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2014年9月22日(月)

『メタルギア ソリッド V TPP』では“声”が重要なカギとなる!? TGS2014のKONAMI最終ステージの模様をレポート【TGS2014】

文:皐月誠

 千葉県・幕張メッセにて開催された“東京ゲームショウ2014”。9月21日にKONAMIブースにて閉幕を飾った“『メタルギア ソリッド V ファントムペイン(MGSV:TPP)』Special Stage -Virtue-”の模様を紹介する。

 本ステージのMCを担当するのは森一丁さん。開発陣から小島秀夫監督と新川洋司アートディレクター、声優陣から大塚明夫さん、杉田智和さん、三上哲さんといった豪華な顔ぶれが集まり、『MGSV:TPP』についてのトークを交わした。

■『MSGV:TPP』は従来シリーズからどのように変化したのか?

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』

 『MGSV:TPP』は“Race(人種)”や“報復の連鎖”などハードなテーマが掲げられ、主人公のスネークも満身創痍の姿で登場するなど、これまでの『メタルギア ソリッド』シリーズとは一線を画するデザインとなっている。

 “復讐の鬼”と化したスネークを演じる中で、大塚さんは「今までにない(スネークとしての)殺意を覚える」ことを語った。収録は現在進めている最中であり、「どこまでダークサイドに堕ちて行くのか身体で感じていきたい」とのことだ。

 ただし小島監督が注釈を加えた所によると、ダークサイドとは言っても『スターウォーズ』におけるフォースのようなわかりやすい善悪の問題ではなく、「スネーク自身としては生きていく上で正しいことをしているつもりが、傍から見れば悪行に映る」ようなシチュエーションが用意されているらしい。

 また、本作においては具体的なセリフの数が従来よりも少ない代わりに、言い回しのニュアンスや息芝居で表現を行う部分が多く、そこは初代『MGS』からスネークを演じ続けている大塚さんでないと表現できない域に達しているという。

 その他、杉田さんからは「セリフに対しての本音と建前を必ず確認している」、三上さんからは大きなタイトルのメインキャラクターゆえに「プレッシャーがあった」と、本作の出演に対する多大な熱意を覗かせるコメントが発せられた。

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』
▲本作のカットシーンの一端を伝えるべく、生アテレコも実施された。

■『MGSV:TPP』における各キャラクターのデザイン

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』

 新川洋司さんから、『MGSV:TPP』におけるキャラクターデザインの解説が行われた。今回のスネークは、やはり“鬼”がモチーフになっているとのこと。頭部に突き刺さった異物はツノに見立てられており、ラペリングハーネス(ロープ降下時の補助に用いられるベルト)の余りを尻に垂らすことで尻尾を表現しているそうだ。ちなみにツノのサイズついては、小島監督と新川さんの間に大きくしたい/小さくしたいという意見の相違があり、モデル班が板挟みの苦労にあっているという。

 カズのデザイン的な特徴は、襟を立てるなど服装で威厳を表現したこと。ただ小島監督としては、デザインよりも動きによって“痛み”を表現するキャラクターにしているという。杉田さんからは、カズの不自由な身体では歩く時にどの程度まで息を使うのかを、自身の身体でシミュレートして検証したというエピソードが語られた。

 オセロットは『メタルギア ソリッド』シリーズ全体のキーパーソンということもあり、小島監督から「一番かっこいいキャラにしてくれ!」というオーダーが新川さんに送られたという。デザイン上では“40代ならではのセクシーさ”を考えた他、まつ毛を長くするなど宝塚俳優を意識した部分もあるとのこと。

■クワイエット役:ステファニーさんの登場

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』

 6人に加え、さらに新キャラクターのクワイエットを演じるステファニーさんが登壇した。クワイエットに明確なセリフはないものの、鼻歌を唄うシーンやダメージ時のうめき声などは存在し、同氏はそのボイスを担当している。

 本来は、クワイエットの3Dキャプチャー担当モデルとして採用されたステファニーさん。しかし喋らず動きで表現するキャラクターを作り上げるには、動きを担当する役者の表情もキャプチャーする必要があると考えられたことから、改めてオーディションを行った上で声の担当としても採用されたという。

 セリフのない彼女はデザイン的にも難しいキャラクターであり、新川さんからはラフを描いた枚数が一番多いと語られた。半裸姿はステファニーさんからも「最初は意味がわからなかった」というコメントが発せられるほどだが、これには重要な背景があるらしい。また小島監督いわく、格闘ゲームなどに見られるセクシーキャラクターへのアンチテーゼとしての意味合いも持たされているそうだ。

■KADOKAWA・矢野が『MGSV:TPP』のテーマを大胆予想!

 さらに書籍『METAL GEAR SOLID naked』を編集した弊社KADOKAWAの矢野健二も登場。『MGS』シリーズへの深い見地から、『MGSV:TPP』のテーマについての推察を語った。述べられた内容は、以下の通りだ。

 いわく、『MGS』シリーズのテーマは第1作の“Gene”から、“Meme”、“Scene”、“Sense”、“Peace”、そして“Race”と、末尾が“e”になる英単語で揃えられている。さらに『MGSV』のタイトルで不可解なのが、ナンバリングに従来のアラビア数字でなくギリシャ数字を用いた点だ。これらを踏まえると、『MGSV:TPP』の芯にあるテーマは“V~e”となる英単語にあるのではないだろうか。

 次に考えたいのが、小島監督はつねに“現代の問題”を作品のテーマとしているということ。現代を代表する問題とは何なのか? 今日では、世界にネットワークが張り巡らされ、人々はつねに携帯端末を所持し、TwitterやFacebookなどの“文字”の世界に生きている。“文字”によるコミュニケーションが発達した世界とは、逆に言えば“声”によるコミュニケーションが衰退した世界――これを前段の仮定と照らしあわせると、“声=Voice”こそ本作のテーマである可能性が見えてくる。

 さらに、“Race”を分かつのも多くは各人種が使用する“言語”であり“声”に通じる。登場キャラクターの名前も“言葉を発さない”という意味のクワイエットや、“暗号を喋る”という意味のコードトーカーなど、“声”をモチーフにした部分が存在する。

 この推察に、小島監督は観念したという面持ちで「アタリです!」と返答。本作におけるスネークの口数が少ないのも“声”をテーマにした部分が大きいようだ。

■フルトンに願いをこめて

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』

 『MGSV:TPP』には、フルトン回収システムを用いて資源や人材を奪取し、マザーベース(プレイヤーの基地)の発展に役立てるというシステムが存在する。それをモチーフにしたのが、KONAMIブースで催されていた企画“フルトンに願いをこめて”というもの。

 この企画では、来場者から開発陣へのメッセージを募集。壇上ではそこから数点をピックアップして、採用/不採用が登壇者の採決によって審議された。ピックアップされたメッセージは、「自分を部隊に入れてください!」という自称“脚の速さ世界一”からのものや、「キャラソンがほしい」というものなど。なお、後者の希望に関しては声優陣から難色が示されたので、実現は難しそうだ。

 来場者からのメッセージに続いて送られたのが、登壇者からのメッセージ。矢野からの「僕をキャプチャーして『MGSV:TPP』に出してほしい」という希望やステファニーさんからの「マザーベースに動物園を作りたい」という希望には、小島監督から肯定のSE(なぜかサンプラーで意思を表明)が発せられたものの、大塚さんからの「『MGSV:TPP』が発売予定日に発売されますように」という希望にはアラートが連発された。開発の苦労ぶりが察せられるワンシーンだ。

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』
▲フルトン回収システムを使えば、動物をマザーベースへ輸送できる。プレイヤー好みの動物園を作ることも可能に!?

 三上さんからは「オセロットも現場に出たい」という希望が挙げられたが、これは小島監督いわく“痛いところ”を突かれたとのこと。最初はバディ用のキャラクターとしてオセロットも検討していたのだが、バランス調整やAI開発の難しさもあり、“オセロットはマザーベースを守らなければならないから”として現在は実装を断念しているらしい。

 しかし、ここで大塚さんから提案されたのが“プレイヤーがオセロットを操作し、敵襲からマザーベースを防衛する”というミッション。これについて、小島監督は否定的でない様子を見せていた。果たして大塚さんの提案は実装されるのか、今後の情報に注目しよう。

■『MGSV』のダブル受賞

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』

 “東京ゲームショウ2014”において『MGSV:TPP』はフューチャー部門、『MGSV:GZ』は優秀賞を受賞したことが、改めて発表された。小島監督からは、支持への感謝を述べるとともに、『MGSV:TPP』発売後の東京ゲームショウでは“フューチャーではない賞”を取りたいというコメントが語られた。

 また小島監督からは、最後の登壇者各位によるあいさつの中において「来年には発売したい」という見通しも発せられた。喪失の痛みや暗い物語に彩られているが、その上で『MGS』にてオタコンのセリフにある「人生は失うばかりじゃない」のようなメッセージを伝えていきたいという『MGSV:TPP』。本作が全貌を見せるであろう2015年に期待してほしい。

『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』

(C)Konami Digital Entertainment

データ

▼『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』
■メーカー:KONAMI
■対応機種:PC
■ジャンル:アクション
■発売日:未定
■価格:未定
▼『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』
■メーカー:KONAMI
■対応機種:PC
■ジャンル:アクション
■発売日:未定
■価格:未定

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