2016年1月25日(月)
セガゲームスが運営する、PS Vita/PC用オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』。1月27日の大型アップデート・エピソード4について、開発者へのインタビューを実施したので掲載する。
『ファンタシースターオンライン2』は、ネットワークゲームの楽しさや驚き、冒険を再び感じられるゲームとして開発された。PC版とPS Vita版がサービス中で、iOS/Android向けサービス『ファンタシースターオンライン2 es』も行われている。また、TVアニメ『ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション』を展開中だ。
お話を伺ったのは、シリーズプロデューサー・酒井智史さんとディレクターの中村圭介さん、同じくディレクターの濱崎大輝さんにアプリ『PSO2es』ディレクターの陳智政さんだ。大型アップデートで実装される新クラス・サモナーを中心に、新展開する物語やシステム、アプリなど新コンテンツについて語ったいただいた。
▲左から陳さん、濱崎さん、中村さん、酒井さん。 |
なお、濱崎大輝さんの“崎”は正しくは異体字。収録は、イベント“ファンタシースター感謝祭2016 福岡会場”前に行われている。インタビュー中は敬称略。
――今回から加わった方もいらっしゃるので、改めてご自身について、役割を教えていただけますか?
酒井:いつものシリーズプロデューサーの酒井智史です。
中村:EPISODE4のチーフディレクターとPS4版のディレクターを担当している中村圭介です。EP4はダブルディレクター体制で、ボクのほうは全体を見つつマップやシステム周りを中心に担当しています。
濱崎:EP4のディレクターの濱崎大輝です。おもにバトルやクエスト関連を見ています。
中村:EP3までやってきてゲーム全体のボリュームが大きくなってきた上に、EP4ではさらに新しいことをやりたいと思っていたので、それぞれにもっと目が行き届くようにダブルディレクター体制でやっています。
陳:アプリ『PSO2es』ディレクターの陳智政です。『PSO2es』独自のコンテンツもそうですが、EP4のほうもしっかりサポートしていきたいと思います。
――12月の“ファンタシースター感謝祭2016”でEP4の詳細が発表されましたが、ユーザーの反応や反響はいかがでしたか?
酒井:賛否両論あるだろうというのは想像していたのですが、正直絶賛という感じではなかったですね。大きく変わることへの不安があるのだと思います。新フィールドの東京に関しては驚きの声が上がったんですけど、サモナーはパッと見、わかりやすいアクションのあるこれまでの新クラスに比べて地味な部分があるので実際にプレイしてみるまでわからないという反応でした。
――サモナーに関してはバトル要素だけでなく、ペットの育成要素も発表されました。どういったところに重点を置いて公開したのでしょうか?
濱崎:サモナーはバトルや育成、キャンディーボックスなど構成する要素が多いので、それを一気に出しても混乱してしまうと考え、東京会場ではかいつまんで説明することにしました。
――EP4のストーリーは、EP3までの物語とどれくらいのつながりがあるのでしょうか?
中村:EP3から2年後の世界で、その間、プレイヤーキャラはとある事情でコールドスリープをしていました。目覚めた主人公は、専属オペレーターのシエラから現在の状況と、これからどうしていくかを説明される導入になっています。
EP3までの物語の流れを続けるものではなく、本来アークスの宇宙には存在しない惑星・地球が舞台として新たな物語が始まりますので、EP3までの話をまったく知らない新規のユーザーさんでも、まったく同じスタート地点から物語をお楽しみいただけます。
――EP4のプレイ開始時にあらすじのようなものあるのでしょうか。
中村:そうですね。過去の出来事を軽く説明するムービーがありますし、EP4ではEP3までのイベントを“イベントクロニクル”ですべて見られますので、より深く知りたい方はそちらで確認してもらうこともできます。また、最初はEP4からスタートしますが、物語をある程度進めるとEP1~EP3をプレイできるモードが解放されます。
――EP1~EP3が解放されるまではどれくらいプレイが必要になりますか?
中村:以前からEP1~EP3をプレイしていた方はすぐに解放されます。EP4から新規でプレイされた方でも、解放までそれほど時間はかからないです。
――物語は、いつごろからこういう方向性でいくことを決めたのでしょう?
中村:EP2の終わりごろから構想はあって、それから数カ月に渡り、内容を詰めて決定しました。その後、舞台やアニメの話が出てきたのです。ですからアニメに合わせたのではなく、EP4を地球で展開するというところからアニメもそれを絡める方向になりました。
酒井:元々、『PSO2』の構想段階から地球を出す案はありました。ただ、『PSO』を冠するタイトルでいきなり地球を出すのもいかがなものかということで、EP3までの物語がひと段落してから地球に行ってはどうかと提案したことがあります。
ボクらのなかでは『ファンタシースター』じゃなければできないこと、挑戦することにこだわっています。地球という題材自体が、この『ファンタシースター』じゃないとできないかなと。やるんだったらこのタイミングしかない、やってやろうと思いましたね。迷走なんて言いたがる方もいますが、そういう意味ではまったく迷走はしていないです(笑)。
また、アニメについても“オンラインゲームを広めるために作る”のが主目的なので、『PSO2』のお話でなく“オンラインゲームのプレイヤーの話”にするのは最初から共通認識でした。EP4の内容を地球にすることを決めて、そこにアニメを絡めることでよりおもしろく連動できると思い、本編との絡み方をEP4のストーリーとともに考えていった感じですね。
――変えていくことへの不安はありませんでしたか?
酒井:プレイしている方が不安になったり反発したりすることは、想定に入れてやっています。
中村:不安がないと言えば嘘になりますが、EP4になった時に今までと同じような内容だったら逆に「もう飽きたな、やらなくていいかな」と思われてしまうかもしれません。そのほうがよほど不安です。それよりは、新しい世界観で、今までにないものを見せたいという思いのほうが強いですね。そういった点では、迷いはありませんでした。
――公開されている5人のキャラクターについて、カンタンに紹介をお願いします。
中村:ヒツギはご覧の通り、女子高生です。キャラクター性で言うと、明るくて活発な16歳。取り立てて特徴があるというわけではなく、どこにでもいそうな東京の女子高生といった感じです。コオリはヒツギとの掛け合いのコンビのような立場で、おっとりとしているもののちょっと変わったところがあるキャラクターです。
アルは、ヒツギの前に突然現れた謎の少年で、記憶喪失なのがどうなるのか気になるキャラクターとして作っています。ピエトロは……まあ、変な人ですね。サモナークラスの設立者で、自分のペットのことを我が子のようにカワイがって異常な愛情を注いでいますが、報われない感じです。
シエラは主人公の専属オペレーターです。主人公をオペレートするために生まれてきたようなキャストで、主人公と地球を繋ぐ窓口として、手となり足となってくれます。
――シエラというキャラクターを用意した理由は?
中村:主人公がしゃべらないので、ストーリーテラーが必要でした。また、ストーリーの見せ方が従来と変わっていることも関係していますね。以前はマターボードで指定された場所に行く形式でしたが、今回は新しい仕組みなので、こういった立場のキャラクターが必要になりました。
濱崎:EP4版のシオンとシャオのようなキャラクターといった立ち位置です。
――今回から、マターボードからストーリーボードに変わりましたが、変更した理由があるのでしょうか?
中村:マターボードは、仕組みやパッと見のとっつきづらさ、マターという言葉自体があまり聞きなれない言葉だったことなど、ストーリーを進めるための仕組みだということがわかりづらかった反省があります。ストーリーを進めるために便利な仕組みをゼロから考え、名前や操作面でもパッと見てわかるようなものにしたいという思いがあって、EP4のコンセプトである“新体験”をきっかけに導入しました。
濱崎:ストーリーを進めたいけれど、不便さもあってなかなか進められない方もいたと思います。今までのように1回クエストを受けてマターを見て、クエストを破棄するといったことはなくなりました。
中村:本来、そういったプレイを推奨したいわけではなかったので、今回はよりシナリオに集中して楽しめるようにしたいと考えました。
――ストーリーボードという名称になった理由は?
中村:ストーリーを進めるためのボードということで、わかりやすくストーリーボードにしました。カッコいい名前の候補もありましたが、耳慣れない言葉だと結局意味がわかりづらく、それだとマターボードから変える意味がないと思い、シンプルにしました。インターフェースもシンプルで、イベントごとにサムネイルが並んでいてわかりやすくなっています。
――ストーリーの配信ペースは今までよりも早くなるのでしょうか?
中村:今までは数カ月に1回、ストーリークエストやマターボード、イベントなどをセットで配信していましたが、今後は分けて配信できるように作っています。
――1枚のストーリーボードでクリアしなければならないクエストの数は、ストーリーボードごとに変わってくるのでしょうか?
中村:ストーリーボードには1枚目、2枚目といった区切りはありません。ボードの一番左から始まって、新しいストーリーが配信されたら右へ右へと伸びていきます。1枚の長いフィルムのようなイメージですね。
とにかくストーリーボードを右に進めば新しいシナリオを遊べるのでわかりやすいと思います。最終的にはかなり長くなる見込みですが、後々ページ送りなどなんらかの対応を行います。
――それに合わせて新しいキャラクターも出てくるのですね。
中村:はい、最初に発表したキャラクターたちは本当に一部だけです。まだ、敵の姿すら見えていませんから。
酒井:現状では、「EP4の敵ってそもそも何?」というイメージだと思います。
中村:そこは追々わかってきます。ぜひ、ストーリーをプレイして楽しんでください。
――EP4では新フィールドとして東京が出てきますが、見どころはどこでしょうか?
濱崎:フィールドとエネミーの追加はこれまでも行われてきました。今回はこれまでと同じように、ただそれらを追加するだけではなく、EP4のコンセプトとして挙げた“新体験”をフィールドにも盛り込みました。ダッシュパネルを使って東京の街中を走り抜けてバトルが発生するポイントに急行したり、暴走車を破壊するEトライアルを体験したりなどです。
中村:見た目の部分で言うと、今回初めて“読める文字”がフィールドに登場します。既存のフィールドにもアークス文字やリリーパ文字はありましたが、東京は日本語で“うどん屋”とか“ランチ営業中”など書かれた看板があります。今までは読めない文字が常識になっていたので、読めることで逆に違和感を覚えるかも知れません(笑)。
東京の特定の場所を再現しているわけではありませんが、見慣れた街の風景が、皆さんのイメージにある東京になっていると思います。
――日本にはたくさんの街がありますが、東京を選んだ理由は?
酒井:日本として代表的な場所、日本人なら誰でもわかる場所、そういった理由で選びました。フィールド名は東京になっていますが、どこかの政令指定都市みたいなイメージにもなっています。
濱崎:あとは、例えば京都に寄せてしまうと、ハルコタンと似てしまうだろうといったような理由もあって、地球の第一フィールドは東京にしようと。
酒井:他には住宅地という案もありましたね。
――東京の街を作るにあたって、ここを工夫したというものはありますか?
中村:建物やオブジェクトのサイズ感にこだわりました。ボクらが実際に住んでいる街がモデルなので、サイズの嘘をつくとすぐにバレてしまいます。これが空想のフィールドであれば違和感を感じないかも知れませんが、東京だと「このサイズはおかしい」とすぐわかってしまうので、そのあたりをいかにリアルにしながらゲーム的に落とし込んでいくか苦労しました。
また、『PSO2』のカメラでは、どうしても車道の幅が狭く感じたり、オブジェクトなどが小さく見えてしまうという現象があり、とはいえ大きくしてしまうと、今度は近寄った時に違和感が出てしまうので、調整には時間がかかりましたね。
酒井:フィールドはマップパーツの組み合わせで配置しているので、最初は同じ建物が何件も並んでいることもありましたね。信号があるのに車両用と歩行者用で点灯するライトがセットで連動してないのはおかしいじゃないですか? そういったところは細かく指摘しました。
中村:見渡せる範囲内に同じコンビニが4軒あるのを見て、「それはおかしいでしょ」と気になって、追加で複数の種類のコンビニを作ることにしました。あと、建物の中には入れませんが、PC版ではカフェやコンビニなどのショーウインドウの中を、“視差マッピング”の技術で一見3Dっぽく見えるように工夫しています。
――建物に攻撃を当てた場合、破壊できますか?
中村:建物は破壊できません(笑)。市街地フィールドでは車に攻撃を当てると爆発しましたが、東京でそれをやるのはダメかなと思って、今回は車も壊せません。
濱崎:アークスが東京を破壊してしまったら、ただの侵略者ですからね。
中村:シナリオの設定面もフィールドに生かしていて、アークスたちが戦っているフィールド内には人がまったくいないのですが、端のほうに近づくと戦闘区域を隔離領域として遮断するための障壁がうっすら見えます。そこから隔離領域の“外”を見ると、一般人が歩いていたり、車が走っていたり、そこには“日常”があるんだ、という光景が見られます。
――東京フィールドでは敵の出現ポイントが表示されて、そこへ急行するというシステムになっていますが、これは先ほど伺った“新しい遊び”を意識してのことなのですか?
濱崎:“新しい遊び”という点はもちろんですが、これまでのフィールドでは、マルチパーティーで集まった人たちがそれぞれバラバラに行動することがありました。そういったことを防ぐためと、EP4から始めた初心者の方でも合流しやすいようにフォローする意味もあります。
――東京で緊急クエストがあった場合は同じ仕組みになるのでしょうか?
濱崎:現時点では東京の緊急クエストはありませんが、あの仕組み自体はどのフィールドでも使えるようになっています。東京以外のクエストで使う可能性もあれば、東京でも使わない可能性もあります。過去の緊急クエストのなかには、どういうルートで進むかユーザーさん同士でバラバラになることがあって、その対応として使うことも考えています。
――続いてサモナーについて、お話していただければと思います。このサモナーが生まれた経緯を教えてください。
濱崎:EP4の“新体験”というコンセプトにも関係があるのですが、EP3までにアクションゲームやオンラインゲームに興味がある方の多くは、『PSO2』に触れていただいたことがあると考えています。
ですが、今後はアクションがそれほど得意ではない方が、アニメやPS4版を通して新たに入ってくることを想定しました。そういった方が、『PSO2』をプレイしやすいクラスになるように作られています。
――アクションが得意ではない人でも遊べるクラスとのことですが、ダメージ面では既存のクラスとどれくらいの違いがあるのでしょうか?
濱崎:トップのDPS(※)になることは想定していません。だいたい3番手か4番手くらいに調整しています。サモナーは中・遠距離クラスですので、近接クラスを抜くことがないようなバランスにしました。また、ペットのレベルをエッグ合成で上げたり、キャンディーをあつめたり圧縮したりセットしたりと、強くなるにはある程度育成に時間をかける必要があります。
※DPS:Damage Per Secondの略で、1秒あたりのダメージ量のこと。
――サモナーはどのようなサブクラスを想定しているのでしょうか?
濱崎:サブクラスに関しては、わかりやすいところでフォースやテクターにして法撃力を上げたり、PPを増やしてPAを使える回数を増やしたりというやり方が考えられます。クラススキルで参照する攻撃力を、基本の法撃力から打撃力や射撃力に変えられますので、ファイターやブレイバーと組み合わせることも想定しています。
瞬間火力が高いペットなら、ガンナーのチェインを使って戦うこともできるでしょう。ペットの種類や戦い方によって、どのクラスとも組み合わせられるように調整しています。
――ペットは今後も段階的に増えていくと考えてよろしいですか?
濱崎:アップデートで、武器を追加するような頻度ではないですが、新しいペットを追加していきます。今後配信していくペットは、最初に配信する3種とは違った遊びができるように考えています。そこでも“新体験”ができますので、楽しみにしていてください。
また、新しいペットが出たからと言って、既存のペットがそれよりも劣るということはありません。「このポジションのペットがいたらいいよね」というようなペットが追加されるので、役割に応じて使い分けていただく形になると思います。
――先ほどはサモナーの開発理由をお聞きしましたが、ストーリー的な理由もあるのでしょうか?
中村:サモナーというクラスが設立されたきっかけはあります。
――EP4開始時点では、ペットのレアリティはいくつまで出るのでしょう。
濱崎:★13まで出ます。ただし、ペットは育成要素があるので、入手したからといってすぐに強くなるわけではありません。
――育成にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
濱崎:わかりやすく序盤の話をしますと、サモナーでEP4をスタートして、ストーリーボードの初回配信ぶんを最後まで進めるとだいたいペットがLv.60くらいまで上がる想定をしています。時間で言うと6~8時間くらいでしょうか。ペットのレベルを上げるのは難しくないのですが、キャンディーボックスのカスタマイズで時間がかかると考えています。
中村:最初から3種のペットが配信されますが、色々なペットを使って欲しいので、1体レベルを上げるだけで苦労するような調整にはしていません。
濱崎:ペットにも属性がありますし、複数の属性を育てたいユーザーさんもいると思います。そういった方が1体育てた時点でしんどいと思われないようにしました。
中村:それなりにペットを育てていれば、新しいペットが配信された時に、今のペットがまだ全然育ってないというようなことはないと思います。
――お聞きしている情報から想定すると、サモナー自身のクラスレベルが上がっても、あまり強くならないのですか?
濱崎:そうですね。ペット自身にもHPがあるので、まったく育てていないとすぐにやられてしまいます。ペットを育成してから上の難度に挑んでもらいたいと思っています。
陳:ペットの育成は『PSO2es』と一緒にやってもらうとかなり育ちやすいので、ぜひあわせて遊んでもらえればと思います。
――ペットが戦闘不能になった時はどうなるのですか?
濱崎:気絶状態になって、一定時間そのペットを操作できなくなります。数十秒経過するとHPが全快してまた戦えるようになります。別のペットで戦うことはできますので、複数育てていただけるといいでしょう。
中村:もちろん、ペットが戦闘不能になる前に回復したり別のペットに切り替えたりして、そういった状況にならないように戦うのが理想です。
濱崎:なお、サモナーをサブクラスにしても、他のメインクラスではペットを呼び出すことはできません。タクトはサモナー専用武器でクラフトには非対応です。全クラス装備のタクトも出さないので、メインクラスがサモナーの時しかペットを使えない仕様となっています。
――キャラクタークリエイトとレイヤリングウェアについてうかがいます。まず、ここまで大きく手を入れた理由を教えてください。
中村:理由としては、ずっとやりたかったけどやれなかった改善案がたくさんあったから、です。キャラクタークリエイトに関しては、EP1のサービスイン前、すでにαテストやβテストの時から多くのユーザーさんより要望をいただいていました。ただ、要望に応えるにはセーブデータを保存するデータベースの拡張が必要で、それはカンタンにはできない状態でした。
EP4を起案する時に、『PSO2』の短所の解消だけではなく、長所も伸ばしたいと思い、“キャラクリの改善”を企画段階から掲げていました。時間をかけてデータベースを拡張して、これまでにいただいた要望をまとめ直してできることは全部やろうと決めました。冒頭でも少し触れましたが、EP4はEP2が終わった時点ですでに動き出しています。当初から“新体験”というコンセプトで、レイヤリングウェアやキャラクタークリエイト改善などで、“今までできなかったこと”を可能にしたいと考えていました。
――感謝祭のEP4情報のなかでも、特にユーザーさんの反応がよかったのでは?
中村:最初は15時間放送でキャラクタークリエイトの情報を出したのですが、その時点で反響が大きかったですね。私も会社で見ていて、深夜5時にテンションがすごく上がりました(笑)。また、東京会場で発表したレイヤリングウェアも好評でした。
酒井:反響が大きいというのは、想像がしやすいということだと思います。要望の多かった部分に手を入れているわけですし。
――『ファンタシースターユニバース』でもコスチュームの分割はやっていましたが、それとは別の方式にしたのはどのような理由があるのでしょうか?
中村:『PSO2』では今まで一体成型のコスチュームのみだったので、服装で個性を出すのは困難でした。EP4でコスチュームを分割形式にしようと決まった時に、『PSU』と同じく上半身と下半身に分割する案もあったのですが、さらに個性が出せるようにと相談した結果、インナーウェア、ベースウェア、アウターウェアを重ね着する方式の実現を目指すことにしました。
――『ファンタシースターオンライン2 ファッションカタログ 2012-2015』のインタビューでアートワークチームにうかがった時は、分割はデザイン的に難しいとお聞きしていましたが……。
酒井:『PSU』の時も本当に制約が厳しくて、コスチューム同士の干渉などの制約を取っ払って試したこともあったのです。ただ、やはりアートワークからこれではダメだと言われましたね。分割ではなく重ね着になるレイヤリングウェアのやり方だと、よりバリエーションも出しやすいのでこういった形になりました。
――既存のコスチュームをレイヤリングウェアに対応する予定はありますか?
酒井:全部ではないですけどやっていく予定です。
中村:人気のあるコスチュームは、レイヤリングウェア化したいと思っています。ただし、レイヤリングウェア同士でしか重ね着できないので、既存のコスチュームとは別の新アイテムとして出すことになる点についてはご了承ください。
――コラボアイテムも今後はレイヤリングウェアになるのですか?
酒井:コラボに関しては、基本的には非対応が多くなると思います。コラボの版元様がOKを出していただければ話は別ですが、そもそも分割してしまうと元のデザインがどうだったのかわからなくなってしまいます。いろいろと相談しながら進めていくことになるので、現時点ではなんとも言えません。コラボ関連で1つお知らせできることとしては、感謝祭決勝会場の来場者特典のキティちゃんのTシャツはベースウェアとして提供されます。レイヤリングウェアになっているということです!
――レイヤリングウェアでファッション性が高くなりましたが、そういったところでファッション業界とのコラボは考えていますか?
酒井:まだ具体的な話があるわけではありませんが、いろいろとおもしろいことが考えられるので、やりたいとは思っています。
――レイヤリングウェアになったことで、やはり開発の工数は多くなったのでしょうか?
中村:設定画の枚数は増えましたし、アイテムの製作も当然増えます。さらに、重ね着した時におかしくならないようにチェックの工数も多くなりました。そういったことを考慮してもやりたかったので作りました。
酒井:配信ペースとしては、これまでと同様に2週間に1回ですからね。
陳:『PSO2es』のほうでもレイヤリングウェアの表示に対応しましたが、やはり大変でした。
――EP4で既存のクラスに1つずつ新スキルが追加されますが、そちらはどういった内容になるのでしょうか?
濱崎:クラススキル追加のポリシーはEP3から変わっていません。遊びの幅が広がるようなスキルを入れることを念頭に置いてます。例えばハンターの新スキルは、PAをチャージし始めたときにガードポイントが発生します。これを習得することで、手を休めずにガンガン攻撃していくスタイルが可能となります。
ジェットブーツならば、敵を踏みつけることで無限にジャンプできて、届かなかった場所に攻撃できるようになるといったように、「こんなスキルがあったらうれしいね」と思えるようなスキルを追加しました。
――クラススキルの追加以外にも、何か調整は入るのでしょうか?
濱崎:“アークスGP2016予選”に間に合わせる形で、EP3の最終的なバランス調整を行いました。我々としては、既存のクラスのバランス調整はそこで一旦終わっているものと考えています。EP4の開始時点ではクラススキルの追加だけですが、新クラスのサモナーもありますし、何か問題が発生したときは適時対応していきます。
中村:本来はEP4でバランス調整を入れるつもりでしたが、アークスグランプリの途中でバランスを変えてしまうと問題があるため、前倒しする形でEP3にて実装しています。
――現状のバランスに関して、ユーザーさんの反応はいかがですか?
濱崎:以前はかなり多くのご意見をいただいたのですが、直近の調整後はだいぶ少なくなりました。使われているメインクラスの割合も均一ですし、現状のバランスが理想に近いと考えています。
――ロードマップで公開されたアップデート“暴食と指輪”について教えてください。
▲画像は東京会場で公開されたもの。 |
中村:新たに“ギャザリング”という新要素が加わり、フィールドで採取や釣りができるようになります。エネミードロップ以外でアイテム集めをする遊びです。また、それにともなって武器とユニットに続く第3の装備カテゴリのスキルリングが追加されます。
ギャザリングをすることで、あつめた素材アイテムから指輪や料理が手に入るというコンテンツになります。今までにもケーキを始めとするフードアイテムはありましたが、それらとは違った効果が得られるものです。
――ギャザリングはどういった場所でできるのでしょうか?
▲画像は福岡会場で公開されたもの。 |
中村:フィールド内に採取や釣りができるスポットがあります。最初は森林、東京、海岸、遺跡といった一部のフィールドだけで、今後のアップデートで対応する場所が増えていく予定です。クエストを受ける時にギャザリングに対応したフィールドはアイコンが付くので、それを見て行っていただければと。空き時間に、ふらっと気軽に遊べるものを目指しています。
――実装時期としてはいつごろを予定しているのでしょうか?
中村:PS4版のサービスインが4月20日で、“暴食と指輪”はそれよりも前になります。2月25日から始まるPS4版のクローズドβテストよりは後になりますね。
――その後のアップデートも気になるところです。新たな12人レイドボスはどのようなものに?
酒井:そこまで先の話はまだ何も言えません。ビックリすると思いますが、「なるほど!」と思っていただけると思います。ぜひ、今後の情報を楽しみにしてください。
――“ラッピーでもわかる○○講座”という動画が公式サイトで公開されていますが、今後も初心者向けのコンテンツを作成されていくのでしょうか?
酒井:やりたいとは思っているのですが、なかなか手が足りないのが本音ですし、実際これが必要な初心者層に十分届いているのかと言うのが難しいところですね。ゲーム内にこういったものがある方が、よりいいとは思いますが。
中村:初心者向けのゲーム内コンテンツとしては、PS4のサービスインの段階で、ゲーム内でプレイヤーが初歩のアクションを学べるようなコンテンツを考えています。
酒井:あとは、動画コンテストを再び開催するのですけど、今回はそこで解説動画も募集しようかなと考えています。ユーザー皆さんの力も借りつつ、初心者を手助けできたらいいですね。
――“PSO15周年記念プロジェクト”は第11弾まで発表されていますが、今後も続けていく予定はありますか?
酒井:まだ考えていませんが、可能性はあると思います。
――“アークス広報隊”と“DFガールズ”に関して、今後PS4版に合わせて新しい展開などはあるのでしょうか?
酒井:2月3日に“アークス広報隊”のスペシャル番組をやります。そこではPS4版でEP4をプレイする予定です。
――続いて『PSO2es』のことを聞かせてください。昨年12月からストーリーが新章になり、メニュー画面などもリニューアルされました。そこまで手を入れた理由を教えてください。
陳:EP4のコンセプトである“新体験”は事前に聞いていました。『PSO2es』もサービスインから1年半以上が経過し、ユーザーの皆さまもゲームに慣れきってしまっていたので、ストーリーもひと段落した12月のタイミングで新しい体験、魅力的なキャラクター、そういったものを展開していくことを決めました。
また、『PSO2』自体を知らなかった方がアニメなどを通して『PSO2es』にも入ってくることを予想して、わかりやすさを追求したリニューアルになっています。
――ストーリーの見せ方もだいぶ変わりましたね。
陳:酒井プロデューサーから、「『PSO2』を知らない人でも楽しめる、かつ魅力的なものを作ってくれ」というオーダーもあり、キャラクターの立ち絵の見せ方やボイスなどにも力を入れております。
――新キャラクターはジェネの人気が高いですね。
陳:ジェネはかなり好評でして、SNSなどにたくさんのイラストが投稿されています。かなりの手ごたえを感じているキャラです。
――クイック探索は賛否両論だったと思うのですが、実際にユーザーさんの反応はいかがでしたか?
陳:スタートした直後はかなり反響がありました。実際、『PSO2es』の利用状況がかなり上がっていまして、デイリーアクティブの数が2倍くらいまで膨れ上がっています。最初は否の反応も多かったのですが、日が経つに連れてなかなか時間がとれない方へのサポート機能としての認知も高まってきました。
しかしながら、『PSO2es』をプレイしてくださるお客様は大きく増えましたが、通信障害などのトラブルも年末年始にたびたび発生し、楽しんでいただいている方への期待を裏切る形となってしまいました。この場を借りて改めてお詫びしたいと思います。本当に申し訳ありません。
機器については年末に一度増強をしたのですが、緊急クエストでの瞬間的なアクセス集中が機器の増強での想定も超えてしまっているという現状です。今後、アクセス集中時においても安定した状態で遊んでいただけるよう、機器の増強とサーバプログラムの改修を進めていく予定です。少し対応にお時間をいただくかもしれませんが、さらに改善を進めていきたいと思います。
――現在はアルティメットクエストが2つ受けられますが、クイック探索の拡張は考えられているのでしょうか?
陳:クイック探索のコンセプトとしては、しっかりとしたサポート機能として提供することを重視しています。最新のコンテンツをクイック探索としてすぐに実装する予定はありませんし、今後もどのような形での拡張するべきは検討を重ねていきます。
酒井:これからも運営ポリシーは変えません。よりたくさんの人に楽しんでいただくために緩和策の一環だと思っていただければ。
陳:開発としては、他の人についていけないからやめてしまう状況の回避のため、さまざまな選択肢の1つとして用意しました。
中村:12人そろってアルティメットへ行くのは難しい時もありますので、クイック探索はちょっと時間が空いたときに気楽にやっていただく感じです。『PSO2』でも、実装から時間が経ったアイテムは入手しやすくすることがありますので、そういった緩和策の1つだと思っています。
――“採掘基地防衛戦”でも、かつて人気があったレアが手に入れやすくなっていますね。
濱崎:人気があった武器、ドロップするレベル帯の影響で逆に手に入れづらくなっているもの、そういったアイテムは人気のコンテンツに入れて取りやすくしています。
――ウェポノイドというチップが実装されていますが、ストーリーに関わってくるのでしょうか?
陳:ウェポノイドは昨年の7月から実装されています。実装に至った経緯としては、『PSO』シリーズはレア武器を掘るゲームですが、当時はレアだったものも時間が経つにつれて段々とそうではなくなってしまいます。そこで、もう1回そういったユーザーの皆さまのレア武器に対しての愛着や思い出に対して焦点を当てたいという思いがあり、見た目の変化やキャラクター性を持たせて描いていきたかったのでストーリーに絡めたり、ボイスを実装したりする展開を用意しました。
――『PSO2es』で、EP4連動要素はどのようなものがありますか?
陳:大きいものが4つあります。1つは“PSO2es倉庫”というもので『PSO2』と『PSO2es』を連動させると無料で100個のアイテムが収納できる倉庫が追加されます。『PSO2』でも使える倉庫なんですけど、『PSO2es』に30日間ログインしないと、アイテムを引き出すことしかできなくなりますのでご注意ください。
2つ目は先ほどもお伝えした内容とも重なりますが、レイヤリングウェアの見た目の反映と、アウターウェアの着替えができるようになります。
3つ目はサモナーのペット育成で、『PSO2es』ではエッグに加えてチップを与えて育成ができます。サモナー自体は『PSO2es』では使えないのですが、ペットを育成した時に連動経験値をもらえます。
――サモナーは将来的にも使用できないのでしょうか?
陳:現状では考えていません。また、4つ目として、『PSO2』でACスクラッチを引いた時に、回数によってボーナスアイテムがもらえる仕組みが入りますが、『PSO2es』側でも引いた回数のカウントを共有します。
――EP4に合わせて連動を強化していく方向でしょうか?
陳:そうですね、しっかりやっていき、双方でEP4を盛り上げていきたいと思います。
――では最後に、今後の意気込みと読者へのメッセージをお願いします。
陳:1月27日のEP4に合わせて、“新体験”を含めた連動要素をやっていきます。アニメやPS4で興味を持った方が、『PSO2es』のほうにも入ってくると思っています。魅力的なキャラクターやストーリー、そしてわかりやすいものをこれからも追求していきますので、どうか引き続き応援をよろしくお願いします。
濱崎:EP4は“新体験”を打ち出していくのが目標ですので、最初だけでなくEP4の最後まで定期的に提供できるように頑張っていきます。あとは“新体験”ばかりではなく、既存の要素の調整も意識してやっていきますのでそのあたりも期待してください。
中村:2016年は、新しいことへのチャレンジの年だと考えています。『ファンタシースター』シリーズの歴史は新しいことへのチャレンジの歴史です。EP1の時もいろいろと新しいことにチャレンジしましたが、EP4は“Reborn”ということで、もう一度EP1の時のような新しい体験を提供できるように濱崎とダブルディレクターでがんばりますので、皆さんよろしくお願いします。
酒井:『PSO』から15年という長い歴史の中で、やっとアニメ化も果たしました。そのタイミングで新しいことへ挑戦するのは、『ファンタシースター』でなければできないことです。地球という新しい舞台が入ってくることで、より『ファンタシースター』らしい展開に広がるでしょう。
地球が入ることで「ファンタシースターじゃないじゃん」と言う意見に対しては、「この挑戦こそがファンタシースターだ!」とボクは思っています。サモナーや地球といった“新体験”は、そういう方にこそプレイしていただきたいです。
アニメに関しては、前半と後半でだいぶ変わって、EP4との絡みも見えてきます。最初はオンラインゲームあるある的な内容ですが、それがどうEP4に絡む展開になるのか、そういった部分でも楽しんでほしいですね。
『PSO2』は、すべてをひっくるめて1つのコンテンツです。アニメやPS4版から入る方はもちろん、ベテランプレイヤーにも楽しんでいただけるものを提供するために、そしてよりたくさんの人にオンラインゲームを知ってもらうためにこのEP4があります。2016年もどんどん挑戦していきますのでぜひついてきてください。よろしくお願いします。
(C)SEGA
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