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2015年7月28日(火)

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』をレビュー。名作SRPGの血統を継ぐシリーズ最新作

文:田中尚道

 エクストリームが7月23日に発売した、3DS用SRPG『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』のレビューをお届けします。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』

『デアラングリッサー』をベースにした3DS『ラングリッサー』

 『ラングリッサー』といえば、1991年にメガドライブで発売されて以来、さまざまなハードで発売され好評を博した名作シミュレーションRPGシリーズです。2000年発売の『ラングリッサーミレニアム』でコンシューマハードの展開がいったん終了したものの、15年の時を経て3DS用ソフトとして帰ってきました。

 本作『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』のシステムは、スーパーファミコンで1995年に発売された『デアラングリッサー』をベースにしています。主人公の選択により進む道が変わっていくストーリーが当時は画期的でしたが、もちろん本作でも主人公アレスの選択により組する陣営が変わっていきます。これらの選択を導いていくのは、登場するキャラクターたちなのです。

 それぞれの陣営には異なる理念があり思惑もそれぞれですが、絶対的な悪という存在は描かれません。聖剣と魔剣という二振りの剣を巡る戦いですが、この剣も器でしかなく単純な正邪の戦いではないことも作中で語られます。今回は、武力制圧という強硬手段を取りながらも究極的な目標は人類の救済という、一見すると背反する主義を持つ帝国軍ルートを中心に紹介していきます。ゲーム中では、帝国軍ルートの他、光輝の軍勢ルート、闇の勢力ルートも選択可能です。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲世界はガイアの門と呼ばれる結界によって外界と遮断されています。そしてガイアの門の内側では謎の海面上昇によって人類の生活圏が脅かされているのです。
『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲ゲーム開始時にキャラメイクがあります。ジェシカの問いに答えていくことで、歩兵、魔術師、騎兵、神官のどのクラスになるかが決定します。

世界の人々を救うため帝国軍へ──

 主人公アレスの旅立ちは、帝国軍が彼の住む街に侵攻してくることで始まります。穏やかだった生活を壊され、旅立ちを余儀なくされた彼ですが、ふとしたことで手にした聖剣ラングリッサーにより帝国軍と対立する光輝の軍勢に身を寄せることになります。ここで反帝国軍として戦乱に巻き込まれていくのですが、途中で分岐が発生し、進むべき道を選択しなければならない状況に追い込まれます。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲帝国皇帝が持っていた魔剣アルハザードと、アレスの持つ聖剣ラングリッサー。ゲーム序盤では真の力を発揮できる状態ではないようです。その力を取り戻した時、何が起こるのでしょうか?
『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲ルート分岐のタイミングはわかりやすく知らせてくれます。どちらの道を選ぶかで与する陣営、仲間となるキャラクターが変わっていきます。

 謎の水位上昇によって世界が海中に没する危険から脱すること。生き別れになった妹リコリスを捜すこと。この2点がアレスの行動の前提なのですが、帝国軍との戦闘中に妹と思しき人影を見たアレスは、帝国軍から取引を持ちかけられます。それは、妹を捜すための情報を与えるので帝国軍に参加してほしいというもの。ここが最初の分岐になります。

 ここで帝国軍についていけば、帝国軍ルートに入るわけです。各地に侵攻し、村々を焼いた非道な帝国軍ではありますが、そこにいる人たちはそれぞれの責務や夢を持つ普通の人たちなのです。また、帝国に奪われた失地の奪還が目的の光輝の軍勢は、水面上昇という危機への答えをこの段階では持っていません。その点でも大局的に見れば、帝国軍に参加することが人類の救済に一番近いとも言えるのです。

血肉を持って語りかけてくるキャラクターたち

 帝国軍ルートを選んでみましたので、筆者が帝国軍で気になったキャラクターを紹介しましょう。帝国軍の物語は人々の思惑が入り乱れる展開で、どのキャラクターもさまざまな目的や思いを抱えています。ボイスも実力派な声優陣が演じているので、声優好きな方にもぜひ注目していただきたいです。

 最初にアレスに接触してくるのが若き才媛、帝国軍の宰相の座に就くフローレ。姉も帝国軍の将軍職という、名門ユースティーツ家の息女です。帝国の科学力を背景に建造された浮遊都市で、人類すべてを新天地に導こうというヒューマニスト。壮大な信念とそれを実行できる才覚を持ち、帝国内の政治的な駆け引きにも長けており、なかなか底の見えない人物ではありますが、親しくなれば年相応の表情を見せてくれます。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』

 声を担当するのは、『生徒会の一存』(桜野くりむ役)や『ロボットガールズZ』(Zちゃん役)などで知られる本多真梨子さん。どちらかというと元気で幼い役柄が印象的ですが、今作では、芯が強くてアレスより少し大人な女性を演じています。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲最初は距離がありますが、親しくなれば下着を落としたりとドジな一面も見せてくれます。

 フローレの姉で“無慈悲の女神”の異名を持つのがヒルダ。2人の両親は視察先で光輝の軍勢の攻撃にあって命を落としているのですが、このことがしこりとなってフローレとの間に溝ができてしまいます。傷ついた両親を見捨てて逃げたフローレを内心許せなく思っている彼女ですが、それが両親の言いつけを守ろうとして彼女なりに最善の手段を取ったものだとも理解しています。

 妹を護ろうと光輝の軍勢に徒手空拳で立ち向かおうとしたヒルダ、そして持ち前の合理的な判断で姉ともども生き延びる道を選んだフローレ。どちらも互いに深い愛情に根差した行動だったのです。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲光輝の軍勢に轟く二つ名。苛烈な行いは味方の損害を減らすための彼女なりの答え。

 また、敵を完膚なきまでに叩き潰し、いかなる状況においても微笑を絶やさないため、あまりありがたくない二つ名をつけられていますが、それも、敵軍に恐怖を抱かせることで結果的に流れる血を減らそうという彼女の考えです。敵には鬼神のごとく恐れられていますが、戦いの才覚は確かなもので部下からの信頼も厚い姉御肌です。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』

 ヒルダを演じるのは、『ロボットガールズZ』でおっとり腹黒キャラであるグレンダさん役が記憶に新しい荒浪和沙さん。こういう、ぐいぐい引っ張っていってくれるお姉さんキャラも魅力的です。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』

 見た目幼女で実際に幼いのに、帝国国教会総主教代理という要職に就いているのがルクレチア。教皇なのにクラスが魔術師というところからもわかる通り、なかなかアグレッシブな性格です。

 幼い身の上で周りの老人たちに翻弄されたため、すっかり性格がねじくれてしまいました。アレスより幼いですが、物言いは上から。転生を重ねてきたジェシカとは別の意味でロリババア枠です。なお、お互いに対抗意識があるのか、戦闘中の会話イベントもジェシカに対してはルクレチアが一番多くなっています。立場的にも対になっているキャラクターですね。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲ジェシカとの因縁浅からぬルクレチア。ジェシカはどうやら彼女の過去を知っているよう。

 声は、『ストライクウイッチーズ』(宮藤芳佳役)、『To LOVEる-とらぶる-』(金色の闇役)などで知られる福圓美里さん。幼い役をよく演じていますが、こういう高飛車な役はちょっと珍しいのではないでしょうか。あの声で罵倒されるとイケナイ何かに目覚めてしまいそうです。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』

 槍兵のクリスは、世間知らずですが根は真っ直ぐなお嬢様。貴族の務めに忠実で結構猪突猛進。かつプライドも高いのですが、根が純真なので結構ちょろい。彼女が行動した際のもろもろの迷惑は、恩義から彼女に従うヨア君が一手に引き受けているのでしょう。そんな周りの苦労を知ってか知らずか、知っててやっているのならそれはそれで問題なので、きっと知らずにやっている天然さんなのだと思います。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲根が素直なので、とても乗せやすいクリス。この素直さが部下たちの信頼にもつながっています。

 優秀な兄への対抗意識から背伸びしているところもちょろ可愛い彼女は、櫻井浩美さんが演じています。『Angel Beats!』の仲村ゆり役や、『リトルバスターズ!』の朱鷺戸沙耶役など元気でコミカルな役が多いですが、クリスも違った意味でコミカルなのでさすがの櫻井イズムが楽しめます。

 ヨアの副官でともに大空の夢を抱いているコニー。社交界デビューしたものの、まったく社交界映えしなかったために、両親に見放されたという過去を持ち、おかげですっかり内気な性格になってしまいました。それでも飛行機械の話になると人が変わったかのように饒舌になる様は、なんとも親しみがわきます。オタクあるあるですね。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲タンス二棹分の白衣をお持ちのようで「マメじゃないならたくさん持ってればいいじゃない」という逆転の発想です。

 そんな彼女は、『探偵オペラ ミルキィホームズ』の譲崎ネロ役や『ラブライブ!』の矢澤にこ役で知られる徳井青空さんが演じてます。ボーイッシュで元気な役柄の印象が強いですが、コニーのようなおどおど系もアリですよ!

キャラクターと仲良くなれば告白イベントも!

 さて、帝国軍の主要女性キャラのインプレッションになってしまいました。すみません、男性キャラの会話イベントをほとんどやっていないもので! というのも、マップ間の準備画面で各キャラクターと会話を楽しめるのですが、これが各マップにつき3人までしかできないのです。そうなればおのずと女性キャラと会話してしまいますよね。もちろん男性キャラと友情を深めていくのもいいのですが、それは2周目以降のお楽しみで。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲キャラクターたちは会話中の選択肢で好感度が変化します。好感度が上がれば“無慈悲の女神”もこんな表情に!

 この他、田村奈央さん演じる、フローレの懐刀である忍びのツバメさんが女性キャラとしていらっしゃるのですが、忍びすぎてて、いつも会話を忘れて結局1回も会話しませんでした。会話イベントは、どれもキャラクターの性格を深く知ることができます。ツバメさんに興味のある方はぜひともご自身の目で確かめてみてください。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲最終決戦付近ではアレスが意中の相手を決めて告白するイベントがあります。今回ルクレチアを選んでみましたが、かなり犯罪的です。さらに変態呼ばわりされるというご褒美まで!
『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲なんだかんだと理由をつけて断られました。なお、断られてしまうと、以降会話できなくなります。そいつはきびしい……。

王道と呼ぶにふさわしいシステム

 キャラクターの紹介ばかりに熱が入ってしまいましたので、少しバトルシステムについても紹介しましょう。

 本作は、SRPGブームの源流に近い古典作をベースにしているので、システムはいたってシンプル。『デアラングリッサー』が防御力の高いユニットで壁を作って間接ユニットが攻撃するテルシオ戦術をモチーフにしていたので、今作でも序盤はそれで進められます。ここら辺の感覚は、なんとも懐かしいですね。おかげで弓兵が雇えるクラスのレベルの上がりがよくてアンバランスになってしまったのが反省点です。兵は槍と騎兵と歩兵が三すくみになっていて、この他アンデッドに強い僧兵などが傭兵として雇えます。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲飛兵は弓兵以外に弱点を持たないオールマイティクラス。移動速度も高く地形の影響も受けないので迅速な展開が可能です。

 また、自身のクラスもこのカテゴリーの影響を受けます。ダメージ計算は、双方の攻撃力と防御力を比べて攻撃が高ければ攻撃が通るというもの。属性の有利不利の前にこの単純な引き算が先にあるので、有利な属性で攻撃できてもダメージが入らないことがあります。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲レベルアップは戦闘中に随時行われます。

 各パラメータの数値はレベルアップでも増加しますが、10レベルごとに行えるクラスチェンジで大幅に上がるので、上位職であれば有利不利をある程度無視できます。これは敵が上位職であった場合に攻撃が通らないということにもつながるのですが……。レベルが同等くらいの相手だと、2、3回敵を全滅させられればレベルが上がるというのがサクサク進められてよかった点でした。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲クラスチェンジは既存のクラスがレベル10になると行われます。一度決めてしまうと戻れませんので注意してください。
『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』
▲騎兵は歩兵に優越できるはずなのに防御力が相手の攻撃力を上回っているため、ダメージが入らず歩兵側が優勢に。

 育成を怠ると攻撃は通らないわ、瞬殺されるわでマップに登場させられなくなるので、育成は計画的に。クラスが被っているキャラクターは、いっそ割り切って好みのキャラクターを贔屓して、優先的に育成してもいいかもしれません。

 最後に音楽ですが、シリーズを通してBGMを提供されてきた岩垂徳行さんが今回も手掛けています。ロックテイストなサウンドは変わらず、ファンタジーなのになぜかしっくりくる親和性の高さがさすがです。

 世界の危機に対して抗う人たちの群像劇である『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』。十数時間で1周できますので、何度もプレイしてかの地に息づく人々の想いを余すことなく楽しんでください。

(C)extreme

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