2015年9月3日(木)

【電撃PS】SCE・山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』第66回。今回のテーマは“China Joy 2015”!

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 ここでは、電撃PS Vol.597(8月27日発売号)に掲載されているコラムを全文掲載! 山本氏が“China Joy 2015”を通して感じたこととは?

第66回:“China Joy 2015”

 先日、中国最大のゲームイベント“China Joy 2015”を体感するため、初めて上海に出張しました。アジアのゲームショーに参加するのは、今年初めに台湾で開催された“Taipei Game Show”に続いて2度目。真夏の開催ということもあり、いやあ暑かった熱かった!

 来場者数は、4日間の開催で、TGSを越える約27万人。欧米のラインナップとは一味違うタイトルがわんさか出展されていましたが、まず特筆すべきは、なんといってもその会場の広さ。

 Shanghai New International ExpoCenterというコンベンションセンターは、いうなればTGSのひとつホールが17個、三角形に連なった形をしていて、China Joyではそのうちの11ホールを使用。ちゃんと計画を立てないと、まず1日では回りきれない広さでした。

 会場自体も広いのですが、各社のブースも広い広い。TGSとは違い、たくさんの試遊台を配置するようなブース構成ではなく、どーんと大きなステージを配していて、そこでキャラクターに扮した女性がずらっと並んでダンスを踊る、といったようなステージイベントが、そこかしこのブースで展開されていました。このあたりの指向性も、日本とはずいぶん違う印象を受けましたね。

 広さに続いて感じたのは、PCタイトルの出展が非常に多かった、ということです。もちろん、ゲーム専用機が正規に発売できるようになって日が浅いことが最大の理由かと思いますが、それはさておき、中国では、マルチオンラインバトルアリーナ、通称“MOBA”と呼ばれるジャンルが大変な人気で、e-Sportsの盛り上がりとあわせ、『League of Legends』や『Dota2』などが相変わらずホットな状況なわけですね。

 もちろんFPSなども引き続き人気ということもあり、つまりはマウスとキーボードという操作系、ゲーミングPCによるパワフルな描画性能による表現力、その辺りで面白味が積み重ねられているゲームとユーザーの相性、という部分も、PCタイトルの出展の多さに繋がっている要因のひとつかなと思いました。

 かつてはE3でも相当数のPCゲームが出展されていましたからね。Microsoftがコンソールゲーム機に参入したこともありその数は減っていきましたが、中国市場では今後どのような変遷を辿るのか、注目したいと思います。

 それと、これはもう世界的な潮流ですが、スマートフォンゲームの出展がものすごい数だったということ。TencentやNetEase、Shandaといった中国の巨大企業はもちろん、日本からもDeNAがブースを構えていたりと、圧巻の状況でした。体感的には、スマートフォンとPCとコンソールの出展構成比は、6:3:1くらいだったという印象です。しかし、ひとつのホールでは、PlayStationとXboxのブースが隣り合い、怪気炎を上げていました。

 前日のプレスカンファレンスでも、日本産のゲームの発表で拍手や歓声が起きるなど、嬉しい盛り上がりが感じられました。いよいよ正規でのビジネスも可能になりましたし、今後中国ユーザーの趣向も理解し、受け入れられているゲームの流れもうまく取り込みつつ、この勢力地図を塗り変えるために気合いを入れねば! と強く思いました。そう思えたきっかけが、実は物販コーナーにありました。

 China Joyでの物販コーナーも、TGSに負けず劣らずの規模感で展開されていました。おなじみのフィギュア、Tシャツ、ガチャガチャ、キーホルダーから、キャラクターがプリントされた傘、抱き枕カバーなどなど、たくさんの商品が並んでいた。そしてそこに並んでいたグッズや二次創作商品に使われている作品は、『メタルギア ソリッド』『ダンガンロンパ』『ラブライブ』など、挙げればきりがないほど、圧倒的に日本のIPが多かったのです。

 中国では、“ACG”と呼ばれるムーブメントが盛んになっています。ACGとはつまり、アニメ、コミック、ゲームのこと。日本のクリエイターが心血を注いで生み出してきた得意分野が海を越えて愛されていることを、圧倒的なボリュームで感じることができた。そしてその浸透圧の高さは、欧米の比ではありません。

 コンテンツそのものを越えて、その周辺まで楽しみ尽くそうとする感覚は、誰よりも僕達日本人が慣れ親しんだ感覚です。そんなことを感じながら物販コーナーを眺めていると、その先にあったメインステージに人だかりができていることに気づきました。メインステージでは、コスプレコンテストが大々的に催されていて、大歓声が巻き起こっていたのです。

『ナナメ上の雲』
▲『ソウル・サクリファイス』のコスプレで出場してくださった皆さん。気合い入りすぎでしょ! 感激と感謝を感じつつ、円卓のお店にご飯を食べに行きました。

 愛されるモノを作るということ。作ったものが愛されるということ。愛してくれた人達を愛するということ。プレイデバイスうんぬんより、まずはこの円卓のようにサークルを大事にすることで自ずと変化は起こっていくのではないか。から揚げを回しながら、そう思ったのでした。

ソニー・コンピュータエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

『勇者のくせになまいきだ。』シリーズなどのプロデュースを経て、クリエイターオーディション“PlayStation CAMP!”を主宰。全国から募ったクリエイターとともに、『TOKYO JUNGLE』『rain』などを生み出す。昨年に、『ソウル・サクリファイス デルタ』『フリーダムウォーズ』『俺の屍を越えてゆけ2』をリリース。最新作『Bloodborne』が全世界で好評発売中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStation Vol.597』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2015年8月27日
■定価:657円+税
 
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