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2014年12月26日(金)

2つの『アイドルマスター』ブースターの開発秘話をブンケイ・是空両プロデューサーに聞く【最終回】

文:ファイ

 こんにちは! TCG担当のファイです。ブンケイPこと田中文啓さんと是空とおるさんに『ヴァイスシュヴァルツ』と『ChaosTCG』で同時発売された『アイドルマスター』のブースターについて語ってもらう連載企画もいよいよ最終回です。

『ブシロード』 『ブシロード』

 今回はそれぞれの開発秘話やお気に入りの1枚を聞いてみました。最後には衝撃の新展開もありますよ!

■夢の対決が実現できる。それがキャラクターゲームの真骨頂

――それぞれの作品の製作秘話を教えてください。

是空とおるさん(以下、是空さん):秘話になるかどうかは微妙なんですが、先にブンケイさんにお聞きしておきたいんですが、『ヴァイスシュヴァルツ』での『アイドルマスター』のカード種類はかなりありますよね。既存のカードとまったく同じ能力になってしまうなどの悩みとかってありました?

田中文啓さん(以下、ブンケイP):ブースター『THE IDOLM@STER』とエクストラパックの『THE IDOLM@STER Dearly Stars』は、しまP(現ヴァンガードプロデューサーの島村匡俊氏)が担当していて、僕はバンダイナムコゲームスで監修をする側だったのですよ。で、その次の『アイドルマスター2』と『アニメ「アイドルマスター」』は僕がブシロードで担当しました。

 僕の野望としては、『アニメ 「アイドルマスター」』まで2年かけてアイドル13人の全員をレベル3のカードにすることを目指していて、カードプールもかなり広がっていたので、これで765プロの各アイドル単デッキが作れるようになったかなと。

 その一方で、1つのブースターパックとしてはそれぞれのアイドルに設定されているレアリティも調整しなくてはなりません。例えば“春香は全カードがレア以上で、律子は全部コモン”とかだったら僕はまず「律子の扱いがぞんざいじゃー!」って怒るじゃない?

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《“今を大切に”春香》▲《“今を大切に”律子》

是空さん:大丈夫です。そんなことしたらブンケイさんだけじゃなくて、お店さんもユーザーさんも怒ります。

ブンケイP:あ、でもパックをいくら開けても律子ばっかりだとそれはそれでうれしいような……。まあいいや。話を戻して、レアリティやレベルのバランスも考えながらもひとまず完結しました。

 そして、ディレクションを今の『ヴァイスシュヴァルツ』スタッフに任せた今回の『劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』』では、アイドルごとに単デッキを作っている人向けのカードと、『アイドルマスター』でネオスタンダードデッキを作っている人向けのカードが用意されました。

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《“今を大切に”小鳥さん》▲《輝きの向こう側へ! 千早》

 前者は《“今を大切に”○○》のシリーズに多く収録されていて、今までの単デッキを強化できるようなデザインを目指した様です。小鳥さんのレベル3もここで収録できましたので、小鳥さん単デッキもいけると思います。

 後者は《輝きの向こう側へ! ○○》に多く収録されています。今までのデッキを総合的にパワーアップさせるカードになるようにディレクターが調整してくれました。大会に参加するような方から、友人同士ファンで遊ぶ方まで『アイドルマスター』のデッキを使っている人って一定数いまして、前者も後者も「このデッキでアイドルを輝かせたいんや!」って人を後押しするようなカードではないかと思います。

是空さん:なるほど。確かに愛着を持って使ってくれている人は多いんですよね。レアリティの設定とか、いろいろなタイプのユーザーさんのことを一応は考えてますよーって話はなかなか表には出ないので、よし。ちゃんと開発秘話になってきた(笑)。

 『ChaosTCG』での『アイドルマスター』は、『ぷちます!-プチ・アイドルマスター-』に続く2作目になります。先ほど(第1回目の記事)も語らせてもらいましたが、『アイドルマスター ワンフォーオール』で当初予定していたテキスト能力などには、アイドルたちの性格や関連性がカードの中に見えてきませんでした。

 あと、ぶっちゃけ能力が弱々しいカードばかりでした。ですので、僕からブシロードさんに相談しましたオーダーは「現環境の全部のデッキを倒せる内容にしよう」でした。

 もちろんこの相談は、開発チームやテストプレイヤーから「現環境が激変して急速に壊れますよ」と言われました。でも、僕は『アイドルマスター』はそれくらいチャレンジすべきタイトルだと思ってましたので、「『アイドルマスター』で環境が壊れるなら望むところ」って言ってしまったのですよ。はい。言ってしまったのです。

ブンケイP:言っちゃったね。僕は怒られても知らないよ(笑)。

是空さん:やっぱり怒られますかねぇ……。もちろん、環境のインフレを加速させたいわけではないので、開発チームも“壊そう”と思って商品は作りません。僕も同じです。これは約束します!! ただ、少しアクセル踏んで魅力的な商品にしたかった気持ちが強かったので、過激な言葉を使いました。それに、『アイドルマスター』人気を考え、新規のユーザーさんが大量に来てくれるであろうことも考慮したかったんです。

 『ChaosTCG』は、ルールが複雑な部分もあります。その環境下で新規ユーザーさんがいままでのユーザーさんとも対等に戦える環境を提示したかったですし、新規の皆様に「『アイドルマスター』は強い!」って思ってもらいたい気持ちもありました。

 『アイドルマスター』発売以前から遊んでくれてる既存ユーザーの皆さんに対しては“『アイドルマスター』以外の自分の嫁でどうやって『アイドルマスター』デッキに勝つか”を考えてくれると信じていた部分もあります。

 結果として、それぞれのアイドルの特徴をカード能力として出しつつ、春香はパートナーでもフレンドでも強いカードに、千早や美希は1人で十分強いカードに仕上げています。ブンケイさんに相談した際にもらったアドバイスもあって、パートナー向けのカードには特にこだわることができました。

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《全てを歌に捧げる少女「如月 千早」》▲《双海姉妹のカッコイイ系by「双海 真美」》

ブンケイP:僕がいいなと思ったのは、《全てを歌に捧げる少女「如月 千早」》と《双海姉妹のカッコイイ系by「双海 真美」》が対決した時かな。千早の能力でバックヤードのカードを増やしていくと、真美がどんどん千早のペースを乱していくギミック。僕の頭の中で「ああ……なるほどな」って余裕で想像できましたからね。

是空さん:もちろん全てを意図的に構築できたわけではありませんが、各アイドルの個性を追求していった結果、勝手にそうなったものもあります。皆さんなりの解釈で想像してもらえればうれしいですね。

ブンケイP:僕は『ヴァイスシュヴァルツ』も『ChaosTCG』も、他のタイトルと対戦するっていうのはおもしろいと思っているね。春香対チェインバー(※1)とか、ここでしかあり得ないからね。

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《輝きの向こう側へ! 春香》▲《マシンキャリバー チェインバー》

ブンケイP:『ChaosTCG』なら、響対タカオ(※2)は見てみたいね。

是空さん:それは見たい!(笑)

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《太陽のような笑顔「我那覇 響」》▲《愛のために“メンタルモデル”「タカオ」》

※1:ブースター『翠星のガルガンティア』に収録されているもうひとりの主人公とも言えるロボット。
※2:ブースター『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』に収録されているキャラクターで、アニメでの声優はどちらも沼倉愛美さんが担当。

ブンケイP:そういった夢の共演ができるのが『ヴァイスシュヴァルツ』や『ChaosTCG』の楽しみの1つですが、同時に『アイドルマスター』のカードだけしか持ってないお客様もいます。

 『ヴァイスシュヴァルツ』のカード種類数は4桁に達しているので、全部のカードを追うのはなかなか難しいですよね。だから、1つのタイトルを追いかけていくのはもちろん正しいと思います。

 その中で、これだというデッキを作ってもらいたいですし、そのデッキに勝てるデッキを作ってもらいたい。対戦することで、自分だけでは気付かなかった“隠された刃”のようなカードを見つけてほしいわけです。『ChaosTCG』では、《いつも一生懸命「高槻 やよい」》が今回のそれではないかともっぱらのウワサですけども。

是空さん:実は、このカードは下方修正しているのです。最初はもっと強かったのですよ。ターン1回がなかったりとか、タイミングがメインじゃなくてバトルだったりとか。

 ちょうど開発も佳境だったので、現場が「じゃあそれでいこう」ってことになっていたのですが、僕も確認して「バッバカな!?」ってカードになっていてツッコミを。開発スタッフが「是空さんが強くしろって言ったんじゃないですか!!」と言いだすので「環境壊せという意味は冗談だからね!?」と意志疎通しながらブレーキかけていきました(笑)。

ブンケイP:やよいは節約しすぎだよねぇ……。あれでしょ「今日は《キラメキラリ》と《Destiny》が特売です~」ってやつだよね。

是空さん:そうなります。もちろん最終的には開発スタッフ&テストチームに無理をしてもらって、今の形になりました。こんな感じで、カード1枚1枚に開発秘話があるのですよ。

ブンケイP:『ヴァイスシュヴァルツ』だと美希のカードの特徴に“愛”を入れようって言ったのは僕です。“音楽”以外で付けるといったらそれしかないなと思ってね。千早は基本的にこれまで“音楽”しか特徴がありませんでしたが、今回は“カメラ”も特徴になりました。この理由については、ぜひ劇場版を見てもらいたいですね。

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《いつも一生懸命「高槻 やよい」》▲《“今を大切に”千早》

ブンケイP:じゃあ最後に“お気に入りの1枚”を話そうか。

是空さん:1枚ってムリじゃないですか? あと、ブンケイさんは律子以外のカードを選んでくださいね。

ブンケイP:じゃあ《雨に想う小鳥さん》かな。

是空さん:あー小鳥さん取られたー(笑)。

ブンケイP:ゲームのシステム的に言うと、《“今を大切に”小鳥さん》が思い出にあるイベントカードの枚数を参照するので、それをサポートするデザインになっています。で、この《雨に想う小鳥さん》のカットは、外を見ている小鳥さんにするか、プロデューサーを見ている小鳥さんにするかでディレクターと話をしました。

 見比べて、横顔よりも少しこちらを向いているカットの方がかわいい! と思ったのでこちらを採用しました。

是空さん:『ChaosTCG』も小鳥さんですね。《影で支える「音無 小鳥」》はキャラとしての性格と能力がすごくマッチしたカードになったと思います。キャラクターカードなので舞台に登場することもできますし、能力を見てもらえればわかるのですが……。

ブンケイP:イベントカードみたいな能力だね。

是空さん:そうです。イベント的に手札から使えるカードなのです。小鳥さんってみんなを影で支えてくれるポジションなのでステージには立たないですよね。それだとイベントカードに小鳥さんを入れればいいんですが、そこは『ChaosTCG』、なんとしても小鳥さんをパートナーにしたい人もいるはずです。そこでこのようなキャラカードだけどイベントカード的にも使えるこの能力になりました。

 あと、完全に裏話ですが、当初は他のタイトルと同様にイベントカードとしてこの能力をデザインしていたのですが、小鳥さんのおかげでイベントカードを1枚節約できました。本当にありがとう小鳥さん。

『ブシロード』 『ブシロード』
▲《雨に想う小鳥さん》▲《影で支える「音無 小鳥」》

ブンケイP:あと『ヴァイスシュヴァルツ』でどうしてもプッシュしたいのが《成長を見守るプロデューサー》かな。最初に登場した時はほぼ役に立たないのですが、思い出という名のハリウッドで修行してきて帰ってくると、アイドルをパワーアップさせる最強のカードになるデザインです。

 レベル2なので思い出に行って帰ってくる猶予があるのかなと思いますが、劇中でもいつハリウッドに行くか本人も悩んでいましたからね。

『ブシロード』
▲《成長を見守るプロデューサー》

是空さん:『ヴァイスシュヴァルツ』では《虹色ミラクル》もイイっすよね。響のちょっと出遅れてる感じとか、あずささんがちょっと涙してるとか、なんというクライマックス感!!

ブンケイP:《虹色ミラクル》は劇中でハリウッドに行ったプロデューサーが帰ってくるカットなのですが、春香の後ろにいる伊織とか真と雪歩が隣にいるとか、いろいろ注目してほしい1枚ですね。

『ブシロード』
▲《虹色ミラクル》

――では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

是空さん:そうですね。ちょっと危ない発言をします。「まずは買え。話はそれからだ」でしょうか。これは僕の皆さんに対してのワガママかつ、僕の直球意見なのですが、たとえば発売されておらず、ほかのカードとの連携がわからない状態である“今日のカード”のコーナーで紹介しているカード1枚だけを見て、そのカードを弱いとかデッキに入らないと言われる方がいらっしゃるのは見ていて非常に辛いです。

 全部のカードを強くしてはゲームになりませんし、すべてはバランスだと思うのです。弱いと言われてしまったカードのキャラにも必ずファンがいるので、それらも考慮してほしいなぁ、と。皆さんに支えられている商品ですので、ワガママな意見であることは理解してるですが、楽しくカードゲームしていくためにも、皆さんにお願いし続けたいです。

ブンケイP:ストレートに言ったね。僕は言えないなぁ。でも、“今日のカード”って“われわれが見せたい1枚”を公開しているのですよ。カードセットのすべてを見せてしまうと、発売ギリギリまで何もお見せできなくなるので。

 じゃあ毎日0/0/3,000のバニラ(※3)だけを紹介したら、もっと他のカードを見せろといわれてしまいますよね。だから、少しずついろいろなカードを紹介しているのです。なので、発売の前週にもう見せるカードがない事態にならないように順番を決めています。

※3:レベル0、コスト0、パワー3,000で能力を持たない『ヴァイスシュヴァルツ』の基本カード

是空さん:“今日のカード”はあくまで発売前の情報です。トライアルデッキやブースターパックは、スタッフ一同が精魂込めて創り上げたものです。購入いただいて、期待に添えない商品だと感じたら、どうぞ遠慮なくご意見をください。それらが僕の言うところの「まずは買え。話はそれからだ」です。押しつけるつもりはないので、冗談半分で覚えてもらえればうれしいです。

 結果としていろいろなご意見をいただきますが、それを自分の考えまで昇華し、しっかりと開発に伝えるのがアソシエイトプロデューサーとしての僕の役目だと思っています。

ブンケイP:もっと話したいね。なかなかこういう機会はないので、ユーザーさんが思っていることについて、じっくり話をしたい。

是空さん:確かに……では、別途機会を設けてやりませんか? 『アイドルマスター』の商品が発売されて、実際に購入してプレイした皆さんの意見を募集して、それについて話すのはどうでしょうか。もちろん、万が一、うっかり、苦情やら苦言がありましても、僕の答えられる範囲でお答えしたいですね。

ブンケイP:できれば、実際にデッキを自力で組んで、回してみた人の意見も聞いてみたいです。よかった点、改善してほしい点、感想など、いろいろとお寄せください。よろしくお願いします。

■そんなわけで、最終回と銘打っていますが新企画となって続くことになりました

 ブンケイPと是空とおるさんに、『ヴァイスシュヴァルツ』と『ChaosTCG』の2つのタイトルで同時に発売された『アイドルマスター』について熱く語ってもらいましたが、いかがでしたでしょうか。

 そして最後にもあったように、今回で終わるはずのこの企画でしたが、皆さんの実際にプレイしての感想やご意見を、両プロデューサーに直接聞いてみる新企画へ続くことになりました! 2015年1月10日まで受け付けていますので、ぜひ下記のフォームからお寄せください。頂いた意見は僕が責任を持って届けます。それではまた!

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データ

▼『ヴァイスシュヴァルツ ブースターパック 劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』』
■メーカー:ブシロード
■発売日:2014年11月28日
■希望小売価格:1パック314円+税(1ボックス20パック入り)
 
■『ヴァイスシュヴァルツ ブースターパック 劇場版「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』の購入はこちら
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▼『ChaosTCG ブースターパック アイドルマスター ワンフォーオール』
■メーカー:ブシロード
■発売日:2014年11月28日
■希望小売価格:1パック314円+税(1ボックス20パック入り)
 
■『ChaosTCG ブースターパック アイドルマスター ワンフォーオール』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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