2015年11月24日(火)
9月30日に発売されたアクションRPG『東亰ザナドゥ』。日本ファルコムの新規タイトルは、既存の日本ファルコムファンのみならず、多くのゲームユーザーから好評価を得た。
ここでは電撃PSの誌面で掲載された、日本ファルコムの代表取締役社長・近藤季洋氏への『東亰ザナドゥ』ネタバレインタビューを全文掲載! 物語に隠された謎などが語られているので、『東亰ザナドゥ』未クリアの人はご注意を!
▲自らソフト制作の陣頭指揮をとる日本ファルコムの社長・近藤季洋氏。『イース』最新作ではシナリオも手掛けている。 |
――本作が発売されて約1カ月たちますが、反響はいかがでしょうか?
一番感じたのは、今までファルコム作品を遊んでいなかった新しい層からの反響が多いということです。『イース』や『軌跡』シリーズよりも、ユーザー層や年代に幅があるといいましょうか。また、新規タイトルということもあってか、細かなご意見もいただいています。自分たちにとっては、新しい視野を広げていくチャンスになるタイトルになったと感じています。
――売れ行きも好調のようですね。
おかげさまで、PS Vitaの新規タイトルとしては非常に順調だと思います。DLでの販売数の割合も、これまでのファルコム作品のなかで一番いいかもしれません。また、身近なところで小学生が本作を遊んでくれているという話を聞きました。これまで、あまりなかったことですね。立川市のフリーペーパーとして“立川ザナドゥ”を店頭で配布したりしていたので、そういったもので情報を得て興味を持っていただいた方も多かったのかもしれません。
ほかにも、いただいた要望では操作方法に対するものが多かったんですね。いわゆる、狩りゲーといわれるようなタイプのアクションゲームと同じような操作にしてほしいという。ですので、最新のパッチでキーコンフィグをパターンごとに変えられるように対応しました。これまでのファルコムのアクションゲームを遊んでいる方には、本作の操作はそれほど違和感がないようですが、新規の方には独特と感じられたようです。
――ちなみに、今だから言える、本作で盛り込みたかった要素はありますか?
一番入れたかったのは、キャラクター同士のエピソードですね。例えばユウキとソラのやり取りだったり、シオとミツキの過去の出来事など、本当はきちんと描きたかったんです。ただゲームを形にしていく過程で、このままだと入りきらないと判断して削りました。これらは何らかの形で出したいですね。
――ユーザーからとくに人気の高かったキャラクターは誰でしょうか?
メインキャラではアスカやリオンは人気がありますね。サブキャラのなかでは、やはりシオリです。これはクリアしていただいた方には、納得かなと思います。性能的な面では、ソラやユウキが人気ですね。また、女性ユーザーからはシオの人気が高いらしいです。
――コウに対する反響は?
最初は“普通”なんですけど、物語が進んで、コウのポジションがお話の中心になってくると、周りの人間関係などから思い入れが強くなっていくみたいですね。あと、コウの性格はこれまでのファルコム作品の主人公のような熱血タイプとは違うのですが、プレイされたユーザーの男性も女性も、受け入れてくださったようです。
――最終決戦時にアスカが使った《拘束術式開放》とは何だったのでしょうか?
詳しいことは現段階ではまだお話できません。《ネメシス》のエージェントは、日頃から《異界》に出入りする際に何らかの形で魔力を蓄えるという能力を備えており、それを必要に応じて解放して戦えるという技術を持っているんです。それを使った感じですね。連発はできませんが(笑)。ちなみに体に負担はかかりますが、“力と引き換えに寿命が縮む”といった代償はありません。
――ところでパッチのVer1.03ではアスカのアクションが強化されましたね。
はい、彼女は動きも速いですし、バランスが取れていて強いのですが、どうしても後半はシオなど特化したキャラクターに押され気味だったんですよ。なので、射撃スキルの使い勝手をよくするという形で、少しだけ強化しました。
――ミツキが自分のことを《白の巫女》と言っていたのは特別な意味がある?
ゾディアックという12の企業連合のなかでも、その中枢人物たちは霊的な潜在能力が高いという設定なんです。ミツキも生まれつきそういった素養を持っていたことと、彼女の結界術が“白”なので、そういった二つ名が付けられたと考えてもらえればと思います。
――ソウスケやセイジュウロウは、ソウルデヴァイスを持っているのですか?
持っていそうですよね。ソウルデヴァイス自体の技術はここ数十年で開発されたものなので、彼らが扱えてもおかしくはありません。ちなみに、ユキノの扱っていた“符術”は霊具になります。
――キョウカが属していた《アングレカム》自体は今も存在するのでしょうか?
ゲーム内でも引き入れるか迷っている描写がありますので、現役の方がいるはずです。ただ《アングレカム》は12の企業連合のセキュリティを統括している部隊なので、彼らを引き入れるのは、何をするかわからないという意味で、ミツキたちにとってもリスキーだったのではないでしょうか。
――ジュンの右腕に浮かびあがる文様は何を意味しているのでしょうか?
クロノス・オルデンの刻印騎士であれば、全員に顕れる共通の刻印です。念のため補足しておきますと、『軌跡』シリーズに登場する“星杯騎士”のケビンたちのような、1人1人個別のものではありません。刻印騎士が戦うときに浮き上がって力を発揮する刻印ということですね。
ちなみに、クロノス・オルデンはネメシスなどほかの《異界》に出入りする組織と相容れない組織なので、ソウルデヴァイスを使っているとは考えにくいです。なので、ジュンの振るっていた大剣は、教会に伝わる霊具となります。
――ジュンが杜宮に来たのは国防軍から依頼があったからでしょうか?
そうですね。まず国防軍が異変に気づき、そこから極秘裏に動いてくれるクロノス・オルデンに協力を求めたという経緯になります。
――ゴロウに倒された風属性のエルダーグリードの姿が気になります。
風のエルダーグリードの姿は焔や霊と同じ水晶型ですね。ちなみにヨルムンガルドだけ形状が異なっていたのは、強大な力を放つ“落とし子”の近くにいた影響です。本来は風のエルダーグリードのエピソードも本編に入れたかったのですが、ボリュームが全体的に膨大になったために削られたものの1つです。そのぶん、サブエピソード的な形で補完していまして、街の人々との会話をされている方なら、その件を確認できます。
――ミクリヤは事件後、懲罰を与えられたりしなかったのでしょうか?
グループやゾディアックの組織内においては厳しい処分があったのではないかと思います。ただ彼が行ったことは現代社会の法で裁けるものではないので、法で裁かれるという意味の処罰はなかったのではないかと思いますね。
――七星モールの占い師サディは“裏の世界”に通じた人間なのでしょうか?
“裏の世界”に通じているのは確かだと思います。ただ本作でわかっている各組織とは違うようですね。ほかにもそういった組織はあり、サディはそのなかのどれかに属する、ということにしておいてください(笑)。霊感が強いことは、間違いありません。
――《異界の子》レムの目的とは?
今回わからなかったことのなかでも大きな項目の1つです。《異界》にかかわる人間に接触して、なぜか見守っていくということ。そして杜宮の神様である九尾と接触して、その力を借り受けることができる存在である、ということが現時点で彼女について言えるすべてですね。なお、彼女のかぶっていたお面は、九尾のご神体であるという設定です。
――グリードにはランクがありますが、あれはどうやって決まるのですか?
グリードの生態やメカニズムは、まだまったく解明されていません。弱いグリードが徐々に成長していくのか、S級は最初からS級として生まれてくるのか、何もわかってないんですね。ただグリード自体には明確な意思はなく、本能的に《異界》を発生させて、人間を取り込んでいる、というのが人間たちの認識です。機械仕掛けのように、その所業を行っているイメージですね。それは“夕闇ノ使徒”であっても同じ認識です。
――シオリやリオンの願いを聞き届けていましたが、あれは意思があるからでは?
とくに“シオリがかわいそう”などと感じたから力を貸したわけではなく、ただ頼まれたから叶えた、というレベルと考えられています。彼らに“友好”や“敵対”といった概念があるかも、わからないのが現状ですね。
――《東亰冥災》を起こした夕闇ノ使徒は、何が目的だったのでしょうか?
これはわかっていない“謎”の1つですね。グリードの謎そのものに直結する謎だと思います。夕闇がそもそも善か悪かもわかっていませんし。
――《異界》とは何なのでしょうか?
《異界》がどのように生成されるのかはまだ未解明な状態です。ただ、今回の杜宮市を中心に多発した《異界》の事件は、人間の感情やしがらみが原因となって顕現したというのは事実ですね。また、グリードがいない桃源郷のような《異界》もありましたが、あれはバリエーションの1つに過ぎず、とくにレムの心象風景を投影したものというわけではありません。今後何らかの形で《異界》の謎を解明できるよう、我々も努力していきたいと考えています。
――国防軍のメンバーは《異界》に入ってましたが、それは技術的なもの?
いえ、イージスは基本的に全員が《適格者》です。《適格者》でない人間を《適格者》にする技術は、まだどこも表立っては持っていないはずです。ただ、彼らの持つソウルデヴァイスが同じ形状なのは、ゾディアックの技術です。顕現したときは各々の特性に応じた形だったのを、部隊として運用するために規格統一を図ったということですね。今のところ、一般人が《異界》に自由に出入りすることはできません。
――国防軍の《機動殻(ヴァリアント・ギア)》は《異界》に対抗する専用兵器?
それは違います。基本的には戦車や武装ヘリと同じ、各国に配備されている通常兵器ですね。今回は“落とし子”の依代として使われましたが、別に対異界専用兵器というわけではありません。ちなみにリオンが機動殻を見て驚いたのは、彼女が兵器に興味がないから知らなかっただけで、実際はプラモデルが売られているぐらい一般的なものです。
――最終話で日付が変わらない演出がありましたが、あの演出の意図は?
あれは杜宮市が時空間ごと隔絶されて時が止まっているため、それ以上日付が進まないということです。夜が来ないという描写もそのことですね。
――事件が終わったあと、杜宮市民の記憶はどうなったんですか?
因果律が本来の現実と置き換わり、みんなの記憶から事件のことが消えたと解釈してもらえればと思います。
――トゥルーエンドを通常エンド後に見られるようにした理由は?
やはり通常エンドが“本当の”エンディングだったと思うんです。トゥルーエンドはその後の行動があって成しえた結末であったこと。1回は普通のエンディングを見てほしいというのがシナリオ陣の考えでした。通常エンドがあらかじめ決められた1つの結末である、ということを踏まえて見てもらいたいのが、トゥルーエンドということですね。
――通常エンドに出てくるシオリ似の女の子は、以前の記憶はあるのですか?
記憶はないのではないでしょうか。ただコウを見たときに「あれ、あの人知ってる……かも?」と思うくらいの何かは残っているのかもしれません。また、ユーザーさんからの意見で「通常エンドのほうがお気に入り」とか「トゥルーエンドはいらなかった」という声もいただいたんですよ。ただトゥルーエンドがなかったら、それはそれで「ハッピーエンドが良かった」という声もあるだろうと、エンディングは本当に悩みました。
――キャストやセリフの端々にファンサービス的なものが感じられました。
明確なファンサービスありきでキャスティングしたわけではありません。キャラクターごとに声と演技の合う方を選んでいったら、自然とそうなっていたという感じです。気がついたらそうなっていたので、心の奥ではサービス精神がうずいていたのかもしれません。
――キャストも人気の方が多いですよね。
みなさんお忙しい方たちばかりだったので、収録のスケジューリングがたいへんでした。
――“オズボーン語録”などのオブジェクトへのこだわりを教えてください。
細かく指示を出したわけではないので、スタッフ1人1人のこだわりだと思います。正直、ちょっとやり過ぎたかなと(苦笑)。アニメイトのコミックや店内ポスターの文字もびっしり書いているんですよ。解像度的に残念ながら読めないと思いますが。
――まじかる☆アリサなどが独り歩きするといった点も期待できますか?
反響しだいですね(笑)。完全新規の世界なので、「要る・要らない」という声も多くいただいています。我々もどこまでやるべきか、今後の参考にしたいと思います。
――アクション部分の難易度に関してはユーザーごとに受け取り方が違いますね。
そうですね。キャラクターにバリエーションがありますし。なるべくユーザーの間口を広く取ろうと考えると、どうしても簡単なバランスに傾いていくんですよ。それは本作の課題ですね。
『イース』はテクニカルなところで楽しめるようバランスを組みますし、『軌跡』はRPGなのでまだバランスは取りやすいんですけど、間口の広いアクションを目指すと、ユーザーさんの腕をどうしても幅広い変数として考えなければならなくなってしまって。そこはもし次回作があるとしたら、今回の経験を生かして、要望に応えていきたいですね。
――ズバリ『東亰ザナドゥ』の次回作についてはいかがでしょうか?
グリードや《異界》の謎はまだ残っていますしね。これらの謎が解ける場所は用意したいです。当然、売り上げや反響しだいというのはあるのですが、製作した結果、いろいろなご意見を聞くことができましたし、ユーザーさんの幅を広げることもできたと実感しています。
『イース』シリーズや『軌跡』シリーズのような、ある程度できあがったところに追加していくのとは、また違った刺激を我々もいただきました。そこを今後も生かしていくという意味でも、『東亰ザナドゥ』の続きをやりたいなという気持ちはありますが、具体的なところは未定です。
ただ、いろいろなことを発想できる土台ができた、というのはよかったなと。コウたちが次の主人公をやるか、別の主人公にコウたちが絡んでくるかも未定ですね。コウはいろんな組織からスカウトされてましたし、今後が気になると思います(笑)。
――最後に、プレイされたみなさんにメッセージをお願いします。
今回はファルコムファンのみなさんに加えて、新しいユーザーさんにも手に取っていただいたと手応えを感じています。それが我々にとって刺激になりまして、ユーザーの幅を広げることができたという意味でも『東亰ザナドゥ』を作ってよかったと思っております。
また、そういった刺激を次につなげていくチャレンジも大事だと考えており、この『東亰ザナドゥ』も何らかの形で次につなげていきたいと、前向きに考えていますので、引き続き応援よろしくお願いします。
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