2016年2月27日(土)
第22回電撃小説大賞で《メディアワークス文庫賞》を受賞した『チョコレート・コンフュージョン』。メディアワークス文庫から好評発売中の本作の魅力を、著者の星奏なつめ先生に語っていただきました。
「すみません三春さん! チョコレートに込められた熱き乙女心、遅まきながら確かに受け取りました! 貴女のいじらしい想い、決して無駄には致しません!」
「私が北風さんを愛してるなんて、そんなことありえないからっ――――!」
お気に入りのハイヒールを折ってしまったOL・三春千紗を助けてくれたのは、凶悪な目つきから社内で“殺し屋”と恐れられている男・北風龍生。その翌週、お礼に渡した義理チョコを本気にした彼から「愛してます」の告白が――!?
バレンタインデーの義理チョコをきっかけにした誤解から始まった物語は、誰もがキュンキュンする最強ラブコメ。がんばるすべての人に贈る第22回電撃小説大賞《メディアワークス文庫賞》受賞作!!
動画:第22回電撃小説大賞受賞作まとめPV(メディアワークス文庫)
――電撃小説大賞に作品を応募しようと思った理由は何ですか?
数ある新人賞の中から電撃小説大賞を選んだのは、どんな作品でも柔軟に受け入れてくれそうだなと思ったからです。
一つの賞に、電撃文庫とメディアワークス文庫、二つのレーベルが関わっているのも他にはない魅力ですよね。刊行されている作品もバラエティに富んでいて、さらにどれを読んでも面白くてハズレなし!!
「すごいなー、こんな素敵な作品たちの中に自分の本が混ぜてもらえたら幸せだろうなー」と思わず妄想してしまいました。今回、私が加わったことでレーベルの質が落ちたと言われないよう、精一杯頑張ります!
――クールすぎる外見から“殺し屋”と恐れられるサラリーマン・北風龍生に、義理チョコを渡したつもりが本命と勘違いされたOL・三春千紗――。本作は誤解から始まった2人の恋を描いたラブストーリーです。この物語が誕生した経緯を教えてください。
当初はこんな大人なラブストーリーになるとは思っていませんでした。というのも、「宿敵に気があると誤解され、迷惑極まりないアプローチを受ける羽目になる主人公って面白いかも!」というライトノベル的なネタを妄想したのが始まりだったので。
ライトノベルなら主人公は青年がいいかなーと思ったのですが、「そもそも青年って何歳まで? え、30代もオッケー? なら、枯れかけだけどギリギリ青年なオジサン系主人公で行っちゃおー!」とひらめき、上述案と併せて練っていくうちに……なぜでしょうね、気付いたら強面純情サラリーマンの勘違いラブコメになっちゃってました。
――殺し屋のような外見なのに、内面は人一倍思いやりがあって千紗に尽くす龍生が魅力的です。彼に癒される女性は多いと思いますが、ご自身がこだわって描いたところはどこでしょうか?
とにかくコワモテな龍生なので、内面は顔に似合わず優しい、紳士的な性格にしようと心掛けました。だって、顔も性格も怖かったらもうお手上げじゃないですか、それこそ本物の殺し屋モノになっちゃって恋が始まらない……!
なので、顔と性格とのギャップはこだわって描いたつもりです。ただ、“意外と優しい”だけじゃコメディとしては面白くならないので、潔癖症や口下手、純情や天然などのいろんな要素も詰め込んでみました。
顔のせいで人から避けられてきた分、世間擦れしていないピュアな龍生ですが、天然かつ生真面目な性格ゆえ、別のベクトルではズレてしまっている――そのせいで生じるさまざまなハプニングをお楽しみいただければ幸いです。
――一方、千紗は笑顔を絶やさずに身だしなみも完璧。仕事ができる理想のOLだと同僚に思われていますが、実はちょっと無理してがんばっているところも……。外見と中身のギャップがある2人の交流を描く時に、大変だったところはありますか?
えーと、全体的に大変でした……(遠い目をしながら)。
というのもこの2人、本当に誤解し合ってばかりで、こんなんで果たして本当に両想いになれるのか!? と、疑問しか浮かんでこなかったんです。
頼りにすべきプロットには「なんやかんやでイイ感じになる!」としか書いてなくて、「誰なの、こんなテキトーな筋書き作ったのは!」と、過去の己にパンパーンと往復ビンタしたい気持ちでいっぱいでした。
それでも、くっつかなそうな2人をくっつけてこそのラブコメだ! と思い、執筆を続けるうちに、あら不思議! 気付けばなんやかんやで交流を深めていきましたよ、この2人! 果たしてどんな“なんやかんや”があったかは、本編でお確かめいただければと……!
――龍生は女性への贈り物が不慣れです。そんな龍生に、星奏さんからアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけますか?
相手の好みがよくわからない場合、もらっても困らないような消耗品を送るのが無難だよ、と教えてあげたいです。あ、でも龍生の場合、超実用的なもの選んじゃいそうで怖いですね。
ちょっとズレた人なので、「これならば誰でも確実に使うはずだ!」とか言ってトイレットペーパーとか選んじゃいそうです。一応オシャレに、香り付き花柄エンボス加工とかの、普通よりは高級ラインのやつを(笑)
とは言え、龍生が思いを寄せる千紗も若干天然なので、それはそれで喜んでくれるかも? 「なにこのトイレットペーパー可愛い! ダブルだから肌あたりも柔らかくて優しいし、会社の備品(シングルで固め)とは大違いだわっ! これからのトイレライフが楽しくなりそう♪」とか言ってくれ……ないな、さすがに。うん、トイレットペーパーだけはホントにやめとこうね、龍生!
――どの部分が評価されて《メディアワークス文庫賞》を受賞したのだとお考えですか?
それが全然わからないんです。むしろ評価されるってわかってたら、最初から本作をバーンと応募してたでしょうね、過去3度も落選してない……(涙)
実は先日、メディアワークス文庫の佐藤編集長に、どの部分が評価されたかお伺いする機会があったのですが、身に余る賛辞に舞い上がってしまい、肝心の評価部分をすっかり忘れてしまいました……。日頃ほめられることないので、動揺しすぎて……!
確か「主役以外の脇役キャラも良かった」と仰っていただいたような……? え、言ってない? 幻聴? 全部妄想!? わーん、もしどの部分が評価されたかわかった方いらっしゃいましたら、そっと教えてください、お願いします!!
――読者の皆さんへメッセージをお願いいたします。
本作品は、ツッコミどころ満載のコメディーシーンと、大人とは思えないほどウブ&ピュアな恋模様が怒涛のごとく押し寄せてくる、紛う事なきザ・ラブコメに仕上がっていると思います。
なので、「ここが読みどころかー!!」とか難しいことは考えずに、気楽に楽しんでいただくのが一番かなと。読み終わった後、「あー、面白かったー!」と思っていただければ、この上なく幸せです! 疲れた時にこそ読んでいただきたい、気分転換にオススメな1冊です!
人生初のお付き合いにウキウキ気分の主人公・龍生。それとは対象的に、ヒロインの千紗は社内の危険人物と付き合うことになり、人生のどん底気分。
龍生と千紗の奇妙な関係をそれぞれの視点で交互に描いているので、二人の上手く噛み合わないやり取りや会話に、クスッと笑えること間違いなし!
毎日がんばっている方に、息抜きとして読んでいただきたい、笑えて泣ける1冊です!
星奏なつめ(せいそう なつめ)
●愛媛県出身。かつては臨床心理士を志していた。カウンセリングと小説、どちらも言葉の力が大切な役目を果たしていると気づき、その想いを作品に込めている。
(C)星奏なつめ/KADOKAWA CORPORATION 2016
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