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2014年9月21日(日)

PS4『The Order:1886』が目指すものはリアルと“不完全さ”が同居した産業革命時のロンドン【TGS2014】

文:電撃オンライン

 産業革命に湧くヴィクトリア朝ロンドンを舞台に、“半獣”と長きに渡り戦い続けている騎士団(オーダー)の活躍を描くPlayStation 4の『The Order:1886』。

『The Order:1886』

 その最新情報をもとに、開発を担当するReady At Dawnのプロデューサー兼CEOのルー・ウィーラスリヤ氏とSCEでローカライズを担当している片見龍平氏にインタビューを実施。独特の世界観を、圧倒的なビジュアルで再現した『The Order:1886』の魅力に迫る。

『The Order:1886』
▲開発を担当するReady At Dawnのプロデューサー兼CEOのルー・ウィーラスリヤ氏(左)とローカライズを担当する片見龍平氏(右)

――本作は、歴史上の一時代をモチーフとしつつもオリジナリティのあるストーリーでワクワクするのですが、ビクトリア朝ロンドンを舞台に選んだ理由から教えていただけますか?

ルー・ウィーラスリヤ氏(以下、敬称略):ビクトリア朝、とくに産業革命時というのは非常に変化の激しかった時代でした。また、1848年から1900年代にかけては、ロンドンが世界の中心ということもあって、この地に世界のすべての変化や時代の流れが集約されていたのです。

 これを理由にビクトリア朝のロンドンを舞台に選びました。現代のアメリカのように、当時のイギリスは「パックス・ブリタニカ(19世紀半ばの大英帝国最盛期を指す)」と呼ばれて、大英帝国として世界中に覇権が広がっていてた時期で、移民も洋の東西を問わずにイギリスを通して広がっていったということもあり、すごく興味深い場所だったと考えています。

――ルーさん個人としても思い入れのある土地だったのでしょうか?

ルー:私自身はスイスで育ったこともあり、距離的に近い場所だったので休暇で訪れることもありましたし、友人にもイギリスの人が多かったです。また、私の家系はイギリスの旧植民地発祥でもあるため、そういった意味でも大英帝国やイギリスにはあこがれのようなものをもっていました。

――『The Order: 1886』のストーリー部分についてお聞きします。なぜ、世界の根幹に対して主人公であるガラハッド卿が踏み込んでいく展開になっていくのでしょうか?

ルー:本作は、この時代に起きた出来事に集中して描かれていますが、作品のところどころにそういった過去の出来事が語られたり、世界の根幹に対するヒントが隠されています。将来的には過去の経緯……騎士団の成り立ちであるとか、半獣の起源に踏み込むことも考えています。

――ゲームを進めていくうえ知ることのできる、バックボーンとして用意されているエピソードのボリュームはどのくらいになるのでしょうか?

ルー:新しいIP(Intellectual Property=知的財産 ここではゲームソフトや映画などの世界観やキャラクター、ストーリーなどを総称するものとして使われている)を作るにあたって、それぞれのキャラクターや世界観のバックボーンについては、非常に多くの時間を割いて作られていて、そのボリュームは“バイブル”と呼んでいるほどに膨大なものです。その一部が本作になっているという形ですが、世界観としては非常にしっかりとした作りになっています。

――『The Order:1886』の制作にあたって、とくに力を入れた部分はどのあたりでしょうか?

ルー:一番力を入れたのは、当時のロンドンの再現です。ロンドンの歴史家であるジェリー・ホワイトさんという方と話して多くの考察を得たのですが、彼もゲームというメディアがロンドンを再現するものとして「一番完成度が高いのでは」と言っていました。

 映画ではコストなどの関係で忠実に再現することは難しい部分も出てくるのですが、ゲームではそのあたりもリアルに再現できますから。とはいえ、現実味のある雰囲気を作り出すことは相当に困難なことでした。

 しかし我々は、においであるとか触った感触といったものをなるべく忠実に再現したかったのです。技術的には困難なハードルでしたが、まるでその時代にカメラを置いて撮影しているような表現を作り出すことができました。

――実機の映像でも素晴らしい再現度で、そこにいるような印象を受けたました。武器やアイテムの素材となっている布や金属などは、当時のものを実際に入手したりされたのでしょうか?

ルー:ロンドンには実際に取材をおこない、そういったアイテムについては実在のものからスキャンデータを取るなどの膨大なリサーチを実施しました。布や鉄など当時のものについても実際に見て、写真などに記録した上で考察をおこなっています。本当はすべてを開発スタジオに持ち帰れたらよかったのですが(苦笑)。

――空気中の塵や、金属の錆びなど、経年で発生するものまでしっかり再現されているのは凄いと感じました。

ルー:忘れがちなことですが、世界にあるもので完璧なものはひとつもないと考えています。よりリアルさを求めるのであれば、完璧ではない、不完全なところに注力しなくてはならないです。

 例えば、今、目の前に置いてあるこの机も、ホコリがあったりちょっと汚れている部分があることで、よりリアルなテイストになっているのではと思います。ゲームを作るにあたっても一番気をつけているのはそういった“不完全さ”ですね。

――ゲーム内では産業革命から現実とは異なる独自の進化を遂げている部分があります。我々の知るものとは違うロンドンなのでしょうか?

ルー:独自の技術は街自体にも存在していて、たとえば当時は普及にまではいたっていなかった電気や、高架橋を走る列車などもゲーム内には登場します。

 ただし、新しい装備や未知の装置といったものは、一般の人々が使っていると生活感がなくなってしまうので、生活に根ざした技術、街に溶け込んでいるようなものを目指しました。なので、ゲーム独自の設定である電気や列車についても、人々が日常として使っている空気感を作り出しています。

――TGS 2014のSCEブースに出展されている試遊台をプレイしたのですが、ゲーム中では敵側も騎士団の装備を入手して使ってくることになるのでしょうか?

ルー:よく見つけましたね(笑)。でも、そこはネタバレになってしまうので実際に完成されたものをプレイして確認してみてください。

――最新のゲーム情報として、実在の人物であるニコラ・テスラが登場していましたが、彼の開発によって騎士団の武器は段階的に強化されていくのでしょうか?

ルー:どちらかというと、ストーリーを進めていくにつれて、ニコラ・テスラが新しい武器を提供していくとい形ですね。ステージ自体も武器の特徴を生かせるようにデザインされているので、新しい武器を手に入れたら、それを使ってカッコイイ戦い方ができます。なので、状況に合わせてテスラが完成したものを支給してくれるという体裁にとっています。

――TGS試遊版では、2つの武器は方向キーの左右で切り替えるシステムになっていましたが、使える武器のバリエーションは試遊版より増えるのでしょうか?

ルー:リアルさを求めるために、装備の種類は1人の人間が現実的に携行できる範囲内で決めてあります。なので、主人公が同時に持ち歩けるのは、ライフルのような大き目の銃と小型のハンドガンが各一丁、そしてグレネード(手榴弾)と近接攻撃用のナイフの4種類です。

 ただし、ステージによっては武器を拾って持ち替えることができるので、すでに装備している武器を使い続けるのか、それとも新しく見つけた武器に持ち替えるのかの選択で戦いのバリエーションが変わることになります。敵が使っている装備を奪うことも可能ですし、プレイヤーしだいで戦い方は変わると思います。

――騎士団の武器について、たとえば非常に強力ではあるものの暴発して持ち主を危険にさらすような、武器上の設定がゲーム内で反映されるような展開はあるのでしょうか?

ルー:そのあたりは開発上、非常に難しい選択でした。少し危険な香りのする武器というのをプレイヤーに感じて欲しかったのですが、ゲームプレイ上でそこまで再現してしまうとユーザーにペナルティを与えることになってしまいます。なので、あくまで設定上の話として考えてください。

――TGS試遊版をプレイした感じでは、非常にストーリー性の強いゲームという印象を受けたのですが、ステージによってある程度広さのあるエリアを探索したり、ストーリーを進める上で複数の解法をプレイヤーが選択できる場面はあるのでしょうか?

ルー:限られた空間のなかにおけるプレイヤーの自由度は用意されています。ただし、今作で大事にしているのは、ストーリーと世界観を伝えるというところであり、あまり規模を広げてしまうとストーリーを見失ってしまう可能性があったので、なるべくストーリーに集中してもらえるような構成になっています。

――騎士団のメンバーのキーになるアイテムとして、特徴的なフラスクに入った「ブラックウォーター」が登場しました。これらのアイテムについての詳細はストーリーを進める上で明らかになっていくのでしょうか?

ルー:そうですね。ストーリーを進める上で、プレイヤーはブラックウォーターが何なのか、なにでできているのかといったことはすべてわかるようになっています。

――また、半獣との戦いが激化する形になっていくかと思うのですが、騎士団の武器が強化されていくなかで半獣自身も進化してより強力なものが出現するといった展開はあるのでしょうか?

ルー:なかなか鋭く、答えにくい質問ですね(苦笑)。全貌をお伝えするにはまだ時期が早いと思うのですが、半獣は人間的な部分を持ち合わせている敵なので、設定上は人間のようなテクノロジーを使って戦う可能性を秘めています。

 テクノロジーが広まった半獣が人類との戦いにどのような影響をおよぼすのか考えるのは興味深いことだと思います。

――これは日本語版のローカライズについてなのですが、試遊版はすでに日本語音声による吹き替えになっているのを確認しました。作業のほうは順調でしょうか?

片見龍平氏:はい、台本のほうもいただいておりまして音声の収録も含めて作業は順調にすすんでおります。

――日本のユーザーにとって、これだけ表現力に満ちている作品というのは初体験になるのかもしれません。発売を心待ちにしているプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。

ルー:時代考察やテーマは日本のユーザーの心にも響く内容だと思いますし、彼らのコスプレの完成度の高さについても感心しています。そういった意味でも『The Order:1886』にも受け入れられるタイトルだと思っています。ぜひ楽しみにしてください。

(C)Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Ready At Dawn Studios LLC.

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