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2015年10月23日(金)

VR、クラウドの未来とは? ゲーム業界のキーマンたちがデジタルエンタテインメントのこれからを語る

文:あべくん

 10月23日、東京・秋葉原にて“デジタルエンタテインメントの新潮流”をテーマに4つの講演が行われた“AMDシンポジウム”が開催されました。

 本講演会には、コーエーテクモホールディングス・代表取締役社長の襟川陽一氏、カドカワ株式会社・取締役の浜村弘一氏、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオのプレジデントである吉田修平氏、シンラ・テクノロジー・インクのプレジデントである和田洋一氏が登壇。

 それぞれ異なる切り口から、現在のゲーム業界を取り巻く環境についての講演を行いました。

“AMDシンポジウム”
▲コーディネータを務めたのは夏野剛氏。錚々たるメンバーが、これからのデジタルエンタテインメントについて思いを述べました。

 夏野氏によると「近年は、スマホ市場の拡大に伴いゲーム業界も活性化している。プラットフォームの垣根も取り払われ“ユーザーがゲームに費やす時間”を各企業が取り合うようになった。従来とは異なる流れになってきている」ということから、今回のテーマで4つの講演を行うことにしたのだそうです。

 本記事では、それぞれの登壇者がどういったテーマについての講演を行ったかを紹介していきたいと思います。

【1】“コンテンツサービスの創造と展開”襟川陽一氏

“AMDシンポジウム”

 こちらの講演では、コーエーテクモホールディングスが成長戦略として掲げる“IPの新規創造”などについて語られました。

 IPを展開するにあたっては、プラットフォームだけでなく、ゲーム業界以外とのタイアップやコラボ、グローバルな視点も重要とのことです。

“AMDシンポジウム”

 人気IPである『信長の野望』をとっても、出発点である歴史シミュレーションゲームからソーシャルゲーム、シミュレーションRPG、カードゲームなど幅広くジャンル展開することで、ファンの拡充を行っているのだそうです。

 IPの創造と展開によってコーエーテクモホールディングスは発展してきた、ということを踏まえたうえで、今後もこの戦略は、時代のユーザーニーズに適合したものに変わっていくだろうとまとめていました。

 ゲームの未来については、スマホの普及によってビジネスモデルが大きく変化しているとしたうえで、スマホゲーム開発費用の高騰にどう対応していくかなどが重要になるとコメント。ゲーム実況など、近年大きな盛り上がりを見せるコンテンツにも注目しているとのことでした。

【2】“融合するゲームの未来とeスポーツムーブメント”浜村弘一氏

“AMDシンポジウム”

 浜村氏は、近年国内でも大きな注目を集め始めている“eスポーツ”をメインテーマに講演を実施。

 まずはじめに語られたのは、全世界における家庭用ゲーム、ゲームアプリのマーケットについてです。アプリゲームについては、日本は世界最大の規模を誇っているとのこと。

 また、国や地域によってまったく異なる流行の仕方をしているとし、各地域のトレンドを紹介していました。

 eスポーツについては、こうしたゲームイベントを実施していくことにより、ユーザーのアクティビティが活発になっていくとコメント。イベントを実施することでゲームへのログイン参加数が増え、コミュニティが活性化。それにより課金も増えるといった流れができているようです。

“AMDシンポジウム”

 リアルなイベントによりコミュニティが活性化していったことが、eスポーツ隆盛の理由であると述べていました。また“ユーザー主導のゲーム大会なら開発リソースに大きな負担をかけずに効率的に熱狂を得ることができる”と述べていたのも印象的でした。

【3】“バーチャルリアリティシステム「PlayStation VR」の展望”吉田修平氏

“AMDシンポジウム”

 こちらの講演では、まず始めにVRの歴史が語られました。歴史的に見ると古くから存在するVRがなぜ今注目を集めているかについては、スマホの普及が大きいとコメント。

“AMDシンポジウム”

 現在は“スマートフォンの爆発的な普及”、“コンピュータの3Dグラフィックス性能の飛躍的向上”、リアルタイム3Dグラフィックスを使った高品質な開発ツールやゲームディベロッパーの存在”といった、VR普及に必要なこれら3つの要素が同時に起こっているのが、VRが発展している理由だそうです。

 また、VRをPS4で体験できる意義として、ハードウェアの仕様を統一できるので、開発する際の整合性がとれることも大きいと述べていました。

 終盤では、VRのゲーム以外の可能性についても言及。シミュレーターの他、デザイン・建築分野として不動産業界でも活躍しているといいます。

 VRの普及のためには、“品質の高いコンテンツが命”であるとし、ノウハウのシェアやディベロッパーとの情報交換が重要になると語った吉田氏。加えて体験の機会を持つことの重要性を説き「百見は一体験に如かず」という言葉で講演を締めくくりました。

“AMDシンポジウム”

【4】“次世代クラウドゲームの可能性”和田洋一氏

“AMDシンポジウム”

 和田氏が語ったのは、クラウドゲームの可能性についてです。氏によると、現時点ではクラウドはストリーミング配信にしか着目されていないとのこと。「そうではない使い方をクラウドでできないか」とつねに考えられているようです。

 現在は、ゲーム業界に数十年ぶりの変革期がおきているとのこと。近年では、F2Pやアイテム課金などで牽引されてきたゲーム業界ですが、これからはサービスデザインが重要になると言います。

 そのサービスデザインについては「今回のAMDシンポジウムに登壇した4名の話を総合したものが、今後のゲーム業界そのものになっていくだろう」とコメントしていました。

 クラウドについては、現在は端末からの解放が求められているとのこと。クラウド側にゲーム専用機を作り、それを客にシェアしてもらうという仕組みです。

“AMDシンポジウム”

 ゲームの革新についても述べられました。アーケードから家庭用に移行してセーブデータができたことで、ストーリーが誕生しました。エンタメに深みができたのはセーブができてストーリーができたからだと和田氏は語ります。

 またCDロムの登場によって大容量のデータ搭載が実現し、ゲーム産業は映画産業に急接近しました。ゲームがメジャーなエンタメ産業になったのは、大容量の光学ディスクができたからとのことです。

 現在は、これらの事例に近い地殻変動が起きる可能性があるそうです。

 クラウドでは処理能力の高さゆえ、これまでのゲームが提供していた“開発側が仕組んだことの追体験”から、ユーザーのデータを取り込むことによる“ゲームの環境自体が生きたものに”なると和田氏は語ります。

 “開発者が考えたことの追体験ではなく、ゲーム世界そのものが独自で呼吸をしているようなもの”に、これをクラウドで実現できればとコメントしていました。

“AMDシンポジウム”

 私たちの身の回りを取り巻く環境が変化することによって、ゲーム業界はじめ、デジタルエンタテインメントそのものにも大きな革新が起こっています。

 こうした新しい変化に対して排除的な姿勢をとるのではなく、そのすばらしさを認めていくようにすることこそがエンタメ業界の発展につながるのでは、と考えさせられた講演でした。

 今回のAMDシンポジウムのようなイベントは、今後もこうした形で実施されるとのことですので、興味のある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。