2015年8月20日(木)
入間人間先生が執筆する電撃文庫『美少女とは、斬る事と見つけたり』の紹介記事をお届けします。
少女と日本刀の組み合わせは、その美しさと危うさから多くのクリエイターの心をつかんできました。清らかな存在が放つ残虐性には、逆らい難い魅力を感じる――。そんな読者のみなさんにオススメなのが、入間人間氏の新作ノベルです。
舞台は超能力を持つ人間が一般人を襲い、アウトローとなって日常を脅かしている日本。どの自治体も異能力者たちの管理に手を焼き、自警団を結成して夜回りをするなどの対策をしていますが、逆に返り討ちにされているのが現状です。
とある田舎町で暮らす女子高生の春日透には、大好きな祖父にも友達にも言えない秘密があります。それは夜な夜な日本刀を振るい、辻斬りをしていること――。
「超能力者は1人残さず殺す。辻斬りを邪魔する自警団も全員殺す。」
この春、高校生になったばかりのこの少女には因果なことに強い殺人願望があり、青春のすべてを殺人に懸けています。しかも、彼女は常に刀の柄を口にくわえて戦います。なぜ彼女は手を使わないのか!?その謎は序盤の注目ポイントです。
証拠を残さない完璧な殺人の数々。しかし、透はある夜、明神明という高校の先輩を殺し損ねてしまい……。そこから立場は一転、復讐に燃える明とこの町に潜む超能力者たちから命を狙われることに。やがて友達や家族も巻き込んで、少女が起こした連続殺人は予想外の方向へ。なぜ殺し、なぜ生きるのか? 可憐な殺人鬼の異能バトルから目が離せませんよ!
なお、文章はすべて一人称で書かれていて、視点が入れ替わります。誰の視点で描かれているのか考えながら読み進めると登場人物の心情がわかって面白さ倍増です。
物語を読み解くカギになるのは、どの人物が超能力者でどんな異能を持っているのか?ということ。そしてもう1つは、彼らが背負っている“業”です。
主人公の女子高生・春日透は家族にも恵まれ、優しい祖父にかわいがられていますが、過去に大きな“喪失”を体験し、人を殺したいという本能には逆らえません。
一方、品行方正な生徒会長として学校で人気者になっている明神明には、目が不自由な双子の姉・陽に特別な感情を抱いていて、そこから自由になれずにいます。姉は彼の世界そのもので、日本が滅んでも姉が生きていれば平和というような、絶対的な価値があるのです。
殺人と姉――。譲れないものが脅かされそうになった時、それを守ろうとする2人がどんな決断を下すのか……。縛られているがゆえに自由で、救われているのに救われない少年少女たち。流れる血と痛みの先にどんな未来が待っているのか、必読です!!
(C)入間人間/ KADOKAWA CORPORATION 2015
イラスト:珈琲貴族
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