2015年10月29日(木)
フランスのパリにて開催されているゲームイベント“Paris Games Week 2015”。
その“PGW2015”に先駆け、メディア向けカンファレンス“PlayStation Media Preview”が行われた。登壇したSCEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏に、“PGW2015”の手ごたえや、PS4&PS VRのこれからを聞いた。
▲SCEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏。 |
――まずは、今回“PGW2015”に参加した理由と感想をお聞かせください。
吉田修平氏:今年は、いつもより“E3”の開催時期が遅くて“Gamescom”の開催時期が早くなっています。そのため、イベントの期間が短すぎて、コンテンツを出すタイミングが難しかったのです。
“E3”と同じものを見せてもしょうがないので、“Gamescom”よりちょっと遅いタイミングのイベントを探していたところ“PGW2015”に白羽の矢が立った、と。
あとはスタッフのモチベーションですね。ケルンもいいところですが、スタッフのなかではパリの人気が高くて(笑)。イベントでは、今回選んだ場所がいつもより小さいステージだったのですが、目線もお客さんと近くてプレゼン側としてはやりやすかったですね。普段は、どうしても威圧感を感じるので(笑)。
――来場したユーザーの反応はどうでしたか?
吉田:ニュースを見たのですが、PS4とPS VRにバラエティのあるコンテンツに来るということで“来年はすごいぞ”と書いてもらえました。
――今回のオープニングを飾ったのは『ストリートファイターV』『鉄拳7』という日本のタイトルでした。これには、なにか意図があったのでしょうか?
吉田:わたしが知ったときは、もうこの順番になっていたので理由はわかりません(笑)。でも、小野義徳さん(『ストリートファイターV』プロデューサー)と、原田勝弘さん(『鉄拳7』プロデューサー)なら、きっと何かしてくれるという期待があったのでしょう。
――2人が登場したときは盛り上がりましたね。
吉田:かなり入念にリハーサルをしていたようですね。加えて、当日起きたハプニングをネタに盛り込むため、直前間際まで打ち合わせしていました(笑)。
→『ストリートファイターV』の発表内容はこちら
→『鉄拳7』の発表内容はこちら
――今回発表されたコンテンツはどれも魅力的でしたが、吉田さんのイチオシはありますか?
吉田:とくに期待しているのは2つあって、1つは“Media Molecule”の『Dreams』です。“E3”でも発表したタイトルなのですが、できることが多すぎて、なかなか説明するのは難しくて……。
なので、今回はより具体的なテーマを用いて紹介させてもらいました。最初はうまく説明できるか不安でしたが、作ったり遊んだりといった要素が伝わったようで評判も上々でしたね。
もう1つは、最後に発表した“Quantic Dream”の新作『DETROIT』ですね。いろいろな理由で時間はかかってしまいましたが、今回やっと発表できたのがうれしかったです。
→『DETROIT BECOME HUMAN』の発表内容はこちら
――『Dreams』は革新的で衝撃を受けました。本作は“ゲームを作るエディタ”という認識で大丈夫でしょうか?
吉田:なんでも作れるエディタには間違いありませんが、一番作りたかったのは誰もがカンタンにクリエイトできるモノです。
エディタソフトはたくさんありますが、プロの人でも習得するまでが大変です。それを誰でもラクにクリエイトできるように、というのがコンセプトとなります。具体的には、グラフィックスエンジンをイチから作り直していて、これまでのようにポリゴンをいじるのではなく、粘土や砂を足したり引いたりするような感覚でクリエイトが行えます。
立体物をモデリングするときに、ポリゴンで作るのはすごく大変ですよね。でも今回のグラフィックスエンジンだと、思うままに作ったり直したりというのがカンタンにできる。デモにもありましたが、ほかのプレイヤーが作ったものを借りてクリエイトすることもできます。
――デモにはかわいらしいウサギや、インプのような動物が登場していました。
吉田:あれはウサギではなく豚ですね(笑)。あれは、今回のデモのために作られたキャラクターです。
インプはメインキャラクターで、UI(ユーザーインターフェース)そのものになります。あれでいろいろなメニューを触ったり、物を動かしたりすることになります。そして、遊ぶ段階になったら乗り移るという形でキャラクターを操作していく形になる予定です。
――ということは、プレイヤーが豚のようなキャラクターも作れると。
吉田:そうです。自分で作ってもいいですし、ほかの人が作ったものを借りてきてもいいですし、借りたものを変化させることもできます。
また、アニメーションをパーツとして付与することもできます。誰かが作った基本のアニメーションパーツを借りてきて変化させれば、カンタンに新しいアニメーションも作れます。
――想像以上の自由度ですね。
吉田:自由度が高すぎて大変です(笑)。ゲームのプログラムは難しいのですが、そこは誰かが作ったものをひな形としてカスタマイズしていけば問題なく遊べます。
もちろん、プログラムが得意な人ならゼロから作り上げることもできるでしょう。とにかく“カンタンでいろいろできる”というコンセプトを大事にしています。
――発売が楽しみなタイトルです。
吉田:開発陣もライブストリームなどで定期的に発信を行っています。実際に自分たちのオフィスで作っているものを発表することもあるようです。もうすぐβテストも始まるので、ユーザーとコミュニケーションをとりながら作っていくことになります。
――『DETROIT BECOME HUMAN』は、ゲームというより映像作品という印象が強かったのですが。
吉田:ゲームとしては『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』に近いです。キャラクター設定やストーリー性にこだわっていますが、一本道のゲームではなく、ユーザーが選ぶ選択によって展開が変化します。『Until Dawn』もそうでしたね。
前作『BEYOND: Two Souls』は、やや一本道的な色合いが強かったのですが、マルチストーリーを求めるユーザーが多いということがわかったので『DETROIT BECOME HUMAN』もそうなると思います。
『DETROIT BECOME HUMAN』は、アンドロイドが人間の意識を持ってしまったところからスタート。そこから人間との違いに疑問を持ち始めて……。そのあとどうするかはプレイヤー次第となります。
――今回出てきた映像は、かなり進化していましたね。
吉田:そこは製作側もこだわっています。じつは、ニューヨークで2014年2月に行った“PS4の初お披露目”の際に“Quantic Dream”がプレゼンしています。
そのときのショートデモはおじいさんが登場するコメディなのですが、実写と見間違えるほどのクオリティでした。こういった表現力を、インタラクティブドラマ、マルチストーリーといったシステムと組み合わせてゲーム性を向上させていきたいですね。
――『グランツーリスモ スポーツ』は、モータースポーツと同レベルで語られていることに興奮を覚えました。
吉田:本当にすごいことですよね。オフィシャルに『グランツーリスモ スポーツ』を通じてデジタルで遊ぶ人たちも、実際に運転している人たちと同じように扱いましょう、ということですから。これからトーナメントなども開催される予定ですが、年間チャンピオンはリアルのドライバーと一緒に表彰されるかもしれません。
また、日産の“GTアカデミー”も、本作を通じて本物のレースドライバーを育成しようという試みも行うようです。
――実際の車のメーカーさんがワークスチームに参戦するということは?
吉田:あると思います。
――『グランツーリスモ スポーツ』など、eスポーツの今後の展開についてどうお考えですか?
吉田:伸びていく一方だと思います。以前から一部では盛り上がっていましたが、ここにきてライブストリームなどが広まり、多くの人の目に留まるようになりました。ゲーム作っている人たちも、eスポーツや放送を意識したシステムやレギュレーションを考えるようになっています。
――『グランツーリスモ スポーツ』は『7』に当たるタイトルと考えてよろしいでしょうか。
吉田:将来的にはどうなるかわかりませんが、過去作の延長線上のものではなく、まったく新しい『グランツーリスモ』になります。PS4初の『グランツーリスモ』で、ゲーム性を大きく変えているので、タイトルも『7』ではなく『スポーツ』となっています。
――VRタイトルの反応はどうでしたか?
吉田:VRが待ち遠しい人と、普通のゲームを求める人と半々ですね。これはいつも感じていることですが、発表の際は普通の画面で見ていただくので、どうしてもわかりにくい部分もあるのかなと。
ゲーム映像と遊んでいる人を交互に映すなど、いろいろと工夫はしていますが、やはり実際にプレイしてみないと雰囲気はつかめないですからね。これからは、体験できる機会をどんどん増やしていきたいですね。
――VRだとホラーゲームとの相性がよさそうです。
吉田:ホラーはある意味カンタンというか、ある程度成功するでしょうね。ホラーといってもいろいろありますから、バリエーションにも期待したいですよね。
――『The Walk』も新しいジャンルに感じました。
吉田:“エクストリームスポーツ”もそうですが、自分では実現できないと思う人が多いと思います。でも、VRなら体験できます。
『The Walk』の場合、もうすでに存在しない建物内を歩けるという、VRでしか体験できないコトを例として発表させてもらいました。
――“体験”できるのがVRの魅力ですね。
吉田:そうです。ゲームのジャンルにこだわらず、まず体験として楽しいか、気持ちいいかが大事。逆にそこが押さえてある『The Walk』や『The Deep』などは、ゲーム性は薄いのですが、すごく楽しいです。
そういった意味では、VRコンテンツのほうが家庭用ゲームコンテンツより幅広い人に遊んでもらえるポテンシャルを秘めていると思います。
――ゲームらしいVRコンテンツを遊びたい人も多いと思います。
吉田:そういった方には、ぜひ『RIGS』などのタイトルをプレイしてもらいたいですね。
VRコンテンツは、レースゲームなどの一部のジャンルを除けば、新しい試みに挑戦しないといいものにならないので、そこは我々を含めた開発陣のがんばりで少しずつ増えていくのだと思います。
最初はわかりやすいシューティングのようなものが多くなると思いますが、そのうちストーリーに参加するようなタイトルや『FFXIV』のようなMMOも増えていくと思います。
――ヨーロッパのゲーム市場についてお聞かせください。
吉田:アメリカもそうですが、家庭用ゲームが非常に元気ですね。アメリカよりもPS系の人気が高いようです。
――eスポーツとVRの組み合わせについてどうお考えですか。
吉田:『鉄拳7』のVR対応は驚きました。そこは原田さんのチームなので、VRをうまく使ってこられるのではと期待しています。ご本人いわく「First Person View(一人称視点)の格闘ゲームはVRだとダメ」とおっしゃっていたので、何か違うコトをやられると思います。
――最後にユーザーのみなさんに一言お願いします。
吉田:E3もそうでしたが、パリでもまったく新しいゲームを紹介できました。PS VRも含めて、日本のコンテンツもお見せできましたし、来年はすばらしいラインナップになると思うので期待してください。あと、VRはぜひ一度体験してください!