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2015年7月11日(土)

理想と現実をどう埋める? 『乖離性ミリオンアーサー』が解き明かすゲーム制作の本質

文:あべくん

 7月10日に渋谷ヒカリエにて開催されたクリエイター向けセミナー“Game Graphics Groove #3”。この記事では、iOS/Android用アプリ『乖離性ミリオンアーサー』のプログラム内容をレポートします。

“Game Graphics Groove“

 本イベントはDeNA、スクウェア・エニックス、GREE(グリー)、ポケラボの4社合同で行われたゲームグラフィッククリエイター向けのセミナー。さまざまなアプリ開発者が登壇し、講演を行いました。

●“Game Graphics Groove”のオフィシャル紹介文

 Unity、Unreal Engine、Cocos2d-xなど、多くのツールが活況を呈し、コンソールだけではなく、スマホゲームの画質も大幅に上がってきています。

 このイベントは、クリエイティブによるゲームの進化をさらに加速させるためのものです。

 ゲームグラフィックのクリエイターが、最新のヒットタイトル開発のノウハウを余すこと無く共有します。

 この記事では、現在好評配信中の『乖離性ミリオンアーサー』とその前作にあたる『拡散性ミリオンアーサー』の事例をもとに“乖離から始まった本質への回帰”というテーマで進められたプログラムをクローズアップしてレポートしていきます。

“Game Graphics Groove“

 本プログラムでは、『拡散性ミリオンアーサー』、『乖離性ミリオンアーサー』のデザイナー、窪洋一さんが登壇。

 ドットからハイエンドへ、そしてコンシューマからスマートフォンへと移り変わっていったこの25年間を、自身のゲーム制作の歴史を振り返りながら、どのような変化があったのかを語りました。

“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
▲『ファイナルファンタジーX』や『フロントミッション』シリーズといった名作も手掛けられていた窪さん。

 窪さんは25年間ゲーム制作に携わってきましたが、その間にゲームを作るということにおいて、さまざまな“乖離”を感じてきたといいます。

 ゲームを遊ぶ側から作る側に変わったときに感じた乖離、ゲームを楽しんでもらっているという実感からの乖離、作りたいものと売れるものとの乖離など、あらゆる点において、現実と自分が思い描いていたものとの距離感を感じていたようです。

“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“

 そして、時代は変わり2Dから3Dに。3Dが主流になりはじめた初代PSやPS2の頃は、ゲームを制作する側も上限を意識して作りたいものが作れた時代だったようです。

 しかし、技術の進歩にともないハイエンド機が主流になると、制作にかかる労力の増加やメモリの配分など、模索しなければならないことが複雑になりすぎてしまい、毎日何かしらの苦痛を味わいながらゲームを制作するようになってしまったとのことでした。

 また、仕事の年数を重ねるごとに管理系の仕事が多くなってしまい、2009年末にはハイエンド機の制作から離れることに。

“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
▲ハイエンドになり美しくはなったものの、ゲームが変わったというわけではないという状況に寂しさを覚えたとのこと。
“Game Graphics Groove“

 そんな中、2010年に大きな変化が訪れます。それはガラケーにおけるソーシャルゲームの大流行。その後、ガラケーからスマホへ、ブラウザからネイティブアプリへとゲームの波も移り変わりました。

“Game Graphics Groove“

 そうした状況を受け、2011年に『拡散性ミリオンアーサー』の配信がスタートします。

 本作のリリース時にはコンシューマでは体感したことのないようなライブ感やリアルタイムにもたらされるユーザーからの大きな反応などを受け、配信直後はしばらく仕事が手につかなかったとのこと。

“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“

 ただ、こうした目まぐるしい流れを経験したことで、理想と現実のギャップは大きく解消されていったとのことでした。

“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“

 窪さんによると、前作『拡散性ミリオンアーサー』は、運営するうえで施策にぶれが生じてしまったことなどの理由により、作品とユーザーさんとの間に大きな乖離があったとのことでした。

 しかし、『乖離性ミリオンアーサー』はその乖離を飛び越え、ゲーム性やビジュアル、演出など、すべてにおいて前作を超越できたと感じているそうです。

“Game Graphics Groove“
“Game Graphics Groove“

 現在、1,000万ダウンロードを突破するなど、大きな盛り上がりを見せる『乖離性ミリオンアーサー』。作る側としても、ゲーム制作と自身の間の乖離がなくなったことで、飽きることなく作れているとコメントする窪さん。

 今後も、より一層の盛り上がりを見せるであろう本作。今後の施策や展開にぜひ注目していきたいところです。

“Game Graphics Groove“

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