2015年6月27日(土)
おもしろいゲームが好きな電撃Appが注目するスマホアプリ。そのアプリがどのようにして生まれたのか、開発者に直接お話を聞きに行くインタビュー企画を連載中です。
今回は、サイバーエージェントから配信されているiOS/Android用アプリ『ミリオンチェイン』のプロデューサー、遠藤国忠氏にお話をうかがいました。
▲『ミリオンチェイン』のプロデューサー・遠藤国忠氏。開発に参加した当初はプランナーとして、レベルデザインなどを担当。2014年8月からプロデューサー兼ディレクターに就任し、現在はプロデューサー業に集中しているとのこと。 |
『ミリオンチェイン』は、パネルを指でなぞって3枚以上つなぐことでバトルを行う、パズルアクションRPGです。
混沌の災禍が訪れた近未来の世界を舞台に、剣や銃などの武器を操るキャラクターたちを育ててパーティを組み、神を裏切り追放された七巨神をはじめとする強敵を討伐していきます。
本作では、つないだパネルの色に対応したキャラが攻撃を行うのですが、その際はかわいいデフォルメで表現されたちびキャラが、多彩なアクションで攻撃を繰り出すという、にぎやかな演出が楽しめます。
▲ちびキャラたちによる、個性豊かでド派手ないアクションを堪能できます。またバトルの合間には、ちびキャラ同士が吹き出しで会話するといった演出も見られます。 |
パネルを一度にたくさんつなげばつなぐほど攻撃力がアップする他、ブルー、オレンジ、パープルと、パネルの色に対応するキャラクターの属性は3すくみの関係になっていて、敵の属性によって与えるダメージの量が変化します(グリーンはどの色でも一定)。
そこで、敵と相性のよい色のパネルを長くつなげるために、あえて1ターンを準備用とわりきり相性の悪いパネルをつないで消しておくといった、奥の深い戦略が必要になってくるわけです。
▲同色のパネルを3枚以上つないで攻撃すると、パネルが消えて左から新たなパネルが出現します。同色のパネルができるだけ多くつながるように、他の色のパネルを消していくことが重要です。 |
敵からの攻撃を受けたり、敵に攻撃をしたりするとゲージがたまり、“チェインシステム”を発動させられます。チェインシステムを発動させると、一定時間内にパネルを次々とつないで消していくことができます。
これを使えば異なる色のキャラが同時に攻撃できるだけでなく、攻撃しつつジャマな色のパネルを消しておいて、次のターンに大量の同色パネルをつなぐといったことも可能です。
また、キャラクターごとに設定されているスキルやリーダースキルを使用すると、ある色のパネルが出現する確率をアップさせたり、出現しているパネルを別の色に変化させたりすることが可能です。
このように、チェインシステムやスキルを効果的に使用すれば、敵に大ダメージを与える爽快な攻撃を繰り出すことができます。
▲キャラクターの中には、すべてのパネルを同じ色に変化させるというスキルを持つものも。これを使って、すべてのパネルをつないで攻撃すれば、一撃で敵を撃破することも可能です! |
もちろん、キャラクター同士の合成によってレベルアップしたり、より強力な上位キャラへと覚醒したりといった育成も可能です。岩元辰郎氏、シガタケ氏、吉村健一郎氏などが手がけた美しいイラストと、そのイラストを元にデフォルメされたちびキャラのギャップを楽しめます。
――『ミリオンチェイン』の企画は、いつ頃からスタートしたのでしょうか?
『ミリオンチェイン』は2013年12月13日にサービスを開始、2015年6月現在で1年半ほど経ちますが、企画はその2年ぐらい前から動いていました。
わたくしが『ミリオンチェイン』の開発に参加したのはサービス開始の2、3カ月前です。その時点でキャラクターや世界観はおおむねできあがっていて、細かいゲーム性の部分を議論していました。
どうやって戦略性を出していくかというところが、まだ全然決まっていなくて。パネルを消すとその色のキャラのスキルがたまるといったことも、その頃に実装したものですね。
――では、当初はどういったゲームデザインだったのでしょうか?
実は最初の段階では、今のスーパーチェインがつねに発動しているような形で、パネルを次々と素早く消していくのが、メインの遊びになっていました。
でもそれだと忙しすぎて、プレイヤーが戦略を考える余裕がないんです。そこからいろいろと手を加えていったのが、今のゲームシステムになります。
▲ちびキャラの右下にあるゲージをタッチすると“スーパーチェイン”が発動。ゲージが0になるまでの短い時間内にパネルを連続して消していき、チェイン数を増やして一気に攻撃できます。 |
――本作のようにパネルをつないで消していくパズルだと、消した位置にパネルが移動して連鎖消しが発生するといったルールがよくありますが、本作に連鎖がない理由は?
連鎖によってパネルが消えてしまうと、長くつながらなくなってしまうので。本作では一手一手を大事にし、長くつなげるためにしっかりと考えていく形にしたかったんです。
ただ、長くつなげるゲーム性だけだと気持ちよさがなくなるので、キャラクターのスキルを使ってすべてのパネルを同色に変えるといった、大量のパネルを一度に消せる要素を採り入れていきました。
――『ミリオンチェイン』では、バトルの際に繰り広げられるちびキャラのアクションの細かさも大きな特徴ですが、どのような経緯でちびキャラを活躍させることになったのでしょうか?
今では、スマホのゲームでちびキャラが活躍するものも多くなっていますが、開発がスタートした当初はまだ珍しかったこともあり、他のゲームと差別化するために、ちびキャラを使おうという話になったと聞いています。
また本作は20~30代の、スーパーファミコンなどでRPGを遊んでいた方たちにアピールしたいと思っていました。単にイラストカードが激突するステータスバトルではなくて、SDキャラが動いて戦う形式なら、かつてのRPGが好きだった方たちにアピールできるんじゃないかと。
――ちびキャラの作成は、どのようにして行われているのでしょうか?
コラボキャラもオリジナルのキャラも基本的に、イラストのデザインが決まってから、それを元にちびキャラを作成するという工程になっています。
イラストでは細かい部分まで描き込まれているものを、ちびキャラでどこまで再現すればユーザーさんに伝わるのか、そこを見極めるのが大変ですね。
それと、ちびキャラはアニメーションするのが前提になるので、動いてちょうどいい形になるのかどうかが大事なんです。そのキャラの能力や特徴を忠実に表現した上で、そこにおもしろい動きのエッセンスを加えていく形ですね。
例えば『進撃の巨人』とコラボさせていただいた時は、原作では馬に乗っているキャラがいたんですが、ちびキャラが馬に乗るという演出のシステムはなかったので、このコラボのために馬に乗れるシステムを作りました。
あとはちびキャラのビットを自由に動けるようにするなど、その時その時に応じて、ちびキャラの表現の幅を増やしています。
▲『進撃の巨人』とのコラボでは、このようにちびキャラが馬に乗って移動する演出も採り入れられました。 |
――ちびキャラの表現で特にこだわっている点は?
ちびキャラが攻撃を行う際の、スピード感にはこだわっています。実はパネルをつなげたhit数と同じ数だけ、その色のちびキャラの攻撃がヒットするようになっているんですよ。
40~50hitsといった大量のチェインがつながると、その数だけガガガガガッ! って攻撃し続けるんです。
本作はパネルを長くつなげることがゲーム性になっていますから、それに対するリアクションを大事にしているんです。長くつなげれば攻撃力が上がるのはもちろん、ちびキャラが派手に活躍して気持ちいいんだよ、っていう。
気持ちよさを表現するという意味では、効果音も重要ですね。攻撃が命中する効果音は、実は攻撃するキャラによって違うんです。スマホのゲームだと音が出ないように設定している人もいると思いますが、ヘッドホンなどでぜひ聞いてもらえればと思います。
――個人的にお気に入りのキャラクターは?
デザインの面でいうと、極・降臨級のドラゴンチルドレンシリーズというイベントに登場する、“ドラゴンチルドレン・永遠”が好きですね。
このちびキャラが攻撃をする際に、シャキ、シャキ、シャキーン! って感じで変形するんです。これがすごくカッコいいんですよね。
パーティ編成でわたくしがよく使っているのは、“旋撃のルドラ”や“神通のカルラ”などのキャラですね。
これらのキャラは、パーティのHPと攻撃力を2倍にするというリーダースキルを持っていて、さらにスキルを使うと、次のターンの攻撃を2倍にできるんです。
攻撃力を3倍にするリーダースキルのキャラもいるんですけど、こちらは高いHPを保ったままで攻撃力を2倍にでき、さらにスキルを使えば4倍で戦えるのが魅力ですね。
▲この“神通のカルラ”のようなリーダースキルとスキルの組み合わせを持つキャラクターは、各色にそれぞれ存在しています。 |
――『ミリオンチェイン』ではノーマルミッション以外にも、さまざまなタイプの遊びが用意されていますが、これは運営を続けていく間に随時、追加されていったものでしょうか?
そうですね。その時その時のプレイヤーの状況に応じて、開発していった形になります。
たとえばレアドロップを狙うとなると、何度も同じミッションを繰り返さないといけないので、ユーザーさんとしてはすごくストレスがたまってしまうんです。
そこで、ミッションをクリアするとポイントがたまっていき、たまったポイントを自分のほしいキャラと交換できるいうのが、“ハントミッション”です。
一定の確率でキャラが手に入るドロップ型と違って、ハントミッションは1回1回の行動が無駄にならないマラソン型なので、目標を持ってプレイしてもらえると思います。
――なるほど。他にも“パズルコロシアム”では、間接的ですがプレイヤー同士で戦うとPvPの要素が盛り込まれています。
通常のミッションで新しい遊び方を用意する場合は、敵モンスターに新しいスキルを追加する形になるんですけど、その恩恵は上位のプレイヤーだけしか受けられないんです。
初心者がそういった強力なスキルを持つ敵と戦っても、絶対に勝てませんから。でも、それだと開発の手間に対する効率が悪いので、もっと多くのプレイヤーに対して変化が届けられないのかと。
モンスターのスキルに比べると、キャラクターの持っているスキルは種類が豊富なので、キャラクター同士がぶつかり合えば、いろんなパターンが楽しめるんじゃないかって考えたんです。そこでPvPをやろうということになったのが、パズルコロシアムです。
▲パズルコロシアムでは、CPUが操作する他のプレイヤーのパーティと戦うという、間接的な形のPvPとなっています。 |
――パズルコロシアムでは、自分と対戦相手が1つのパネルを共用することで、相手が狙っているパネルの色を先に消して使わせないといった、通常のミッションにはない戦略も楽しめるのがおもしろいですね。
2014年の9月にパズルコロシアムを提供したのですが、当時のプレイヤーからは、「すごく『ミリオンチェイン』らしいPvPだ」と、好評だったのでうれしかったですね。
1つのゲームには、プレイするプレイヤーを含めた“生態系”が存在していると、自分は考えています。他のゲームではやったものを別のゲームの生態系に持ち込んでも、必ずしも成功するわけではないと。
そのゲームにふさわしい内容を持ったものだけが、生態系の中で受け入れられると思うんです。その意味でパズルコロシアムは、『ミリオンチェイン』の生態系にうまくハマったんじゃないでしょうか。
――では、高難易度の“挑戦者の塔”は、どのような経緯で誕生したのでしょうか?
『ミリオンチェイン』では、無課金のプレイヤーでも長く遊んでいると、けっこう強くなれるんです。ただ、同じキャラを重ねることで限界以上の能力を得られる“クラス解放”に関しては、さすがにレア度の高いキャラをもう1体手に入れるのを、無課金で行うのは難しい部分があって。
そこで“挑戦者の塔”で決められたフロアをクリアすれば、自分の持っているキャラならどれでも1体もらえるという形で、レアなキャラでもクラス解放をできるようにしたんです。
先ほどもお話ししたように、その時々のプレイヤーの動向に応じて、段階的に開発していったのが現在の『ミリオンチェイン』のコンテンツですね。
▲高難易度の“挑戦者の塔”では、助っ人キャラやコンティニューがない状態で、強力な敵との連戦を戦うことになります。 |
コンテンツの提供については、大まかなロードマップを用意しているのですが、プレイヤーの皆さんの反応が予想と違うことも多いので、臨機応変に対応する必要があるんです。
例えば、最近はマラソン型のミッションが増えたので、疲れるという声が出てくこともあると思うんです。そういった声がいつ頃出てくるのかをあらかじめ予測するのは難しいのですが、そういう声が出てきた時には、“次はこれ”というものを提供できるように、つねに考えておくようにしています。
――ここでゲームから少し離れて、クリエイターさん個人についてお聞きします。ゲーム業界に入ったきっかけは、どのようなものでしょうか?
もともとはエンジニアとしてサイバーエージェントに入社したのですが、何かひとつのことを徹底的に突き詰めてみようと思い立った時に、自分が本当にやりたいものがゲームだったんです。
そこで「ゲームを作りたい!」と社内で言い続けていたら、『ミリオンチェイン』のチームに参加することができました。
――では、ゲーム制作を手がけたのは、『ミリオンチェイン』が最初ですか?
はい、そうです。ただ、小さい頃からRPGが大好きで、『ドラゴンクエスト』、『ファイナルファンタジー』はオンラインも含めて全シリーズ遊んでいます。高校生の時にMMO RPGと出会って、大学生の頃はいわゆる廃人プレイヤーでした(笑)。
――最近ハマったゲームはありますか?
コンシューマだと『ゼノブレイドクロス』、スマホだと『メビウスFF』ですね。
――どちらもつい最近リリースされたばかりのゲームじゃないですか(笑)。本当にゲームがお好きなんですね。
とはいえ、ゲームをプレイするのと、ゲームを作るのではぜんぜん違うということがよくわかりました。
自分が作りたいと思っているものが、プレイヤーが本当に求めているものなのかをまず考えなければいけなくて。そうやって考えたつもりでも、プレイヤーの期待から外れてしまう時もあるので、本当に難しいです。
――それでは今後、どのようなゲームを作ってみたいと考えられていますか?
先ほどお話ししたように、大学生の頃はMMO RPGの廃人プレイヤーだったんですが、その時に自分が感じていた気持ちよさを、あまりゲームを遊ばない人たちにも感じてもらいたいと思っているんです。
他のプレイヤーと協力して、うまく役割分担しながら一緒に戦う気持ちよさを、そこまで時間をかけずにライトに味わえるものを、ぜひ作りたいと考えています。
それと先日、イベントで“Oculus Rift(オキュラス リフト)”を体験して、実際に自分の足がすくむような感覚を味わったんです。
『ソードアート・オンライン』のようなゲームが本当に登場する日も決して遠くないと実感したので、その時までにライトユーザーの方にも楽しんでもらえるようなMMO RPGを作れるプロデューサーになりたいと思っています。
――ご自身が考える“ゲームのおもしろさ”とは、どのようなものでしょうか?
『ミリオンチェイン』の運営を通して学んだのは、“スマホゲームは手軽にプレイできることが一番大事”ということですね。
プレイヤーの立場に立ってみれば、手軽にプレイできるのが一番だし、そこに開発者がむりやり考える要素を入れても、プレイヤーからは決していい反応が得られないんです。
先ほどもお話ししたように、プレイヤーの皆さんがゲームごとに作り上げている“生態系”に、いちばん適合しているものがそのゲームのおもしろさだと思います。
それともう1点、自分が心がけているのは、プレイヤーに“適度なストレス”を感じてもらうことですね。
強いボスになかなか勝てないといったストレスを適度に感じてもらうことで、それを乗り越えた時の達成感が得られたり、もっとゲームを続けようというモチベーションが生まれたりすると思うので。
とはいえ、ストレスが大きすぎても、プレイヤーの不満につながってしまうので、難しいですけれど。
――『ミリオンチェイン』の話題に戻りますが、今後はどのような展開が予定されているのでしょうか?
これまでは、個々のキャラクターに対して焦点を当てることがあまりできていなかったので、今後はキャラクターの個性や背景を、より深く描いていく予定です。たとえば、ネコマンマ国という設定があるんですけど、そこをもっと掘り下げていったりとか。
それから、今は弓を持っているキャラなんだけど、そのキャラに銃を持っているバージョンや剣を持っているバージョンが登場して、それはこういうストーリーでそうなったんだよ、といったことが語られたりとか。
あとは、今いるキャラに別の使い方ができたり、違うパーティの組み合わせができるようになったりといったことも考えています。
――最後に、『ミリオンチェイン』をこれから始めようと思っているプレイヤーに向けて、アドバイスをお願いします。
『ミリオンチェイン』は基本的に、パーティを1色で固めたほうが強いんです。最初のミッションは敵がブルータイプなので、それに相性のよいオレンジのキャラをそろえてミッションに挑戦すれば、ラクに戦えると思います。
パーティーを1色でそろえると、その色を3枚つなげるパネルがなくて攻撃できなくなってしまう場合が出てくるんですが、そこは他の色のパネルをオレンジに変換するスキルを持っているキャラを、うまく使ってみてください。
▲本作を始める際は、最初にリーダーとなるキャラを選びます。最初のミッションに登場する敵がブルータイプなので、相性のよいオレンジタイプのリーダーを選ぶと戦いやすいでしょう。 |
あとは、パズルコロシアムに“WANTED”という項目があり、これは他のプレイヤーではなくて運営側が用意したパーティーと対戦するものです。
これのグレードEは初心者でも勝てるレベルのパーティになっているので、ぜひ挑戦してみてください。対戦形式は敷居が高そうだと思うかもしれませんが、先ほどお話ししたように、“WANTED”のグレードEなら比較的ラクに戦えますので。
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