News

2015年7月11日(土)

SCE吉田修平氏が語った、日本のインディーが盛り上がるための3つの戦略とは?【BitSummit 2015】

文:電撃PlayStation

 7月11日から京都で開催されている『BitSummit 2015』にて、SCEワールドワイドスタジオのプレジデント、吉田修平氏による講演が行われた。BitSummit 2015はインディーゲームの祭典ということで、インディーゲームに対してPlayStationがどのように取り組んできたか、そしてこれからどうやって盛り上げていくのかの戦略が吉田氏から語られた。

『BitSummit 2015』

PlayStationがインディーをサポートするのは
その歴史からすれば当然のこと

 吉田氏の講演はまず、PlayStationがこれまでインディーにどう取り組んできたのかという話から始まった。任天堂とセガという2大ハードメーカーがすでに存在していた1994年に話はさかのぼる。

 「私は1994年の初代PlayStation発売の頃から参加していますが、もともとPlayStationは新規参入で、我々は我々の考え方でゲーム業界に新しい風を起こしたい思っていました。『パラッパラッパー』や『キングスフィールド』など、新しいタイトルと新しいクリエイターを呼び込んで、ゲームを、おもちゃ的なものから誰でも楽しめるエンタテインメントにしようという気概をもって仕事をしていました」

 「“ゲームやろうぜ”や“PlayStation CAMP!”など、インディーでゲームを作りたいけれど、会社とかお金とかの問題でうまくできないという人たち、だけどアイデアがあったり、腕が立つ人だったりそういう人をサポートすることに取り組んできました。

 『どこでもいっしょ』や、最近だと『TOKYO JUNGLE』、海外だと『風ノ旅ビト』だったり、作り手が思いをこめて作っているタイトルを送り出して来られたのかなと思っています。ですからPlayStationのカルチャーとして、インディーあるいは新しいクリエイターをサポートすることは自然なこととして取り組んでいる」

 “ゲームやろうぜ”や“PlayStation CAMP!”はSCEによるクリエイター支援プロジェクトだったが、応募者のなかから選考して、支援する人、チームを選んでいた。現在はさらに枠を広げてクリエイター支援をしていると言うことができる。東京ゲームショウのインディーコーナースポンサード(インディーコーナー出展料をSCEがサポートして出展者の出展料を実質0にする支援)も支援の一環だ。

 「SCEにはデベロッパーリレーションズという部署があります。日米欧で、とくにインディーの方を対象にして活動しています。イベントに積極的に出展したり、100以上のイベントに通っていって、よいタイトルが見つかったらPlayStationで出してもらえないかという交渉をしたり、そういうことをやっています。

 インディーは人と人とのつながりが非常に大事ですので、SNSでもコミュニケーションをとっており、「PS love Indies」という合言葉でやっています。日本においてはローカライズや広報活動も必要なので、海外の優秀な面白いタイトルを持ってきてくれるパブリッシャーパートナーさんも積極的に増やしています」

 「こういった総合的な活動によって、日本においてもたくさんのタイトルが発売予定になっています。インディー市場という意味では日本は遅れていたのだけれど、たくさんのいいゲームが世界中で出ているので、それを日本に持ってきてということを積極的に動いています」

『BitSummit 2015』 『BitSummit 2015』

 発売予定になったままでなかなか配信、発売されないインディータイトルがあったのは事実。今後はパブリッシャーパートナーとの協力などにより、日本でもインディータイトルが数多くローカライズされて、PlayStationに登場することに期待したいところだ。

日本でどうやってインディーを盛り上げていくのか?
そのカギを握る3つの戦略

 吉田氏の話は、ここまでは現状の分析と対処についてだったが、日本でどうやってインディーを盛り上げていくのか? その具体的な戦略が最後に提示された。

 「今後、日本でどうやってインディーを盛り上げるのか? 今日はその戦略を持ってきました。これをやればうまくいくはずです」として提示されたのは以下の3つ。

1:海外の良作インディーゲームをたくさん発売する
-日本ユーザーにデジタルストアで買う習慣をつける-

 「海外のいいゲーム、これをどんどん日本に持ってくる。日本のユーザーはデジタルでゲームを買うことが習慣になっていない。それを毎週のようにいいゲームを出すことで習慣にしてもらう。それは先ほどのパブリッシャーパートナーさんとともに頑張っていきたい」

2:日本の著名クリエイターを海外市場に送り込む
-稲船、五十嵐、鈴木に続け、過去の人気IPを活用-

 「日本はゲームを作っているクリエイターの質と量が素晴らしいんです。今はコンソールのゲームが作られなくなったと言われていますけど、稲船敬二さん、五十嵐孝司さん、この前の鈴木裕さんもキックスターターで大成功している。

 海外のゲームユーザーは日本のゲームで育った人がいっぱいいて、過去のタイトルが今作られていれば買うのになぁという人がいっぱいいるんだということが証明されたと思います。なので、稲船、五十嵐、鈴木に続けということで、日本のクリエイターに直接海外に出ていってほしいと思います」

3:VRで日本でしか作れないコンテンツで勝負する
-バーチャルアイドル、キャラクターもので世界へ-

 「日本はバーチャルアイドルやキャラクターとかで自然に遊ぶというたしなみがある。欧米の人たちは気恥ずかしいのか、なかなかそこにクリエイターも手を出してこない。日本のクリエイターでしかできないクエリエイトで世界に繰り出してほしい。これぞジャパニーズだと、堂々と出ていってほしいなと思います」

『BitSummit 2015』
▲Project Morpheus(プロジェクトモーフィアス)について吉田氏は「インディーでゲームが作られるなかで、いかに目立つようにVRを使うかは非常に有効だと思う」と語った。
『BitSummit 2015』
▲途中、モーフィアスの技術的なサポートを担当している秋山賢成氏が登壇し「開発は順調です。開発機も潤沢に用意できています。やってみたいと思う方はぜひ声をかけてください。開発サポートが渾身の力を持ってみなさんの企画を形にします」。ツールもばんばん出荷できるそうです!

 吉田氏は最後にインディーとしてゲームを作ることの魅力について語り、講演を締めくくった。

 「インディーは何がいいか? それはクリエイティブでフリーダム、作って成功したら自分のものになるということです。大変ですけど、やりがいがありますので、ぜひみなさん頑張ってください。応援します」

 コアなゲームファンなら、PCのSteamでインディーゲームを購入し、遊んでいるだろう。しかしPlayStationという一般性の高い、世界中で普及しているゲームハードで潤沢にインディーゲームが用意されることは、インディーゲーム自体をより一般化し、遊ばれる機会をより増やすことになる。

 PlayStationがゲームを作る側にも、提供する側にもより協力することを表明したことで、ゲームファンとしてはPlayStationでインディーゲームを遊べるチャンスが増えることになった。成果が現れるその日が来ることが、より早いことを期待したい。

『BitSummit 2015』 『BitSummit 2015』
▲吉田氏がE3などのメジャーなイベントで動画番組に出るのは「自分が出ることで少しでも見る人が増えて、インディータイトルのプロモーションになれば」という理由なのだという。
『BitSummit 2015』 『BitSummit 2015』
▲日本初プレイアブル出展の『The Tomorrow Children』や、発表されたばかりの『EARTH WARS』、PS Vita版『オクトダッド』など、数多くのタイトルが遊べるBitSummit 2015のSCEブース。

関連サイト