2015年6月16日(火)
『FF VII』や『シェンムー3』などサプライズが多かったPlayStation E3 EXPERIENCE 2015”を総括!【E3 2015】
E3を前に行われた、SCEのプレスカンファレンス“PlayStation E3 EXPERIENCE 2015”の模様をお伝えするとともに、そこから見えてきたSCEの戦略についての考察をお届けする。
なお、今回のイベントで発表されたゲームタイトルは、本文中で特記している以外は全てPS4用ソフトとなっている。
■サプライズ満載のイベントは、開始早々から驚きの情報が!
すでに速報記事で目にしている人も多いと思うが、今回のイベントは最大級のサプライズが連発される、非常にインパクトの強い内容になっていた。
最初のサプライズは、イベントの冒頭に用意されていた。ソニー・コンピュータエンタテインメント アメリカ(SCEA)のCEOであるショーン・レーデン氏が、「ゲームコミュニティが長く待ち望んでいたタイトル」と紹介すると、詰めかけた観客のあいだにザワザワとした空気が流れる。そして会場のモニターには、少年の呼び声に答えて姿を現した、巨大な生物が映し出された!
▲ショーン・レーデン氏 |
2009年のE3でPS3用ソフトとして発表された『人喰いの大鷲トリコ』のゲームプレイ映像が、プラットフォームをPS4に移して、ついに公開されたのだ。映像のラストでは、発売が2016年に予定されていることも明らかになった。会場には、『ICO』や『ワンダの巨像』で知られる本作の監督・上田文人氏も来場しており、客席に詰めかけた世界中のプレス関係者から、温かい拍手が送られていた。
▲『人喰いの大鷲トリコ』 |
▲上田文人氏が紹介された。 |
続いて紹介されたタイトルは、『KILLZONE』シリーズで知られるGuerrilla Gamesが開発した、完全新作タイトルだ。『HORIZON ZERO DAWN』と題されたこの作品の舞台は、人類の文明が廃墟と化したはるか遠くの未来のようだ。原始時代さながらの生活を送っている人々は、荒野での狩りに向かう。主人公と思われる女性が対峙する獲物は、“野生化”した巨大な動物型ロボットだ。
▲『HORIZON ZERO DAWN』 |
大自然の中でメカ生物を狩るハンティングアクションというユニークなコンセプトが、Guerrilla Gamesらしい緻密なグラフィックで表現されており、映像を見ただけでも早くプレイしてみたいと感じる作品だ。
■ゲームの枠を超えるインディーズ系タイトルもぞくぞくと登場
ここまでの2タイトルはファーストパーティーの作品だったが、続いてはサードパーティのタイトルだ。最初に紹介されたスクウェア・エニックスの『HITMAN』は、“コードネーム47”と呼ばれるスキンヘッドの殺し屋が暗殺ミッションを実行する、人気シリーズの最新作だ。このイベントで初公開された本作は、シリーズを新たな設定でリブートするという。
▲『HITMAN』 |
カプコンの『ストリートファイターV』は、コンシューマ機ではPS4独占となる。今回のイベントでは、シリーズの人気キャラであるキャミィと、初代『ストリートファイター』などに登場したバーディーの参戦が明らかになった。
▲『ストリートファイターV』 |
続いて登場したのは、昨年のこのイベントでPS4版が発表されて、大きな話題を呼んだ宇宙探索ゲーム『No Man’s Sky』だ。本作では、自動生成される惑星の表面を自由に探索して、エイリアンの遺跡を発見したり、惑星を防衛するロボットと戦闘を繰り広げることができる。
▲『No Man’s Sky』 |
今回披露された実機プレイでは、惑星表面からカメラを引くと、複数の惑星が恒星の周囲を回っている太陽系が出現。さらにカメラをどんどんと引いていくと、無数の恒星が集まって巨大な銀河系を構成している様子が映し出された。文字どおり、銀河系をまるごとゲーム化してしまうその巨大なスケールには、とにかく圧倒されてしまう。ちなみに本作の発売日は、そう遠くない時期にアナウンスされるとのことだ。
PlayStationでゲームの枠を超える斬新なソフトを制作するディベロッパーといえば、『リトルビッグプラネット』でおなじみのMedia Moleculeを忘れるわけにはいかない。同社の新作『Dreams』は、PS4のコントローラーを駆使することで、動く絵画とも彫刻ともつかない不思議な世界を、プレイヤー自身が自由に作り出すことができる。
▲『Dreams』 |
発表されたプレイの様子だけでは、これが“ゲーム”なのかどうかも含めて不明な点が多いが、Media Moleculeらしいユーザークリエーションが楽しめるソフトであることはよくわかる。
PS4ではインディーズゲームのリリースが積極的に行われているが、今回のイベントでも新たなタイトルがいくつか紹介された。『Fire Watch』は、『ウォーキングデッド』や『Mark of the Ninja』の開発者が設立した新ディベロッパー“Campo Santo”のデビュー作だ。深い森の中でトランシーバーから聞こえる女性の声だけを頼りに、孤独な探索を続けるAVGとなっている。
▲『Fire Watch』 |
あの『ホットラインマイアミ』を世に送り出し、リアルな鳩が登場する恋愛AVG『はーとふる彼氏』の英語版を世界に向けて販売している、インディーズ系パブリッシャーの“Devolver Digital”。同社が販売を手がける『Ronin』『Eitr』『Mother Russia Bleeds』『Crossing Souls』の4作品を、PS4で発売すると発表された。いずれのタイトルも、2Dのドット絵で過激な描写が繰り広げられる作品だ。
▲『Ronin』 |
■日本のゲームを代表する伝説の名作が、PS4で相次いで復活!
ここからは、サードパーティの大作ゲームに関する話題となった。MMO RPGとFPSが融合したBungieの『Destiny』は、日本でも多数のプレイヤーを獲得している。この作品に大型拡張パック『The Taken King』がリリースされることが明らかになった。北米での発売日は9月15日とのこと。
▲『Destiny』 |
19世紀後半のロンドンが舞台となる人気シリーズ最新作の『アサシンクリード シンジケート』。このイベントの直前に行われたユービーアイソフトのプレスカンファレンスでは、主人公であるジェイコブ・フライの活躍を見ることができたが、ここではジェイコブの妹であるエイヴィ・フライが紹介された。このエイヴィが主役となる限定ミッションが、PS4版だけに用意されるという。
▲『アサシンクリード シンジケート』 |
続いて登場したのは、スクウェア・エニックスから2016年に発売される予定のPS4/PS Vita用ソフト『ワールド オブ ファイナルファンタジー』だ。本作では、二等身のキュートな姿にデフォルメされた『FF』シリーズの歴代キャラやモンスターが、バトルを繰り広げるRPGとなっている。
▲『ワールド オブ ファイナルファンタジー』 |
このあと、「ゲーム史上最もファンに愛されている作品」という紹介でモニターに映し出された映像には、まるで実写のようにリアルな魔晄都市の光景と、巨大な剣を背負った青年の姿が描かれていた。『ファイナルファンタジーVII』のロゴの背景にあるメテオのマークと、“REMAKE”の文字が続けて登場すると、会場には割れんばかりの歓声が響き渡った。
▲『ファイナルファンタジーVII』 |
『FF VII』リメイク決定の興奮がまだ冷めやらぬ中、今度はステージ上に『バーチャファイター』の生みの親である鈴木裕氏が登場。かつてドリームキャストで鈴木裕氏が手がけた超大作RPG『シェンムー』は、物語が未完のままとなっていた。そこで完結編となる『シェンムー3』をPS4とPCで制作するため、クラウドファンディングのKickstarterで資金募集すると発表したのだ! この発表を聞いた観客は、先ほどの『FF VII』リメイク決定をも上回るほどの熱狂的なリアクションで歓迎していた。
▲『シェンムー3』がキックスターターで資金募集開始 |
『FF VII』と『シェンムー』といえば、初代PS以降に登場した日本のゲームの中でも、海外でのファンを最も多く獲得している2作品といっても過言ではない。この2作品がPS4で復活するという話題は、日本のゲームファンはもちろんのこと、海外のゲームファンにも最大級のサプライズとして受け止められているはずだ。
▲鈴木裕氏 |
■ハードやサービスではなく、ゲームそのものが最大のアピールポイント
海外で6月23日、日本でも7月16日に発売される『バットマン:アーカム・ナイト』は、キャラクターゲームの枠を超えた傑作シリーズの完結編として、特に海外では多くの期待を集めている。今回のイベントでは、物語の黒幕であるスケアクロウが仕掛ける“スケアクロウ・ナイトメアミッション”を、PS4独占でプレイできると発表された。
▲『バットマン:アーカムナイト』 |
ここで、SCEのグローバルCEOであるアンドリュー・ハウス氏が登壇。ハウス氏はPS4以外のハードや、ゲーム以外のサービスについて語った。
▲アンドリュー・ハウス氏 |
実は今回のイベントでは、PS4のゲームタイトル以外の話題はほとんど触れられていない。アンドリュー・ハウス氏も、音楽サービス“Spotify”と PlayStation Musicの提携や、TVサービス“PlayStation Vue”などについて語ったものの、いずれも簡単に紹介する程度だった。VRヘッドセットの“Project Morpheus”に関しても、「E3会場で試遊できます」とアピールしただけだ。
▲Project Morpheus |
これは海外でのPS4の好調ぶりと、それに対するSCEの自信の表れだと言えるだろう。PS4のゲームハードとしての魅力を前面に押し出すことが、E3に集まったゲーム業界人に対して最も効果的にアピールできることを知っているのだ。
その意味で、特に海外において影響力を持つ発表が、アンドリュー・ハウス氏によって行われた。世界的人気を誇るミリタリーFPSの最新作『コール オブ デューティ ブラックオプスIII』と、PS4が提携を結んだという。
▲『コール オブ デューティ ブラックオプスIII』 |
実は『コール オブ デューティ』は昨年まではXboxと提携しており、DLCを他機種に先駆けて配信するといった優遇策が採られていた。今回の提携によって、PS4でもDLCの先行配信などが行われるのかどうか、続報が気になるところだ。
■海外での充実したラインナップが、国内でも展開されることに期待!
続いて紹介されたのは、フィギュアと連動することでゲーム中にさまざまなディズニーキャラクターを登場させることができる、海外で人気のオープンワールドACT『Disney Infinity』だ。この秋に、『スター・ウォーズ』を全面的にフィーチャーした『Disney Infinity 3.0』が発売されるのに合わせて、 ボバ・フェットのフィギュアなどが封入されたPS4/PS3限定のスターターパックが用意されると発表された。
▲『Disney Infinity 3.0』 |
この流れを受けて紹介されたのが、EAの『スター・ウォーズ バトルフロント』だ。直前に行われたEAのプレスカンファレンスでは、『帝国の逆襲』で描かれた氷の惑星ホスでの戦闘を再現したプレイが公開されていた。このイベントでは砂漠の惑星タトウィーンを舞台にして、ウェーブ形式で襲撃してくる敵を撃退するゲームモードが初公開された。
▲『スター・ウォーズ バトルフロント』 |
そしてイベントの最後を締めくくるのは、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』だ。昨年のこのイベントではジャングルでの戦闘が紹介されていたが、今回は多数の人々が行き交う市街地での銃撃戦からスタート。やがて、主人公のネイトと相棒のサリーがジープに飛び乗ると、急な坂道を下りながらのカーチェイスが展開される。ジープが市場に突っ込んで、屋台を破壊しながら通り抜けたり、崖から飛び出したジープが建物の屋根を走り抜けたりと、スピード感あふれるアクションが次々と繰り広げられる様子は圧巻だ。
▲『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』 |
今回のプレスカンファレンスに対する反応は、『FF VII』や『シェンムー3』といったサプライズに話題が集中している感がある。とはいえ、それ以外のタイトルに目を向けても、超大作の人気シリーズから個性的なインディーズ作品まで、PS4のソフトラインナップの充実ぶりを強く実感させてくれるものとなっている。日本のゲームファンとしては、この充実したラインナップが可能な限り日本でも登場してくれることを期待したい。