2016年2月6日(土)
『ガルパン』ミリタリートークショーをレポ。登壇者が話すたびに驚きが生まれる宝石箱のような45分
現在全国の劇場で上映中の映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』。その累計興行収入が10億円を突破したことを記念して、2月5日に新宿バルト9でミリタリートークショー付き上映会が開催された。この記事では、トークショーの模様をお届けしていこう。
この日のトークショーに登壇したのは、鈴木貴昭氏(考証・スーパーバイザー)、岡部いさく氏(軍事評論家)、吉川和篤氏(イタリア軍研究家)、齋木伸生氏(フィンランド軍研究家)、そして杉山潔プロデューサーの5人。
▲左から鈴木貴昭氏、岡部いさく氏、吉川和篤氏、齋木伸生氏。 |
まずは映画の感想を話していくことに。地上を舞台にしたミリタリーものは、空や海を舞台にしたものに比べて地味になりがちなことに触れつつ、これだけたくさんの種類の戦車が出てくる『ガルパン』は、非常に“戦車映え”する映画とのこと。杉山Pたちは“戦車映画の『スーパーロボット大戦』”などと例えていた。
ここから続々と映画に登場したメカについて話していくことに。まずは継続高校のミカとアキが本編序盤の大洗市街戦を観戦していた時の車両について。この車両は、フィンランドのヘルシンキにある路面電車の会社が1944年ごろに使用していた民間のもので、現在で言う高所作業車のようなものとして活躍していたそうだ。
▲作業車に乗って大洗市街戦を観戦するミカとアキ。 |
色は戦時中には緑になっていたそうだが、もともとは白かったのだとか。車体に“リパブリック”と書いてあったので、アメリカの飛行機メーカー“リパブリック社”と関係あるのか? いやいやそれだと年代が……などと盛り上がっていた。
この車両が映画に登場したのは、水島努監督が「これを(映画で)使いたいんですけど」と言ったことがキッカケだったそうだ。車両の情報を調べるために、フィンランドのインターネットサイトで“捜索願い”を出すほど苦労したと齋木氏は苦笑しながら振り返っていた。
続いての吉川氏の苦労話。劇場版を作る際に、水島監督から2人乗りのCV33にアンツィオ高校の3人を乗せたいと相談されたそうだ。ぺパロニが座っている後ろの燃料タンクを外すことをふくめていろいろと考えたが、どうしてもどこかで齟齬が生じてしまうため、結果として“無理やり3人乗り込んでいる”ということにしたそうだ。
▲こちらはCV33に乗り込んでいるアンチョビたち。 |
また吉川氏は映画の制作にあたって、『機甲入門』などの著者である佐山二郞氏に相談をしたそうで、その際に八九式や九七式の内部写真など未発表資料を貸してもらったそうだ。これらの資料は、映画の制作で生かされているとのこと。
吉川氏は佐山氏を『ガールズ&パンツァー 劇場版』に招待したそうで、佐山氏から絶賛されたことをうれしそうに話していた。
TVアニメから、戦車がかかわる部分について全体的に見ていた鈴木氏。劇場版では、監修する人間がたくさんいることから「楽できるのかな~」と思っていたそうだが、連日のように飛んでくるメールに追われ、まったく楽はできなかったという。
鈴木氏の他にも『萌えよ! 戦車学校』シリーズの著者である田村尚也氏が考証として参加しており、製作面でその実力を発揮したという。田村氏の指摘で、CV33はひっくり返った場合、キャブレターまで燃料が行き渡らずエンジンが回らないことや、アンテナなどの装備を付けなければ無線を使えないことなどは把握していたそうだが、アニメならではの割り切りでオミットしたことを明かしていた。
他の監修者は、サンダース大付属高校のC5輸送機を監修するために、アメリカからマニュアルを購入したという逸話も飛び出した。C5については内部のコンソールも正確に再現されているという。
▲劇中に登場したのはわずかな時間だったが、C5は強烈な存在感を放っていた。 |
これらの例をとってもわかるように、アイテムひとつひとつにまできちんと資料をあたり、こだわりを持って作ったことをうかがわせていた。
中でもこだわりを感じさせるエピソードは、戦車のモデリングについて。TV版で登場したものと同じ戦車でも、劇場版ではすべてモデリングをし直して、再度監修したそうだ。トークショーでは、八九式とシャーマン ファイアフライのモデル更新について言及していた。
八九式は、履帯とフェンダーの隙間にあるピストルポートなどが再現されているという。ファイアフライは、TV版ではシャーシがM4A1(シャーマンI)で、杉山Pいわく“なんちゃってファイアフライ”だったのだが、劇場版ではきちんとM4A4(シャーマンV)になっているという。
▲ファイアフライの変更について、杉山Pはとてもうれしそうに話していた。 |
この他にも、下記のようなウラ話が明かされた。
・IV号戦車の車外搭載品の位置がTV版と劇場版で違っている。
・迷彩はレンダリングの速度を優先してなるべく使わないようにしているが、知波単学園の車両には迷彩が施されており、パターンも4~5種類存在している。
・知波単学園の生徒は他校に比べて名前のあるキャラクターが多い(鈴木さんいわく、監督が知波単学園を好きなのかも?)
・継続高校のミッコはもともと名前がなかった。
・知波単の吶喊(とっかん)シーンでは、履帯だけじゃなくて転輪が動いており、水平コイルスプリングもちゃんと動いている。
・遊園地内の看板には、“杉山郵便局”などのいろいろな遊びが仕込まれている。
・カール自走臼砲と、ナチスドイツ親衛隊のカール・ヴォルフをかけるなど、言葉遊びが数々ある。
・劇中でミカが話しているフィンランド語は「トゥータ!(発射!)」の一言だけ。
・iOS/Android用アプリ『ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!』では、「パンツァー・フォー」を意味するフィンランド語のセリフが今後実装される予定となっている。
▲迷彩が目を引く知波単学園の車両。 |
▲作中で、カンテレというフィンランドの民族楽器を演奏していたミカ。齋木氏はこの日会場にカンテレを持ってきており、『雪の進軍』を披露した。 |
ミカが演奏していた『サッキヤルヴェンポルカ』については、継続戦争時にソビエトがフィンランドの街に仕掛けた地雷を無効化するために、ラジオを通じて1,500回以上流されたことが齋木氏から語られたが、こちらについては真実かどうか不明とのこと。
上のエピソードはあくまでネタのひとつだが、本作の脚本会議では戦車にまつわるいろいろなエピソードが飛び交っていたようで、それらを聞いていた吉田玲子氏が、美味しいところだけを抜粋して脚本に入れ込んだのだとか。T28重戦車が、せまい道を通る際に外側の履帯を外すシーンなどは、TVシリーズの際の脚本会議で出たトークがもとになっているそうだ。
トークショーの途中で杉山Pの口からも出ていたが、『ガールズ&パンツァー 劇場版』のBDなどにも、もちろん“ミリタリーコメンタリー”が収録される模様。このイベントでは語り切れなかった逸話がたくさん聞けるはずなので、ファンは楽しみに待っていてもらいたい。
また、電撃オンラインでは昨年末に開催された音響スタッフによるトークショーの模様や、さまざまなトークイベントのレポートを掲載している。まだご覧になっていない人は、こちらもご覧いただきたい。
→『ガールズ&パンツァー 劇場版』を3割増しで楽しく見るために読んでおきたい記事4本
2月20日からの来場特典は、みほたちのバレンタインカード!
全国30の劇場で、4DX版『ガールズ&パンツァー 劇場版』が上映開始となる2月20日より、新たな来場特典の配布がスタートする。
配布されるのは、みほたちの描き下ろしイラスト入りバレンタインカード。カードは全9種で、2月20日~26日は、西住みほ・アンチョビ・西絹代・ミカ・愛里寿が描かれたカードの中からランダムで1枚をプレゼント。
2月27日~3月4日にかけては、西住まほ・ダージリン・ケイ・カチューシャ&ノンナが描かれたカードの中からランダムで1枚をプレゼントする。
カードの配布は1回の鑑賞につき1枚で、カードがなくなり次第終了となる。こちらの来場者特典は、通常上映の各劇場でも配布されるとのこと。ちょっぴり遅めのバレンタインプレゼントがほしい人は、劇場に足を運んでみては?
ちなみに4DXの上映館は下記の通り。上映劇場の詳しい情報については公式サイトでチェックしてもらいたい。
【4DX上映館】
・ユナイテッド・シネマ札幌(北海道)
・109シネマズ富谷(宮城)
・ユナイテッド・シネマ豊洲(東京)
・ユナイテッド・シネマとしまえん(東京)
・シネマサンシャイン平和島(東京)
・イオンシネマみなとみらい(神奈川)
・小田原コロナシネマワールド(神奈川)
・USシネマちはら台(千葉)
・ユナイテッド・シネマ春日部(埼玉)
・ユナイテッド・シネマ入間
・シネプレックス水戸(茨城)
・USシネマつくば(茨城)
・109シネマズ佐野(栃木)
・ユナイテッド・シネマ前橋(群馬)
・ユナイテッド・シネマ新潟(新潟)
・シネマサンシャイン沼津(静岡)
・中川コロナシネマワールド(愛知)
・安城コロナシネマワールド(愛知)
・豊川コロナシネマワールド(愛知)
・大垣コロナシネマワールド(岐阜)
・金沢コロナシネマワールド(石川)
・109シネマズ大阪エキスポシティ(大阪)
・イオンシネマ四條畷(大阪)
・シネプレックス枚方(大阪)
・アースシネマズ姫路(兵庫)
・ユナイテッド・シネマ橿原(奈良)
・福山コロナシネマワールド(広島)
・シネマサンシャインエミフルMASAKI(愛媛)
・ユナイテッド・シネマキャナルシティ13(福岡)
・小倉コロナシネマワールド(福岡)
BD『ガールズ&パンツァーオーケストラ・コンサート~Herbst Musikfest 2015~』は2月24日発売!
2015年11月3日に開催された『ガールズ&パンツァー』の音楽コンサートイベントを収録したBD『ガールズ&パンツァーオーケストラ・コンサート~Herbst Musikfest 2015~』が2月24日に発売される。
▲ジャケットイラストは、会場である“よこすか芸術劇場”のホワイエに集うあんこうチームの5人。 |
主人公・西住みほを演じる渕上舞さんによる朗読をはさみつつ、音楽担当の浜口史郎氏監修のもと、国際的に活躍する栗田博文氏の指揮により東京フィルハーモニー交響楽団がTVシリーズの劇伴・挿入歌・EDのオーケストラアレンジバージョンを演奏する。
さらにChouChoさんによる劇場版イメージソングや、シークレットゲストの佐咲紗花さんによる“あんこう音頭”の熱唱も楽しめる。
このアイテムには、2014年11月3日に大洗文化センターで行われたウサギさんチームのイベント“ハートフル・ラビット・ファンミーティング”が完全収録されており、特典DISCを含めると収録時間380分の大ボリューム。『ガルパン』ファンはお見逃しないように。
■『ガールズ&パンツァー オーケストラ・コンサート ~Herbst Musikfest 2015~』BD情報
【発売日】2016年2月24日
【希望小売価格】7,800円+税
【本編DISC】約100分
【特典DISC】約150分
(C)GIRLS und PANZER Film Projekt
データ
- ▼『ガールズ&パンツァー オーケストラ・コンサート ~Herbst Musikfest 2015~』
- ■発売元:バンダイビジュアル
- ■品番:BCXE-1115
- ■JANコード:4934569361158
- ■発売日:2016年2月24日
- ■希望小売価格:7,800円+税