパシーを感じていて、やってくれたなぁ!って思いましたね。

古川:さっき「好きなもので突き抜けることができた」ってお話しされていましたけど、それってズバリ“おっぱい”ですよね?

高木:“おっぱい”だったり“アクションゲーム”ですね。

古川:“爆乳プロデューサー”を名乗られるようになったのって、『一騎当千』からですよね?

高木:そうですね。『一騎当千』ゲームシリーズ1作目の頃からです。

安藤:高木さんがゲームで“おっぱい”を手掛けたことによって、ゲーム業界全体の“おっぱいの浸透率”が変わってきたと思うんですよ。

一同:“おっぱいの浸透率”!(笑)

安藤:だって今、普通にみんな「爆乳! 爆乳!!」って言うてますけど、“最初”は、はばかられてた時期もありましたよね? 僕もヤンキーのゲーム――いわゆる反社会的なモノを作ったときはそうでした。、最初にやるってことは最初に地雷を踏むことでもあり、一番槍をモノにするチャンスでもあって。とにかく最初にやることは気概がいるものです。その辺り、コンシューマで「おっぱい! おっぱい!!」と言ったり、服が破けたりっていうきわどい表現を取り入れることって、どういった心境でやられていたんですか?怒られてやろうとか、目立つためにはこの1点突破しかない、とか?

高木:メインは「だってこれ、おもしろいじゃん」っていうことですね。自分が「こういうゲームが欲しい!」っていうのが大前提としてありました。その反面、友だちや親に話すのは、ちょっと恥ずかしいな、みたいなのが最初はありましたね。

古川:なるほど。ではご家族の方は、高木さんが爆乳プロデューサーを名乗られたり、おっぱいを中心にお仕事されていることについてなんと……?

高木:今は別に……って、特に反対されたこともないですけどね(笑)。誇りを持ってやっていますし。親の世代になると、ここまでおっぱいが大きい絵を見ても、よくわからないのかもしれませんね(笑)。“胸”としか認識できていないような(笑)。

安藤:『一騎当千』という作品もすごいですよね。『三国志』という歴史物の概念を変えてしまった。関羽が美少女で巨乳でとか、当時なかったじゃないですか。『一騎当千』も『閃乱カグラ』のおっぱいも、一般的にみんなはおっぱいと言いますけど、僕はそんな枠にとらわれないものだと思っています。そもそも実際のおっぱいに、こういうおっぱいはないと僕は思う。僕の人生、それほど“パイ運”がいいほうではなかったので。

一同:“パイ運”!!(爆笑)

安藤:付き合った彼女のおっぱいが大きかった小さかったとかいうのは“運”によるものじゃないですか。それ目当てで付き合うのも、ヤラしいし(笑)。「うわぁ、デカイ」とか「うわぁ、あんまない」っていうのは、“運”かなって思うんですよ。『閃乱カグラ』に出てくるキャラクターみたいなおっぱいには、出会ったことはない。こんなに大きさや、やわらかさが現実にないって意味では、『閃乱カグラ』のおっぱい自体がもはや、おっぱいを超越して、高木さんにとっての“ファンタジー”なんじゃないかな?

高木:はい、そうですね、ファンタジーです(笑)。

安藤:もう幻想なんですよ。「幻乳(げんにゅう)」とでも呼ぶべきでしょうか…。それが高木さんの発明かつ、エンターテイメントになっていて、さらに突き抜けたおもしろさになっていて…。

古川:“幻乳”ってすごい表現ですね……。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』

■高木プロデューサーの“鬼発注”と八重樫さんの“神受注”

安藤:今回のコラボイベント用に、イラストレーターの八重樫南さんに描き下ろしていただいた絵についても感動したことがあります。高木さんが、お世辞にもうまいと言えないラフで“鬼発注”を八重樫さんにする。すると八重樫さんが“神受注”をされて。このラフが……こうなるんですよ!この関係性がすでにエンターテイメントですよね。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』 『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
▲高木氏のセンスあふれるラフ(写真左)が、八重樫氏の手で美しいイラスト(写真右)に!?
『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』 『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
▲コラボイベントでは、八重樫氏が描き下ろしたイラストのカードがゲットできるかも!?

高木:これは、いつも決めて5秒ぐらいで描いています。とにかくあっさり、シンプルに、何を欲しているかを八重樫さんに伝える。

安藤:これを『ミリオンアーサー』のもう1人のプロデューサー・岩野(弘明氏)と見ていた時に、「堀井雄二さんと鳥山明さんのやり方と似ているね」って話したんですよね。

高木:あー! 僕も堀井雄二さんの描いたスライムを見て、すごく勇気づけられたことがありますよ。

安藤:スライムって元々情報量が少ないので、すごく失礼かもしれないんですけど、そのラフがいい感じでアバウトなんですよね。その堀井さんのラフが鳥山さんの手によって、30年愛されるキャラクターになったという。この構造とまったく一緒なんですよ。どうしても露出の高さとかおっぱいのやわらかさとか大きさに目が行くんですけど、これがゲーム作りの持っているおもしろさというか、我々の仕事が皆さんに届けられるまでのワクワクの秘訣かな。

 こういう作り方にこだわってやっているというのは、僕らがRPGを作る時にこういう神話、世界設定に根付いて、こういう文明がある……って作りこんでいるのとまったく同じなんですよね。これがもういいなぁと。

 基本的にゲームをプレイするお客様も、子供の時なんかは特に、高木さんのようなラフ絵であれこれ妄想して「あーなったらいいなぁ」とか考えるわけですよね。そういうことを大人になっても続けていて、ファン目線が常にあるというか。全部を八重樫さんがゼロからやっていたら、『閃乱カグラ』ファンにとっての完全なるファンタジー足り得ないのかもしれない。高木さんが「みんなが求めているのってこういうことじゃないの?」っていうファン代表みたいな立ち位置にいるので、みんなが欲しているものからブレないんでしょうね。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』

高木:実は、パッケージのラフとかもみんな自分で描いているんですよ。イラストに関しては、ほぼすべて。

安藤:個人的に好きなのが『SHINOVI VERSUS』のパッケージなんです。普通のパッケのデザインからすると、すごく寄っているじゃないですか。そもそもPS Vitaって、パッケージが小さめなので、昔のパッケージの大きさに比べるとそこは、さみしいなと思ったんですけど、あの構図を見た時に脳内に大きなインパクトがドーンと入ってきて。

高木:PS Vitaはケースが小さいので、いかに目立つか、色なども含めて考えていて。『SHINOVI VERSUS』のパッケージはすごくハマったなと思っています。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』
▲『SHINOVI VERSUS』のパッケージイラスト。現在、Best版が発売中です!

■『閃乱カグラ』のおっぱいの魅力=「脱げばいいってもんじゃない」

安藤:今回、改めてコラボするにあたって『閃乱カグラ』ってなんだろうって自分なりに考えて、インターネットで下調べをしていたんですよ。それで特徴的だったのが『閃乱カグラ』で画像検索すると、ゲームの画像がちっとも出てこないんですね(笑)。

一同:(笑)。

安藤:もしかしたらゲームをやっていない人は、『閃乱カグラ』が3Dアクションゲームとして進化していっているのを知らずに、「俺はこの子が好きだ」っていう気持ちが先行していっているのかもしれない。それはすごく特徴的で、キャラの魅力がドライブして突き抜けている証拠なんだろうなと。画像検索って、制作者の意図しない順番で出てくるじゃないですか。その1枚1枚すべてに込められている情念のようなものが『閃乱カグラ』は半端ないんですよ。それはやっぱり全部高木さんがコントロールしているからですかね?

高木:そうですね、そこをやらないと。やっぱり絵って一番わかりやすくユーザーに伝わっちゃうところだと思うので。作品の雰囲気を作るという意味では、必ずラフは描きますね。

安藤:当たり前なんですけど、絵を見ているとおっぱいに目が行ってしまう。ずっとおっぱいのことを考えてしまうんです。高木さんのラフが八重樫さんの完成絵になるまで、もう阿吽の呼吸だと思うのですが、おっぱいを高木さんのファンタジーにするために大事にしているところはありますか?

高木:いつも言っていることなんですけど、「脱げばいいってもんじゃない」ってことですかね。何かしらポーズだったりシチュエーション、表情にストーリー性があるべきだと思っていて。その絵を見ていて会話が聞こえてきそうな感じとか。なんでこの2人が、なんで抱き合っているのか――そういうのを自分の脳内にだけでも、ちゃんと落とし込んだうえでラフを描いています。

安藤:確かにカグラの場合、後ろから抱きかかえられて、おっぱいがはみ出しそうっていうだけでもドラマ性がありますよね。

高木:単に脱がしているんじゃなくて、急に来られて、たまたまここに腕が入っちゃって、服がずりあがっちゃってるっていう。

古川:このキャラだったらこう恥ずかしがるかと、こういう反応をするはずだ、とかですよね。『ミリオンアーサー』もキャラクターは最も大事にしているポイントの1つです。

安藤:『ミリオンアーサー』も覚醒すると、いろいろな趣向で脱ぐキャラがいるんですが、カグラを見ているといろいろな脱がし方があるなってシンパシーを感じますね。このラフ絵にも、動きがありますよね。どこからどういう力がかかって、どんな風に脱げたかっていうのがわかる。今回のコラボの絵も、過去・現在・未来っていう流れがあって。覚醒前が過去で、覚醒後が現在だとすると、「この後、大事なところを守れるのか!?」っていう想像力が働きますよね。それがとても楽しい。

 社内のデザイナーである『ケイオスリングス』の直良(有祐氏)や『ファイナルファンタジー タクティクス』の伊藤(龍馬氏)と、パッと立っているキャラクターのイラストでどれだけドラマや物語性を伝えられるかという話をしたことがあります。「キャラクターが椅子に座っているだけでも、こいつはどういう宿命を帯びているのか、このアクセサリはどういう理由で付けているのか、なぜ髪の色がこうなったのか、そこにはドラマ性があるべき。最初にキャラクターの絵がパッと出るので、それで何をどれだけ伝えられるかが大事だ。ただ美男美女を出せばいいってもんじゃない、戦うから剣を背負わせればイイってもんじゃない。すべてに意味があるように描かなきゃいけない」っていう話を聞いて、それはなかなかできることじゃないなと。形は違えど、高木さんの考え方にすごく近いなと思いました。

高木:やっぱり意味や理由がないものはダメなんですよね。それは絵に限らず、ゲームシステムであったり、お話であったり、そこは非常に重要視しています。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』

■高木さんの脳内から『閃乱カグラ』がアウトプットされるまで

安藤:この『閃乱カグラ』というアウトプットに仕上げるのは、高木さんのチームだけしかできないだろうと思うんですけど。同じコンセプト――女の子が戦って、胸が揺れて、衣装がやぶれる……ということを過去に考えた人っていっぱいいたと思うんです。ただ、ここまでのドライブ感が出るまでってどのような感じだったのかなと。出演声優も含めて、『閃乱カグラ』を巡る全体がお祭りになっている気がするんですね。もうここまでノってしまえば勢いは続いていくんでしょうけど、最初高木さん1人の脳みそにしかなかったものを「こういうことをやりたいんだ」って伝えるのって大変だったんじゃないですか?

高木:うーん、1本目に関しては、もう1個1個説明していった感じですね。途中、すごく作り直した時期もあって。ゲーム性含めて「違う! 違う! 違う!」みたいな。

古川:自分の頭にあるイメージをメンバーに伝えるって開発初期のすごく大事なポイントですよね。ここがうまくいかないと後々のトラブルの種になるというか。『閃乱カグラ』の場合はどの辺が伝わりづらかったですか?

高木:わりと世間一般では、『閃乱カグラ』はエロいゲームっていう認識があると思うんです。でも、僕はエロゲーでも超激エロでもない、かといって一般的なゲームでもない。エロと一般のその言葉にできない微妙なライン、これは『一騎当千』から学んだことでもあるんですけど、その線引きと言いますかバランスが伝わりづらかったですね。

古川:以前、セーフとアウトの中間の領域にある“セウト”を狙う、という話をお伺いしたことがあります(笑)。

高木:エロなんだけど、そんなにエロじゃない……そういうところに落としこむのが。『一騎当千』も10年近く愛されている漫画で、ただのエロい漫画だったらこんなに長くは続いていないと思うんです。そこには何か違う魅力があるはずだって。そこはゲーム化を担当させていただいて、すごく感じたんです。いまだに言葉にできないラインではありますね。

安藤:やっぱりそこは感覚的なものなんですね。でも最初にこの企画を聞いた人って、ほとんどが「ああ、エロがやりたいんでしょ」って感じで受け取ったと思うんです。本当にコレって難しくて。企画書の書き方を若いプロデューサーに教えるときに「自分が最初に思いついた企画、お前が今頭に思い浮かべていることが、相手に100%伝わることは100%ないから」って言うんです。よくて5割伝わればいいし、いざ完成しても「ああ、こういうことがお前やりたかったんだ」って言われることぐらいしか伝わらない。最初はなるべくイメージを伝えるのが大事だから、「画像にこだわれ、絵が一番伝わりやすい」って教えています。

古川:一番初期の段階で八重樫さんの絵があると、とても話がスムーズだったと思うんです。八重樫さんは、どのくらいの時期で参画されてきたんですか?

高木:スタートから半年経たないぐらい……ですかね?

安藤:となると、その半年の間はこの高木さんのラフがイメージの大元だったと。八重樫さんを選んだ理由ってシンプルにいうとなんですか?

高木:元々好きだったんですよ。『勇者30』でイラストレーターさんにたくさん協力していただいた時、自分の中でフォルダ分けをしていって。どうしても『勇者30』には合わないという判断で見送っていたんですけど、『閃乱カグラ』を作っている最中にフォルダを見直していて「お、そうだこれだ!」と思い出した感じですね。

安藤:八重樫さんのイラストについて何かシンパシーを感じるところがあったんですか? 絵にドラマ性があるとか……。

高木:動きをつけるのが得意そう、あとは女体がとにかく柔らかそうでした。とにかく柔らかく柔らかくというのは、3Dモデリングの部分から含めてやってきたところなので。あの柔らかさはなかなか他の人のイラストでは出せないだろうなぁって。

安藤:『閃乱カグラ』を遊んでいたり、八重樫さんの絵を見ていると……ぶっちゃけ「乳首がないんじゃないか!?」と思うことがあるんです。さっきも言ったように、やはり“幻乳”なのかなって。これはおっぱいではなくて、この世で最も具合がよくて、柔らかい別の存在なのかなって。ゲームによってはリアリティを追求するものでは「あー、これは乳首あるよな」って描き方もしますよね。『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』を見ていても、「あ、ティファ……!」っていうのはリアリティの追求としてやっているはずで、それがワクワクの要因にもなっているという副次的な効果があったり。

 『閃乱カグラ』の場合、最初からもう乳首がなくて、ぺろっとめくるとなにもなさそう、でも柔らかそうっていう。おっぱいの話をすると、乳首は柔らかくないじゃないですか。だからやわらかさの権化である“幻乳”において乳首って必要ないのかなって。おっぱい好きな人にもいろいろいると思うんですが、『閃乱カグラ』のファンの場合は乳首よりも柔らかさとか大きさとか、アクションシーンで動くとはみ出たりといった部分にワクワクするのかなって感じますね。そういうのってファンの皆さんと直接話す機会って少ないと思うんですが、暗黙の了解として「この世界においてのおっぱいはこうだろう」っていうのができている気がします。それって正にファンタジーですよね。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』

■スクウェア・エニックスのレーティングアドバイザー

安藤:『ミリオンアーサー』に限らずなんですが、スクウェア・エニックスには“レーティングアドバイザー”という頼もしい人たちが存在しまして。「このまま出しちゃうと、皆さんだけでは責任取れなくなりますよ」って、ちゃんと見てくれて「これ危ないよ!」と言ってくれるんです。その方たちに「今回の『ミリオンアーサー』は『閃乱カグラ』コラボです」て言ったら、「とうとうおっぱいが来ましたか!」って(笑)。

 当然、きわどい表現って『ミリオンアーサー』の中でも何度かやっていまして、そういうサポートを専門にしている部門からしても、今回の『閃乱カグラ』コラボはすごくドライブする仕事だったんでしょうね。それはもう真剣に「コレをこうしたら出せませんか?」とか、開発と真面目にやりとりしているのを見ていても、すごくおもしろかったです。実はレーティングアドバイザーってほとんどが女性で、僕らみたいなオッサンと女性で「どうやったらこのおっぱいを出せるのか……」と考えているのは、彼女たちもプロのエンターテイナーだなって。とにかく『閃乱カグラ』の時はテンションが全然違って見えました。

高木:ありがたいお話です(笑)。マーベラスでは基本的にCEROさんに確認していただいていますね。光とか湯気とか、そういうもののサイズ調整とかはよくやります。3Dになっているといろいろな角度から見えるので、この角度からだとアレが見えちゃうからもうちょっと大きくしなきゃとか(笑)。

安藤:レーティングアドバイザーの指摘にクリエイティブで対応するのって本当におもしろくて。この前も『疾走、ヤンキー魂。』の制作中、ヤンキーがボコボコにされたエピソードを回想する時に、“ケツに木の枝がブッスリ!”って刺さっている絵を持ってったら、「日本では問題ないけど、海外で出せないよ」と言われてしまったんですよ。

 その意見を開発に持って行ったら、「あー、じゃあ……」と言って、直して持ってきたのが“ケツの真ん中に顔アイコンが入って隠している”絵で(笑)。ゲーム作りにおいてリテイクって嫌なことですけど、一流の人ってリテイクを嫌がらない。真剣にやっていると、そのリテイクの過程すら楽しくなってきて。『閃乱カグラ』もそういうところあるんじゃないかなって思うんですけど。

高木:とくに倫理系は「もうちょっと隠したほうがいいんじゃないかとか、こういう表現はやめたほうがいいんじゃないか」ってやればやるほど、「ねちっこくエロく」なっていくんですよね(笑)。「これなら最初のシンプルなほうがよかったんじゃないか!?」みたいな。

安藤:あけすけにやったほうが、あっけらかんとしていてスケベじゃないですよね。

古川:開発のビサイドさんにも直前に修正をお願いしたりなど、今回の倫理チェックは確かにいろいろありました(笑)。ただ『ミリオンアーサー』のような配信系タイトルの場合は、仮に問題が発生したとしても後から修正できますけど、『閃乱カグラ』のようなパッケージタイトルだと、一度世に出てしまったら修正がきかないので、何か問題が起こったら配信系タイトルとは比べ物にならないインパクトになってしまいますよね。

高木:だから女体盛りの絵も、最初はフルーツとかが少なかったんですよ。でも、「見えていないにしろ股間が丸出しなんで、何かで隠してくれ」って言われて、「じゃあバナナで……」とかやっていたら余計にエロくなってしまった(笑)。ゲーム中でもクリームだけだったんですけど、「これ肌の露出が多いんじゃないか」って言われて「じゃあチョコかけてみようか」って直したら余計にエロく(笑)。「でも肌面積減ったからOKかな……?」とか。そういうやりとりって、おもしろいですよね。

安藤:それって絶妙な感覚でやっている部分ですよね。適当にやっていると馬脚をあらわしてしまうので、真剣にやらないといけない。『閃乱カグラ』がきちんとエンターテイメントとして成立しているのは、「見せりゃいいじゃん」じゃなくて「このキャラをどうしたら『閃乱カグラ』たらしめられるか」というのを細かく考えているからだと思います。

高木:1作目は3~4万人とかわりと小さなコミュニティで僕らの好きなコンテンツでゲームを作って、僕らのなかで遊びましょうという思いがあったんです。でもありがたいことに予想以上にたくさんの方にプレイしていただけて。1作目が10万本を超えて、もちろんうれしいんですが、、ただ本数増やすためにどうこうではなくて、今後も細かいこだわりや大きいことまでよりやりたいことをやる、という方向で変に気負ったりせずに制作していきたいですね。

古川:マスに迎合せずに己を貫いたということですね。ところで高木さんがおっぱいに目覚めた時期はいつ頃なんでしょうか?

高木:男子たるもの、おっぱいやパンツは好きなんじゃないですかね。某名作アニメを見ながら、「これはノーパンなのでは?」とか想像してしまったり。それが仕事になったということですかね。その成長の途中途中で「エッチなパッケージにだまされて買ったら、ゲームとしては微妙だった……」ということへの“怨念”は未だにありますよ。それが積み重なって今があるというか。エロとバイオレンスがうまく融合するとおいしい、楽しいという感覚はあったので、少しずつその実現に向けて今も動いているという具合ですね。

安藤:それって、ファンが何を欲しがっているのかをどれだけ具体的に想像できるかですよね。1作目が思いのほか売れたっていうのも、みんなが「実はこういうの待ってたんですよ」っていきなり言うわけですよ。でも出す前は「いや、そういうエロいのはちょっと……」っていう人もたくさんいたわけで。そこを高木さんが1人で「でもみんな絶対好きなはずなんだよね」と言いながらやるのは気合のいる男前な作業だなって思います。

 新ジャンルを開拓するのって、すごくリスキーなことですよ。そういうかたちで開かれたジャンルは、最初に切り開いた人が先導して盛り上げ続けるものだと僕は思っていて、便乗と言いうかあとからフォローするのはすごく簡単だと思うんです。最初にやった人が圧倒的にカッコイイ。「王様はハダカだ!」とよくぞ最初に言ってくれた、みたいな痛快さと『閃乱カグラ』の痛快さって通じるところがあるのかなと。

古川:この作品が任天堂ハードで出たことも異例ですよね(笑)。

高木:かなりザワザワしましたね(笑)。

■理想のおっぱいのために戦い続ける漢(おとこ)たち

安藤:高木さんはつねに何かと戦っている感じがあって、そこに一番シンパシーを感じました。前回の対談で森さんとも話したんですけど、ゲーム業界って元々ならずものの業界というか、反社会的な立ち位置から始まっているじゃないですか。ゲーセンは不良の集まる場所だとか、ゲームは頭を悪くするだとか、ゲーム業界に就職すると親親戚一同に心配をされた時期もありました。でも今は、エリートが入るみたいなイメージになりつつあって。だから、最初っから「戦ってやるぞ!」っていう意識が薄れている気がしているんです。これもファンがゲーム業界にワクワクしなくなってきている理由のひとつなのかなと思います。もっとキワドイものを遊びたいとか、そういうワクワクって毒もあるし、清濁併せ呑むところもあったりで。その中で、元々ゲームって誰かがこういうことをやってくれるのを楽しみたかった、というのを『閃乱カグラ』で久々に感じたんですよね。

 『ミリオンアーサー』がヒットしたのもそういうところがあると思うんです。スクウェア・エニックスがソーシャルゲームをやった、というのもあるんですが、ゲーム内での4コママンガでも相当キワドイことをやっていて、あれもおもしろいから命がけでやっているわけです。「これで怒られたら辞めたるわ」とも思っていて。でも、本当にそれで辞めて「あのプロデューサー、ゲーム内の4コマでエロイことやりすぎて辞めさせられたらしいよ」って言われたら、それはそれで本望だなって(笑)。

高木:あー、それはありますね(笑)。そういうおもしろさがやれないと。ただでさえゲームを作って売るのって、普通に作るだけでもすごく大変じゃないですか。

安藤:ゲームづくりというのは、100%すべてのプロジェクトが大変ですよね。少しでもサボっていたら完成しませんからね。明日が締切って言われても、徹夜1日じゃ絶対できませんもんね。僕はバンドもやっているんですが、曲ができていないけどアルバムを明日作らなきゃいけないってなった時、意外とアルバム一枚分できちゃったことがあって。

 ゲームの場合は、あとこれだけフラグ立てなきゃいけなくて、街を3つ作らなきゃいけない、登場人物を20人出して、そのパラメータ調整もしなきゃいけない……けど、あと1週間しかない。そういう時に人を1万人呼べば一晩で完成するかって言ったらできないじゃないですか。そうなったら物理的に半年延びます、ってなっちゃうのは目に見えていて、モノ作りの構造としては強烈にしんどいですよね。だから、世に出ているゲームってしんどいものが積み重なった結果だと思うんです。

高木:棚に並んでいるだけで素晴らしいと思いますよね! ゲーム制作はいろいろな困難があって……棚にすら並ばないゲームだってたくさんあるわけで。

安藤:僕らはそこでプロとして長くやっているから、棚に並んでいるだけですごいって実感はあるんですけど、しかも、その中から目をつぶって1本手にとって遊んでみても大体おもしろいんですよね。しんどい思いして世に出したものだから、だいたい「普通に遊べるじゃん」っていうところまではできている。でも、しんどいはしんどいから、自分たちも楽しみながら作りたいとは思いますね。

高木:せっかく自分の何百何千時間を使うので、やった価値というか意義というか、「高木がやったから」という雰囲気は何か残していきたいですね。

安藤:高木さんがいないと『閃乱カグラ』は『閃乱カグラ』じゃなくなっちゃうんだろうなっていう感じがファンやスタッフにあって、容易に人に渡せないタイトルですよね。揺りかごから墓場までずっと添い遂げないといけないタイトルになっていると思うんです。それが高木さん以外にも当てはまっていて、八重樫さん然り。

高木:そうなった時は、『閃乱カグラ』ではなく、完全に違う作品として作るべきだと言いますよ。

安藤:そういう感じが出てるっていうのは、すべてのキャスティングとか含めて「意味があること」なので、そこもいいなって思いますね。

高木:客観的にそう言われることってなかなかないので、照れますね(笑)。

安藤:最近、こういった対談の仕事が多いので、人の作ったものとか、その人自身のことを客観的に見ることが多くなりました。一度そのゲームを主観で遊んだ後に、客観的に見るっていうことにずいぶんと小慣れてきたというか(苦笑)。それが自分のためにもなるんですよ。

高木:この3、4年、『閃乱カグラ』を中心にずっと走りっぱなしなので、まったく自分では振り返ってないんですよね(苦笑)。

安藤:これは高木さんもあることだと思うんですけど、自分が15年くらい前に作ったものを今見ると、「ほんとにこれ俺作ったのかな?」って思うことありませんか? 「本当に俺という人格が、15年前にこれ作ったの?」って、あんだけ主観的に作ってたのに、わからなくなっているんですよね。

 最近作ったものでも、主観的に「イイ!」って思いながら作っていると、「客観的に見てもイイ! ……のかな?」みたいになる瞬間ってあるじゃないですか。引いてみることがなかなかできなくなっているんだなと。この対談をやっていると、そういう客観的な視点で話が進んでいくので、後半にかけてすごいドライブするというか、盛り上がるんですよ。時間が進むといろいろなことがつまびらかになっていくんですよ。今回も「おっぱいの正体はなんなのか?」みたいなところが見えてきて楽しかったです。

 この対談が決まった時、最初から最後まで「おっぱい! おっぱい!!」みたいな感じを想像されたかもしれませんが、僕は来る前から「おそらくすごい真面目なゾーン」があるだろうなと思ったんですよ。こういう作品って相当命がけで真面目に作っていないとできあがらないものだから。ホント今日はそうなりましたよね。

高木:本当に結構神経をすり減らして作っているものをちゃんと作り上げて、売るためにはどうしたらいいかっていうのがすべて根底にあるかもしれませんね。ふざけて「わーい!」ってやっているように見えても、その「わーい!」には意味があるみたいな。

古川:売るために狙っていくのは、まさにプロデューサーの仕事ですよね。

高木:「売る」と言うと誤解されがちなんんですけど、作ったものをちゃんと多くの人に触れてもらいたい、売れたら次も作れるし、売れないと作れないわけで。現場でも話したりしているんですけど、「売る」という話になると「売るとかじゃないんです!」ってなったりするんですよね。

安藤:なる。生々しすぎて避けられる傾向にありますよね。でも久々に今日はプロデューサーっていうタイプの人と話した気がしているんですけど、プロデューサーってそこを「いやいや俺らは売ってナンボの仕事だから」って言い切る人です。この守銭奴、ゼニゲバって言われても「次を作るためだから」って言えるかどうか。それをできれば感じさせずに、ノリでやっているんだっていう風にできれば理想ですけど、どっかでキチンとソロバン勘定をしていかないと、パッケージも運営モノも、次がなくなっちゃったりサービス中止しちゃったり、結局ファンが悲しむことになります。

高木:やっぱり嫌な表現ですけど、「売る」って大事ですよね。

安藤:実際すごく大事ですし、ハッキリ言い切っちゃってもいいのかもしれませんね。ファンの人も応援するからお金払うし、これで次も楽しませてくれよなってことだと思うんですよ。「俺の払った5,800円を変なことに使うなよ……」「ちゃんと俺たちの望む次回作に使ってくれよ」と。ちゃんと応援してくれて、使ったお金は次の『閃乱カグラ』に使ってほしいと思って買っていると思うんで。直接的でも間接的でも、売れたからこんなにパワーアップしましたって思ってもらえたら、前払いでお金を払った甲斐があったなっていうキャッチボールができていくなら、売れる売れないの話をしてもよいのかなって。

高木:とにかく「続けられる」っていう状況を作らないといけませんからね。そうしないとコンテンツは終わり、その先に想像していた未来も実現できない。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』 『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』

■5年、10年と『閃乱カグラ』が続いていくと何が起きるのか!?

安藤:『閃乱カグラ』も1作目が出てからもう3~4年というコンテンツで、5年や10年が見えてきたと思うんです。『閃乱カグラ』ってCERO的に17歳以上の人が遊ぶタイトルなんですが、17歳で初めて『閃乱カグラ』に出会った人が、もうすぐ大学を卒業し、社会人になったりして、いよいよ本物のおっぱいに出会うわけですよ。

一同:(爆笑)。

安藤:そうなった時に「こんなんじゃない! 『閃乱カグラ』のほうがよかった!!」って言われないかが心配で(笑)。

高木:それはありますね(笑)。

安藤:あまりにも高木さんが提供したおっぱいが完成度高すぎて、「これじゃない」感が出ちゃうんじゃないかと。

高木:触ってもあんな反応してくれないよ! って(笑)。あんなに声をあげてくれるのはゲームだからであって。

安藤:そういう反応が出ても、それはエンターテイメントですし、そこまで言われたら本望ですよね。そうなるような長寿ブランドになってほしいなって思いますし、その勢いがあると思います。

高木:頑張らないと……(苦笑)。やっぱり、やりたいことって尽きないじゃないですか、やればやるほど、ああなるほどって見えてくることもあって。

安藤:僕はただのプレイヤーでファンなので、次はこのおっぱい使ってどんなファンタジーを見せてくれるんだっていう思いしかなくて。いつも、あ、こんな見せ方があったんだとか、こんな破れ方があったんだとか、こんな構図があったんだ、とか。なんかコラボ1つとっても、こんな高い仕上がりになるんだから、次はどんなもん見せてくれるのかみんなワクワクしてると思いますよ。なんか度肝を抜くような展開があるんじゃないかって。実は気になっていたんですけど、原田ひとみさんに主人公の声を担当してもらったりしたのは、狙ってのことなんですか?

高木:声優さんを決める時はリストをもらったり自分で調べたりして、声がキャラクターに合っているか合っていないかだけで純粋に選んでいますので、本当に偶然ですね(笑)。

古川:なるほど、まさしくパイ運がよかったと(笑)。

安藤:パイ運は大事ですね。そういう偶然があるんですね。ゲームの神様に愛されているんだなぁ。

高木:ああ、でも『閃乱カグラ』はホント愛されている気がしますね。いろいろなラッキーもありつつ、びっくりすることが多くて。真面目にやっていてよかったなぁって(笑)。

安藤:PS Vitaというハードを盛り上げる部隊としても、高木さんとは同志だと思っているので、今回のコラボに続いて第3弾、第4弾とコラボの常識を壊せるような組み方ができればいいなと思っています。かなり今回のコラボも、『ミリオンアーサー』遊んでいるのに別のゲームに見えたりしますが(笑)。シンプルなフォーマットなのに、こんなに変わるかーって。

 我々も無料のものからパッケージのものまで、並行していろいろ出していこうと思っています。とにかくコンシューマのみならず、ゲーム業界全体が盛り上がればいいなと思っていて。その1つとして我々の作品のようなバラエティというチャンネルがないとつまらないと思うんですよ。全部がスポーツとかドラマとかニュースとかみたいになってもつまらない。『閃乱カグラ』はそのなかで、ちょっとお色気がある深夜な感じみたいな位置で。こういうのがないと逆に不健全になってしまうと思う。健全にしていくためにも、お互いにこういう仕事を続けていけば、ファンも喜ぶんじゃないかなぁと。第3弾、第4弾とぜひお祭をさせてください。『閃乱カグラ』自体もこれからどうなっていくのか、どう取り上げられていくのかから楽しみにしています。

高木:はい。美少女ゲーム、アクションゲームとしては今までなかったところを目指したいなと。「え、そんな頑張っちゃうの?」と言われるくらい。例えば、服が破けるじゃなくて、「投げられそうになってめくれる」とかいうのをやりたいんですけど、技術としてはすごい難しいんですよね。

安藤:手間を掛けるとしたら、そういうもっとディテールになっていきますよね。神は細部に宿りますから。そうすると、あっとおどろくような効果になったりするんじゃないでしょうか。そのために技術や人の力が必要になってくるのが、ゲーム作りのおもしろいところですよね。

安藤:アニメの世界もどういう風にスカートや髪をなびかせたらいいかなど、ずっと考え続けられているわけじゃないですか。それがやっぱりキャラに息吹、命を与えてきたわけで。ゲームも絶対そういう方向に力を入れるべきなんでしょうね、それがまた普通になって、さらに細かいところを目指していくという。

高木:胸と胸がぶつかったら、互い違いに挟まってほしいとか。

一同:(爆笑)。

高木:今の技術だとまだ難しいんですけどね。

安藤:挟まってなかなかヌケないとか、むしろ挟まりにいきたいとか(笑)。据え置き機も携帯機もどんどん技術が進化していって、作る方の手間とかしんどさは増しますけど、そこは「時間かけて上等!」ってとこじゃないですか。続いていけば確実に進化して、ファンも喜ぶ。素晴らしい循環ですよね。

高木:過去あるものに似たものを作っても、意味がなくはないんですけど、あまりやりたくはないですね。とにかくゲーム作るのは大変なんで、大変な思いをするのなら「おっ」と思えるところを出したいと思いますし。『閃乱カグラ』でもそうですし、別のゲームでもそうですね。まだ別の表現があるんじゃないかと常に考えています。

安藤:まだまだ掘り下げたら楽しそうなテーマありますよね。ゲームの可能性もまだまだあるんだなって思いました。楽しみにしています。

高木:今1作目のこと思い出したんですけど、当時やっぱりスマホの会社が勢いがあって、うちの会社もどんどんコンシューマ系を縮小して、アプリ系を増やそうという話も出かかっていたんですね。でも僕はとにかくコンシューマが好きで、ファミコンに憧れてゲームを作りたいと思って育ったので、まだアプリ側に行きたくないって思っていました。だから『閃乱カグラ』の1作目は、予算は少ないかもしれないけど、この全力の1本でこっち側で踏ん張るぞっていうのは特にありましたね。スマホがキライなわけではないですけど、僕はまだパッケージで何も実現していないっていう思いはありました。とにかくまだそっちにはいけない、ここで粘りたいって思ったんです。

安藤:そういう粘りたい、踏ん張りたいっていう気持ちはすごくわかります。俺はもう10年前ぐらいに一度、そこで踏ん張りきれなかった人間です。スマホで作らざるを得なかったんですけど。今は、スマホでもコンシューマでも関係なくリリースできようになりましたし、引き続きどっちでも作りたいっていう気持ちが強くあります。PS Vitaとか3DSを、ゲームハードとしてスマホと区別して捉えたくない。同じゲーム機として望まれればどこでも出したい。絶対的にコンシューマ機で遊んでいる人のほうが目が肥えているので、そこを通用させるようなエンタメを作れないと、もっと広いユーザー層を相手にするスマホでは勝負できないなって思っています。どっちも忘れることができないという感じがすごくあります。ゆえに、きちんとコンシューマ機のクリエイターと向き合うことは自分を磨く修行みたいなものです。今日の対談もいい修行になりました!

古川:本日はありがとうございました!

高木:こちらこそありがとうございました。

『ミリオンアーサー』×『閃乱カグラ』

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(C)2014 MarvelousAQL Inc.

データ

▼『拡散性ミリオンアーサー』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:PS Vita(ダウンロード専用)
■ジャンル:RPG/カード
■発売日:2013年4月11日
■価格:基本無料/アイテム課金
▼『デカ盛り 閃乱カグラ 本体パックA』
■メーカー:マーベラスAQL
■対応機種:PS Vita(ダウンロード専用)
■ジャンル:アクション
■配信日:2014年3月20日
■価格:2,315円+税
▼『デカ盛り 閃乱カグラ 本体パックB』
■メーカー:マーベラスAQL
■対応機種:PS Vita(ダウンロード専用)
■ジャンル:アクション
■配信日:2014年4月24日
■価格:2,315円+税

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