2015年7月31日(金)
7月30日から8月3日の期間、中国・上海で開催される“Chinajoy 2015”。PlayStationカンファレンスでの発表イベントを終えた『ストリートファイターV』プロデューサーの小野義徳氏に、中国市場の現在と、これからの展望について聞いた。
――『ストリートファイターV』発表の瞬間、会場が湧いていましたね。
(会場で流した映像は)ほぼすでに発表した映像ではあったんですがね(笑)。やっぱり、中国のファンは待っていてくれたんだなっていうのを感じました。中国政府の許可さえ下りれば、日本での発売日と近いタイミングで発売できたらと考えています。中国語への完全対応も進めていますので、万が一審査が下りなくても、いろいろな方法で何とかなるかなと思っています。
中国市場において一番大きいのは、『ストリートファイターIV』が発売されてから、草の根で大会が開催されているということなんですよね。どこで手に入れたのかはわからないんですが、僕のメールアドレス当てに「来てください」とオファーが来ていたり(笑)。
――ウェイボーやTwitterではなく、メールアドレスに?
メールアドレスにです(笑)。それらのような許可を得ていない大会に公式の人間が行くとどうしてもまずいので、今まで陰ながら見守るしかない状況だったんですが、今回こういう形で公式発表できたのがうれしいですね。
『ストリートファイターV』に関しては、チャイナジョイを通じて公式のカプコンツアーを開くことによって、中国政府の許可ももらえましたし。こうして、少しずつ中国という市場にオフィシャルに対応していけたらと考えています。
中国からはプロのゲーマーもどんどん排出されていて、世界ランクトップ20に中国の方が2人もランクインしている点からも、機は熟しているなと感じますね。我々にとっても、中国でずっと待っていて下さったファンの方々にとっても、こうして次回作が公式になりますよ、と発表できたことは喜ばしいことです。
――『ストリートファイター』シリーズが、中国で公式に展開するのはいつ以来ですか?
ほぼ初めてです。アーケードでは基板が流通していたタイトルもあって、上海あたりには最近までゲームセンターも残っていたんですが。ただ、一部PC版は除いて、こうしてコンソール機で流通しているタイトルはほぼ皆無でしたね。
――『IV』ではなく、『V』から展開する理由は?
チャンスがあれば『IV』も発売したいなとは考えています。『ストリートファイター』の場合、リバイバル版の売上がほかのタイトルより高い傾向があるんです。このシリーズにはおもしろい文化があって、ナンバリングごとにコミュニティが出来上がっているんですよね。
『II』なら『II』、『III』ならどのバージョン、などといったように。すでにここまでビッグになったコミュニティは消えるとは思えないので、『IV』を出しても無駄にはならないんじゃないと思います。
『IV』は、ユーザーの平均年齢がグッと下がったタイトルでもあります。新規ユーザーが増えたきっかけは大きく分けて3つで、まずは実際にプレイしてみたという人、YouTubeでプレイ動画を見たという人、それと本当はいけないんですが、YouTubeで特典アニメを見ておもしろかったという人がいます。
では、そういった人たちに向けてフルローカライズを行えば、若いユーザーにプレイしてもらうことができて、ユーザー全体の若返りを図れるチャンスになるんじゃないかと思っています。
――カプコンとしては中国展開にはかなり積極的になっているんですね。
そうですね。中国では人と競うことを好む好戦的な風土が、もしかしたら日本以上に強いと感じられますね。大会にも、規模に関わらず人がたくさん集まりますし。国柄のせいで外国に積極的に出られないという人もいますが、中国で開かれたEスポーツの大会では、必ず本土の人たちが上位に食い込んでいるので、レベルは非常に高いと思いますよ。
格闘ゲームというジャンルもEスポーツに近いとは思っていますので、融和性は高いと思います。人工も多いので、スタープレイヤーが生まれる可能性も高いですしね。
――中国で小野さんが注目を集めるようになったきっかけは何ですか?
『モンスターハンター』の中国版のステージのとき、僕がアドリブで「『ストリートファイター』もよろしくね!」といったのがきっかけです。
――SNSでは中国語で話されていますか?
なるべく中国語で話しています。中国のスタッフがうまくいかない場合には、google翻訳に頼っています(笑)。それと、現在僕が通っている中国語教室の先生に教わったりして、コミュニケーションを取っていきたいと思いますね。中国の方はTwitterやFacebookなどができないという問題もありますし。
――草の根のゲームイベントなど、従来のカプコンの格闘ゲームの売り方とは違ってきている印象を受けます。
おっしゃる通りで、『ストリートファイター』自体のファン層がこの8年で大きく変わってきていると思うんですよ。そのなかで大きいのがいわゆる“動画勢”と呼ばれる人たちですね。メーカーが人を作るのではなく、コミュニティが人を作っているケースも多いわけです。
そのため、そこを狙ってマーケティングやコマーシャルをしてしていこうと。空から降らせる電波に頼る時代ではなくなったというのは、我々は強く感じています。
もちろん、電波の力を借りるタイトルもあるとは思うんですよ。でも、こと格闘ゲームに関しては、そういった人が多く存在するところにスポットで届けてあげない限りは、ユーザーが動いてくれないんじゃないかと思います。
――カプコンとしてプロゲーマーのスポンサーとなって、中国内でプロモーションをしていくことも考えられますか?
カプコンがイチプレイヤーをスポンサードしていくことは、少なくても僕が生きているうちはないと思います。なぜかというと、そうしてスポンサーの付いた選手が大会に出場した場合、そのプレイヤーが勝つための大会になってしまうので、Eスポーツとして公平性がなくなってしまうんですよね。
プロモーションとしてプロゲーマーに頼むということはあるかもしれませんが。我々は、そういったプロゲーマーの方々が活躍できる場所作りに貢献していきたいと考えています。
例えば大会でも、直接カプコンが開催するわけではなく、大会主催者に対してレギュレーションの制定やポイントの付与などでサポートします。そうして世界中からプレイヤーが集まって大規模な大会になればスポンサーも付きますしね。そういった形で、間接的にでもサポートはできるのではないかと考えています。