2014年9月20日(土)
小島監督に『MGSV:TPP』と『P.T.』についてインタビュー! 選択肢の1つであるバディや自由潜入について迫る【TGS2014】
KONAMIから、2015年に発売されるPS4/PS3/Xbox One/Xbox 360用ソフト『メタルギア ソリッド V ファントムペイン(MGSV:TPP)』を手掛けた小島秀夫監督へのインタビューを掲載する。
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『MGSV:TPP』は、小島秀夫監督が手掛けてきた『メタルギア』シリーズの最新作。第1作『メタルギア』で最後の敵として登場したビッグボス(ネイキッド・スネーク)を主人公として、“なぜ英雄が悪の道へ堕ちることになったのか?”というシリーズ最大の謎を描いていく。
今回は、東京ゲームショウ2014のKONAMIブースにて公開されたバディを中心に、本作だけではなく『P.T.』についても小島監督にお聞きした。
――先日のステージで公開された“バディ”ですが、かなりいろいろな助けをしてくれることに驚きました。
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勘違いされている人もいるようなので、説明したいと思います。『メタルギア』シリーズは基本的に、1人で潜入するストイックなゲーム。それはそれであったうえで、バディを連れていきたい人は連れていくこともできるのです。
昨日のようにプレイヤーが一番おいしいところを持っていけるようにもできますし、アクションゲームが苦手な人は全部任せるというプレイもでき、そこはユーザーにゆだねることになります。さらに連れていける人も、自分で選べます。
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――“自由潜入”という大きなテーマがある中で、AIのキャラを動かしていくのは大変ではないのでしょうか?
『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』の後半で、ライデンとスネークが一緒に行動するシーンがありました。スネークみたいに猛烈に強い師匠が一緒にいると、とにかく心強いじゃないですか? バディというか、AIでついてきてくれるキャラは、ゲームデザイナーとゲーマーの夢だと思うんですね。
ただ、アクションゲームはユーザーが何をするかわからないため、AIの計算処理が大変です。10数年前の話ですが、『MGS2』の時は、AIを作っては壊し、作っては壊しを繰り返して、ようやくああいう感じになったんですね。何もないところで、突然スネークがローリングをするカッコ悪いAIに(笑)。でも、あの当時にしてはがんばったんですよ。
――『MGSV:TPP』は進むべき道、とるべき行動がまったく決まっていないオープンワールドのゲームなので、AIの制作は大変そうですね。
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動きが決まっているリニアなゲームであれば、役割分担をできるので、「ここではこういう動きをする」と設定することができますが、どこにでも行ける本作ではそれができず、AIはずっと実験しています。
自分は慎重に行動して潜入しているのに、AIが動いて見つかってしまうというのは、潜入するゲームとしてちょっと違うじゃないですか。オンラインプレイで友だちとCO-OPしている時に見つかったのであれば、お互いのせいなので問題ありませんが、AIが見つかるのは許せない(笑)。だから、FPSのAIとは条件付けがちょっと違うんですよ。そのあたりのバランスは難しいですね。
――身を隠している時に、普通に敵と撃ち合いしてもらっては困りますからね。
そうなんですよね。だから、「普通に連れていくようなAIはやめよう」と最初から決めていました。クワイエットはスナイパーなので、先に行って情報索敵するとか、遠くから支援するとかで、たまに一緒に動く感じです。
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……さっきの話にもありましたが、バディは永遠の夢ですよね。クワイエットはスナイパーなのでAIが成り立つようにしているのですが、以前と変わらずゲームデザインでごまかしているところがあります。ずっと一緒にいてどんな気持ちが通じあっている人でも、喧嘩すると思うんですね。そっと離れて、いい距離感を持たせるのがクワイエットのAIです。
――ということは、距離感が違う他のバディが出てくるということでしょうか?
それは一般公開日にステージを見ていただければわかると思います(笑)。
――バディが攻撃を受けすぎるとやられてしまうのでしょうか?
いなくなります。
――そのミッションからいなくなるということですか? 負傷してマザーベースに戻るのでしょうか?
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いや、死にますよ。
――え? 本当に死んでしまうのですか!? では、仮にステージのデモストレーションでクワイエットがやられてしまった場合は、その後のクワイエットはいなくなるということでしょうか?
それはそうですよ。リニアなゲームは必ずどこかで出会って、2人で旅をして、女の子がやられそうになるから戦うというストーリーが入っています。ただ、本作のバディはいなくても成り立つもので、本流ではないために、そのままゲームは進みます。
――驚きました。バディを連れていくことで、ゲームとして楽になると思ったのですが……。
確かに索敵などしてくれるので、連れていかないよりは簡単になりますね。1人でミッションに挑むのか、同じミッションにバディを連れていって挑むのかで、遊び方が変わってくると思います。
昨日のデモンストレーションでは、評価がEとなっていましたが、敵を倒して進んでいたので低い評価になったのです。本来なら自分が何かをしている間に、クワイエットを先に行かせておいて索敵やマーキングをしてもらったり、装備を用意しておいてもらったりする感じです。その情報を活用して殺傷せずにクリアできれば評価も上がるわけです。
――評価を上げるために活用するのか、楽をするために活用するのか、それも自由潜入としてユーザーがとれる選択肢だということですね。
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そうなります。マザーベースでいろいろなものを作ったり、人よりいいものを欲しいという人は、痕跡を残さず見つからずに進んでいて、いい評価をもらえれば、人よりハイスピードでいいものがもらえます。そこを、1人でもやれるし、バディを使ってもやれるということです。
――クワイエットと言えば、ビジュアルが公開されるや世界中から反響がありましたね。
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今回の登場キャラのほとんどは、僕が大好きなおっさんばっかりなんです(笑)。でも、昨今おっさんばかり出してもダメだと思うので、女性キャラでクワイエットを出しています。今までの作品を見たら毎回3~4人はヒロインのような女性キャラが登場していましたが、今回はクワイエットだけですね。
露出が多いと言われていますが、まさにそれは狙い通りです。世の中には、女性キャラがビキニを着て、胸が出ている状態で攻撃をするようなゲームもあるじゃないですか!? そういうのを取り入れてみようと考えました。そして皆さんが言われているように、ゲーム中のキャラも彼女に対して「露出が多い」と言うわけです。でも、露出が多い原因は、実際にゲームをやっていけばわかってきます。ただ露出が多いだけではなく、しっかりとしたメッセージを込めています。理由は……発売してから、もう1つ言いたいことがあるので……。
――クワイエットはかなり強力でしたが、弱点はあるのでしょうか?
弱点はありますよ。露出が多いというのは……そういうことですよね。
――スタッフがアフリカに実際に行き、取材したとステージで明かされていましたが、小島さんがゲーム内のフィールドとして再現したいと思ったアフリカの場所はどこですか?
取材は僕は行けなかったんですが、広大なサバンナや大きな滝があるようなスケールを感じられる場所ですね。最初は映画などでよく見るようなそのようなシーンをイメージしていましたが、取材した映像を見るとかなり違うものでした(笑)。
――生い茂る木といえば『メタルギアソリッド3 スネークイーター』の印象が強いですね。
『MGS3』は、ロシアが舞台なのですが取材先は実は屋久島なんですよ。あと奄美大島。ちょっと違う森を作りたかったので取材しました。今作では映画的なビジュアルというよりは、もう少し日常的な絵になるように意識しています。
――映画やゲームではランドマークを作ることで目印にしますが、リアルさを重視したのでしょうか?
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そこは難しいところなんですよ。あれだけ広いので、実際同様にリアルに作ると方向を失うんです。かといってランドマークを無理に作ると、違和感がある。でも、ないとどこを通っているのかわからなくなる。そのバランスをいろいろ取っています。
――自由に潜入できる本作は、ランドマークを作ったところでユーザーが好きなところに行けるわけですしね。
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アフリカは森の中に入ると場所がわからなくなります。IDROID(アイドロイド)でマーキングするとわかりますが目視ではわからないので、どのようにバランスにするかは難しいところですね。
――ソナーやスタンといった義手の特徴的な機能が公開されましたが、いろいろなものに付け替えることができるのでしょうか?
義手にはいろいろなものがあります。種類はたくさんあり、開発したいものを開発できます。このあたりは、『メタルギアソリッド ピースウォーカー』と同じような流れですね。
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――バディやスニーキングスーツなどの要請にはポイント消費のような表示がありましたが、これはどこで入手できるものですか?
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彼らは組織などから依頼を受けて、そのミッションを完遂するとお金がもらえます。これがポイントですね。新兵器を開発したり、ヘリを現場に呼んだり、フルトンを使ったりするのにはポイントが必要になります。
――アクティブ・デコイという今までのデコイの進化版のようなアイテムが登場しましたが、人によっていろいろなタイプができるのでしょうか?
デコイもいろいろな種類の開発ができますね。本作は1個の武器でもさまざまな使い方ができるので、そこはプレイヤーに考えてもらいたいです。ちなみに一般公開日初日には違うデコイが出ます。
――一般公開日は別の情報が解禁されるのですか!?
デモプレイをあまり違うのにしてしまうと、プレイしている人がミスをするんです。すごい繊細なゲームなので、あの環境でプレイするとヘッドショットとかできないんですよね。ただ、明日はちょっと長めになって、少し変化をつける予定です。
――小島さんが手がけられている『P.T.』についてお聞きします。あえて、“KONAMIが『サイレントヒル』を作っている”という売り出し方をしなかった理由を教えてください。
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人はどうしても先入観でものを見てしまうんですよ。出所がわかってしまうと怖さも薄くなってしまうと思いました。そのため、情報がまったくない環境を作って、その中で恐怖体験をしてもらうようにしました。ただの廊下でも何のためにあるのかわからないと、とたんに怖くなるじゃないですか。そういう怖さを僕は求めていて、ちょっと実験したかったんです。
――『サイレントヒルズ』という情報が出てしまっていたので、その点では“未知の恐怖”はなくなってしまったと思いますが、それでも小島さんがやりたかったことを『サイレントヒルズ』でやられるのでしょうか?
皆さんに体験していただけたと思うので、『サイレントヒルズ』で“未知の恐怖”をやるのは少し難しいと思いますが、恐怖の要素がいくつかあって、方向性は正しかったというのがわかりました。当然本編は『P.T.』よりも怖い必要があるので、怖いものをドーンと出していきます。
ただ『サイレントヒル』のリブートだとした場合、例えば三角ヘッドをどんな出し方にしても怖くないんですよ。あの怖さを越えようとすると、冒頭は『サイレントヒル』とは違う展開にしないといけないんですね。そこで驚いてもらって、叫んでもらって、笑ってもらって、「怖いなこれ!」と言ってもらって、「これ、『サイレントヒル』ではない!」と言われながらも、最終的には『サイレントヒル』になっていくという、美しい構成でやっています。
――『P.T.』は相当難しい設定にされていますが、どのような考えで作られているのでしょうか?
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今のゲームの難度とかフラグの立ち方など、これまでの経験値では立ち向かえないようになっているだけで、フラグが立てば先に進めるので、難易度としては大したものではないんです。皆さんが今までかなりのゲームをやってきた中での経験で通用しないのが『P.T.』で、その経験が通用しないから恐怖になるんですよ。そこを意図的にやったということです。
――難しいことをやろうというより、知らないことをやろうというスタイルだったわけですね。
これまでのゲーム経験と同じことをしてもそうならないように意図的にしている部分と、スタッフがゲームにあまりこなれていなかったうのもあって、そのバランスがうまいこといった感じです(笑)。
――小島さんはゲームデザインにどこまでかかわっているのですか?
コンセプトや指示を出して、それをどう料理するかはゆだねています。最終的にチェックをしますが。
――ギレルモ・デル・トロ監督は何を担当されているのでしょう?
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あの人もちゃんと作ろうとするタイプで、脚本から演出まで、全部をやろうとするんですね。エンドロールが全部自分みたいな(笑)。なので、そことの戦いです(笑)。
――昨日のステージではドラマ的になることや、何回かにわけて出すということをお聞きして、驚きました。
これは2年前から言っていますが、『メタルギアソリッド』のような大作は世界中で売れるので、時間とお金をかけて作れるんですよ。ハイリスクですがハイリターンです。『MGS』みたいなタイトルならばいいと思うんですが、あらゆるタイトルでそういうことをするわけにはいきません。日本のプロダクションが弱くなっているのはそこに理由があると思います。
映画だと『スパイダーマン』とかMarvel(マーベル)の映画がハイリスクハイリターンな作りですが、なかなかそういうことはできませんよね。アクション映画はすごいお金かけるんですが、ホラーにはお金をかけないんですよ。なぜならば大作になってくるといろいろな要求があって、器を大きくして、いろいろな要素を入れていく必要がある。そうなると、ホラーだと崩壊してしまうわけです。
僕が1つのアイデアとして言っているのが、TVシリーズのような作り方です。
――TVシリーズですか?
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TVシリーズは企画を立ててシューティングするまで、数カ月でできるんです。映画は契約の問題もあって、企画を立てて公開までに至るまで3~4年かかるんですね。大作で200億くらいかかるとなかなか企画も立ち上がらないですし、その間に時代が動いてしまうので、TVシリーズをやるんですね。
1話完結で1シーズン12話として作って、ユーザーの動向を見ながら作れる。視聴率が悪ければその時点でやめればいいなど、リスク回避ができるということです。映画でパート3までの予算と時間と人を動かすころには、もう時代に遅れていたりするので、みんなTVシリーズに行くわけです。だからTVシリーズのクオリティが映画を超えている。
――なるほど。
ゲームでもそれは通用すると信じています。全体構成こそは決まっていますが、『サイレントヒルズ』を1話ずつ作って早めに出して、2~4話を出して1stシーズンとする。人気があれば2ndシーズンに入りますし、ダメだったらやめることもできる。そんなTVシリーズの形態化がいいんではないでしょうか?
ちなみに『ファントムペイン』はフルゲームですが、話はミッション的に区切られていて、それがTVシリーズのような構成になっています。
――『P.T.』の反響はすごかったと思うのですが、最近の日本のゲームの受け方とは違う感じでしたね。
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結構な声で「PCで出してほしい」というのがありました。あのゲームはやるのが一番怖いんですけど、やっている中継を見たり、アップロードされた映像を見たりするのも怖いと思うんですね。ダウンロード開始から1週間あけて『P.T.』関連の動画を見てみたら、すごい再生数だったので、かなりの人が見てくれたのだと思いました。それで、ホラーとしての可能性があると感じましたね。
今はグロテスクなものを出したり、驚かしたりするだけじゃダメですし、ゲームの潮流としては複雑な操作が可能なアクションゲームなんです。そこで『P.T.』が受け入れられたということは、今後は『P.T.』のような“基本のホラー”がはやっていくんではないでしょうか?
■東京ゲームショウ2014 開催概要
【開催期間】
ビジネスデイ……2014年9月18日~19日 各日10:00~17:00
一般公開日……2014年9月20日~21日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料
(C)Konami Digital Entertainment
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