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2014年10月8日(水)

“カードゲームの授業”仕掛け人の竹本氏と講師の大河内氏にその授業の意図を直撃! 最終の授業は一般公開が決定

文:ファイ、取材協力:大河内卓哉(デジタルハリウッド大学特別講師)、デジタルハリウッド大学

 こんにちは! TCG担当のファイです。大学でカードゲームの授業が行われることになったという前回の記事はご覧いただけましたでしょうか。これまで“対戦テクニックを覚えていく”とアニメの中で行われていたカードゲームの授業が、“カードゲームを創るとはどういうことなのかを学ぶ”という形で実際の大学の課外授業として行われます。

『デジタルハリウッド大学』
▲デジタルハリウッドキャリアセンターの竹本竜也氏(左)と今回の特別講師を務める大河内卓哉氏(右)

 今回は、この課外授業の仕掛け人ともいえるデジタルハリウッドキャリアセンターの竹本竜也氏と特別講師をつとめる大河内卓哉氏の両名に、この授業の内容や意図についてインタビューを行いました。非常に多くのお話を聞くことができたので、まず前半はこの授業を行う経緯についてを中心にお届けします。

■授業が行われることになったきっかけは偶然。

――最初にまず、なぜ大学の課外授業として行うことになったのでしょうか。

竹本氏:もともと本学では“企業ゼミ”というものがありまして、企業が講師となり、学校で学んだ知識と技術を仕事現場で生かすための力を身につけるための講座を行っています。現在活躍している大河内さんに一度やってくれませんかとお話をしました。

大河内氏:実は別件で会っていたときにその話をもらったので、本当に偶然です。ちょうど僕も「TCG業界に対して、自分にも何かできることがないだろうか」と思っていた時期だったので非常にいいタイミングでした。それで今回、課外授業を担当させてもらうことになりました。

竹本氏:授業の内容についてはいろいろと打ち合わせをしていました。学生は“仕事=難しい”というイメージがあると思います。それを授業として体験してもらうのが“企業ゼミ”なので、大河内さんが伝えたいことは何かをよく話し合って、今回はカードゲームを創るということを体験してもらうということになりました。

『デジタルハリウッド大学』

大河内氏:僕は、普段の仕事で木谷社長(株式会社ブシロード代表取締役社長の木谷高明氏)を間近でみていますが、木谷社長は業界全体を見た上で情熱を持って展開しているのを感じ取っています。具体的には国内のみならず、海外まで販路拡大の為にシンガポールに生活拠点を移しています。つまり“メイドインジャパン”のカードゲームを海外でも遊んでもらうためにここまで行動しているのですね。

 そういうのを見ていると、当然ですが僕にも業界に対して何かできることはないかという気持ちになります。僕はいま、カードゲームを宣伝することや作ることや管理することを仕事としているので、これを伝えるのが良いのではないか。まさにそう考えていたときにこの話をいただいたので、自分の持っている知識とかノウハウを次の世代に伝えようと思ったわけです。

 これを僕が最前線から引退するときに引き継ぐではもう遅いと思っています。それは5年後か10年後かわかりませんが、それでは遅いなと。僕が引退したときでは、知識はすでに過去のものだからです。いま伝えたい知識は、いま伝えなければならないと考えています。それは確立された完成形でなく未完成なものかもしれません。未完成ならば次の世代が完成させるための基礎知識として伝えるということに価値があると思っています。

 もう一つ大きな理由があって、“カードゲームはしっかりとした娯楽産業である”という価値を世間に認めてもらいたいということです。一度でも遊んだことがある人ならわかると思いますが、カードゲームって叩かれやすいですよね。大都市では比較的産業としての市民権を得てきていますが、地方に行くとやはりまだ「そんなことやって」といわれがちなのもまた事実です。

 カードゲーム産業には、製造する人、流通させる人、販売する人など多くの人が関わってきて成り立っている産業です。これらに関わっている人たちに自信を持ってその仕事を誇ってもらいたいと思っています。きちんとした大学が授業としてしっかりと取り扱うという事実は、社会的に認めてもらうための第一歩ではないでしょうか。

■週末だけで予想を超える数と内容の応募が来た。

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――現在(※このインタビューは10月上旬に行われました。)の応募状況はいかがでしょうか。

竹本氏:正直驚きましたよ。最初の土日(9月最終週)だけでもかなりの数が来ていました。ほかの大学に行って授業を受けるということ自体が学生にとってはハードルのかなり高いものだと思っています。それにもかかわらず一気に応募が来ました。

 自由にコメントを書く欄を用意したのですが、書かなくても応募できるのにみんなびっしりとコメントを埋めてきていて。人数の都合があるので選抜しなければならないのですが、全員採用してあげたいくらいです。

大河内氏:今回は講堂で講演を行うというわけではないので選抜しなければなりませんが、個人的にはこの授業に応募しているというだけで、自分の意思で自分の意見をしっかりと形にできていると思います。ですので、僕はまず応募してきた全員を褒めたいです。

 そもそも、どのくらいきつい授業なのかや授業の詳細そのものもわからないのにも関わらずやってみたいと手を上げている時点で「君たちは大丈夫」と肯定してあげたい。今回はあえて様々な特徴や経歴の人たちを選抜します。選ばれなかった人は同じような人がいたのかなと思ってもらえればと。

 正直、これだけの反応があったという事実で業界は明るいなと思います。カードゲーム業界って今どうやって目指せばいいかわからないのですね。実際に業界で働いてみたいけど、実際に自分はどうすればいいのかわからない。今回は大学生、大学院生、専門学校生に対象を絞っていますが、高校生なども含めると業界を目指したい人の潜在数は多いと思います。この先、そういうカードゲーム業界に注目している学生に対して受け皿を用意していくのも、思っていた以上に大切なのだなと実感しました。

竹本氏:カードゲーム業界に行きたかったけどどうやっていいかわからず、仕方なくあきらめた学生もいるかと思います。もし、本当にその人に情熱があったならもったいないですよね。

 カードゲームに関わらず、ゲームとかアニメとかってやはりまだまだ“変わったもの”として見られがちだと思います。それが好きだってことを前面に出せないという悩みを持った学生さんもいるわけです。しかし、本学ではそういった“変わったもの”を前に出すのは普通の事で、彼らの行動力を大きく変えていくことができると思います。

■実際に“2016年のカードゲームを創る”とは何を行うのか?

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――具体的にどういった講義を行うのでしょうか。

大河内氏:カードゲーム制作って作り方がブラックボックスだと思っています。どうやって作っていくのかがわからない。できあがったものが皆さんの手元にあってそれで遊ぶ。もちろん、それはそれでいいと思いますが、そこに至るまでに様々な人たちの努力の結晶があるということを今回は知ってもらおうと思います。

 ただ、それだと講演と同じ座学になってしまうので実際に体験してもらいます。ルールの整備やバランス調整、想定される質問と答えなどの用意を実際に受講生の人たちに決めていってもらおうと思っています。

 本来、新しいカードゲームを立ち上げるというプロジェクトは年単位で行うのですが、今回は1ヶ月で完成させ世に出します。プロとして行っている僕自身から見ても非常に難しいプロジェクトです。最後の1回は発表会にしようと思っているので、実際に作業できるのは3週間で、しかも授業時間でいうと4時間半しかありません。さらにそれらに携わるのが僕以外は未経験の人たちです。

 完成したものに対して、周囲からはいろいろ言われると思いますが、それはそれでいいと思っています。結果的にはうまくいかなかったとしても「ではどうする?」と一歩先の思考にたどり着けばそれでいいですし、成功したらすごいことをしたなと思います。この授業を通じて、カードゲームの創り方という知識だけでなく、失敗や成功の経験をあげること自体が大切だと考えています。

竹本氏:カードゲームという形をとっていますが、学生にとってはこういう経験はできることではないので、ものすごく“気付き”が多いものになると思います。本学は産業界にどう貢献できるか、ということを一番考えているので、あまり周囲の意見に左右されずにやっていけるフットワークの軽さというものがうまく融合したのかなと思います。

■第4回目の授業は広く一般公開することに決定

――さきほど4回目の授業は発表会ということでしたが、どのような規模で行うのでしょうか。

大河内氏:今回の課外授業は先ほどもお話ししたとおり時間があまりないので、最初の3回については集中して講義を行います。ですので、映像配信をしたりとかはせずに非公開(※授業を取材し後日レポートするという形で、授業内容をお届けする予定です。)とさせてもらいます。

 ただ、授業で作ったものは未完成であっても公開しようと思います。実際に手にとってもらい第三者からのフィードバックをもらうということも、生徒にとっては非常にためになります。概要は以下の通りです。

■“来る2016年のカードゲームを創る” 公開授業概要

日時:2014年11月26日(水) 20時から
場所:デジタルハリウッド大学(最寄り駅:御茶ノ水駅)
※御茶ノ水ソラシティのビル正面右手にある“sola city Academia”の入り口から入館し、奥のエレベーターにて3階へ。当日は専用の受付を設置する予定。
備考:入場無料、事前受付不要

竹本氏:個人的にはいまの業界にあまり希望を持っていない人とか、人材を探している業界の人とかはぜひ来てもらいたいなと思っています。今の学生の若い発想に驚くと思いますし、こういった学生たちがこれからのものを作っていくのだなと思ってもらいたいですね。

 それに学生と会話をしてほしいですね。今の学生の考えていることなどを聞いてもらいたいですし、学生にも今の業界はこういう考えをしているということを知ってもらいたいなと思っています。

『デジタルハリウッド大学』

■受講生はまだまだ募集中。来たれ若者!

 いかがだったでしょうか。今回は“来る2016年のカードゲームを創る”という授業がなぜ大学で行われるのか、どういったことが行われるのかということについてお話しいただきました。

 次回の後半では、この授業を行うことの意図について、深い部分まで掘り下げてたっぷりとお届けいたします。なお、この授業の応募は10月13日まで行っています。応募についての詳細は前回の記事やデジタルハリウッド大学のサイトを確認してください。次回もお楽しみに。それではまた!

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