2015年4月15日(水)

VR時代に役立つ基礎知識が満載。New 3DSのサポートやUnity 5について語られた基調講演を総まとめ

文:広田稔

 4月13~14日の2日間、東京お台場にてUnity(ユニティ)開発者のためのイベント“Unite 2015 Tokyo”が開催された。そこでは、全部で40の講演と、Unityを利用して作られたアプリケーションのブース展示が実施された。

“Unite 2015 Tokyo”
▲会場はホテル日航東京。初日はあいにくの雨だった。

 幕開けを飾る講演となる基調講演では、ユニティ・テクノロジーズのデイビット・ヘルガソン氏、カモフラージュのライアン・ペイトン氏、Oculus VRのパーマー・ラッキー氏が登壇して、最新バージョンである“Unity 5”などについて語った。全体の流れをガッツリまとめていこう。

“Unite 2015 Tokyo”
“Unite 2015 Tokyo”
▲基調講演で語るデイビット・ヘルガソン氏

 これまで10年にわたってCEOを務めてきたデイビッド氏だが、昨年10月にその立場をジョン・リカテロ氏に譲って、現在は創設者という立場で同社の戦略などを担当しているとのこと。スタッフは550人ほどに増えており、ジャパンやアジアなどの世界中のチーム全員でUnityの正しい方向性を目指している。

 最近で一番大きなトピックは、もちろん今年3月にリリースされた“Unity 5”だ。Unityユーザーがより効率的に利益を上げられることを目指して、物理ベースのシェーダーやリアルタイムのグローバルイルミネーション(拡散反射光処理)、業界トップというマルチプラットフォームサポート、自動ビルドサービスの“Cloud Bild”などの新機能を盛り込まれている。

 “Unity 5”では、プロ版/パーソナル版というライセンスモデルを変更したのも大きなトピックだ。Unityでは、2009年時点から無料で使えるライセンスは存在していたが、プロ版より利用できる機能が少なかった。

 一方、“Uinty 5”では、パーソナル版で全機能を無料で提供するようになった。ちなみにUnityは、現在100万人以上のデベロッパーが利用しているそうだ。

“Unite 2015 Tokyo”
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▲無料のパーソナル版は、物理ベースシェーダーやグローバルイルミネーションといった“Unity 5”の新機能も利用可能。プロ版の優位性は、チームライセンスの用意、“Cloud Bild”の利用、次期のベータ版やプレビュー版に触れること、ゲームの分析ツールなどにある。

 会場では、目玉であるグラフィック表現の拡充をデモするために、“The Blacksmith”という動画を見せた。デイビッド氏によれば、3人の少数精鋭が短期間で仕上げたものだという。デイビッド氏は「相手を倒した後の悲しげな表情が特にいい。美しいプロジェクト」と絶賛していた。

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 その流れで“Unity 5”を早い段階から導入しているカモフラージュのライアン・ペイトン氏を呼び込み、アドベンチャーゲーム『Republique』(リパブリック)のPC移植版を“Unity 5”で開発し直したエピソードを語ってもらっていた。

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 ライアン氏はKONAMIやマイクロソフトに在籍していたクリエイター。退職後の2011年にカモフラージュを設立し、クラウドファンディングの“Kickstarter”で55万ドル(約6,600万円)の出資を集めて『Republique』の開発を始めた。2013年のUniteにも登壇して同ゲームを紹介している。

“Unite 2015 Tokyo”
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▲『REPUBLIQUE』は、ストーリーベースのステルスアクション。ユーザーはハッカーとして参加し、監視カメラを通じてヒロインの“ホープ”を見ながら、行くべき先を指示したり、周囲をハッキングしたりして情報提供を行い、ゲームを進めていく。

 現在まで3つのエピソードを配信しており、最初のエピソード1は2013年にiOS版でリリースした。ライアン氏は「思ったより評判がよかった」とのことで2014年にエピソード2、3を出したうえで、3エピソードまとめたAndroid版の提供をスタート。さらに2015年に“Unity 5”を使ってPC版の『Republique Remastered』を制作している。

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 『Republique』の開発を始めるにあたって、重視したのはヒロインの感情をきちんとユーザーに伝えることだった。いろいろなゲームエンジンを試して、目的を達成してくれるUnityを選んだという。今年にリリースしたPC版は、モバイルのグラフィックではユーザーが満足してくれないだろうということで“Unity 5”の機能を最大限に活用して作り直している。

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▲左が“Unity 4”版、右が“Unity 5”版。「Unity 4でもそんなに悪くないなと自慢したいが、Unity 5では物理ベースのシェーダーで背景とキャラクターがよりリアルになった」とライアン氏。
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▲こちらも左が“Unity 4”、右が“Unity 5”。以前は、アーティストが自然に見えるように細かいところまで影や照明を調節する必要があったが、“Unity 5”では照明や影をシステムに任せても自然に表現できるようになったとか。
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▲作中にでてくる“ターミネス”という巨大な機械もこの通りに迫力アップ。

 こうした“Unity 5”を利用したPC版の開発は、Unityのウェブサイトにて公開しているのでぜひチェックしてほしいとのこと。

 さらにサプライズで、「Unity 5の新機能を知るにはプロジェクトファイルを触るのが一番」ということで、Unityのアセットストア(素材ダウンロードサービス)を通じて、13日の朝より『Republique』の実際のデータを無料で提供していることも発表した。

 ライアン氏は「スマートフォンが普及したことで、最近はクオリティより、いかにユーザーにお金を使わせることに注力するゲームが目立ってきた。『ワンダと巨像』、『メタルギア』、『ゼルダ』など、昔のゲームに影響されて開発者になった人がこの会場には多くいると思う。」と熱く述べた。

 続けて、「高品質なゲームは、映画や小説のような高級なエンタテインメント。Unity 5を使えば、もっとゲームを美しくできるし、キャラクターに感情を与えられる。そうしてユーザーの記憶に残るゲームを作って欲しい」とも語っていた。

 ちなみにカモフラージュは、この1月からクラウドゲーム技術を提供するシンラ・テクノロジーとのコラボをスタートさせたという。

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▲続けてユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏が登場して、配布が始まった『Republique』のプロジェクトファイルを動かして見せていた。マテリアルやライティングの設定、キャラクターアニメーションなどをチェックするサンプルとして最適だという。

 さらにそのプロジェクトファイルを軽量化して、ヒロインをユニティちゃんに差し替えた別のデモを利用して、“Unity 5”でクオリティを上げていく手法の一部を紹介した。

 真っ暗で天井に穴が空いている部屋のサンプルでは、アンビエントやリフレクションの設定を変えることで、差し込む外光が当たっているところとその反射をきれいに表現できると解説。

 さらに部屋に複数あるライトをつけても、バックグラウンドでグローバルイルミネーションの計算を処理してくれるそうだ。

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▲左が暗闇の部屋、右が外光が当たった状況。

 さらに“Unity 5”ではキャラクターのコントロールも改善した。動きのシナリオを作れる“ステートマシン”では、サブステートマシン内に複数の動きを割り当ててランダムに出現させられるようになっている。アーティストが他の人に頼まなくても、自分でモーションを制御しやすくなったとのこと。

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▲デモでは“Fun moves”内に2種類の動きを割り当てて、ユニティちゃんがキックをする際にハイキックとローキックがランダムで出るさまを見せていた。

 オーディオ関連も大きく進化した部分で、オーディオミキサーで3Dサラウンドの制御が可能になり、例えばBGMなどサラウンド効果が必要ないものはオフにするなどの処理が手軽にできる。

 また、オーディオのチャンネルごとにエフェクトをつけられるので、キャラクターの足音だけリバーブを適用することも手軽に実現できるという。

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▲その他、BGMや各SEなどのボリュームの設定を保存しておき、シーンの変わり目で一発で設定を変えられる“スナップショット”機能などにも触れた。

 話は再びデイビッド氏に戻り、マルチプラットフォーム対応やC#のコードをC++に変換する“IL2CPP”など、Unity 5におけるコアテクノロジーのアップデートが語られた。

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▲64ビット版エディター、PhysX 3.3へのアップグレード、アニメーションの拡張、新しいオーディオツール。
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▲マルチプラットフォームに書き出せることについて誇りを持っている。「Unityはとにかく野心の塊で、無限の挑戦を続けている。まだ少人数だったときにどんどん対応プラットフォームを増やして6つに対応した。さらにそこから数年間で21まで増やした」とデイビッド氏。
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▲さらにウェブブラウザ上でよりリッチな表現を可能にする“WebGL”への書き出しもサポート。その過程で生まれたのがIL2CPPになる。

 すごくざっくり言うと、Unityでは主にC#でコードを記述しており、各プラットフォームで動かす際は、いったん中間ファイル(Intermediate Language)を作って、その中間ファイルをさらに.net Framework互換の“Monoランタイム”で各環境のネイティブコードに変換するという挙動をとっている。

 WebGLの言語はJavaScriptだが、Unityではここに到達するために、中間ファイルをさらにC++に迂回させてからJavaScriptに書き出すという手順を採用した。この中間言語(IL)をC++(CPP)に変換するツールこそがIL2CPPになる。

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▲C#からC++への変換では、ソフトの高速化が恩恵になる。同じレイトレーシングのベンチマークでも、従来のMonoランタイムで動かすより、IL2CPPを利用することで8倍以上速くなる。
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▲上がIL2CPPなし、下がIL2CPPあり。ちょこまか動くエージェントの数が少ないうちは変わらないが、どんどん増やして1,024体になると上は14fps、下は40fpsと処理の差が現れる。
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▲各コンソールでも利用可能になるそうだ。
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▲研究開発に大きく投資しており、長期的な展望に立って他のハードウェアメーカーとも連携してUnityの開発を進めているとのこと。Newニンテンドー3DSの書き出しサポートも発表された。

 マルチプラットフォームのサポートという文脈で出てきたのがバーチャルリアリティで、Oculus VRの創始者であるパーマー・ラッキー氏がステージに招かれた。

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▲昨年も日本のUniteに出演したパーマー・ラッキー氏。「ここ1年で作られたVRコンテンツが、過去10年よりも多いという信じられない年だった。それも軍用などの用途ではなく、ゲームデベロッパーが利用するようになっている」とコメント。
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▲Oculus RiftやGear VRなど今まで出してきたプロトタイプは全体で20万台。VRコンテンツの共有サービスである“Oculus Share”は、200万ダウンロードを超えた。グーグルやSCE、VALVEといった、VR業界が産業としてなりたつと本気で取り組んでいる大企業も参入してきた。
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▲再び大前さんが登壇し、現在ベータ版であるUnity 5.1では、“Virtual Reality Supported”のチェックをオンにするだけで、既存のコンテンツをより手軽にVR化できるという。

 パルマー氏は、「去年に来た際は“来年はとても魅力的なVRゲームが出てくる”と発言したが、今年は皆さんに緊急で要請する形をとりたい。現在、大手デベロッパーがVRへの参入を表明しているので、VRコンテンツを今すぐ始めないとローンチに間に合わない」と語ってステージを後にした。

 最後にデイビッド氏が再び現れて、ソフト開発を促進するサービスとして、Unityのプロジェクトを自動でビルドしてくれる“Cloud Build”と、広告サービスの“Unity Ads”に触れている。

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▲Unityのプロジェクトファイルが軽いうちはローカルでビルドできていたが、今はクラウドを経由したほうが早いとか。すでに28万あまりのプロジェクトがビルドされており、15万時間の節約になってるそうだ。
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▲トラフィックが多いのに、なかなか収益に結びつかないというゲームにぴったりなのがUnity Ads。中には3カ月で3,500万円相当の収益を上げたゲームもあったそうだ。日本でもサイバーエージェントやGREEと連携しており、ローカル化された広告が出せる。

 最後にデイビッド氏は、「これが我々が1年間手がけてきた内容。私たちがここにやってこられたのは皆さんのおかげです。だから皆さんがさらに成功できるようにサポートしていきたい。たくさん勉強して、たくさん仲間を作ってください」とメッセージを送っていた。

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▲最後には、4月25~26日に開催されるニコニコ超会議にユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが出展し、コロッケを買うとユニティちゃんグラフィグなどがもらえるそうだ……。
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▲ユニティちゃんのLINEスタンプもアピールしていた。
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▲最後に出演者でパチリ。しかしUnity 5のキービジュアルで使われた通称“ユニティおじさん”も、日本でイラスト化されるとかなりバタくささが抜けますね。

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