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2014年11月26日(水)

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談。『ロマサガ3』のトレードがついに

文:まさん

 佐賀県や『聖剣伝説 RISE of MANA』など、さまざまなコラボ企画を展開してきたiOS/Android/フィーチャーフォン用RPG『エンペラーズ サガ』。11月25日から、GREEの頂点に君臨する『神獄のヴァルハラゲート』と会社の枠組みを越えたコラボがスタートしたということで、いろいろと積もる話もあるはず……。

 というわけで「いこう、どこへだ? 俺たちの六本木ヒルズへ!」とばかりに、コラボの立役者である2名のクリエイターにお話をうかがうため、グラニさんのオフィスがある六本木ヒルズへ行ってきました。

 お話を伺ったのは、『エンペラーズ サガ』のプロデューサー・市川雅統氏と『神獄のヴァルハラゲート』のエグゼクティブ・プロデューサーであり、グラニ代表取締役社長の谷直史氏です。(※インタビュー中は敬称略)

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談
▲左から『エンペラーズ サガ』プロデューサーの市川雅統氏と、『神獄のヴァルハラゲート』のエグゼクティブ・プロデューサー谷直史氏。谷氏は、社長にして現役のゲームクリエイターというスゴイ人です!

■コラボのきっかけは、谷社長が『サガ』シリーズを大好きだったから!?

――『エンペラーズ サガ』と『神獄のヴァルハラゲート』のコラボが実現しましたが、そもそもどちらから話を持ち掛けられたのでしょうか?

市川:GREEさんを通じて、スクウェア・エニックスからお話をさせていただきました。谷さんと初めてお会いしたのは“GREE Platform Award 2013”の会場だったのですが、オリジナルのタイトルとして登場した『神獄のヴァルハラゲート』が、いきなりGREEのNo.1アプリの座を獲得していて、非常に驚いたことを覚えています。

:ありがとうございます。実は『神獄のヴァルハラゲート』のコラボレーション先として、元気があるコンテンツの『エンペラーズ サガ』を意識していました。

 私はもともとゲーム自体が好きなのですが、特に『ロマンシング サ・ガ』が大好きだったんです。中学生の時に何周もするほど遊んでいて、本当は、グラニのIPとして『サガ』シリーズを作らせてほしいくらいなんですよ(笑)。そんな話をGREEさんとよくしていたので、それがきっかけの1つになったのかもしれないですね。

市川:最初にグラニさんへ伺った時は、六本木ヒルズにオフィスを構えられているような会社なので、もっとシステマチックにゲームを作られているところなのだと思っていました。

 でも、実際に谷さんとお会いしてみたら、その印象は間違いでした。谷さんは、社長なのに現役でゲームを作られているスゴイ方ですし、本当に『サガ』シリーズがお好きなんです。僕たちは“本当に『サガ』シリーズが好きな人たちとしかコラボしたくない”と思っていたのですが、グラニさんなら大丈夫だろうと。

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談 『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談
▲六本木ヒルズにオフィスを構えるグラニさん。フェラーリのショールームのようなオフィスは、思わず圧倒されるカッコよさでした。遊戯室には社員が無料で利用できるバーもあり、マッサージサービスなどの福利厚生も完璧。僕もグラニさんに就職したい!!

――なるほど。谷社長は、さきほど『ロマンシング サ・ガ』が一番好きな作品だとおっしゃっていましたが、今回のコラボカードも社長自ら選ばれたのでしょうか?

:そうです。でも、本当は三邪神全員を出したかった……(笑)。とはいえ、『エンペラーズ サガ』とのコラボレーションなので『ロマンシング サ・ガ』だけを選ぶわけにもいきませんから、悩んだ結果、三邪神からサルーインをSSレアとして選びました。

 『サガ』シリーズは全作品をひと通り遊んでいるので、どのキャラを選ぶのか本当に悩みました。コラボカードの中だと、サルーイン以外ではギュスターヴ(『サガ フロンティア2』)が印象に残っています。

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談
『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談
▲『神獄のヴァルハラゲート』側には、コラボレーションとして、10連ガチャに『エンペラーズ サガ』側のキャラクターカードが登場。もちろん、ギルドバトルで使用できる。

市川:『神獄のヴァルハラゲート』には『エンペラーズ サガ』にはないギルドバトルがありますし、うちのお客様が遊ばれても違った新鮮さがあると思います。

:今回、対戦時に使えるコラボカードの許可をいただけて、本当にうれしかったです。ひと口にコラボレーションと言ってもいろいろなパターンがありますが、うちのゲームを構成する重要な要素であるカードとコラボさせていただけたので、こちらも気合を入れてバランスを調整しました。サルーインが弱かったら困りますから、サルーインソードはどれくらいのパラメータにしようかな……などと悩みました(笑)。

市川:今までも他社とコラボをする機会はあったのですが、実は小林智美さんの絵を出すことはなかったんです。

 最初は、スクウェア・エニックス内でも「小林智美さんの絵を他社作品に出していいのか」と議論になりました。ですが、谷さんは本当に『サガ』シリーズがお好きな方だったので、河津秋敏と相談して、お任せして大丈夫だろうという結論になったんです。

 今回、コラボのお話を持ち掛ける前に『神獄のヴァルハラゲート』を遊んでみたのですが、本当に驚くほど丁寧に作られているゲームなんですよね。ここまで丁寧にゲームを作られている方たちなら、きっと大事に扱っていただけるだろうと安心しています。

――逆に『エンペラーズ サガ』側のコラボは、どのような形になっているのでしょうか?

市川:『魔界塔士 サ・ガ』を踏襲したイベントになっています。塔を登っていくことで『神獄のヴァルハラゲート』のキャラクターが階層ボスとして登場したり、コラボカードを入手できる専用のガチャチケットが手に入ったりする仕組みですね。

 『魔界塔士 サ・ガ』イベントは、以前にお試しに近い形で入れてみたのですが、すごく好評でした。今回は、それをアップデートさせた形で実装しました。

 『エンペラーズ サガ』は、物語を読んでもらうことをメインに据えたソーシャルゲームとしては変わったゲームです。そんなゲームだからこそのスピード感で、どんどんと新しい要素を入れていきたいと思っています。まだまだおもしろくしていくつもりです。

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▲『魔界塔士 サ・ガ』をベースとしたイベント『神獄塔士 サ・ガ』では、シリーズの原点である初代の世界と『神獄のヴァルハラゲート』のキャラクターが混じり合う特別なイベントになっている。
『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談
▲画像は『魔界塔士 サ・ガ』イベント時のスクリーンショット。

■一生働ける会社という経営理念とは?

――話は変わりますが、グラニさんは会社の経営理念として“一生働ける会社にする”“という内容を掲げています。これは、具体的にどういうことなのでしょうか?

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談

:“一生働ける会社にする”ということを人に話す時に、私はスクウェア・エニックスさんを例に出しています。私たちが学生だった時代は、『ファイナルファンタジー』の新作が発売されたら、とりあえず遊んでおくことがゲーマーとしての常識だったじゃないですか。

 それは『ファイナルファンタジー』が丁寧に作られているだけではなく、つねに時代に合わせた新しい要素を盛り込み、ゲーマーたちを驚かせてくれたからです。そして『FF』自体がそういったブランドとして認識されていたからだと思うんです。

 グラニもそういうものを目指したい。たとえ、10年後にブラウザゲーム市場が厳しい状態になっていたとしても、今現在『神獄のヴァルハラゲート』を遊んでくださっているお客様たちに、私たちが新しく作った作品をプレイしてほしい。そうやって多くのお客様の支持を得て、社員が一生働ける会社にするのが理想です。

――多くのユーザーから支持されたいということですが、そのために心がけていることを教えてください。

:基本システムの部分はどうしても変えられませんが、変えられる部分は積極的に変えて新鮮な体験ができるようにしたいと思っています。ここでいう“新鮮さ”とは、引っかかりがあるものですね。新規要素を追加した時に、アップデート情報やお知らせを読んで終わってしまうのではなく、「これは、いったいどういうことなんだろう?」と、いったん止まって引っかかるような要素を入れるように意識しています。

 他にも細かいところはいろいろありますが、『神獄のヴァルハラゲート』の場合はバトルがメインですので、定期的にバトルの戦略を変えるように調整しています。

 たとえば、後衛にまわって弓を撃つことが現在の最強の戦法だったとしたら、3カ月周期くらいでバランスを調整し、別の戦法を強くします。今までの戦法が崩れてしまうことを嫌がる人もいらっしゃいますが、変化を楽しんでくれている層にアプローチする方向性です。つねに新しいカードが最強になるのではなく、過去に手に入れたカードにも日の目が当たり、戦略に組み込みやすくもしています。

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談

――古いカードが使えるようになるのは、ユーザーとしてもうれしい点ですね。

:今回のコラボカードであるサルーインも、私は一生使ってもらえるカードにしたいんですよ。今は物理系が強いバランスにしているので、サルーインは物理系のカードにする予定です。

市川:『エンペラーズ サガ』も『神獄のヴァルハラゲート』と同じく2周年になりますが、ファンを楽しませたいという気持ちは同じです。『サガ』シリーズの歴代キャラクターたちが登場する作品ではありますが、あくまでも本編があったうえでのファンアイテムですから。

 逆に、ソーシャルゲームはファンの反応を見て新しい仕組みを入れやすいので、お客様の反応を見て作っていけるのは、これまでの『サガ』シリーズにはなかった利点だと思います。ファンを楽しませることだけを考えて作っていけたので、それが2年間続いた理由だと個人的には思っています。

――『エンペラーズ サガ』は、GREEやMobageといったプラットフォームによってコラボの内容が違っていますし、いろいろと凝っていますよね。

市川:違うプラットフォームで出すのは大変なのですが、『エンペラーズ サガ』は3プラットフォームで楽しんでもらいたいと思っています。

 だから、GREEプラットフォームだけで勝ち抜いて運営できている『神獄のヴァルハラゲート』は本当にすごいと思います。GREEだけを見渡しても、2年間続いてヒットしているタイトルは少ないですから。

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談
▲画像はMobage版『エンペラーズ サガ』。

――確かに、今はGREE以外にもMobageやdゲーム、DMMといったプラットフォームが多く誕生していますね。グラニさんは、『神獄のヴァルハラゲート』を別のプラットフォームからのアプローチは考えておられないのでしょうか?

:結論から言うとまったく考えていないです。基本的に、自分たちが一番気持ちよく仕事ができる環境を作りたいと思っていて、それができるのがGREEさんなんです。ですから、今のところは他のプラットフォームで展開するメリットをあまり感じていません。

■ネイティブアプリという挑戦

――ソーシャルゲームといえば、最近は各プラットフォームで展開していた作品が、その後にネイティブアプリになる事例が目立つようになってきましたね。

:実は、弊社もネイティブアプリをリリースする予定があります。初の試みなので、技術開発も兼ねて作ったカジュアルな作品になる予定です。

 ゲームは、リリースしてみて初めてわかることが多いんです。だから、その辺りのノウハウを得ることを目的にしています。ただ、今回の作品もかなりおもしろくなってきているので、案外ヒットするかもしれませんが(笑)。もちろん、並行して本格的な作品も作っているので楽しみにしていてください。

――ソーシャルゲームのノウハウは、コンシューマゲームとはまた違ったものがありそうですね。特に、ソーシャルゲームは事前登録があってもいきなりリリースされるものが多く、事前に告知がされていないように感じます。

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談

市川:ゲーム雑誌に3カ月前から情報を載せていたようなころよりも、今はスピード感が増していると感じます。情報を見た時に、検索してすぐに遊べないと遅いんです。だから、どちらかというと運営後の情報出しのほうが大事だと思います。

:市川さんがおっしゃっている通りで、スピード感が非常に大切ですね。私たちの業界は、コンシューマのように完璧になってからリリースするよりも、1カ月でも早くリリースするほうが望ましいんですよ。

 理由としては、お客様の反応を見ながら調整できる点が大きいです。自分たちが考えた運営視点のバランスで仕上げても、リリースした後に「違う」と言われてしまう可能性があります。それよりも、平行して作りながらエンドコンテンツを出していくほうが、お客様も一緒に作っている感覚があってうれしいですよね。そういう意味では、コンシューマのマスターアップではなく、β版にやや近いところでリリースするイメージかもしれません。

――運営の考え方としては、まさにMMORPGのようなオンラインゲームに近いんですね。

:そうですね。むしろ、弊社では“ソーシャルゲーム”とは言わずに“モバイルオンラインゲーム”と呼んでいます。

市川:ソーシャルゲームとひと口に言いますが、今は範囲が広すぎるんですよね。他に定義がないからそう呼んでいるだけで。

:人によってソーシャルゲームと聞いてイメージするゲーム内容も違いますし、私はモバイルオンラインゲームと呼ぶのが一番わかりやすいと思いますね。

■モバイルオンラインゲームの今後について

――今は、コンシューマに近いリッチなスマホアプリが増えている印象です。そのことから、ソーシャルゲームが衰退していくのではないか、いつか終わるのではないか、という声を耳にすることがあります。こうした意見に関して、お2人方はどう思われますか?

『エンサガ』『神獄のヴァルハラゲート』特別対談

:終わるわけないですよ(笑)。携帯電話は、きっと近い将来に身分証レベルで1人1個持っていないと成りたたないような必需品になると思います。世界的に見ても、爆発的に広がっていくのは目に見えて明らかですし、そこに対してのインターネットコンテンツが廃れるとは考えにくいですね。むしろ、今よりも多様化していくでしょう。コンシューマゲームのようなものを携帯機代わりに遊ぶ人もいれば、逆にそうしたゲームが肌に合わない人も当然いるわけですから。

市川:谷さんの言う通りで、プラットフォームが多様化してもなくなることはないと思います。プレイステーションが出たころにゲームセンターがなくなるという説がありましたが、なくなっていないですよね? 今はゲームセンターならではの楽しさを持ったゲームが続々と出ているじゃないですか。

 弊社の『ロード オブ ヴァーミリオン』や『ガンスリンガー ストラトス』も人気がありますが、昔であれば、ゲームセンターにスクウェア・エニックスのゲームが並んでいるなんて想像できませんでした。そのような形で、なくなるのではなく変化していくのだと思っています。ただ、同じようなゲームが流行る時代はもう終わったのでしょう。むしろ、今はアーケードよりもコンシューマゲームがなくなると言っている人のほうが多いんじゃないですか?

:そういう説もありますが、コンシューマはコンシューマでなくなるわけがないですよね。コンシューマでしかできない表現は当然ありますから。やはり、巨大な画面でバンバン敵を倒していく気持ちよさは、モバイルでは体験できませんからね。そうしたゲームは継続して残っていくと思います。むしろ、今はモバイルとコンシューマの両方で遊ぶ人も結構いらっしゃいますよね。

市川:むしろ、プラットフォームの垣根はなくなっていくのではないでしょうか。うちの子どもは、よくiPadを使ってYouTubeを見ているのですが、こういう子どもたちが育って就職した時に、世界はどう変わっていくんだろう、といつも考えています。

 僕らが子どものころは、ゲームが高くて買えないという障壁がありましたが、今は基本無料のゲームが多く、障壁がまったくない状態ですからね。そのうち、モバイルとコンシューマのマルチも当たり前になってくると思います。弊社の『ケイオスリングスIII』がそうですね。そのような形で垣根がなくなっていくでしょうし、その垣根を意識している人のほうが減っていくと思います。

――それでは最後に、『神獄のヴァルハラゲート』と『エンペラーズ サガ』の今後の展開について、それぞれお話できる範囲で構いませんので教えてください。

:リリース当初から明言していますが、新コンテンツを作るくらいの労力で新しい機能やイベントを作るという弊社の方針は変わっていません。最近、大きなバランス調整としてカードが覚醒するようになりましたが、バランス自体も積極的に変えられるところは変えていきます。『神獄のヴァルハラゲート』に関して手を抜くつもりはまったくありませんし、いい人をどんどん採用して運営をさらによくしていきたいと思っていますので、これからも引き続きよろしくお願いします。

 それから、おかげさまで『神獄のヴァルハラゲート』は2015年1月末に2周年を迎えることになりました。今回のコラボもそうですが、2周年記念でも盛り上がれることを今から考えています。つねに継続して驚きを提供していきたいと思っていますので、ぜひ遊んでみてください。

市川:『エンペラーズ サガ』では、『ロマンシング サガ3』のミニゲームだった“トレード”を実装予定です。これは、システムも含めて『ロマサガ3』で遊べた“トレード”のイメージそのままのゲームなんですよ。

 さらに現在、GREE版では物語が第3章のクライマックスを迎えていますが、第4章もすでに準備しています。そちらでは新主人公も登場しますし、またまだいろいろと新しいことをやるつもりなので、ぜひ遊んでみてください。『サガ』シリーズは25年間続いていますが、その中で『エンペラーズ サガ』の2年間が果たした役割は大きかったと思っています。これからもゲームの内外でいろいろなことをやろうと考えていて、佐賀県さんとのコラボもまたやりたいと思っています。

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