2015年8月7日(金)
プロモーションムービーも公開され、いよいよその姿が暗闇から浮かび上がってきたPS Vita用ホラーアクションゲーム、 『夜廻(よまわり)』。本作は日本一ソフトウェアの全社員が応募できる“新作タイトル選考企画”から生まれたタイトル。電撃PS編集長 西岡美道も、選考にゲストとして参加した際、独特の世界観が光る本作に魅了された。
本作の企画を立ち上げたのは、若きデザイナー・溝上侑氏。いまや本作のディレクターを務める溝上氏に、西岡が改めてインタビューを敢行した。開発もいよいよ大詰めとなる時期だからこそ聞けた、開発秘話の数々を公開する。
西岡:溝上さんは本作で初めてディレクターを務めるとのことですが、これまでかかわってきたタイトルについても教えてください。
溝上:これまではデザイナーとして、ゲーム制作にかかわってきました。少女おしおきRPG『クリミナルガールズ INVITATION(インビテーション)』ではおしおきシーンのLive 2D、弊社の代表作であるシミュレーションRPG『魔界戦記ディスガイア』シリーズでは、キャラクターのモーションを担当しました。
転機となったのは光と影の演出が印象的なアクション『htoL#NIQ -ホタルノニッキ-(以下、ホタル)』です。このタイトルで、背景マップの作成やステージのデザインなどゲーム制作の深いところまで学ばせていただき、ゲームデザインというものに興味がわきました。それがきっかけで、弊社の新作タイトル選考会に企画書を出すことになりました。
西岡:新作タイトル選考には私もわずかながらかかわらせていただき、『夜廻』の企画書も拝見させていただきました。『夜廻』は企画段階でゲームの大まかな形が出来上がっており、その完成度に驚かされた記憶があります。実際に企画が通ったときはどんな気持ちでしたか?
溝上:もちろんうれしかったのですが、動揺のほうが大きかったですね(笑)。企画が最終選考に選ばれた次の日は会社を休むほどの体調不良になってしまうくらいで……。
▲企画書に描かれていたイメージイラスト。このイラストを見ても、企画段階で本作の骨子が固まっていたことがわかる。 |
西岡:本作の企画書を出す段階で、ディレクターとして活動することは想定されていたのでしょうか?
溝上:正直、企画は通らないと思っていたので想定外でした。まさか通るとは(笑)。ですが、将来的にはディレクターもやってみたいと思っていましたので、すごくうれしいですね。
西岡:ディレクター業にはもう慣れましたか?
溝上:最初は戸惑いが大きかったです。コンセプトは決まっていても、ゲームで実際どうするのか決まっていない部分もありましたので。周囲のサポートを受け、なんとかマスターアップ直前まで来ることができました。
西岡:ちなみに開発チームの規模や現在の開発状況はいかがでしょう?
溝上:開発者は最大で10人くらいと小規模なチームです。私もディレクターとしてだけではなく、グラフィッカーとしても制作にかかわっています。また、現在開発はほぼ終了しており、デバッグを行っているところです。
西岡:発売が楽しみです。ところで、ゲームのコンセプトとしては“夜の暗闇の怖さ”を表現する、ということだと思いますが、これは溝上さんご自身の経験からきているのでしょうか?
溝上:そうですね。夜1人で歩いていると怖い、という思いは私だけではなく、誰にでもあると思いますので、あの角から何か出てきたらどうしようとか、そういった気持ちをゲームで表現できないかな? と思いながら企画書を書いていった覚えがあります。
西岡:実際にゲームをプレイさせていただきましたが、企画書から受けた印象と、ゲームをプレイしたときの印象にブレはありませんでした。
溝上:制作時は私の経験不足もあり、思ったようにいかずに歯がゆく思った部分も多かったのですが、そうやって印象が変わっていないと感じていただけるなら幸いです。
西岡:本作における恐怖の象徴としては、夜の闇やお化けの存在などがあると思いますが、溝上さんはもしかしたらいろいろ“見える”人でしょうか?
溝上:いえ、私はまったく“見えない”人です。お化けなどは、できれば一生目の前に出てきてほしくないですね(笑)。ですが、そんな私でも“暗がりに何かいるんじゃないか?”と、いろいろ想像して怖く感じることはあり、それをゲームで表現できたらな、と常々考えていました。
西岡:あのぐらいの年の子は見えるだろうなぁ、というような感じなのでしょうか?
溝上:それまでは見えなかったんですが、犬がいなくなってしまったことがきっかけで見えるようになってしまったのかな、と自分の中では解釈しています。
西岡:本作のティザームービーは実写映像でしたが、これも溝上さんが考えたのですか? 本作の雰囲気とは異なる仕上がりだったので驚きました。
溝上:ティザームービーの制作は営業のほうに一任しています。ただ、どういった映像にするのかを決める際の話し合いには参加させていただき、“人の興味をちょっとでも引くにはどうしたらいいのか?”ということをみんなで突き詰めた結果、実写映像にしよう、という結論に達しました。映像は公式サイトで配信中ですので、まだ見ていない人にはぜひチェックしてほしいですね。
西岡:映っちゃいけないものも映っていましたしね……というわけでお化けについても教えてください。本作においてお化けというのはどういった存在なのでしょうか?
溝上:本作におけるお化けたちは、主人公の少女から見て“よくわからないもの”です。幽霊なのか妖怪なのかもわからない、まったく理解し合えない存在として描いていますね。ただ、街灯の下にただずんでいる姿などが少しもの悲しく感じるなど、ただ怖いだけの存在ではないように、見せ方には注意しています。
西岡:“幽霊”や“敵”といった表現ではなく“お化け”という、ややぼやけた表現に、かわいらしさも感じます。
溝上:そうですね。少女から見て“何かよくわからないけどこの世のものではないもの”と感じるものに対して“お化け”と名づけました。
西岡:お化けのなかで、本作のタイトルを冠した“よまわりさん”というものが登場しますが、これはどういったお化けなのでしょうか?
溝上:これも少女にとっては“よくわからない存在”ですが、ほかのお化けにはない、なんらかの意志を持って行動しているように描いています。ヒントとしては子どもに関係する存在で、怖い話でよくある“●●●●さん”をモチーフにしました。どんなお化けなのかは、実際のプレイで確かめてほしいですね。
ちなみにお化けの数は、ちょっと道端に出てくるような小さいものを含めると、100体近くいます。どんなお化けと出会えるのか、期待していてください。
▲本作のタイトルを冠したお化け“よまわりさん”。PVでもその姿を確認できるが、ゲーム本編では少女とどのようにかかわってくるのだろうか? |
西岡:ずいぶんたくさんいますね。実際、ゲーム中で少女がお化けたちに遭遇したら、どんなふうに対処をすればいいのでしょうか?
溝上:少女は無力なので、お化けと戦うようなことはできません。ですが、街にある物陰に隠れたりすることはできます。また、お化けのなかには光に反応するタイプや、静かに歩けばこちらに気づかないタイプなど、さまざまな個性を持っています。お化けの動きをよく観察し、対処法を考えながらプレイするのも、本作の楽しみの1つだと思いますね。
西岡:お化けたちは怖い存在と愛すべき存在、どちらなのでしょうか?
溝上:怖い存在からかわいらしい存在までいろいろいます。ただ、攻撃されればすぐゲームオーバーになってしまいますので、基本的には怖い存在だといえます。少女を操作するのは夜だけなのですが、夜の闇から突然現れるのは、やっぱり怖い存在だと思いますしね。
西岡:昼のシーンは描かれないのでしょうか?
溝上:基本的に夜だけを描いていますが、一定のイベントやデモでは昼のシーンが描かれます。どういうところで描かれるかはゲームをプレイして確かめていただければ。
西岡:本作では多彩なアイテムが登場しますが、こちらはどういったものですか?
溝上:少女がお化けに対抗する手段であることが多いですね。石を遠くに投げてお化けの注意をそらしたり、使うことでお化けの動きを遅くしたりできるものもあります。お化けの謎に迫る収集品なんかもありますね。
ちなみにゲームに登場するアイテムは少女が拾うものなので、あまり日常から逸脱しないものをチョイスしています。ですが、そのなかに違和感を覚えるものを混ぜて、夜の街の不自然さを表現するといった試みもしています。子どもの頃って今思い返すと「そんなもの拾う?」というものまで拾って家に持って帰ることがあったと思うのですが、本作でもとにかくいろいろなものが拾えます。街をすみずみまで探索して、そういったものを集めるのも楽しいと思います。
西岡:主人公の家族は姉と子犬が公開されていますが、両親などは登場しますか?
溝上:ゲーム本編では父親の存在については触れていないのですが、母親の存在については少しほのめかしています。ただ、実際にゲーム中に登場することはありません。ここまで登場人物を絞ったのは結構勇気が入りましたが、描く必要のないところは極力削ろうと考えて、現在の仕様にしました。
西岡:少女が探索する街の広さはどのくらいでしょうか?
溝上:設定上は小さな街1つぶんとなっていますが、ゲームにする際はリアルな街の規模感は出したいと思って、結構な広さになっています。住宅街や田んぼ、工場など、いろんな場所にいろんなお化けやアイテムがあり、すみずみまで探索したくなるように作りました。探索を進めていくと、少女の手書き風の地図がどんどん埋まっていくので、地図の完成を目指すのも目的の1つになりますね。
溝上:ちなみに具体的な街のモデルはありませんが、私が岐阜生まれということもあり、同じく岐阜にある日本一ソフトウェアの周囲の雰囲気は取り入れてます。あと、街を作るときにこだわったイメージとしては、誰もが身近に思う、“近所感”が感じられるように気をつけました。
西岡:夜の街の雰囲気を出すために、気をつけていることはありますか?
溝上:ゲーム画面はとくにこだわって作っていますね。ゲーム中は基本的に全編夜で、ずっと上から見た視点なので、リアルな夜の暗さと、懐中電灯の灯りの表現については何度も修正して今の形に仕上がっています。また、光と闇の表現により、昼間に見えていたものが見えなくなっていたり、昼間なら簡単に出来ることが出来なくなっていたり、という不自然さを演出する仕様に調整しています。
▲あえて不自然さを作ることで演出される夜の街の恐怖。体験できる日は近い。 |
西岡:これまで本作の情報が世に出て、世間からの反響もいろいろあるかと思いますが、どういったものがありますか?
溝上:『かわいいけど怖そう』とか『今までにない』とか、いろいろ言ってもらえて、照れくさいところもあるのですがうれしいですね(笑)。ノスタルジックな雰囲気に惹かれるとか、日本的な街を探索できるのが楽しそうという意見もいただきました。あとは『ホタル』みたいで興味がわいた、というのもありましたね。私を含め、多くの『ホタル』のスタッフが『夜廻』にかかわっていますので、『ホタル』をプレイされた方にも、ぜひ本作をプレイしてもらいたいです。
西岡:そういえば、溝上さんのインタビューが世に出るのはこれが初めてですよね?
溝上:そうです。めちゃくちゃ緊張しています(笑)。
西岡:それではインタビューのお約束、『本作の発売を心待ちにしているユーザーのみなさんに向けてひとこと』というものを、初めて語ってください(笑)。どうぞ!
溝上:主人公の少女が“死”についてどう考え、どう成長していくのか、そしてどんな結果が待っているのか、夜の街とお化けにビクビクしながら、子どものころを思い出しつつ、いろいろな場所を探検してもらいたいと思います。どうぞよろしくお願いします!
本作にかけるディレクターの思いが少しでも伝われば幸いだ。ちなみに、8月12日売りの電撃PS Vol.596では、ここが初出となるお化けも紹介している。本作に興味がある人は、あわせてこちらもチェックして欲しい。
また、現在公式サイトでは“夜にまつわる恐怖体験”を募集中だが、電撃オンラインでも特別企画として“夜にまつわる恐怖体験”を募集中だ。電撃オンラインから投稿されたとくに不気味な体験談は、その体験談とそれをもとにした溝上氏の描きおろしイラストをセットで電撃PS本誌にて公開する予定となっている。下のリンクから応募フォームへ飛び、ぜひ応募してほしい。
●概要
下記のリンクをクリックして、【ハンドルネーム】【メールアドレス】【恐怖体験】を記入してください
●期間
2015年8月7日(金)~2015年8月20日(木)
●結果発表
電撃PlayStation Vol.600(2015年10月8日売り号)を予定
なお、電撃プレイステーションは、KindleやBook☆WALKER、ReaderStoreなどの電子書籍ストアにて、電子版も配信中。スマホやタブレットをよく利用される方はこちらも試してみて欲しい。
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