2015年2月7日(土)
2月6日に渋谷ヒカリエで“Game Graphics Groove #1”が行われました。そこで行われたiOS/Android用アプリ『ファイナルファンタジー レコードキーパー(FFRK)』に関するプログラムをレポートします。
Unity、Unreal Engine、Cocos2d-xなど、多くのツールが活況を呈し、コンソールだけではなく、スマホゲームの画質も大幅に上がってきています。
このイベントは、クリエイティブによるゲームの進化をさらに加速させるためのものです。
ゲームグラフィックのクリエイターが、最新のヒットタイトル開発のノウハウを余すことなく共有します。
クリエイティブの視点から、ゲーム開発の効率化や、表現力の向上、そして、新しい体験の具現化について、突き詰めていけるような情報をご紹介いたします。
本イベントはDeNA、グリー、ポケラボの主催で行われたゲームグラフィッククリエイター向けのセミナーで、さまざまなアプリ開発者やグラフィッカーが登壇し、非常に興味深い講演が行われました。この記事では“『ファイナルファンタジー レコードキーパー』アニメーション制作の濃ゆい話”のプログラムをクローズアップしてレポートしていきます。
登壇したのはDeNAのデザイン戦略室のメンバーであり、UXデザイングループの白井俊治さん。人気アプリ『FFRK』のグラフィックがどのように作られていったのか、そのテクニックについて語られました。
白井さんはもともとはWeb業界の出身で、DeNAに入社してから2年ほどたつとのこと。ブラウザゲームのFlash設計や『三国志ロワイヤル』の開発などを経て、今は『FFRK』のアニメ制作チームのリーダーに。
ゲームの構造となるアーキテクチャについては今回の本題ではないということで、軽い解説ですまされました。社内開発によるWeb Viewをバックグランドとして使いつつ、キャラやエフェクトはGL Viewでそこに重ねるという、ハイブリッドな画面構成となっているそうです。
データの作成にはAnimation Builderという社内製のツール群を使用。データはすべてJSON(ジェイソン:JavaScript Object Notation)形式で書き出し、管理やデータ共有がしやすい形にしているとのこと。
敵データの作成については、開発当初から莫大な数のザコ敵をすべて個別管理することは工数的に無理だと判断し、簡略化して共通管理をする判断に。基本的には配置場所のみを個別管理にするくらいで、作業の省力化をはかったとのこと。
逆にボスについては原作の追体験をさせるために、フルカスタマイズをできる仕様を徹底したとのこと。例えば『FFIV』のカルコブリーナが6体の人形に分離・合体するような演出もしっかりと再現し、さらにモーションアニメやオリジナルの演出なども加えて、ゴージャスに仕上がっていったそうです。
このあたりの再現度の高さは、この記事を読んでいる『FFRK』ユーザーならよくご存知かと。『FFIV』のミストドラゴンの演出とか、音も動きも素晴らしかったですよね!
ですが、そのクオリティの高さのある意味の代償として、ボス敵のデータは白井さんにしか作れないという結果に……。
その解決策の一環として、独自にスクリプトを組むことで作業を自動化することに。莫大な数のデータを手動で直すことは非常に困難でしたが、スクリプトの回収によって、最悪の自体は避けられたそうです。
とはいえ、だからといってデータを量産するためには人手が必要です。そこで白井さんが決意したのは、人材教育でした。
その際に白井さんが考えたフローは“前提として人はミスをする”こと。そのミスを防ぐために“手順を整理して明確にして、いつも同じ手順でやる”ことを目指します。そうすれば“誰がやっても同じ作業結果”となり、ミスがなくなるわけです。
クリエイティビティは人それぞれの考え方がありますが、作業の部分については共通化をすることでミスを減らすことが大事という考え方でした。
まずは社内Wikiの充実。ハマリポイントなどを追記することによって、新たに参加した人が先人の知恵をもらえるメリットがあります。
そして、とにかくスクリプトを利用して作業を効率化&パターン化を進めたとのこと。例えば“フォルダを指定する”という一見すると単純な作業においても、それを手動にすると思わぬミスでデータコピーを失敗する危険性などがあったため、スクリプトでの管理でミスが入る余地をなくしていったそうです。
できない人、ミスを頻発する人は、使っているツールが悪いことも多かったとのこと。そこで便利ツールの情報共有を行い、作業環境を統一していくことで、相対的にミスを減らしていったそうです。
意外な盲点として、ITスキルが低い人が多いことも問題だったそうです。エンジニアではなくデザイナーであっても、gitやコマンドラインの知識はあったほうがよいとのこと。特にテキストエディタでデータを直接編集できるかどうかは、作業に大きく影響すると語っていました。構造を理解しておかないと、作業が非効率になることも多いそうです。
まとめとして、昨今のアプリはデータが複雑になってきているので、開発に携わるのならデータの理解力は必須になっていきているとのこと。何を基本とするかはプロジェクトしだいですが、デザイナー職であっても基本的なITスキルを勉強していくことが大事ですと締めくくっていました。
というわけで、ゲームを遊ぶ側である我々にとっては難しい話の部分もありました。でも、なぜ『FFRK』のグラフィックのクオリティが高いのかという理由の一端を知ることができた気がします!
現在開催中の『FFX』のユウナを仲間にできるイベント“偽りの花嫁 ~突入!聖ベベル宮~”のボス・シーモア:異体もかなりウネウネ動きますので、まだ見ていない方はぜひゲームを進めてみてください。
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