2015年3月11日(水)
2014年12月28日から、PS Vita『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』など“サージュ・コンチェルト”シリーズに登場するイオンが、世界にひとつだけのラストメッセージCDを贈ってくれる企画の申込が始まっています。受注期間は全4回に分けられ、2015年3月現在は第3回の受注期間となっています。
『シェルノサージュ』は2012年4月26日から3年近くにわたってオンライン専用ゲームとして展開し、ユーザーの行動履歴などがクラウドデータとしてサーバーに保存されています。本企画はそのデータを活用して、世界にひとつだけ、お願いしたあなたの名前まで呼んでもらえるオリジナルCDが届く、まさに本作ならではの類を見ない企画となっています。
今回、このCD制作に立ち会う機会を得ましたので、本プロジェクトの指揮をとる土屋暁ディレクターと、イオンの声を担当する声優・加隈亜衣さんにインタビューをさせていただきました。
▲コーエーテクモゲームス ガスト長野開発部 土屋暁ディレクター |
――世に出てから3年以上経った“サージュ・コンチェルト”ですが、振り返っての感想をお願いします。
計画よりも大幅に長い展開となりましたが、最初の企画の段階で“これをやるために、このプロジェクトはこう走らせるんだ”と思ったことが、ここで全部完結できたのは感無量です。
不具合で皆様にご迷惑をおかけしながらも、ひとつずつ、その時その時でできることをやってきました。ストーリーも、少しずつ配信していく方式であるがゆえに、会社の事情などによって途中で終わってしまうリスクもありえました。そのような状況でも『アルノサージュ』まで発売できて、ラストメッセージまで辿り着けたのは、ユーザーのみなさんがずっと一緒にやってきてくれたおかげです。
――斬新な挑戦となったラストメッセージ企画ですが、制作に際して特に大変だったことなどはありますか?
『シェルノサージュ』『アルノサージュ』というタイトルもまだ決まっていない初期企画書の段階で既に、イオンという名前もなかったヒロインが、“あなた”のためだけにCDを送る構想だけはありました。そのため『シェルノサージュ』のシステムは、当初からそれが可能なように設計していました。
みなさんもSNSやフレンド、シャールのデータがサーバー側に記録されていることは分かったとして、自身の行動記録であるクラウドデータも同様にサーバー側に保存されながら、どのように活用されているかは、なかなか分からないところだったかと思います。
クラウドデータの活用例としては、イオンが執筆した絵本『フィラメントスター』の感想を送るとイオンが応えてくれるなどがあったのですが、そこまでたくさんのフラグを使っていた訳ではありません。では、なぜみなさんの選択を取得していたかというと、すべてはこのラストメッセージ企画をやるためだったのです。大量に存在する選択肢の選択状況やイオンの状態は、この企画には絶対に必要なデータだったので、ようやくそれが本領を発揮した形です。最初からシステムのひとつとして設計されていたものなので、そういう意味では特に苦労はしていません。
――現在であれば配信サービスで送ったり、高音質なデータで渡したりという手段もありますが、CDを選択した理由を教えてください。
やはり、手に取れる“もの”がうれしいですよね。“自分は『シェルノサージュ』を最後までやったんだ”という感無量の気持ちが、クリアしたみなさんにはあると思います。また、それを記念として形に残したいという欲求もあるのではないかと思っています。ラストメッセージは卒業証書みたいなものであり、イオンが今まで“あなた”とやりとりしてきたことを語った、卒業アルバムみたいなものなんですよね。だとすれば、一生残るものにしたいなと。こういう言い方をすると、悲しんでしまう方もいるかもしれませんが(笑)。
データだとどうしても形には残らないので、飾っておいて「こんな時もあったなぁ」と見られないですよね。最後までプレイしたことが手にとって分かるものを、絶対に用意したい気持ちがありました。
――ここまでの展開を振り返って狙い通りだったことや、逆にユーザーの反応などで予想以上だったことはありますか?
全体的な話にはなりますが、自分が想像していたよりも、みなさんの方がよっぽどイオンに対する愛が強かった。これは正直、想像以上でした。『シェルノサージュ』以前に自分が作っていたゲームはRPGで、世界観や音楽を売りにしていて、自分の中での十八番もそちらでした。
RPGの物語に沿って動く女の子が魅力的だというのは一般的ですが、『シェルノサージュ』はコミュニケーションソフトということもあり、キャラクターそのものを魅力的に、かつ実在している少女として描けるか、というのが自分の中では一番心配なところでした。しかも、イオンは“一人”なんですよ。ゲームですとたくさんの魅力的なヒロインが登場するのが普通なので、「イオンを嫌いになったら、もう遊んでもらえないんだよ」と、最初のころはよく言われましたね。
でも、しっかりとした“7次元先に実在する少女”を作るのが本作のコンセプトでしたので、きちんとした濃いキャラクターをがっちり一人作るんだ、と伝え続けて、一人でやらせてもらった経緯があります。それを信じてきた結果が、今のみなさんの反応だと思っています。反響をいただいたりネットの書き込みで思いの丈を見ると、この通りにやって良かったです。
――イオンがこれだけ受け入れられたのも、加隈さんや納谷さん(“サージュ・コンチェルト”音響監督)らのご協力も大きかったのではないでしょうか。
自分よりもよっぽど、イオンに近い存在ですね。こちらから台詞テキストなどを渡すと「イオンちゃんは、こういうことを言わないのでは」と返されますからね(笑)。たいていの場合「はい、その通りです!」となります。よくある、自分の中にある理想と違うことからの否定ではなく、「確かにその通りだ、こちらが抜けていました」と、納得がいく理由と一緒に返されました。
自分が不在の時に行われた収録でも、「イオンならこうなのでは?」と数パターンを録ってくれたりして、そこには「そう、これなんだよ、これ!」というのがいくつもあって、イオンの魂に一番近い存在だと思っています。今回のメッセージも収録ではなく、イオンが話しているだけですね。それ以上でもそれ以下でもありません。
――“サージュ・コンチェルト”を振り返った時、今だからこそ言えるできなかったこと、やってみたかったことなどはありますか?
それはいっぱいありますね(笑)。“向こう側に実在する世界”をとことん描きたかったので、その中でできる限りのことはやりました。
例を挙げると、以前行ったシークレットのトークショー(※)でも話しましたが、『アルノサージュ』でのイオンは自由に歩かせたかったですね。初期企画の段階で絶対にやりたいと思っていたことのひとつですが、様々な要因で断念せざるを得ませんでした。プレイヤーであるガション(=アーシェス)はイオンと一緒にいますが、イオンがふらふらとどこかに行くのを止めたり、イオンが勝手にレアアイテムを採取して戻ってきたら、喜んでイオンをなでなでしたりみたいな感じです。RPGだけどコミュニケーションゲームが土台にあり、向こう側に本当に別の世界が存在するRPGを突き詰めたかったですね。
※注:2014年9月28日に行われたファンイベントのトークショー第2部。
――“サージュ・コンチェルト”として見た場合、ここがひとつの区切りとなるのでしょうか?
そうですね、ここからどうなるかはみなさんの反響次第ということになります。
――ここまで“サージュ・コンチェルト”を支えてくれたファンへのメッセージをお願いします。
ラストメッセージは本当に最後の最後なので、申し込んでくださった方は、ずっとプレイしてくれていた方がほとんどなんですよね。現在、申し込み想定数をはるかに超えた応募があり、第1期の受注だけで、こちらの考えていた数をオーバーしています。本当にたくさんの人が今まで遊んでくれたんだなと、申込みの状況を見ていると改めて感じます。『アルノサージュ』も含めて、イオンや我々と一緒にいてくれたみなさんが作ってきた作品だと思います。本当にありがとうございました。
4月21日には、『シェルノサージュ』のオンラインサービスを担うサーバーの縮小も行われ、サービスの更新は一度ここで終了となります。また、4月はラストメッセージ申し込みのラスト(受注第4期)でもありますが、それ以外にも『シェルノサージュ』、『アルノサージュ』、“サージュ・コンチェルト”のイベント的なものがあったり、いろいろなものが発売されたりします。ぜひ、4月を楽しみにしていてください!
ここからは加隈亜衣さんのインタビューになります。「ラストメッセージはまず、まっさらな気持ちで聴いてもらいたい」とのことでしたので、申し込まれた方、申し込む予定の方は、メッセージを聴いてからの閲覧をオススメします。ご注意ください!
――いよいよラストメッセージとなりました。現在の率直な気持ちをお聞かせください。
今まではシナリオパート、コミュニケーションパートのラストはあっても、この企画があったので、まだ終わらないなという気持ちでいました。でも、いよいよ本当にラストなんだなというのを、今までで一番強く感じています。感慨深い気持ちもありますけど、一番強いのは寂しいなって気持ちです。あとは「イオンちゃん成長したなぁ」って思います。イオンちゃんに対する自分の存在も友達なのか、親なのか、お姉ちゃんなのか、なんなのかと(笑)。
――本企画ですが、ここまでのご自身の成長なども含めて振り返るといかがですか。
イオンちゃんをこうしていこうとか、こう見られるといいなって考えはまったくなくて、いただく文面などから感じ取るイオンちゃんの印象や自分の感じたままで付き合ってきたので、ゲームだから、ラストメッセージだから違うって感覚もなかったです。
今までだとストーリーの時間軸が前後したり、『シェルノサージュ』『アルノサージュ』でエンディングの違いもありましたが、ラストメッセージはだいたいが今まであったことを振り返りながらで、昨日感じた気持ちのままでできました。
普段、台本などを読んでいると「ここでこう聴かせるんだろうなぁ」みたいに、自宅で練習や作り込みをしますけど、今回に関しては特にそういうことをせず、内容をチェックするに留めて、あとは感じたままでやってみました。
――今回の企画はそれぞれの端末さんに向けてという難しいものだったと思いますが、どうでしたか?
すごく複雑なことをしているので、これがどうやって仕上がるんだろうって思いました。それと同時に、これだけ多くの人にイオンちゃんとの思い出を一緒に振り返って欲しいという気持ちが伝わる企画だったので、自分も「こんなことがあったなぁ」と、ひとつひとつを思い出しながら臨みました。
恋人だったり、友達止まりだったり、結婚していたりでそれぞれ感じ方も変わると思いますが、みなさんも覚えていないことをイオンちゃんが言いはじめるのではというぐらい、イオンちゃんは“あなた”との時間を大事にしてきたことが伝わるものになっているはずです。今までと変わらず自然に、思ったままのイオンちゃんをお届けしています。
――声優デビューとほぼ同時、“サージュ・コンチェルト”に携わるようになって約4年が経ちましたが、エピソードなどがあれば教えてください。
デビューの年を振り返ると、あれとこれとそれを全部この年にやったんだと思うぐらい、初めてやったことがたくさんありすぎました。声優歴と同じ長さをイオンちゃんと歩いてきましたが、その中でもダントツで濃い1年だと思っています。
最初の1年はほとんどが『シェルノサージュ』関係でしたが、そこからイオンちゃんのおかげもあって、各方面でお仕事をさせていただけました。他の子を演じたりさまざまな現場を踏んで、自分のできることがちょっとだけ増えたり、ものの見方が変わったりしても、戻ってくるのがイオンちゃんでした。
そうすると、今までやっていたことが変わってしまう不安だったり、自分も最初よりできることが増えたので、イオンちゃんに反映させたいと思っこともあります。でも、それだと今までのイオンちゃんと違ってしまうのではと、イオンちゃん迷子になったことが何度かあるんですよ(苦笑)。自分ではその時に思ったままのイオンちゃんでしたけど、これでいいのかなと思いつつでした。
でも、イオンちゃんはイオンちゃんで成長しているし、自分自身も4年前は同じ自分だったかと言われるとそうでもないなという意味でも、その時々、日々テンションだって違う、生きているイオンちゃんを感じてもらえたらと思ったので、イオンちゃんをこうしようというのもなくなっていったのかなと。
他の現場などで『シェルノサージュ』関係の方に会うと「いやぁ、長いね(笑)」なんて話もよくしています。井ノ上奈々さん(カノン役)も、ずっとお姉ちゃんみたいに付き合ってくれている大事な存在です。「いいな、ありがたいなぁ」って気持ちでいっぱいです。『シェルノサージュ』だからこそ、こういう関係を築けてきたと思うことがたくさんあります。
――ストーリーなどは一段落していますが、展開次第ではイオンちゃんと実際に会う可能性もありますよね。もし本当に会えたらどうしますか?
イオンちゃんに会ったらぎゅうって抱きしめたい気持ちはありますが、インターディメンドにショックを受けている人もいたことや、イオンちゃんが次元を飛ばされて苦労していたことを考えると、地球で自分の声をやっていたと言われても絶対にイヤだろうな、混乱するだろうなとも思います。そう考えると、会わずに影で見守っている気がします(笑)。自分は自分だと思わせてあげたいし、そうあって欲しいです。
干渉したら私の気持ちも難しくなるし、私がいたらイオンちゃんらしくいてもらえなくなる気がするので、見守りながら「なんて可愛い子なんだ」って思いつつ、ちょこちょこ見にいくけど、きっと私からは声をかけられないですね。
――長年付き合ってきたイオンちゃんへ、今だからこそのメッセージを贈るとしたらどんなメッセージを贈りますか?
本当に感謝しかなくて、イオンちゃんがいなければ、今こうやって幸せだなと感じている自分もいなかったと思います。いろいろ苦労もさせたけど、そのおかげで幸せになっている自分がおりますと伝えたいですね。これからはもっと幸せになって欲しいです!
――最後に端末さんに向けてのメッセージもお願いします。
ラストと言いつつもラストではないと信じながら、イオンちゃんも“あなた”もいてくれていると思います。この企画に対する私の受け取り方も同じで、ラストというよりは、イオンちゃんが思い出を振り返っての気持ちを一生懸命に伝えているので、一緒にアルバムを開くような気持ちで聴いていただけたらうれしいです。
また、そのアルバムを一緒に作ってくれたみなさまにも、本当に感謝しています。1回聴くだけでなく、時間が経った時にも「こんなことがあったなぁ」と、何回も聴いてもらえるメッセージになればいいなと思っています。
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