2015年6月27日(土)

【電撃PS】『三國志』シリーズ30年記念! 呂布の一騎討ちの戦績って実際のところどうなの?【なぜなに三国志】

文:電撃PlayStation

 今年30周年を迎えるコーエーテクモゲームスの『三國志』シリーズ。こちらは2013年に30周年を迎えた『信長の野望』シリーズと並ぶ、歴史SLGの代名詞ともいえる作品です。12月10日にはナンバリングタイトル最新作『三國志13』の発売も予定されており、SLGファンのみならず歴史ファンの期待も高まるばかり。

 そんな本シリーズの過去作品アレコレと、原作となった“三国志演義”、正史“三国志”のアレコレを、『三國志』ファンの2人がいろいろ好き勝手に語っていっちゃいます!

うどん先生 KYS
『電撃プレイステーション』 『電撃プレイステーション』
▲『信長の野望』から歴史に入った、ゲーム脳歴史ライター。好きな『三國志』は『三國志IX with パワーアップキット(以下、IXPK)』『三國志 11 with パワーアップキット(以下、11PK』『三國志V(3DS版)』。あと『三國志戦記』『三國志Internet』も名作だったと思う! ▲小学校低学年時に父親が持ってた横山光輝“三国志”を読んでこの世界に入る。その後、“蒼天航路”“龍狼伝”“天地を喰らう”などマンガは読み漁る。好きな『三國志』は『V』と『12対戦版』。

■歯ごたえある戦略SLGを楽しみたいなら『三國志IX with パワーアップキット』!

KYS:いやはや今年で30周年とは時が経つのは早いもんだね。初めてプレイしたのはファミコン版だったけど、何もかもが懐かしい……。

うどん:だよねー。世間では『IV』が名作って言われてるけど、あたい的には3作目の『元朝秘史』が一番好きで。義経率いる武士軍団で大陸侵攻とか超燃える!

KYS:なんの話してんのかなー!?

うどん:今年30周年を迎える『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズに決まってるじゃないかね! 『元朝秘史』のときって、妃ごとにマスクデータが設定されてて、子どもの能力は君主と妃の平均値になってたんだよね。だから能力高い北条政子やラッチの確保も……

KYS:いや、そっちも30周年だけど! 今回は『三國志』シリーズな!

うどん:YES! YES! イェスゲイ! じゃあさっそく『IXPK』の話を語ろうと思いますぞ。

KYS:連載1回目なんだから、初代『三國志』からが普通じゃないかな!? 初代作から『12』まで順番に語らないのかな!?

うどん:どうせ12回も連載続かないよ! 今回は『IXPK』、次回は『11PK』、そのさらに次は『V』あたりかなあ……。と、あたいの好きなタイトル順に語りますぜ! その次あったら『三國志戦記』か『三國志Internet』にしよう。よし、決めた。

KYS:う、うん。僕はナンバリングはガッツリとは『V』くらいまでしかやってないけど、『IXPK』ってそんなにいい作品なの?

うどん:それでは説明しよう! 『ⅨPK』は中国全土を1枚マップ化したシリーズ初の作品で、セミリアルタイム制の戦略級SLGなのだ。プレイヤーは1君主となって、中国全土を統一するのが目的なわけやね。

『電撃プレイステーション』
▲内政や行軍の指示を出す“戦略フェイズ”と、部隊がリアルタイムに行動する“進行フェイズ”を繰り返してゲームを進めていきます。作品テーマは“動乱”。1枚マップのスケール感がスゴイ!

KYS:そう聞くと普通の『三國志』やね。

うどん:『IXPK』のよさって、一言でいえば、“歯ごたえの気持ちよさ”なのだ。CPUがちゃんと複数の領地で連携してこちらを攻めてくれるので、油断してるとボコボコにされることもしょっちゅうある。

KYS:単純に難易度が高い?

うどん:従来作の難易度の高さ=兵士数が多い、敵の物資が多いという印象だったんだけど、『ⅨPK』は対戦相手の敵勢力として手強い感じ。適度に好戦的だし、敵勢力同士が合併してパワーアップすることもある。難易度はやや高めだけど、歯ごたえがめっちゃ味わい深い。

KYS:わかるような……わからないような……。

うどん:自分で挙げておいてアレだけど、うまく説明できねえええ。ちょっと話が変わるんだけど、『IXPK』の翌年に発売された『信長の野望・革新』も劇的に敵の思考ルーチンがおもしろくなって。こちらもセミリアルタイムの1枚マップ制で、コーエーテクモゲームスの歴史SLGはこの系統のシステムに関してはバランス取りがすごくうまいんだと勝手に思ってるのだ。

KYS:あ、『革新』は確かにおもしろかったかも。信玄や謙信が数万の大軍で攻めてきて、大部隊同士の大激戦になりやすかったよね。

うどん:歴史SLGの気持ちいいとこって、ちゃんと強い君主が強く再現されてて、それに「ヒィー!」って泣き叫びながら戦うことだと思うのだ。思考ルーチンそのものもよかったし、戦法連鎖でボッカンボッカン大ダメージが出たのも気持ちよかった。

KYS:それも『革新』に通じるものがあるね。謙信の“車懸り”や鬼島津の“捨て奸”は洒落にならんレベルの極悪さだった……。

うどん:とくに呂布軍の主力、呂布、張遼、高順が全員騎馬系最上位の“突撃”を持ってるもんだから、怒涛の突撃連鎖がパネッス。呂布は野戦だけでなく、攻城用にも使える弓騎兵最上位の“飛射”も持ってるし、すんごい強かった。たぶんこれだけ強い呂布は、極悪戦法“人中の呂布”を所有する『12』と、この『IXPK』くらいじゃないかしら。

『電撃プレイステーション』
▲戦法連鎖で大ダメージ! ゴイスーなときは、7000近いダメージとか出たり。武将の強さ、怖さをちゃんと再現するのって、ほんと大事ですよね。

KYS:呂布が強いのはいいよね。やっぱり呂布には“三国志”最強武将であってほしい。

うどん:ところでめっちゃ余談になるんだけど、“演義"の呂布って一騎討ち成績は8戦5勝3分 で、そんなに傑出してすごいわけじゃないんだよね。えーと、具体的には……。

■一騎討ち

○呂布vs方悦× 五合もせず突き殺す
○呂布vs武安国× 十合あまりで腕を斬り落とす
○呂布vs公孫サン× 数合もしないうちに公孫サン逃走
△呂布vs張飛△ "三英戦呂布"の前哨戦。五十合戦って決着つかず
○呂布vs許チョ× 二十合ばかり戦う。曹操は“許チョが負ける”と判定
○呂布vs李豊× 数合で李豊は腕を突き刺され、槍を落として退散
△呂布vs張飛△ 互角に戦い決着つかず 
△呂布vs関羽△ 互角に戦っている最中、背後から張飛が現れたので退却

■一騎討ち以外

×呂布vs劉備+関羽+張飛○ いわゆる"三英戦呂布"。呂布は不利を悟って逃走
○呂布+臧覇+張遼vs楽進+夏侯惇× 臧覇と楽進、張遼と夏侯惇の一騎討ちに乱入して追い散らす
×呂布vs許チョ+典韋+夏侯惇+夏侯淵+楽進+李典○ 曹操軍総出で呂布を追い帰す

 って感じ。さすがに劉備関羽張飛の3人がかりとか、曹操軍6人で袋叩きは、敗戦に数えるのかわいそうだ! 横山版だと、典韋と許チョが2人がかり で呂布に挑んで、軽く子ども扱いされる場面もあるんだけど。

KYS:あれ、意外。30人くらい屠ってそうなイメージなんだけど。

うどん:ま あ、全百二十話中、第十九話という序盤で死んじゃった人だしね。“演義”の原典になる"三国志平話"では、張飛が呂布 に一騎討ちで勝っちゃってる……というのは余談だけど、“演義”での一騎討ち成績でいえば関羽張飛趙雲が圧倒的やね。

KYS:そこは主人公チーム補正か!

うどん:おういえい。ちなみに関羽は26戦20勝1敗5分勝率76%で、唯一の敗北は徐晃に敗れたもの。張飛は18戦15勝3分勝率83%の敗北無し。漢中では許チョ(ほろ酔い)も一撃で倒してるで。

KYS:そして趙雲は!?

うどん:趙雲は33戦30勝1敗2分。驚異の勝率90%で、討伐数も27人。まさに蜀のキラーマシーンやな!

KYS:北伐で撃破カウントめっちゃ稼いだもんね……。ちなみに誰に負けたの?

うどん:魏にいた姜維やね。このときの姜維は諸葛亮の策を見破り、趙雲を一騎討ちで退けるというとんでもないデビュー戦を飾ったのだ。“演義”第九十三回を参照のこと。

KYS:どんどん“演義”の話になってきたけど、正史だとどうなん?

うどん:関羽張飛は“兵一万に匹敵する”と魏の程昱に称されてるし、実際、白馬の陣で関羽は単騎で敵陣に乗り込んで顔良の首級を挙げてるんよね。化け物だと思う。でも、それ以上に正史の呂布はやばい。袁紹の客将になってたころ、張燕率いる黒山賊の兵一万数千に対して、直属の十数騎のみでこれを破ってるのだ。

KYS:一万数千vs十数騎!?

うどん:“1日に何度も突撃を繰り返し、柵を破り、塹壕を飛び越え”と記述される猛突撃で、戦力差1:1000に勝利しちゃってるのよ。そりゃ世の人々も“人中の呂布、馬中の赤兎”と称えるわな。

KYS:本物の一騎当千か!

うどん:リアル一騎当千! それと濮陽で曹操と対陣したとき、曹操は“呂布はわずかな間に一州を手に入れたが、守りやすい東平を根拠として街道を断ち切る戦術を取らず、守りにくい濮陽に駐屯した。私には奴の無能がわかる”と嘲笑ってるのだ。ところがその濮陽の戦いで、曹操は呂布軍の猛攻撃の前に大惨敗を喫しちゃってる。曹操自慢の精兵・青州兵も蹴散らされて、フルボッコ。

KYS:うわー、それは自信満々で言ったぶんだけ恥ずかしい!

うどん:正史の呂布は、戦術的劣勢をくつがえす蛮勇の持ち主だったというわけ。まさに戦術兵器・呂布。その後は結局曹操の戦略の前に敗れたんだけどね。さすがに戦略級の蛮勇の持ち主は、楚漢戦争時代の項羽くらいだと思う!

『電撃プレイステーション』
▲『IXPK』での呂布は、武器込みで武力108! 部隊の前衛に配備すると、一騎討ちでかたっぱしから敵将を撃破してくれます。『IXPK』は、一騎討ちが多発するため、猛将たちの活躍の機会が多かったのもポイント。

KYS:『12対戦版』の項羽(項籍)も超強かったよ! さてそろそろ『IXPK』の話に戻ろうか!

うどん:YES! YES! まだまだ語りたいとこは多いんだけど、地味にうれしかったのがifシナリオの充実かしら。ちなみに前作『VIII』はシナリオ数がすさまじくて、184年から234年まで、全年代51本ものシナリオがあったんだ。

KYS:それはそれですごい!

うどん:ねー。全年代再現って作る方はたいへんだと思うけど、シナリオごとの勢力図の変遷を見てるだけで楽しかった。『VIII』1回きりなのが残念なくらい。で、『IXPK』はいつものシナリオ数に戻ったんだけど、おもしろいifシナリオが多くて。例えば、孫堅が後漢再興のため洛陽を手中に収めた“孫堅の中興”、劉備が献帝を保護して馬騰軍に合流した“漢の忠臣ここにあり”、官渡の戦いで袁紹が勝利した“華北の覇者袁紹”、曹操死後に曹丕、曹植、曹彰が内乱をはじめた“曹家分裂”。

KYS:どのシナリオも“三国志”ファンが「これどうなっちゃうの!?」と気になる展開ばかりだね……。

うどん:とくにオススメなのが、鍾会が蜀で独立した“西蜀動乱”。鍾会と姜維のもとに蜀残党軍が結集してて。鍾会の傘下だった杜預も配下にいるし、鄧艾勢力も吸収できるから、人材面はかなり充実してるのだ。正史の鍾会は挙兵する際、「失敗しても(蜀を手中に収めた)劉備くらいにはなれる」と語ったんだけど、まさに蜀王・鍾会が主人公のシナリオだわさ。

KYS:それはなかなか熱い!

『電撃プレイステーション』
▲鍾会が蜀で独立に成功! 鄧艾も独立しており、どちらでプレイしてもおもしろい!
『電撃プレイステーション』
▲鍾会軍と鄧艾軍の激突! 勝った側が蜀の支配者として、再びの三国時代に挑むことになります。鍾会軍の方が戦力は充実してるんだけど、なにぶん鄧艾は三国末期最強の名将。さっきプレイしてたら、鄧艾&鄧忠親子の突進連鎖に鍾会、杜預、姜維がみんなボコられました……。

うどん:それと正史好きにオススメのシナリオが“白馬将軍の威”かな。これは、袁紹、袁術、公孫サンが巨大化してるシナリオで、もう1つの三国志ともいえる設定なのだ。

KYS:なんでその3人? 地味じゃない?

うどん:正史準拠だと、反董卓連合解散後、全国はだいたい4つの勢力に分かれているのだ。長安の董卓と、袁紹、袁術、公孫サン。とくに後者3人は巨大な軍閥を築いていて、当時の曹操は袁紹軍閥、孫堅孫策は袁術軍閥、劉備は公孫サン軍閥にそれぞれ所属してるにょん。

KYS:ほーん。

うどん:あんま興味なさそうだけど語るよ!? とくにその例がわかりやすいのが、曹操の徐州侵攻かな。もともと徐州太守の陶謙は公孫サンと縁が深くて、当時の公孫サンは袁術と手を組んで曹操と戦ってたのだ。“演義”ではポヤヤンとしたいい人の陶謙だけど、正史の陶謙は梟雄といっていい人物。天子を自称した闕宣(けっせん)って妖賊と手を組んであちこちで略奪を働いたり、そのうちその闕宣を殺して軍勢を吸収したりしてるにょよ。

KYS:あれ、意外に野心的な人なのね。

うどん:だから曹操の父親が徐州で陶謙の部下に殺害されたのは、起きるべくして起きた事件かも。敵対する軍閥に所属してたわけだしね。曹操はその復讐のために徐州に攻め寄せたんだけど、そのとき公孫サンの命で劉備は援軍に派遣されたのだ。そんな感じで天下は袁紹、袁術、公孫サンの3軍閥で争ってて、最終的には公孫サン、袁術が滅亡。で、もともと同志だった袁紹と曹操が天下分け目を官渡で争ったわけやね。

KYS:この話まだ続く?

うどん:まだ続く! 194年に曹操が献帝を擁立してるんだけど、そもそも袁紹は献帝に興味なくて、劉虞を皇帝に立てようとしてたぐらいなんだ。だから曹操の献帝擁立は、袁紹軍閥からの独立も意味する大きな賭けでもあったと思う。いわば天下を争ってた3軍閥とは別の、自分の軍閥を立ち上げたようなものやね。

KYS:そろそろ話戻っていいかしらー!

うどん:あ、はい。

『電撃プレイステーション』
▲“三国志”ファン大興奮の、充実のifシナリオ! ちなみに『11PK』のシナリオ“序を制する者”でも、同様に3軍閥の争いを描いています。

うどん:えーと、なんか“演義”と正史の話ばっかしてた気がする。

KYS:それだけ、“三国志”ファンが心ときめく作品というわけね。

うどん:うまいこと言ったわこの人! そうそうそれそれ。やっぱり歯ごたえある戦略SLGが『三國志』だと思うんすよ。『IXPK』の場合は、それに加えて、ファンタジックなまでに気持ちよく大ダメージを与える爽快感もあって。SLGと“三国志”の世界をうまくミックスした作品になってると思うのだ。つまりシリーズ最高の作品。あたい的に。

KYS:そこまで褒めるとちょっとプレイしてみたくなったかな。今だとPSP版?

うどん:VitaでPSP版をアーカイブスで購入するのが正解かなあ。情報量多いゲームだから、個人的にはやっぱりPC版がいいと思うけど。昔の名作って思い出補正によるところが大きくて、今遊ぶと「あれ、こんなもんだっけ?」と感じるのがお約束だと思うんだけど、『IXPK』は10年以上経った今でもまだまだいけるッス。撮影しながら、3日3晩遊び続けてしまったあたいが断言するッス。

KYS:どうりで仕事が進んでなかったわけだ。

うどん:いや~ん!

データ

▼コーエーテクモ the Best三國志IX with PK(ダウンロード版)
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PSP(PS Vita SCE動作確認済タイトル)
■ジャンル:歴史シミュレーション
■発売日:2012年9月6日
■希望小売価格:2,286円+税
▼『電撃PlayStation Vol.593』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年6月25日
■定価:657円+税
 
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