2015年5月25日(月)
『消滅都市』1周年! “だましあい”がカギの『ライアーゲーム』的な新機能も追加予定【アプリインタビュー】
おもしろいゲームが好きな電撃Appが注目するスマホアプリ。そのアプリがどのようにして生まれたのか、開発者に直接お話を聞きに行くインタビュー企画を連載中です。
▲左から『消滅都市』のプロデューサー・澤智明氏と、ディレクター・下田翔大氏。 |
アップテンポなBGMと意味深なセリフで幕を閉じるCMでもおなじみ、人気アプリ『消滅都市』の魅力を探るべく、開発を手掛けられた2名のクリエイターさんにお話を伺いました。
5月26日で1周年となる本作。開発秘話や驚きの最新情報などまとめてお届けします。
●『消滅都市』とは?
本作は、運び屋の主人公・タクヤが謎の少女・ユキを“消滅都市(ロスト)”へ連れて行くドラマ×アクション×RPG。突如都市一帯が消滅した事象から3年後、その唯一の生き残りである少女・ユキとの出会いから物語が展開していきます。
登場キャラクターは全員に芯があり、感情的な部分、思惑も存在します。プレイをしていて、筆者はただの1キャラクターにはおさまらない魅力を彼らに感じました。
▲ユキの救出をタクヤに依頼した人物。ユキの父親と関係があり“ロスト”について何か知っているようですが……? |
▲タクヤの元彼女で、今もタクヤに思いを寄せ続けている情報屋。紆余曲折あってタクヤ側のバックアップを担当してくれることに。 |
ゲームパートではタクヤとユキが乗るスクーターを操り、“タマシイ”と呼ばれる敵と戦うことになります。
タマシイは、例の3年前に起きた都市消滅事件に巻き込まれてしまった人たちの“未練・想い”が具現化されたもの。タマシイの姿は、それぞれの生前の“想い”がかたどられており、モデルやサラリーマン、医者、女子高校生など、その外見は多岐にわたります。
基本的にタクヤとユキが乗るスクーターは画面をタップすることでジャンプ、ジャンプ中にもう一度タップで2段ジャンプ、下にスワイプで下段の道路を走行可能。障害物をうまく避けながら、スフィアを効率的に取れる最適なルートを進むことが勝利のカギとなります。
■好きなものをおもしろく作ることが重要!
――本作におけるお2人の役どころをお教えください。
澤:プロデューサーとして、プロジェクト全体の責任者を担当しております。予算やマーケティング等も見ながらゲーム全般についても下田と一緒に見ております。
下田:ディレクターという立場で『消滅都市』にかかわらせていただいています。コンセプトを立ち上げてシナリオを書いている他、ゲームのプロトタイプを作りながらどのようなゲームにしようかと考えています。
――開発経緯をお教えください。
澤:最初は手堅く、世の中の流行を見て王道RPGにしようと思い企画書をまとめていたのですが、この世界観以外で企画していこうということになりまして……。
下田:自分だけの船を作りキャラクターを乗せたり、船をカスタマイズしたりして、パーティ編成しながら戦っていくというRPGを作っていました。バトルがある程度まで動くところまで開発していましたが、最初から作り直しました。
――王道RPGとして作っていたものもかなり興味を惹かれますが、そこまで作られたものを破棄して、『消滅都市』の方向に寄せていったわけですね?
下田:王道RPGのプロトタイプに要した時間は1カ月くらいでした。
一気に企画書を書き上げてそのままプロトタイプを作ったのですが、市場を見た時に王道RPGは食傷気味だったので、もっと世界観を推した独自性のあるもので突っ切っていいのではないかというところで方向転換しました。
――方向転換に際しては、ファンタジーではない世界観を考えるところからという流れだったのでしょうか?
澤:そうですね、まず根底にあるのは自分たちが好きと思えるもの、おもしろいと思えるものを作ろうというところです。
私や下田は現代を舞台にした作品が好みなのですが、このような世界観は意外と少ないんですよね。また、2人とも手軽に楽しめるアクションが好きだったので、これらを組み合わせればおもしろいのではと思ったことが始まりでした。
下田:コマンド式やターン性のバトルより、触ってすぐにフィードバックのあるアクションを作りたいという作り手としての欲求もありました。
『消滅都市』の世界観に関しては、本当に作りたいものはなんだろう、好きなものはなんだろうと考えながら、何度も打ち合わせを重ねてできました。
――好きなものをおもしろく作った結果が、ユーザーさんに受け入れられたわけですね!
下田:タイミングに恵まれていたという部分もあります。開発チームの1人にアクションゲームの作成に精通しているプログラマーがいたので、作るなら今しかないと。
――本作では、アクションゲームの要とでもいうべきレスポンスやインターフェースがすごく心地よいものになっていました。
下田:それこそ、実際にコーディングするプログラマーの力が大きいと思っています。
私たちがものすごくこだわってチューニングしたとしても、基礎的な部分の触り心地を作るにはセンスが必要になります。そういう意味でもアクションを作る環境に恵まれていたと思います。
▲赤のスフィアなら火属性のタマシイのゲージが、青のスフィアなら水属性のタマシイのゲージがたまる、といったように色が属性に対応しています。 |
――プロトタイプの名残は、何かしらの形で持ち越されているのでしょうか?
下田:その時のチームワークは生かされましたね! ゲームシステムはほとんど引き継いでいませんが、方向転換後の走り出しはものすごく早かったかなと思います。
■一曲一曲を最高のタイミングで流すことが重要
――本作の音楽はどのような流れで現在の方向性にたどり着いたのでしょうか?
澤:音楽についても、自分たちが好きなジャンルは何だろうと考える中で、おしゃれなカフェやクラブで流れていそうな音楽にしたいと考えて作曲してもらいました。
――新ステージに合わせて魅力的な曲が次々と追加されていますが、いくつかストックがあって少しずつ追加しているのでしょうか?
下田:新しい章を作る際は、コンセプトワークを作ってメンバー全員に共有しています。
音楽は、そこからイメージを膨らませてディスカッションした後にお願いしています。1曲ずつアップしてもらうので、全部の曲が完成するころには次の章の制作に取り掛かるというサイクルで作成しています。
――特に音楽が切り替わるタイミングが、すごくストーリーが進んだ感があると感じられますね!
下田:そこはかなりこだわっています。曲をむやみに増やしてもお客さまはピンとこないと思いますので、一番欲しいと思われるようなタイミングで、もっとも望まれるような楽曲を当てようと制作しています。
ちなみに、曲を作っている方もかなりのヘビープレイヤーなんですよ(笑)。
――それは話が早そうですね。
下田:はい。アップしていただいた曲を当てる時には、作曲者の方ですら驚かせたいと思いながら曲を充てています。
澤:また、コラボの時の曲もすごく評判がよくて、『消滅都市』の幅の広さを実感しました。
■さまざまなジャンルを網羅した『消滅都市』独自の世界観
――現在、実装されているストーリーでもかなり事件の全容が明かされていますが、シナリオについてはかなり先々まで用意されているのでしょうか?
下田:世界設定については当初からかなり固まっていました。ただ、世界観を長く説明されるとわかりにくくなってしまうのではないかと考えていて、いかにゲームに入り込みやすくするかというところに力点を置いています。
――あまり語られ過ぎずにどんどん進んでいくところも引き込まれる要因だったのかなと感じました。
下田:一時期、澤が「会話の文字数、もう少し短くならない?」と何度も言うんです。その後、クエストが何ごともなく終わると今度は謎が欲しいと(笑)。
澤:やはり伝わりやすさを重視すると長くなりがちなので、文章の長さや質に関しては特に気をつけました。
――『消滅都市』の世界観は現代ものをベースにSFであったり恋愛であったりと、さまざまな要素を内包していると思いますが、どの部分を強く意識されたのでしょうか?
下田:SF的な要素は1つのフックでしかなくて、本作の制作を始めるにあたって単なるSFと思われたら負けだという思いがありました。
かといってベタな恋愛モノにするつもりもなくて、あまり突出した色味があるとどうしても世界観の幅を狭めてしまうのではと考えています。
澤:大事にしているところは、日常の中に非日常的な事件が起きているという部分です。なるべく身近で共感できる雰囲気を出したいと思いました。
下田:お客さまの感想を聞いていると、人によってジャンルのとらえ方が違うんですよね。もしも本作をSFと感じられたのであれば、おそらくその人にとっての好みがSFテイストを持つ部分だったのかなと思います。
他にも、ユキとタクヤの関係が気になっている方もいれば、消滅する以前の物語やタマシイたちの物語に惹かれる方もいるようです。
――現在、外伝として描かれているタマシイごとのストーリーは今後も掘り下げられていくのでしょうか?
下田:そうなると思います。これまで★5までしか進化しなかったキャラクターを星6まで進化できるようにと考えています。
そして、★6への進化にあたっては、何らかのストーリーをつけていきたいと考えています。今後もどの程度のスピードになるかはわかりませんが、継続的にタマシイを掘り下げるストーリーを実装していきたいです。
――サイドストーリー“地下鉄からの脱出”もミステリー仕立てで楽しくて、本作ならではの幅の広さを感じました。
下田:ありがとうございます。ゲームを通じてドキドキ感やワクワク感といった感情のたかぶりを再現するために、日々試行錯誤しています。
澤:『消滅都市』ではなるべく多くのお客さまにいろいろな楽しみ方を知ってもらうためにも、ジャンルの揺れ幅を大きくしています。
――そういった中でも、特に思い入れの深いタマシイやイベント、エピソードなどはありますか?
澤:かなり初期に開催した合コンクエストでしょうか(笑)。
――あのイベントにはかなり驚かされました。
澤:あれもまた『消滅都市』らしいイベントの1つと思っています。主人公がもっともらしい理由をつけて看護師さんと仲よくなろうとか、なかなか他のゲームではないシチュエーションですよね。
■インパクトバツグンだったTVCMの反響は?
――世界観に通じるところで、独特の雰囲気を感じられるCMの評判はいかがでしたか?
澤:お客さまもすごく増えましたし、いろいろな方からご好評いただきました!
下田:放映量に対して、かなり高い効果がありました。制作の過程でも話していたのですが、『消滅都市』にしかできないCMの打ち方をして、本作を知っている人もCMで知った人もより好きになってもらって、たくさんのお客さまに遊んでいただきたいです。
●『消滅都市』TVCM「それ正解」篇
●『消滅都市』TVCM「すべてを犠牲に」篇
――ユーザー数はコンスタントに増えていったのでしょうか? それとも、何かのタイミングで一気にラインを超えたような形だったのでしょうか?
澤:最初のころは徐々に増えていく感じでしたが、昨年末にCMを公開してから一気に増えていきました。
下田:ちょうど、CMと『NARUTO-ナルト-』のコラボを同時期に行うことができたんです。
――『NARUTO-ナルト-』のコミックスではクライマックスを迎えていた時期でしたね。
下田:タイミングがすごくよかったこともあると思います。ちなみにコラボについては今後もいくつか検討しており、実際に動いているものもあるのでぜひご期待ください!
■『消滅都市』を手掛けたクリエイターのルーツは?
――お2人はもともとゲーム業界の出身だったのでしょうか?
下田:私は二十歳からスクウェア・エニックスさんで9年間勤務した後に、今の会社に入社しました。
時代がPS3からPS4にシフトするような過渡期に、このまま大きなプロジェクトにかかわるのか、もう少しコンパクトなスマホの作品を数多く作っていくのかと考えた時に、自分は5年かけて1作品を作るよりも、もっと短いスパンで出していけるアプリを選びました。
――コンシューマゲーム機向けのタイトルは、どうしても一本にかかる制作時間が長くなりますからね。
下田:どちらがいいという話ではありませんが、アプリは運営型のゲームなので結果としてお客さまと対話できているところがおもしろいところかなと思っています。
――澤さんはいかがでしょうか?
澤:私はグリーに入社してかれこれ9年になります。もともとインターネットサービスの会社にいたのですが、5年ぐらい前からフィーチャーフォン向けにゲームを作ってきました。そのノウハウとすごく進化してきているスマホの性能を生かして、より高いクオリティのゲームをお客さまにお届けできればと思っています。
――普段から趣味でもゲームを遊ぶことは多いのですか?
澤:中学時代はずっとゲームセンターに通って『ストリートファイターII』を遊んでいました。
下田:最近は『ドラゴンクエストヒーローズ』で遊んでいます。他には、3DS版の『ゼノブレイド』を通勤中にプレイしています。
――RPGがお好きなのですか?
下田:いや、少し前までは『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』にもはまっていました。
――お2人の好きなゲームを聞けたところで少し概念的なお話になりますが、どのようなところにゲームの魅力というものを感じられますか?
下田:ゲームのおもしろさは感情の起伏だと思っています。ゲームに限らず映画を見たり、本を読んだりしても感情が揺れる瞬間ってすごくいいなと思いますし、感情が揺れる瞬間があると、このような感情の起伏を『消滅都市』でも表現できないかなと、いろいろと考えます。
――個人的には4章が終わったところで「早く続きを!」と、次回がすごく気になってしまいました。あの辺りは連続ドラマ的といいますか、ここで「次回に続く」なのかと。
下田:お客さまのご期待に応えたいと思いながら作っているので、いろいろな施策を練りながらお客さまをハッとさせる、ゲームとしては一段踏み込んだ演出などを散りばめています。
――バトルとストーリーが違和感なく融合して、見せ方も独特なテンポがありますよね。
下田:そこはものすごくこだわっています。言葉で説明してもなかなか伝わりづらい部分でもあるので、ぜひ実際にプレイして感じてほしいです。
――澤さんはいかがでしょうか?
澤:他のエンターテイメントにはないインタラクティブ性ですね。操作に応じて何かが起きるというのはゲームならではの特徴なので、そこを最大化して感情に訴えかけることは非常に大事だと思っています。
また、もう1つはコミュニケーションだと思います。それはお客さま同士のコミュニケーションでもあり、運営側とお客さまのコミュニケーションでもあります。実際、お客さまの声を受けて仕様に反映させることもしています。
下田:私たちがお客さまに成長させていただいているという感じがすごくあります。会議の議題もネット越しに届いたお客さまの要望であったり、掲示板などのちょっとした書き込みであったり、そういった形でお客さまからいただいたご意見に対して真剣に話しています。
■生みの親イチオシのキャラクターは?
――キャラクターについてもお伺いしておきたいと思います。本作では魅力的なキャラクターが多数登場しますが、お2人のお気に入りをお教えください。
下田:主人公の2人がものすごく好きです。2人の性格が物語をどんどん前に進めていってくれるので、シナリオを書きながらも自分自身、彼らはどのような決断を下すのだろうと考えていくところが楽しみです。
お客さまにお届けしている部分よりもだいぶ先のことを考えている状態ですが、自分が書き終えた物語がどのような反応を得られるかも楽しみです。
――澤さんの好きなキャラクターは誰でしょうか?
澤:リサが好みですね。リサは「男性はこういう女の子が好きなんじゃないか」というイメージで描かれていて、とても男心をくすぐられるキャラクターになっております。
――では、性能的なところでイチオシのキャラなどありましたらぜひ。
下田:私の好みも入りますが、“ラスト・アサシン アヤメ”ですね。2回まで攻撃を無効化できて、ちょっとやりすぎかなというくらい強いキャラなのですが、とあるレベルから上に行く時の軸になると思います。
他にもいろいろな使いどころがあるので、かなり気に入っているキャラクターです。
――5章になると一撃のダメージが大きいですからね。
下田:「これは絶対★6でなければ無理だろう」といわれているステージでも、アヤメを主軸に組み立てるとクリアできる場合もあると思います。
澤:私はアキラがすごくいいなと思っています。少し前に★6に進化するようになったので、初期キャラですが最強の一角になっています。
■今後の展望とファンへのメッセージ
――『消滅都市』の今後の展望をお聞かせください。
下田:新機能の開発も進んでいて、もしかすると5月下旬から6月を目処にかなり冒険した機能をお届けしたいと思っています。
内容的には非同期の対人戦なのですが、突如招待状が届くような感じに作っています。ドラマの『ライアーゲーム』みたいに“だましあい”が重要になってくるかもしれません。
――心理戦まで含まれると嫌ですね(笑)。
下田:お客さまの反応を見つつ、ブラッシュアップしていけたらいいなと思っています。また、アクションの中でドラマをもっと盛り上げたいです。
――現状でもかなり盛り上がっていると思いますが……!
下田:例えば、すごいピンチのタイミングでギークがさっそうと助けに来てくれたらとか(笑)。
――それはテンション上がりますね!
下田:アクションに対してすごく密接にかかわってくる仲間キャラクターが登場し、力を合わせて強力な敵に挑むという方向性を思い描いているところです。
いわゆるカットインムービー的なものではない形で、もっとプレイに密接にかかわったところでドラマを盛り上げたいです。
――ちなみに、5月26日で『消滅都市』のサービス開始から1周年を迎えるわけですが、記念イベントなどはあるのでしょうか?
下田:します!
澤:1周年自体はすごく盛り上げていきたいので何かしらの形でやりたいなと思っています! ゲーム内のイベントはもちろん、すでに告知しているラバーストラップなどのグッズ展開も予定しているので、楽しみにしていてください。
――最後に、現在『消滅都市』をプレイしている方と、まだプレイしていないけれども興味がある方たちに対してメッセージをお願いします。
澤:アクションの楽しさはもちろん、ドラマ部分についてもかなりこだわっています。
今後もより楽しくするために改良を続けていきますので、ぜひ楽しんでいただければと思います。
また、すでにグッズ展開や小説なども発売されています。イベントやメディアミックスの展開も今後ともやっていきたいと思っているので、ゲームともども期待していただければうれしいです。
下田:すでに遊んでいる方々には本当にありがとうございますとお伝えしたいです。メンバー全員が昼夜を惜しんで頑張っているのですが、コンテンツをお届けすることが遅れてしまうことがあり、申し訳なく思っています。
まだプレイしていない方には、『消滅都市』をプレイしたときの感情の動きは、他のアプリでは体験できないものだと胸を張ってお伝えしたいです。CMなどで琴線に触れるものがあればぜひ、遊んでいただけるとうれしいです。
(C)Wright Flyer Studios
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