2015年9月22日(火)
野島一成さんと『FFVII』が大好きなKobojo・CEOにJRPGを目指した『ゾディアック』について聞く【TGS2015】
東京ゲームショウ2015のKobojoブースに出展されていた、PS4/PS Vita/iOS/Android対応のマルチプラットフォームRPG『Zodiac: Orcanon Odyssey(ゾディアック:オルカノン オデッセイ)』。本作の魅力に迫るインタビューをお届けします。
お話を伺ったのは、『ゾディアック』を手掛けたフランスのゲームメーカー・KobojoのCEO、Mario Rizzo(マリオ・リーゾ)さんと、『ファイナルファンタジーVII』などさまざまなJRPGのシナリオを担当し、本作でもシナリオライターとして参加している野島一成さん。
野島さんが手掛けた名作をプレイして育ってきたという海外のクリエイターが、ついに共同制作という夢を実現した『ゾディアック』。本作に込められた思いやJRPGを目指した理由などをお聞きしました。
●動画:『Zodiac: Orcanon Odyssey』TGS 2015 Trailer
JRPGを作りたくて生まれた作品
──『ゾディアック』を最初に発表された時の反響はいかがでしたか?
マリオ・リーゾさん(以下、マリオ):昨年のTGSが初出だったと思いますが、とてもいい感触でしたね。その当時、海外のメーカーがJRPGを制作するというのは初めての試みで、多くのメディアの方々に推薦していただいて賞をいただきました。
──発表の場にTGSを選ばれたのは、やはり日本のゲーマーを意識してのことなのでしょうか?
マリオ:JRPGを作りたかったので、それならまずはTGSだろうということで、そこで発表させていただきました。
──本作では、野島一成さんがシナリオを担当され、楽曲はベイシスケイプの崎元仁さんが手掛けられるなど、JRPG界の重鎮とでもいうべき方々が名を連ねていますが、どのような経緯で制作を依頼されたのでしょうか?
マリオ:私には、長い間日本で暮らしていた友人がいます。ミュージシャンでもある彼は植松伸夫さんと交友関係もあったので、植松さんを通じて野島さんを紹介していただきました。そのような経緯で最初にディナーをご一緒にしたのが約2年前になります。
崎元さんは、たまたまコンサートでパリを来訪されていた時ですね。弊社にジュリアンというゲームディレクターがいまして、彼がとにかく日本のゲームが大好きなんですよ。日本語版のままで250タイトルほどプレイしていて、下手をすると日本のゲーマーさんよりも詳しいかもしれません。
そんな彼が崎元さんのコンサートに行った際、ぜひとも弊社に遊びに来てくださいとお声掛けをしました。その時に『ゾディアック』のプロトタイプを見ていただいたのがきっかけですね。
“大人向けの『ファイナルファンタジー』”をイメージしたシナリオ
──本作のシナリオを依頼された時はどのように思いましたか?
野島一成さん(以下、野島):資料を見せていただいた時は、ちゃんとやる気でいましたよ。ただ、どんな人たちかもわからないし、海外からのオファーについては途中で連絡がつかなくなったことも何度か経験していたので、それなりに用心深くなっていました(笑)。
──昨年のTGSでお話を伺った時には、シナリオは「まだこれからだ」とおっしゃっていたと思いますが……。
野島:そうですね。あの頃はほぼ何もなかったです。質問されても答えがあやふやで……。
マリオ:(笑)。
──作業はひと段落されたのでしょうか?
野島:現在は僕の手を離れて、英訳されてゲームに組み込まれている段階のようです。
──シナリオの作業時間はどれくらいかかりましたか?
野島:ちゃんと毎日書いていたんですけど……かなりかかりましたね。
──それだけ膨大なシナリオであるということですよね。物語の全体的なボリュームはどれくらいなのでしょうか?
野島:いわゆるJRPGと呼ばれているものくらいのボリュームはあります。
マリオ:最終的なスクリプトをいただいた時に、登場人物のやりとりだけでざっと5万行くらいあって膨大な量でしたね。これだけ書くのは、野島さんもかなり大変だったと思います。
──野島さんが書かれたシナリオをご覧になっての感想はいかがですか?
マリオ:まさに求めていたとおりのカンペキなシナリオでした。野島さんのシナリオといえば、どちらかというと10代の若者が活躍するものが多かったと思います。ただ、西洋ではもう少し大人向けのエンターテイメントが求められるので、“大人向けの『ファイナルファンタジー』”というイメージで挑戦していただきました。
結果、種族の軋轢や子どもと親の葛藤といった要素も描いていただけたので、本当に満足しています。
──見た目からはジュブナイル系とも思ったのですが、もう少し落ち着いたイメージなのですね。
マリオ:そうですね。私たちがJRPGをプレイしていた当時と比べると少し状況が変わっていて、現在ではダイナミックな3D表現ですとか、見た目の鮮やかさや華やかさ、奇抜で斬新な戦闘システムが求められていますよね。
ただ、私たちが目指しているのはあくまでも、物語や世界観、登場人物などを大切にしている『ファイナルファンタジーVII』なんですよ。ある意味レトロな作風なので、そういった作品を支持してくださるのは、年齢層的にもやや上のユーザーなのではというのも理由の1つです。
ヴァニラウェアのように2D作品で広く認知されることが目標
──本作はPS4とPS Vitaの他、スマホでもリリースされるとのことですが、ハードによってゲーム内容に違いはありますか?
マリオ:基本的には、デバイスによる違いはありません。そもそも本作を作成した意図として、スマホでもコンシューマーゲーム機クラスのゲームを遊べるようにしたいというのがありました。コンセプトとしては、スマホで遊べる『ファイナルファンタジー』とか、スマホで遊べる『ヴァルキリープロファイル』といったところです。
ただ、1つ違いがあるとしたらメモリの問題ですね。スマホでは高画質のデータは処理できるのですが、メモリが追いつかないんですよ。いわゆるコンシューマゲーム機クラスのデータをスマホで処理するのは非常に難しいため、ゲームを複数の章に分けることで対応しました。1章あたりのプレイ時間はおよそ10時間程度のものを順次リリースしていくという方式にしました。
※チャプター販売は海外のみの予定。日本での販売形式は未定。
──数年前のJRPGのようなゲームスタイルをとりつつも、滑らかな2Dアニメーションを取り入れていますが、技術的にはどのようなことを行っているのでしょうか?
マリオ:グラフィックに関しては自社で開発したツールの他に、Spine(スパイン)というツールを利用しています。大まかにいうと、2Dイラストをパーツごとに切り取って、Spineで再構築して、骨格をつけて動かすといった感じですね。2D専門にゲームを作っていきたいので、ヴァニラウェアのように2D作品で広く認知されることが目標です。
ちなみに、プロジェクトには直接かかわっていませんが、ヴァニラウェア代表の神谷盛治さんには、アニメ表現についていろいろと貴重なアドバイスをいただきました。大阪のスタジオまで足を運んで、弊社のアニメーターもかなり勉強になったと思います。
背景描写はヴァニラウェアの『ドラゴンズクラウン』のような臨場感あふれる作品にインスパイアされて、ゲーム内容的にはスクエニの『ヴァルキリープロファイル』にも少なからず影響を受けています。
これぞJRPGというみんなが大好きな展開に
──まだ具体的なストーリーは発表されていないようですが、主人公はどのような立ち位置なのでしょうか?
野島:ごく普通に育った青年で、軍人として辺境地帯の警備をしています。彼がある遺跡に触れたことで覚醒して、自分と世界の関わりを知り、やがて世界の謎が解けていく……そんな、これぞJRPGという王道展開になっています。
──主人公だけジョブが変えられるのも、いろいろな理由がありそうですね。
マリオ:そうですね。シナリオと強く結びついていて、いわゆる神聖な場所を訪れて、新たなジョブやスキルを習得していくという流れにつながっています。
野島:そうやってすべての力を得たときに何かが起きる! というやつですね(笑)。みんな大好きなタイプの物語だと思います。
──星座のモチーフというのはもともと依頼された設定の中にあったのですか?
野島:ゾディアック(黄道12星座)と、それにちなんだ設定はかなり分厚い資料がありました。それらを自由に変えてもいいですよということだったので、シナリオを作りやすいように少し変えさせていただきました。
──ゲーム進行的にも、すべてのジョブ獲得を目指して進んでいくという形ですか?
マリオ:もちろんメインストーリーが軸にあって、その中でサイドストーリーやさまざまなクエストがあるので、ひとつながりという形ではありません。
──クエストはどれくらいボリュームがあるのでしょうか?
マリオ:メインクエストとサイドクエストとは別に、さらにMMORPGのような討伐とか収集など、資金やアイテムを集めるためのちょっとしたクエストも用意されているので、それらを含めると膨大な量になります。
──ちなみに、野島さんのお気に入りのキャラクターは?
野島:エコという魚のような種族のキャラクターですね。この子がいわゆるJRPGに出てくる子どもの役で、ともに旅を続けることで成長するんです。やや年上の主人公に関してはかなり慎重に考えて作っていたので、この子はいつもどおりリラックスして作れました。
日本でJRPGをリリースするのが夢だった
──ここまでお話を伺って、日本のJRPGが大好きなことが伝わってきました。一番のお気に入りなどはありますか?
マリオ:一番はまったのは『朧村正』ですね。妖怪という存在がとても興味深かったです。あとは、ずっと心の中にあるゲームといえば『ファイナルファンタジーVII』だったので、どうしても野島さんと一緒にお仕事がしたいです、とお願いしたのもそういった理由からです。
──それでは最後に、本作に注目している日本のゲーマーにメッセージをお願いします。
野島:JRPGを作りたいというフランス人と、JRPG業界で活躍してきた私たちがゲームを作った結果、とても不思議なものができたなと思っています(笑)。なんと表現していいのやら、日本のものと、西洋の人が考えたものがミックスされたゲームの手触りや操作感はかなり独特なので、そこを楽しんでほしいです。
マリオ:プロジェクトを立ち上げたときは、周囲から無理だと言われていたんです。日本でリリースしても誰も食いついてくれないし無理だよと、なかなか理解を得られませんでした。それでも、日本でJRPGを作ってリリースするというのが夢だったので、とても感慨深いものがあります。
野島さんがおっしゃったように、日本的な要素を西洋のチームが作っているので、とてもユニークで独特な仕上がりになっています。ただJRPGの模倣をするのではなく、そこになにか新しいものを込めて、それが日本のRPGファンの求める形になればいいなと願っています。
私たちは今後も日本でRPGをリリースしていきますので、ぜひ、皆さんに楽しんでいただきたいと思っています。
TGS出展バージョンのプレイインプレッション
TGSに出展されていた『ゾディアック』のバージョンは開発途中ということもあり、まだローカライズが完全ではなく、ゲームバランスも要調整とのことでした。そこで、レビューではなく、簡単なインプレッションを添えておきたいと思います。
『ゾディアック』は、フィールドはグリフォンの背に乗って飛んで移動できる左右フリースクロールとなっており、敵シンボルと接触するとスキルを選んで戦うターン形式のバトルに突入するという、システムとしてはオーソドックスなRPGです。
滑らかに動く2Dアニメーションが美しく、レトロな空気感が感じられる最先端のグラフィックで遊べる、という印象でした。戦闘中もキャラクターがよく動き、とくに主人公はジョブごとにモーションをしっかりこだわって作っているそうです。
バトル中のジョブチェンジもユニークで、戦況に応じてさまざまなスキルを使えるところが好感触。ただ、1回の戦闘時間がかなり長めに設定されていて、サクサク敵を倒して突き進むというよりは、毎回戦略を立てて、じっくりと戦闘を楽しむという感じでした。スキルの組み合わせが重要になってくるそうなので、自分だけのスキルのコンボを考えることが楽しめそうでした。
目まぐるしい派手さやVRのような臨場感とは無縁の、JRPGならではの魅力を味わいたい人にオススメの作品です! ストーリーも気になるので、日本での配信を楽しみに待ちたいと思います。
■東京ゲームショウ2015 開催概要
【開催期間】
ビジネスデイ……2015年9月17日~18日 各日10:00~17:00
一般公開日……2015年9月19日~20日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料
(C) 2010 - 2015 KOBOJO, LTD.
ZODIAC, Orcanon Odyssey is a registered trademarks or trademarks of KOBOJO Ltd.
Playstation, PS4, PSVITA are registered trademarks or trademarks of Sony Computer Entertainment Inc.
データ
- ▼『ゾディアック:オルカノン オデッセイ』
- ■メーカー:Kobojo
- ■対応機種:PS4
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2016年
- ■価格:未定
- ▼『ゾディアック:オルカノン オデッセイ』
- ■メーカー:Kobojo
- ■対応機種:PS Vita
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2016年
- ■価格:未定
- ▼『ゾディアック:オルカノン オデッセイ』
- ■メーカー:Kobojo
- ■対応機種:iOS/Android
- ■ジャンル:RPG
- ■配信日:2016年
- ■価格:未定