2015年6月18日(木)
カプコンが2016年春に発売予定のPS4/PC用ソフト『ストリートファイターV』を手がける開発者へのインタビューを、米国で開催中の“E3 2015(Electronic Entertainment Expo 2015)”にて実施した。
『ストリートファイターV』は、シリーズナンバリングの最新作として、ビジュアルが刷新し開発中のタイトル。必殺技やステージのギミックなどが新しく追加される。先日発売時期に加えて、7月24日よりPlayStation Plus加入者限定のPS4版クローズドベータテストを実施することが公開された。
▲杉山晃一プロデューサー(左)と綾野智章アシスタントプロデューサー(右)。 |
質問に応じているのは、杉山晃一プロデューサーと綾野智章アシスタントプロデューサー。現在の手ごたえやキャラクター選別の理由、システムなど、本作にまつわるさまざまなことについて聞いている。なお、インタビュー中は敬称略。
――今回のE3出展で初プレイアブルとなりましたが、反響はいかがですか?
綾野:めちゃくちゃいいですね。怖いくらいにいいです。
杉山:アメリカのインターネットの掲示板などでも長いスレッドが立っていて、いろいろな議論や研究がされています。昨日、イベントをTwitchで配信していたのですが、見ていた人たちが盛り上がっていて、おもしろいという声があがっていました。
今まではアーケードでロケテストをすると、少しネガティブな意見も必ず来ていたのですが、今回はあまりそのような反応はありませんでした。
そのため、「しっかりやっていき、期待を裏切らないようにしないと!」という気持ちになっています。それぐらい皆さんいい反応をしてくださっているので、ありがたいことです。
――キャラクターが徐々に公開されていますが、現状の選定理由などはあるのでしょうか。
杉山:この後のキャラを予想できてしまうのであまり詳しくは言えませんが、いろいろバランスを見て、オーソドックスなキャラクター、『ストリートファイターIV』に出てこなかったキャラクターにもきちんと焦点をあてて、バランスよく出していきたいと思っています。
モーションもすべて作り直しているので、それぞれのキャラクターのタイプや人気の度合いなども考えて、このキャラクターがいたほうがいいよね、というのを踏まえて選んでいます。
――バーディーやナッシュなどの過去に参戦していたキャラクターが、別キャラクターのようになっているのはあえて変えているのですか?
綾野:過去シリーズで使えていたけど『スト4』には出てこなかったキャラクターは、意図的に新鮮さが出るように変えています。
杉山:キャラクターの個性を、前面に出す作りにしています。例えばベガもサイコパワーが特徴的だと思うのですが、それを生かした使い方ができるように作り変えています。バーディーとナッシュも、昔使っていた人たちは戸惑うかもしれませんが、新しい遊びとしてはおもしろいと言ってもらえるようにはできているなという自負はあります。
――ソニックブームが溜めコマンドから波動コマンドになっているのに驚きました。これはコマンドが変更されることはあるのでしょうか?
杉山:どっちの入力が難しいかという問題もあるのですが、コマンドをなるべく出しやすくするというのが1つの大きなテーマです。溜めの必殺技を出すのが難しいという声があるんですよ。
綾野:再び参戦するキャラクターも含めて、一度ゼロから考えているんですよ。もちろん溜めで考えていた時期もありましたけど、VスキルとVトリガーを組んでいき、ソニックブームの性能も鑑みた時に、溜めじゃなくてコマンドのほうがいいだろうという結論になりました。おそらく溜めに戻ることはないと思います。
――『ウルIV』は格闘ゲーム全体で見てもかなりキャラクター数が多い作品だと思いますが、本作のキャラクター数はどこまで増やす予定でしょうか。
杉山:発売まででしたらそんなに増やすつもりはないです。
綾野:44キャラいきなり出すというのは、開発も正直しんどいというのもありますし、ユーザーも求めていないのかなと思うんです。44よりは少ないキャラクター数で、自分のお気に入りキャラクターを見つけてそこから切磋琢磨していきたいというユーザーの声も非常に多いです。
杉山:『ウルIV』では、プレイしたことがない人に向けてもPRはしていたんですけど、キャラクターが多すぎて覚えられないという声もやはりありました。とある番組で、「何キャラくらいが妥当だと思う?」と聞いてみたところ、30前後という答えが一番多かったんです。あんまり多すぎるのも望まれていないのかなと。
また、eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)という部分も考えた時に、競技として成立するバランスのいい数はあると思うんです。キャラクターを増やせばお客さんが喜ぶだろうという感じではまったく考えていないです。
綾野:競技性を重視してバランスがとれる数を模索しつつ、キャラクターを発表していこうと思います。
――今回システムも完全に変えていますが本作のような形にしている理由はなんですか? 入りやすさという部分もあるのでしょうか。
綾野:もちろん新しさや入りやすさというものはあるのですが、何にせよ新たなタイトルになるということでリセットということを目的に動いています。
杉山:“キャラクターの個性を生かす”というコンセプトをずらさずに、それぞれの特徴をもっと出した動きができるところを重視して個別のスキルをつけているので、そもそもの発想、スタート時点の思想が『スト4』とは異なります。
――今回のシステムで、お2人がキモだと思っているシステムはありますか?
綾野:“V”とついているやつはキモですね。
杉山:Vスキル、Vトリガー、Vリバーサルですね。Vスキルは、ゲージコストを必要とせず、いつでも使えるものなので、そのキャラクターの基本動作の組み立てにどう組み込んでいくかというのが上級者になればなるほど考えなければいけないと思います。
Vトリガーは使いどころが大事です。初心者から中級者くらいの方だったら、溜まったらとりあえず押して強い技で攻めていくこともできるし、必要な時までとっておいて、例えば大パンチをキャンセルしてVトリガーを発動して、もう一度そこからコンボをつなげていくということもできます。
あるいはVゲージを残しておいて、Vリバーサルでゲージを消費して窮地を脱することもできる。そのような選択肢がいろいろ選べるような形にしています。とはいえ、“V”とつくものは全部キモというか、どれも三者三様の使い方ができて、キャラクターの個性だけではなくプレイヤーの個性も出せる仕組みになるように考えています。
――“リセット”とおっしゃっていましたが、ゲームのテンポも『スト4』シリーズとはかなり違うなと思ったのですが、あえてなんでしょうか。
綾野:テンポは速くしようと心がけています。あとはインファイトも心がけています。ゲームスピード自体を速くしているわけではなくて、モーションをすべて刷新して、速く見えるようなモーションを新しく組み直しています。
――今回、必殺技以外にも削りがあることもゲームスピードに関係しているのでしょうか?
杉山:中攻撃と大攻撃でリカバリアブルダメージで削れていくのも、スピード感を出すというものです。あとは、目の錯覚を利用しているわけではないんですけど、体力ゲージの幅が前作よりも細くなっているんですよ。それによって、『ウルIV』と同じダメージを食らってもすごく減っている感じが出ます。
例えば350食らった場合、本来減る量は同じなんですが、赤い被ダメージゲージの太さが違うので、満タンの時の方が大きく減っているように見える。そのため、畳み掛けていくようになる。
そのように細かい視覚的なところや、リカバリアブルダメージで体力が削れることもあって、展開が短くなり、早くたくさん試合ができるように仕込んではいます。
――テンポを速くするのはユーザーから意見があったのですか? それとも開発側が意識して変えたのでしょうか。
綾野:『ウルIV』の時からそうなんですけど、タイムアップで終わるような逃げの戦法よりは、攻めていって勝負をつけてほしいんです。待つよりも攻めたほうが強いというゲームになります。それが先ほどの“インファイト”ということにつながります。
杉山:攻めたほうが見ている人もおもしろいし、プレイしているほうもバンバン攻撃当てたほうが爽快感があると思うんです。『オメガエディション』を出した時に、前ダッシュは変わらないけど、バックダッシュを少し短くしたりだとか、インファイトで戦わせる調整をしたのですが、どういう反応があるかなと試してみたりはしました。それをやったらゲームのテンポがよくなって、おもしろくなったという意見もあったので、本作でもやってみようかなというのは裏テーマとしてはありました。
――後ろ溜めについても、攻めるという要素に関係して調整したのでしょうか。
杉山:まったく関係がないわけではないですが、リュウの波動拳やナッシュのソニックブームなどコマンドをある程度同じにすることで、新しく入ってきた人たちが、キャラクターごとの操作の違いで混乱するのを避けたいという意味もあります。溜める必要がないので後ろに下がることも減るということもあるんですが、コマンドにした理由は複合的な理由があるんで、このためだけいうわけではないです。
――今後の展開について、クローズドベータテストがありますが実施することになった経緯は?
綾野:今までの『ストリートファイター』の歴史でいうと、ロケテストは絶対にやってきました。ただ、今回はアーケード版がないので、どうやってユーザーのフィードバックを得るかという点がありました。
そのため、オンラインを使って世界中で大規模にクローズドベータテストという名のロケテストをやって、幅広くユーザーから意見が欲しいのです。こちらは、ネットワークテストやサーバー負荷のテストなどもかねています。
――稼働を待ちわびるファイターたちにメッセージをお願いします。
杉山:ファイターだけじゃなくて、幅広い読者の方にも楽しんでもらいたいというのがあります。eスポーツのためのツールとして『ストリートファイターV』を用意し、eスポーツをやる土壌と文化というのを作り上げていきたいという思いがあります。
スポーツって、華やかなほうが見ていておもしろいし、プレイする側もやっていて爽快感もあると思うんです。そういう意味も含めて、展開の早いゲーム設計にしてみたり、目押しをなくすことで、初心者でも遊びやすくしたりしています。草野球が好きな方でも、実業団やプロ野球でやりたいという人でも、誰でもなるべく楽しめるような設計にはしていきたいです。
競技やスポーツとして、遊んでいけるように全力で制作しているところなので、いい評価をいただいているところにあぐらをかかず、それを維持してリリースまでもっていきたいと思っています。ぜひ楽しみにしていただければと思います。よろしくお願いします。
綾野:格闘ゲームでクローズドベータテストをやることはあまりないと思うんですが、ぜひ皆さん参加していただきたいです。ロケテストだと地方の方で「なぜこの地方でロケテストをしないんだ」という声はよくいただきます。でも、オンラインであれば全国から参加可能です。
抽選で1万名限定にはなるのですが、1万人でロケテストするなんてことないので、この機会に幅広く全国の皆さんで参加していただきたいなと思います。なお、こちらはPlayStation Plus加入者限定になっているので、7月8日の“ストリートファイターV クローズドベータテスト抽選券”配布までに、会員になっておいてください!
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