2015年6月16日(火)
“Xbox E3 2015 Briefing”から見えてくるマイクロソフトが考える今後の戦略とは【E3 2015】
E3を前に行われた、マイクロソフトのプレスカンファレンス“Xbox E3 2015 Briefing”の模様をお伝えするとともに、そこから見えてきたマイクロソフトの戦略についての考察をお届けする。
■Xboxの顔『Halo』最新作からイベントがスタート!
イベントの冒頭に上映された映像には、すでにマスターチーフ、マーカス・フェニックス、ララ・クロフトといった人気キャラクターが姿を見せており、今回のラインナップに対する期待をかき立ててくれる。
その流れからまず最初に登場したのは、Xboxを代表するFPSの最新作である『Halo 5: Gardians』だ。本作ではシリーズおなじみのマスターチーフと、新キャラのエージェント・ロックがそれぞれ率いる2組のチームが活躍するとのことで、ステージでは4人協力キャンペーンの実機プレイが披露された。
またマルチプレイでは、“ウォーゾーン”と呼ばれる新たなモードが初公開された。映像を見ると、プレイヤーのチームだけでなくシリーズでおなじみのエイリアンたちも出現して、広大なマップで入り乱れて戦うモードのようだが、詳細は続報を待ちたい。
続いて紹介されたのは、“稲船敬二氏と『メトロイドプライム』の開発スタッフ”によるXbox One独占の完全新作『recore』だ。近未来とも異世界とも思える砂漠を舞台に、女性とロボットのコンビが冒険を繰り広げるアドベンチャーのようで、具体的なゲーム内容が気になるところだ。
■ユーザーが待ち望んでいたXbox 360の互換機能がついに実現!
ここで、マイクロソフトでXbox部門のトップを務めるフィル・スペンサー氏が登壇。スペンサー氏は「今年はXbox史上最強のラインナップになる」と強調し、Xbox Oneに強力な独占タイトルが集まっている自信を見せた。
続いてスペンサー氏が行った発表は、このイベントで会場が最も沸いた瞬間となった。Xbox OneにXbox 360タイトルの互換機能が実装されるという! 詳しい方法などはここでは明かされなかったが、冬までに約100タイトルがプレイ可能になるとのこと。静止画や動画のキャプチャや実況配信といったXbox Oneならではの機能は、Xbox 360タイトルでももちろん利用できるという。また、Xbox 360のセーブデータをクラウドにアップしておくことで、Xbox Oneでも使用できる。
Xbox 360は世界的に成功したハードとなったが、その後継機種であるXbox Oneはこれまでのところ、360ユーザーが必ずしもすんなり移行しているとは言えない状況だった。ユーザーが待望していた互換機能がついに実装されることで、今後はXbox Oneへの移行が加速するはずだ。
また、数日前に発表されたXbox Oneの新型コントローラーに加えて、上位モデルとなる“Xbox Elite コントローラー”が紹介された。このコントローラーはプロ仕様の精度を持ち、スティックのカスタマイズが可能なほか、底面にはドライビングゲームで活躍しそうなパドルも用意されている。ヘビーゲーマーには見逃せないアイテムとなりそうだ。
■サードパーティのVIPたちも、互換機能の搭載を歓迎
次に登壇したのは、数時間前にベセスダソフトワークスのイベントで『Fallout 4』を披露したばかりのトッド・ハワード氏。ハワード氏はXbox One版『Fallout 4』で、PC用のMODが使用できる機能を紹介した。
続いて姿を見せたEAのピーター・ムーア氏は、Xbox One向け定額サービス“EA Access”のラインナップに『タイタンフォール』が加わったことや、カジュアルなゾンビFPSの新作『プラントvs.ゾンビ ガーデンウォーフェア 2』を発表した。
ふたたびファーストパーティの独占タイトルに戻って、人気RCGの最新作『Forza Motorsport 6』。同作の北米での発売日が9月15日に決定したとの発表だったが、それよりもフォード創業者の子孫であるヘンリー・フォード3世が登壇し、フォードGTの実車が会場に運び込まれるという派手な演出が目を引いた。
壮大な映像とともにお披露目されたのは、世界的人気を誇るアクションRPGの最新作『DARK SOULS III』。ただし、この発表には“独占”の文字がなかったことからも分かるとおり、PS4でも発売される。
ここからは、ユービーアイソフトのトム・クランシー関連作が続いた。シューターとRPGが融合した『ディビジョン』は、12月にXbox One独占のベータテストが行われるという。ちなみに、その後のユービーアイソフトのプレスカンファレンスで、北米での発売日が2016年3月8日になると明らかになっている。
また、シリーズ久々の新作となる『レインボーシックス シージ』は、Xbox One版を購入するとXbox 360の互換機能によって『レインボーシックス:ベガス』と『レインボーシックス:ベガス2』を無料でプレイできるという。
ユービーアイソフトだけでなく、ベセスダのトッド・ハワード氏やEAのピーター・ムーア氏など、このイベントに登壇したソフトメーカーのVIPがいずれも、Xbox 360の互換機能について好意的にコメントしていた点は非常に興味深い。ソフトメーカーも互換機能の登場を待ち望んでいたことが伺える。
■インディーズゲームをユーザーとともに作り上げる新施策が開始
昨年のE3でも紹介された5vs5の対戦ACT『Gigntic』は、Xbox OneとWindows 10のマルチタイトルで、基本無料になるという。
これに続いて、マイクロソフトがインディーズゲームを支援する、ID@Xboxに参加するタイトルの映像が上映された。その中には『Happy Wars』を手がけた日本のディベロッパー・トイロジックの新作『Happy Dungeons』や、あのヤギゲーの新作(?)『Goat Simulator: Mmore Goatz Edition』などが確認できた。
さらにステージでは、『TACOMA』、『ASHEN』、『Beyond Eyes』、『CUPHEAD』といったインディーズタイトルの紹介が行われた。
▲『TACOMA』 |
▲『ASHEN』 |
▲『Beyond Eyes』 |
▲『CUPHEAD』 |
ここでインディーズに関する新たな施策となる“Xbox Game Preview”が明らかにされた。これは、開発中のゲームをXbox LIVEのユーザーが先行ダウンロードして、問題点などを開発者にフィードバックするというもの。PCのSteamなどではすでに実現しているサービスだが、コンシューマ機でこうしたことが行われるというのはユニークだ。
しかも、この“Xbox Game Preview”に参加するタイトルの中には、PCで話題を集めているゾンビMMO『DayZ』が含まれているという。すると、その『DayZ』の開発者であるディーン・ホール氏が登壇して、同氏の新作MMO『ION』も“Xbox Game Preview”による早期アクセスを行うと発表した。
インディーズゲームに関しては、海外ではすでにPCだけに留まらず、コンシューマ機をも巻き込んだ大きな潮流となっている感があるが、Xbox Oneもこうした積極的な施策によって、開発者の支持を着実に集めている印象を受けた。
■レア社の名作30タイトルを、Xbox Oneでプレイできる!
次に披露されたのは、新生『トゥームレイダー』の続編となる『ライズ オブ トゥームレイダー』の実機プレイだ。ハリウッド映画化もされた人気シリーズの最新作が、Xbox One独占で登場するとあって、たっぷりと時間をかけた紹介が行われていた。実機プレイの最後には、北米での発売日が11月10日と発表された。
Rare(レア社)といえば、かつては任天堂と数々の名作を作り上げた他、マイクロソフトの傘下となってからも、『あつまれ!ピニャータ』や『Kinectスポーツ』といった良作を手がけているディベロッパーだ。
そんなRareが過去に生み出した『パーフェクトダーク』『バンジョー&カズーイ』『バトルトード』『コンカー』など、全30タイトルをコレクションした『Rare Replay』が、Xbox One独占でリリースされると発表された。北米での発売は8月4日とのこと。
また同時に、Rareの完全新作となる『Sea of Thieves』も発表された。こちらはプレイヤーが海賊となって海賊船を操って砲撃戦を繰り広げたり、南の島を冒険したりできるアクションADVのようだ。
Rareに続いて、こちらもマイクロソフト傘下のLionhead Studioによる『Fable Legends』が登場。4人の英雄と1人の悪役がファンタジー世界で対戦できる本作は、Xbox OneとWindows 10のマルチタイトルとなり、しかもXbox ゴールドメンバーシップのユーザーと、Windows10ユーザーは基本無料でプレイできると発表された。
今回はあくまでXboxのイベントということで、Windows 10のゲームに関してはほとんど触れられていなかった。だが、Xbox Oneとの連動が大きな特徴となっているWindows 10だけに、さまざまなゲーム戦略が準備されているはずだ。
■ARデバイス“Microsoft HoloLens”で、『マインクラフト』の世界が現実に!?
今回のイベントでは、ハードの話題は“Xbox Elite コントローラー”以外ほとんど触れられていない。E3直前に提携を発表したOculus Riftに関しても、軽く紹介された程度だった。
そんな中でしっかりと時間をかけて紹介されたのが、眼鏡型のARデバイス“Microsoft HoloLens”だ。このデバイスを装着することで、自分の視界にCG映像が合成されたAR(拡張現実)体験が味わえる。
今回は、このMicrosoft HoloLensに対応した『マインクラフト』が開発されて、実際にデモプレイが行われた。テーブルの上に、まるで実際にブロックが積み上げられたかのような『マインクラフト』の建物が出現。しかも建物の中を覗き込むと、その中にキャラクターが存在しているのを見ることもできる。
その映像は、ビデオカメラの前にMicrosoft HoloLensのゴーグルを固定して、装着した人間の視線を再現した形で放映されていたのだが、予想以上にクリアな画質だったのにも驚いた。
Microsoft HoloLensはWindows 10と接続するデバイスでありXbox Oneとは直接関係あるわけではないのだが、マイクロソフトが目指している“ゲームの未来”が非常によくわかるデモとなっていた。
■『Halo』と『Gears of War』というXboxの2大タイトルが集結!
そしてイベントのラストを飾ったのは、『Gears of War』だ。まずは、シリーズ1作目をリメイクしたXbox One用タイトル『Gears of War Ultimate Edition』が発表された。
続いて映し出されたゲーム画面には、夜の屋外を移動する見知らぬ男性と、彼と行動をともにする女性が登場。『Gears』ファンにはおなじみのランサーを抱えた2人は、怪物どもを銃撃とチェーンソウでなぎ倒していく。そしてこの映像のラストで、シリーズ最新作となる『Gears of War 4』が2016年末に発売されると明らかにされた。ここまでの映像は『Gears of War 4』のプレイ画面だったのだ。
イベントの最後にフィル・スペンサー氏が改めて、強力な独占タイトルの存在を強調したように、今回のイベントでは『Halo』と『Gears of War』という、これまでXboxを牽引してきた2大タイトルが顔を揃えた。『Forza』や『Fable』、そしてRareの作品も加えると、マイクロソフトが所有しているファーストパーティのタイトルが総集結している状態だ。
サードパーティのゲームがマルチプラットフォームになることが当たり前になっている現在では、ファーストパーティの独占タイトルはハードの独自性を打ち出す最大の武器となる。特に今年は、Xboxを代表するタイトルである『Halo』の完全新作がXbox Oneに初登場するだけに、マイクロソフトとしてはハードの普及に勢いをつけたいところだろう。
そう考えると、ユーザーが待ち望んでいたXbox 360の互換機能がこのタイミングで実現したのは、大きな意味を持つはずだ。ある意味、切り札とも言える施策を打ち出したわけで、今年のクリスマス商戦でのXbox Oneの動向には、大いに注目したい。