2015年5月16日(土)

PS4『ウィッチャー3』レビュー。物語やアクション、自由なゲームプレイのすべてを高評価

文:イトヤン

 スパイク・チュンソフトより5月21日に発売される、PS4/Xbox One用ソフト『ウィッチャー3 ワイルドハント』のレビューをライターのイトヤンがお届けします。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』

 まず最初にお断りしておきますが、このレビューはオープンワールドの超大作RPGである本作を、約20時間ほどプレイした段階で執筆しています。現時点でのゲームの進行度は、訪れた地域やメインストーリーの展開などから推測すると、だいたい15~20%といったところでしょうか。

 開発者のコメントによると、メインストーリーをクリアするのに数十時間、サイドクエストも含めてじっくりと遊び尽くすと100時間以上かかるとのことですが、ここまでのプレイでもそのボリュームを十分に実感できました。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲広大なオープンワールドを旅して、ときには巨大な怪物と戦うことのできる本作。ボリューム満点のタイトルだけに、そのすべてを遊び尽くすまでにはかなりの時間が必要です。

■三部作の完結編とはいえ、本作からプレイを始めても問題なし!

 『ウィッチャー』シリーズはポーランドの作家、アンドレイ・サプコフスキ氏によるファンタジー小説が原作で、ゲームの開発も同じくポーランドのCD PROJEKT REDが手がけています。原作が存在するということで、本作は舞台となる異世界の設定が細部に至るまで練り込まれており、それがゲームプレイにもしっかりと反映されています。

 タイトルにもなっている“ウィッチャー”とは、この世界における怪物退治の専門家です。ウィッチャーは幼少期より過酷な修行を積み、変異誘発剤によって己の肉体を変異させることで、高度な戦闘能力を身につけています。この世界でも数少ないウィッチャーの1人である“リヴィアのゲラルト”が、本作の主人公です。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲本作の主人公ゲラルト(声優:山路和弘)。“狼流派”の技を身につけたウィッチャーである彼は、その風貌から“白狼”とも呼ばれています。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ウィッチャーは、危険な怪物を退治するために人々から必要とされる一方で、偏見によって忌み嫌われている存在でもあります。

 『ウィッチャー3』というタイトルが示しているとおり、本作は主人公ゲラルトの戦いを描いた三部作からなるストーリーの完結編です。第1作はPCで、第2作はPCとXbox 360で発売されています。

 こう説明すると、「過去作をプレイしていないと本作は楽しめないの?」と思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。前作までは、ゲラルトは過去の記憶を失っていました。本作では過去の記憶を取り戻したゲラルトが、改めて己の使命と向き合うことになります。そういった展開もあって、ストーリーの流れは本作だけでもちゃんと理解できるようになっているのです。

 また世界観の解説や、ゲラルトと過去に因縁のある人物については、プロローグ的なクエストや“人物事典”でしっかりとフォローされています。加えて、大きなストーリーの流れとは無関係なサイドクエストや怪物狩りの依頼も充実しているので、そうした部分でもこの世界の魅力を十分に堪能できます。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲システムメニューに用意されている“人物事典”では、キャラクターに関する詳しい解説を読むことができます。プレイが進むと記述が追加されていくので、これまで体験してきた物語を整理するのにも役立ちます。

 逆に前作の『ウィッチャー2』をプレイしている場合は、ゲーム開始時に“『ウィッチャー2』のデータをシミュレートする”という機能をオンにしておくと、プレイ中にいくつかの質問に答えることで、前作での選択を本作に反映できますので、お楽しみに。

■少女を捜索する主人公ゲラルトの身に、美女とのオトナな関係も!?

 本作のメインストーリーは、ゲラルトが行方不明の少女“シリ”を捜索して、彼女を救出するのが目的となります。古代エルフの血を引くシリには人智を超越した力が宿っており、そのために彼女は謎の軍勢“ワイルドハント”と、強大な軍事力を誇る“ニルフガード帝国”の双方から追われています。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ゲラルトによって実の娘のように育てられた少女シリ(声優:沢城みゆき)。ゲームの冒頭では、ウィッチャーとしての訓練を受けている、幼少期の彼女に出会うこともできます。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲本作のメインクエストには、シリを操作してプレイするパートも用意されています。彼女はゲラルトでは使用不可能な、さまざまな特殊能力を持っているようですが……。

 こうした展開のため、メインクエストではワイルドハントの騎士団を相手にした、かなり歯ごたえのある戦闘が待ち受けています。

 その一方で、この世界では現在、ニルフガード帝国が北方諸国に侵攻する“第三次北方戦争”が行われています。ウィッチャーは基本的に中立の立場ですが、プレイヤー自身の選択で世界の情勢に関与することも可能です。メインクエストでの選択と、こうしたサイドクエストでの選択の組み合わせによって、本作のストーリー展開やエンディングはさまざまに変化していくとのことです。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲謎の軍勢“ワイルドハント”を率いる王エレディン(声優:秋元羊介)。ワイルドハントは人々から“破滅の先触れ”として怖れられていますが、その存在や目的は謎に包まれています。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲地上最強の軍事力を持つニルフガード帝国の支配者、エムヒル皇帝(声優:土師孝也)。北方の王たちを次々と暗殺した彼は、大軍を率いて北方諸国に侵攻しています。

 またこの世界には、強大な魔力の持ち主で諸国の宮廷でも暗躍する、“女魔術師”と呼ばれる人々がいます。ゲラルトは、いずれも美女ぞろいの女魔術師たちになぜかモテモテで、選択次第では互いの肉体を求め合う関係へと発展することも……。

 特に、ゲラルトが記憶を失う以前の恋人であるイェネファーと、記憶を失っていた時の恋人であるトリス・メリゴールドという“元カノ・今カノ”の存在は、ゲラルト本人にとっては悩ましいところ。世界の命運を巡る壮大な選択だけでなく、こうした個人的な恋愛事情の選択まで関わってくるあたりも、本作の魅力と言えるでしょう。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲女魔術師のイェネファー(声優:田中敦子)は、記憶を失う以前のゲラルトにとって最愛の女性でした。ゲラルトが記憶を失ってからは彼女も消息不明でしたが、数年ぶりの再会を果たすことに。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ゲラルトは、美しい女魔術師からの誘惑を受けることも。プレイヤーの気持ち次第で、大人の甘い夜を迎えることができますが、その選択は正しかったのでしょうか……? 

 これまでに2作のゲームが発売されていることもあり、本作は各キャラクターの個性、特に主人公のゲラルトの個性がしっかりと確立されており、歴戦の勇者ながらどこかユーモアも秘めたその言動が、非常に魅力的に感じられます。山路和弘さんの日本語音声もマッチしていて、物語の世界にすんなりと入り込めるのがうれしいところです。

■建物やダンジョンもロードなしに出入りできる、広大なスケールのオープンワールド!

 さて、本作の大きな特徴は、冒険の舞台となるフィールドが巨大なオープンワールドとなっている点です。

 具体的には、大きく3つのエリアに分かれています。ゲーム序盤に訪れる“ホワイト・オーチャード”は3つの中では比較的小さめのエリアで、あくまでチュートリアル用といった感じですが、後で再訪することも可能です。小さいと言っても、さまざまな場所があり、遊び応えもしっかりあります。

 次に訪れるのが、戦争による荒廃で“主無き地”と呼ばれている“ヴェレン”と、巨大都市“ノヴィグラド”という2つの地域が1つのオープンワールドとしてつながっているエリアで、ここはかなり広大です。試しに移動可能な範囲の対角線上を、馬に乗って全力疾走で駆け抜けてみましたが、現実の時間で30分近くかかりました。もし徒歩で移動したら、いったい何時間かかるのだろう、と思うほどの広さです。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ニルフガード帝国の侵攻によって荒廃したヴェレンは、今では“主無き地”と呼ばれています。道ばたには首吊り死体が並んでいたり、戦闘で焼かれた村に出くわしたりする陰鬱な場所です。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲“ノヴィグラド”は無数の建物が連なる、巨大な都市となっています。マップ上で赤く描かれているのが全部建物であることから、この都市の大きさがよくわかるでしょう。

 そして、今回はプレイ進行度の関係で訪れることができませんでしたが、海に浮かぶ島々が集まった“スケリッジ諸島”というエリアがあります。この3つに加えて、ニルフガード帝国に占拠された“ヴィジマ王城”や、狼流派ウィッチャーの拠点である“ケィア・モルヘン”といった、ピンポイント的なエリアが存在しています。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲今回訪れることはできませんでしたが、“スケリッジ諸島”は雪の降り積もる寒い地域で、海の民がいくつもの部族に分かれて暮らしているとのことです。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲舞台となるエリアの位置関係を表した世界地図。このさらに北東に、ウィッチャーの拠点である“ケィア・モルヘン”があります。

 こうしたエリア間を移動する際と、エリア内の道しるべであるマーカーから別のマーカーへとジャンプする“ファストトラベル”を使った際、そして戦闘で死亡してゲームを再開する際には、やや長めのロードが入りますが、いったんエリア内に入ってしまえば、基本的にロードはありません。

 特筆したいのは、建物やダンジョンへ出入りする際にも、まったくロードがない点です。城のように巨大な建物の内部には当然ながら、多数の家具やNPCが配置されているのですが、屋外からそのまま中に入っていくことも、そこにいるNPCと会話することも、すべてシームレスに可能です。

 このように建物やダンジョンの出入りにロードがなくなったおかげで、探索は非常にスムーズで快適なものとなっています。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲建物に入る際はロードなど一切なく、ドアを押し開くだけで内部へと進んでいくことができます。

 先ほども軽くふれましたが、これだけ広大なエリアになると、徒歩で移動するのは大変なので、本作には馬での移動が用意されています。ゲラルトは屋外のどこにいても、愛馬の“ローチ”を呼び出して、自由に乗ることができます。

 馬は通常、全力疾走すると気力が減少していきますが、道に沿って疾走すると気力が減らない上に、スティックを操作しなくても自動的に道なりに移動してくれるので便利です。

 また小舟に乗って海や川を渡ることもできる他、水中に潜ってアイテムを拾ったり、陸上ではつながっていない洞窟の奥へ進んだりすることもできます。もちろん前述したとおり、村の入り口などにあるマーカーから、別のマーカーへとジャンプする“ファストトラベル”も可能です。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲小舟を操縦すると、海上をスイスイ移動できます。ただし岩や岸にぶつけると、小舟が壊れて沈没することもあるので要注意!
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲村の入り口や特定の建物の前などには、道しるべとなる“マーカー”が立っています。マーカーのそばに立つと、発見済みの別のマーカーがある場所に移動する“ファストトラベル”が可能です。

 オープンワールドならではのシームレスな移動に加えて、もう1つ快適なゲームプレイを実現しているのは、本作が日本語フルローカライズだという点です。イベントによる会話シーンはもちろんのこと、通りすがりの村人たちが交わしている雑談なども、すべて日本語音声でダイレクトに伝わってきます。そのおかげで、自分があたかもこの世界の中を実際に歩いているかのような感覚を味わうことができるのです。

 ただし、もしかすると「日本語だと雰囲気が出ない」という人もいるかもしれません。そのために本作は音声と字幕の双方で、日本語と英語を自由に選択できます。またPS4版に関しては、決定ボタンを×にするか○にするかをオプションで切り替えることも可能です。こういった部分からも、本作が非常に丁寧にローカライズされていることが感じられます。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲字幕や音声は日本語と英語を自由に切り替えることができます。また、ミニマップやクエストの進行状況といったHUD情報を、個別に表示するかどうか細かく設定できます。

■ミステリー仕立てのクエストの結末はプレイヤーの決断次第!?

 先にも紹介したように『ウィッチャー3』のメインストーリーは、ゲラルトが行方不明の少女シリを捜索するというものです。メインストーリーを進めていくクエストは、ワイルドハントの戦士をはじめとする強敵との戦闘が繰り広げられるものをはじめ、かなり遊び応えのあるものとなっています。

 一方で、メインストーリーとは直接関係のないサイドクエストも、ふんだんに用意されています。サイドクエストは、町や村にある掲示板で怪物退治の依頼を受けることができる以外にも、エリア内にいるNPCと会話して、直接依頼を受けることもできます。またメインクエストから派生して発生する場合もあります。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲町や村の掲示板にはいろいろな情報が張り出されていますが、その中で赤い印のついているものが、ウィッチャーへの依頼になります。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲名前の横に“!”がついているNPCからは、クエストを受けることができます。ただし、クエストには適正なレベルが設定されているので、たとえ依頼を受けたとしても、その時点で解決できるかどうかは未知数です。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲怪物退治を生業としているウィッチャーにとって報酬は重要なので、一介の村人が依頼主でも、報酬の交渉をすることができます。ただし、あまり高額を吹っかけると、相手が不機嫌になって交渉できなくなってしまうことも。

 怪物退治の依頼でも人捜しの依頼でも、まず重要なのは手がかりを見つけることです。ゲラルトはウィッチャーとしての研ぎ澄まされた感覚を使用して、常人には見つけられない手がかりを発見できます。足跡を分析して不審者の行方を追ったり、血痕などを発見して事件の状況を把握したりといったことが可能です。

 こうした手がかりを追跡して事件の真相を発見したり、怪物が出現した理由やその弱点を突き止めたりといった過程は、まるでミステリーの謎解きのようなワクワク感があります。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲放火魔が残した足跡を辿っていくゲラルト。ウィッチャーの感覚を使用すると、手がかりとなる痕跡が赤く表示されます。

 しかも、サイドクエストや依頼という形でログが記録されるようなストーリーの多くには、展開にちょっとしたひねりが加えられています。謎を解き明かしていくにつれて、関係者の意外な素顔が明らかになったり、怪物が出現した背後に意外な事件が存在していたりといった具合です。

 ここでおもしろいのは、プレイヤー自身が事件の展開に関与できるところです。真実を明らかにして関係者に正義の鉄槌を下すこともできますが、それははたして誰もが望んだ結末なのでしょうか。それともあえてグレーな状態のまま解決を放棄して、報酬だけを受け取って立ち去ったほうがよいのでしょうか……。

 自分なりの選択をして依頼を解決した後でも、はたしてこの決着で良かったのかと考えさせられるようなエピソードが多い点も、本作のクエストのユニークなところでしょう。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲発見したついに放火犯を依頼者に引き渡すか、金をもらって黙っているか、プレイヤー自身の決断によって決めることができます。会話シーンでは、ゲラルトもNPCもセリフの量がかなり多いのに驚きます。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲クエストのログには、プレイヤーの決断によって選択された展開が記録されます。もし違う決断をしていた場合はどんな展開になっていたのか、気になるところですが……。

 上で紹介したようにストーリー仕立てになっているサイドクエスト以外にも、マップの各所には探索や戦闘が可能な場所が存在しています。怪物の巣や盗賊のアジトを襲撃することもできますし、通りかかった建物の地下で高価なアイテムを発見することもできます。ただし、その建物を恐ろしい怪物が守っているかもしれませんが……。

 このようにクエストの形になっていないものも含めて、本作のオープンワールドには多彩な種類の冒険が無数に詰め込まれています。これらをくまなく探索するには、膨大な時間が必要になるはずです。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ネッカーと呼ばれる怪物は、地下から次々と飛び出してきます。爆薬を使って巣の出口を破壊すれば、ネッカーの出現を食い止めることができます。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲人里離れた場所に、いわくありげな廃屋を発見。そのそばを飛行している怪物は……巨大なワイバーンだった! いったいあの廃屋には何が隠されているのだろうか? 
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲マップを確認すると、未発見の場所を示す“?”マークが数多く記されている。これを探索するかどうかは、プレイヤー次第です。

■“鋼の剣”と“銀の剣”、2本の剣を駆使して戦うアクション性の高い戦闘

 本作の戦闘は、マップ上を徘徊する敵と直接剣を振るって戦う、アクション性の強いものとなっています。

 ゲラルトをはじめとする“ウィッチャー”たちは、つねに2本の剣を背負っています。このうち“鋼の剣”は、野生動物や人間といった通常の敵と戦う際に使用されます。もう1本の“銀の剣”は、怪物と戦う際に使います。

 ゲームでは、プレイヤー自身の操作で2本の剣を使い分けることもできますが、通常は敵と出会った際に、相手に応じた剣を自動的に構えるので、それほど気にする必要はありません。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲鋼の剣を振るって、人間の敵を一刀両断! クリティカルヒットで敵を倒すと、怪物はもちろん人間も真っ二つになります。人間の場合、断面の表現は海外版とは異なりますが、それでもけっこうビックリします。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲怪物と戦う際には、銀の剣を使用します。怪物の中には、通常の体力ゲージを持ち複数同時に出現するものと、このグリフィンのように特別な体力ゲージを持つボスクラスのものが存在します。

 先にも説明したように、本作の戦闘はアクション性が高いものなので、ローリングで敵の攻撃を回避したり、敵の背後に回り込んで攻撃したりといった立ち回りが重要になります。特に複数の敵が同時に襲ってくる場合には、囲まれないように注意しなければなりません。

 ちなみに本作の戦闘は、歯ごたえのあるものになっています。難易度がもっとも低い“ストーリー”だと、剣だけを使っても比較的ラクに戦うことができますが、難易度を上げると後述するオイルや霊薬、そして“印”を上手に使わないと、ボスどころかザコ敵に囲まれただけでも死んでしまう場合があります。そのぶん、ウィッチャーらしい戦略を考える楽しみも増えますが……。

 難易度はプレイ中いつでも変更できるので、自分のプレイスタイルに合った難易度を選択しましょう。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲空中から襲いかかるグリフィンの攻撃を、ローリングを使って回避。レスポンスが軽快なので、アクションゲームのような感覚でプレイできます。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲剣による近接攻撃だけでなく、石弓のような遠距離武器を使用して攻撃することもできます。

 怪物にはそれぞれ弱点が存在しており、一度出会った怪物の弱点はメニューの“怪物図鑑”をチェックすることで確認できます。また探索で本などを調べて、怪物図鑑を更新することも可能です。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲怪物図鑑で敵の弱点を知ることは、怪物退治の専門家であるウィッチャーにとっては非常に重要。特にボスクラスの怪物と戦う前には、有効なオイルや印を確認して準備しておきましょう。

 ゲラルトの体力は“生肉”や“ドライフルーツ”といった食べ物で回復できるのですが、回復までに多少の時間がかかるうえに、回復する量も少なめです。あらかじめ錬金術で“霊薬”を作成して使用すると、体力回復や能力強化といった効果を得ることができます。ただし、霊薬はウィッチャー以外の常人にとっては毒となる危険な薬物なので、一度に大量に摂取すると中毒を起こしてしまうこともあります。

 また、同じく錬金術で敵の種類に応じた“オイル”を作成し、あらかじめ剣に塗っておくと、特定の敵に対する攻撃力をアップできます。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲商人や探索を通じてレシピを入手して鉱物や野草などの材料を揃えると、“錬金術”のレベルに応じて戦闘に役立つ“霊薬”や“オイル”を作成できます。うまく活用しましょう。

■5種類の魔法“印”を使いこなして、戦闘を有利に導け!

 さらにゲラルトは、戦闘に役立つ実戦的な魔法である“印”を使用できます。“印”は以下の5種類で、レベルアップで強化できるものの、これ以上種類が増えることはありません。とはいえ、局面や敵の弱点に応じて“印”を使用すれば、戦いを有利に導くことができます。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲“印”は、L1ボタンを押すと開くクイックメニューで選択して、R2ボタンで発動します。印を使用すると気力ゲージを消費するため、回復までにはしばらく時間が必要です。

●イャーデン

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲地面に結界を張ることができ、その範囲内に敵が侵入すると、動くスピードが遅くなります。素早い動きの敵と戦う際に有効です。

●クエン

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ゲラルトの身体にバリヤーを張り、敵の攻撃が命中しても1回だけダメージをキャンセルできます。敵の攻撃が命中するとバリヤーが砕け散って、防御の効果はなくなります。

●イグニ

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲手から炎を発して、敵を燃やすことができます。攻撃によってダメージを与える以外に、ダンジョン内部のたいまつに点火するといった使い方もできます。

●アクスィー

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲敵の精神をコントロールして、一時的に行動不能にできます。盾でガードする敵の動きを止めるといった使い方が有効です。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲アクスィーは戦闘で使う以外にも、会話の際にNPCをコントロールして、自分に有利な言動を行わせるという使い方が可能です。

●アード

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲手から衝撃波を発して、敵を転倒させたり、落馬させたりできます。また、破壊可能な扉を吹き飛ばして、建物やダンジョンの入り口を開くことも。

 ボスクラスの怪物を倒すと、“討伐の証”というアイテムを入手できます。これは怪物の身体の一部で、商人に売って報酬代わりの金を得ることも可能ですが、馬に装備しておくと、能力アップなどの効果を受けることもできます。どちらを選ぶのかは、得られる効果とプレイヤーの好み次第でしょう。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲“討伐の証”と呼ばれるアイテムは、グリフィンの頭部といった怪物の身体の一部です。馬の腰に装備すると特別な効果が得られますが、かなりのインパクトがあります(笑)。

■自由度の高いゲーム進行と、キャラクター性の強い物語との融合が新鮮!

 その他のゲームシステムについても、簡単にお伝えしておきましょう。

 ゲラルトは正座して瞑想を行うと、ゲーム内の時間を進めることができます。この際、体力を回復することもできますが、難易度を高く設定すると瞑想での回復はできなくなり、食べ物や霊薬が必要となります。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ゲラルトが行う瞑想のポーズ。ダンジョンを探索する合間など、体力回復のための瞑想は意外と頻繁に行うことになりますが、そのたびにこのポーズをしているのを想像すると、ちょっとシュールで楽しいです。

 錬金術でオイルや霊薬を作成するのと同様に、武器や防具の材料を揃えて、鍛冶職人に依頼して作成してもらうことも可能です。完成品を買うよりもずっと安く入手できますが、設計図や材料を集める手間とどちらがラクかは、プレイの状況によるでしょう。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲武器や防具の作成は、設計図や材料を揃えることはもちろんですが、作成する鍛冶職人の技術も重要です。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲ソケットのある剣や防具にルーンを埋め込んで、特別な能力を付与することもできます。いったん埋め込んだルーンは、取り外して付け替えることも可能です。

 ゲラルトのレベルアップもまた、独特のシステムになっています。レベルアップ時に入手できるポイントで、戦闘や印、錬金術などのスキルを強化して、それを専用のスロットに装備することで有効化できます。

 また、怪物を倒すと“変異誘発剤”というアイテムが手に入ることがあり、これを装備するとゲラルトの能力値を強化できます。この際、変異誘発剤とスキルの色(種類)を揃えて同じスロットに装備すると、能力値のアップにボーナスを得ることができます。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲変異誘発剤やスキルを装備可能なスロットは、レベルアップに応じて増えていきます。能力値アップに有効な種類のスキルを装備するか、冒険で役立つスキルの成長を選ぶか、悩みどころです。

 最後に、本作ならではのユニークな遊びをご紹介しましょう。ゲラルトは各地のNPCに対して、“グウェント”と呼ばれるカードゲームの勝負を挑むことができます。このカードゲームは、戦場を模した3つのラインを持つ場に配置したカードの合計ポイントで勝敗を競うという、比較的シンプルなルールになっています。

 ただしこのゲームの特徴は、最初に引いた10枚のカードを途中でまったく補充しないまま、最大3ラウンドを戦うという点にあります。手持ちのカードの内容によっては、あえてラウンドを捨てるといった判断も必要になり、奥の深い思考を求められます。

 グウェントのカードは商人から購入したり、探索で入手したりできるため、各地を巡ってこのカードをコンプリートするというのも、本作のサイドクエストの1つとなっています。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲グウェントのカードは、ゲラルトをはじめとするこの世界のキャラクターたちが描かれています。本物のカードが発売されたら、思わずコレクションしたくなる美しさです。

 少し長くなってしまいましたが、本作の特徴を説明してきました。オープンワールドのRPGならではのゲームシステムの奥深さと、物語のスケールの広がりを理解してもらえたのではないでしょうか。

 本作がもっともユニークなのは、自由度の高いオープンワールドのゲーム進行と、キャラクター性の強いストーリー主導型の展開が、1つに融合している点です。個々の戦闘でさまざまな戦略を実行できたり、クエストの流れにプレイヤーの決断が反映されたりと、プレイヤー自身が“自分自身の物語”と感じられるような体験を味わえる一方で、ゲラルトをはじめとする魅力的なキャラクターが織りなすドラマチックな展開を楽しめるというのは、これまでのRPGにはなかった新鮮な感覚です。

 その意味で本作は、海外製のRPGが苦手だという日本のゲーマーのユーザーにこそ、遊んでもらいたい作品です。世界最先端をゆくRPGの進化を、本作でぜひ体験してみてください! 

『ウィッチャー3 ワイルドハント』
▲あえて特筆しませんでしたが、PS4/Xbox One専用のゲームだけあって、グラフィックの美しさも見事なものです。この世界のあちこちを巡ると、昼夜や天候の変化もあいまって、さまざまな美しい風景を見ることができます。

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