2014年8月14日(木)
『MGSV』だけでなく噂の『P.T.』についても小島監督自らが語った”メタルギア ソリッド V Preview Show”レポート【gamescom 2014】
ドイツ・ケルンにて開催中の欧州最大のゲームイベント“gamescom 2014”。KONAMIは、“METAL GEAR SOLID V gamescom Preview Show”を一般日に先駆けて会場近くのMusical Dome Kolnにて開催した。その模様をレポートしていく。
まず行われたのは、『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』のプレイデモ。今回のデモは、6月に行われた“E3 2014”で公開されたアフガニスタンのマップで敵陣に潜入する同様のミッションを、また異なる時間帯、異なるアプローチでクリアしていこうというもの。オープンワールドでの“自由潜入”という本作の自由度の魅力が存分に伝わるデモとなっていた。
乗った馬が道端に糞をし、その糞で敵ジープがスリップして敵兵が気絶したり、SCEプレスカンファレンスで公開された新たなダンボールの使い方が実戦で披露されたりするなど、これまでにないアプローチで敵陣に侵入していくスネーク。
“ファントム・シガー”を使用すると、タバコを吸うスネークの背景が徐々に夜に。暗がりのなか、再び敵陣に侵入していく。気絶した敵兵などを風船のようなものを打ち上げて回収する、フルトン回収を応用したものも披露された。
道行く羊をフルトン回収したほか、敵兵が乗っていないジープにC4爆弾を取り付け、空中に控えるヘリコプターにぶつけて爆破するなど、これまでにない、大胆な使い方が見られた。この爆発のなか、無事スネークは帰還し、デモは終了となった。
このあと、既報のとおり、Steamにて『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』と『グラウンドゼロズ』のPC版が配信されることが発表された。
▲スネークのフェイシャルモーションや声優を務めるキーファ・サザーランドからのメッセージも。 | ▲スチームを吹き出すダンボールに会場が大いに盛り上がった。 |
その後、ファンからの質問に小島監督自ら回答するQ&Aセッションへ。非常に興味深い内容だったので、ここで紹介していこう。
Q:自身の作品のなかで、FOXエンジンを使って、最もリメイクしてみたいのは、どの作品ですか?
A:個人的には、リメイクはあまりしたくないんです。FOXエンジンで別のスタッフがリメイクするんであれば、やはり『METAL GEAR SOLID』です。16年前のゲームなので、ちょっと違うアレンジで現代風のゲームにしたいですね。
Q:『METAL GEAR』シリーズのなかで、制作中、最もエキサイティングだった作品はなんでしょうか。
A:毎回エキサイティングなんですが、やはり周囲に反対され、理解されなかったなかで、完成までこぎつけた『METAL GEAR』が最も印象深い作品です。あとは『METAL GEAR』でなければ、『ボクらの太陽』ですね。これもスタッフのなかで大きな反対などありましたが、自分のなかでは大きなチャレンジでした。
Q:好きな映画のキャラクターはなんですか?
A:僕自身がおしゃべりなので、無口なキャラが好きです。たとえば『マッドマックス2』のメル・ギブソンですね。強調したいのは『3』でなく、『2』の『マッドマックス』ということです(笑)。
このメル・ギブソンのように、『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』のスネークはほとんどしゃべりません。しゃべらずに、物語をどこまで導いていけるかという部分は、今回のチャレンジの1つにもなっています。『マッドマックス2』は10回以上見ていて、自分でゲーム化したいくらいです(笑)。
Q:どういうときに疲れを感じますか?
A:モノづくりは非常に疲れます。そのうえ、交渉ごとだったり、プロデュース案件があったりして、いろいろストレスを感じることは多いです。本当は旅行などに行けるといいのですが、なかなかそんなこともできないので、毎日寝る前に映画を1本見るようにしています。
映画って人が作っているものなので、モノづくりの苦労が垣間見えて勇気づけられたり、単純に作品に感動できたりして、短時間で自分を取り戻せる効果的なものだと感じています。一番元気が出るのは、すごい苦労して作ったのにあまりうまくいかなかった映画のメイキングを見ることですね。
Q:『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』で一番気に入っている部分はどこですか?
A:これまでの『MGS』も、他のほとんどのゲームもそうですが、ゲームクリエイターがレールを引いて、そこにプレイヤーを誘導してプレイヤーに遊んでもらうという、インタラクティブなわりに一方的なゲームが多かったと思うんです。
ただ、『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』では、マップを見て、どこに、どういう経路で、いつ、どうやって潜入するかを自分で考えて、それを実行して、最終的にどうやって逃げるかまでを考えるゲームなんで、本当のスパイ情報映画を自分演じているかのような自由度があります。そこが気に入っているところですね。
他のゲームでもなかなかそこまで実現できているゲームはないので。マップも広いうえに緊張感もあり、1ミッションクリアするのに本当に疲れます。1ミッションプレイしたら半日くらい休息が必要と感じるほど疲れを感じる、本当に潜入感を味わえるゲームになっています。
そして、このQ&Aセッションの終盤には、先日のSCEプレスカンファレンスで発表されると同時にPS Storeで体験版の配信が始まり、現在世界中で話題になっている『P.T.』についても語られた。
「『SilentHill』については今の時点であまりお話しできないので、『P.T.』についてお話します」と前置いたうえで、小島監督は「『P.T.』とは、Playable Teaserの略で、あまり深い意味はないんです。映画などで予告篇などはありますが、ゲームなんで、ムービーでなくプレイヤブルで、自分がインタラクティブで遊ぶことでタイトルやIPにたどりつくものを作りたかったんです。業界初の試みだと思います。」と語った。
この『P.T.』の最後に登場するパズルは意図して非常に難解なものにしており、小島監督の予想では解くのに1週間はかかると想定していたが、「半日で解かれてしまいました」と苦笑いしていた。また、イギリスの女の子がTwitchを介して世界中の人々とクリアしていたことを例にあげ、1つのゲームをよりどころとして、世界中の人がコミュニケーションして正解にたどりつくティザーゲームを作りかったので、その点は成功したと思っていると語っていた。
小島監督は、「これは、FOXエンジンや自分たちの名前をふせて、どこの誰がどんな目的で作ったかわからないものというシチュエーションでプレイすることが最も怖さを感じることができるものとして、作っています。誰がどんな目的で作ったかわかってしまった現在、いくぶん怖くなくなっているかもしれませんが、それでも怖いと思うので、ぜひプレイしてみください」と続けた。
『P.T.』は、“FOXエンジンで『SilentHills』を作ったらどのくらい怖いものが作れるのか”という実験を兼ねて作られたものだという。また、インディーズっぽさを見せるために、プロが作っているとバレないようなサジ加減に一番悩まされたことや、制作スタジオとして明かされていた“7780s STUDIO”について解説。
7780s STUDIOとは、まず“s”が『Silent Hill』を表している。残りの7780は、実は静岡県の面積(=7,780平方km)。なぜ静岡なのかと言うと、日本のインターネットでは『SilentHill』の別称として“静岡(Silent=静、Hill=岡)”が使われているからだという。なお、メインビジュアルの風景は制作スタッフの自宅の裏庭であることなどを明かし、会場からは笑いが起こっていた。
また、『SilentHills』については、まだ言えることは少ないとしながらも、1つだけ言えることとして「怖さでオシッコをちびってしまうゲームにする以上に、ウンコをもらしてしまうようなゲームを作ろう」とデル・トロ監督と語っていたと述べた。
これは、“怖くて仕方がない場合は途中でやめてもらってもいい”という小島監督の意図が含まれている。最後に小島監督は「替えのパンツが必要になるから、初回特典につけるかもしれません(笑)」と会場を大きくわかせるジョークでショウを締めくくった。
(C)Konami Digital Entertainment
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