2016年2月26日(金)
第22回電撃小説大賞で《大賞》を受賞した『トーキョー下町ゴールドクラッシュ!』。メディアワークス文庫から好評発売中の本作の魅力を、著者の角埜杞真先生に語っていただきました。
「トレーダーがヒマなわけない。さっきクビになっただけ」
「キミに対して、賠償請求をする。返還請求額と同程度だと思ってくれるなよ? 損害に対する賠償請求だからね。そうだな、百億はもらおうか」
法律に触れる取引をしたとして、証券会社を解雇された伝説のトレーダー・橘立花。身に覚えのない罪、さらに巨額の損害賠償を要求されて人生最大の危機に。
そんな立花を助けてくれたのは、下町の洋食屋“紫苑亭”に集う面々だった――!? 爽快な読後感は誰もをスカッとさせる、第22回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!
動画:『トーキョー下町ゴールドクラッシュ!』PV
――電撃小説大賞に作品を応募しようと思った理由は何ですか?
小説を書き始めて、どこへ応募しようかと考えたときに、元々好きだったメディアワークス文庫が真っ先に思い浮かびました。ですが、探したらメディアワークス文庫単体での公募はなくて。
とにかく応募数が多いのと、電撃文庫は有名ですから、応募者も年齢の若い方が多い印象で……少し迷ったのですが、勇気を出して応募してよかったです。
――本作は、違法な売買を行ったという罪で不当に解雇された証券会社の元敏腕トレーダー・橘立花が、その事件の裏側にある真相を暴いていくミステリー風味の物語です。この物語が生まれたきっかけを教えてください。
ミステリー作品が好きなので、自分でも、いつかミステリーやサスペンスを書いてみたいと思っていました。それも、先の展開が読めなくてワクワクするような作品を書きたいな、と。
いつかいつかと思いながらも自信がなくて、なかなか書けないでいたのですが、思い切ってチャレンジしてみようと書き始めたのが本作です。せっかく初めて書く事件モノなので、大きな事件がいい。大きな事件と言えば、金額の大きさ。そう頭に浮かび、結果、金融系のお話になりました。
先の展開が気になって、次から次へとページを捲っていけるような作品にしたいと願った意図が実現できているかどうか。ぜひ、読んでみていただければと思います!
――立花の相棒として、一緒に事件を追っていく青年・永山一樹についてお聞きします。帰国子女、つかみどころのない性格、無職……という個性的な彼のキャラクターは、どのようにして誕生したのでしょうか?
立花がやり手の女性なので、相棒になるならちょっと抜けたところのある子がいいなと思っていたら、ひょっこり顔を出したのが永山一樹というイケメンフリーターでした。
一樹のことは、彼のバックグラウンドも含めてまだわからない部分も多いので、これから明らかになっていくはずです。本当の一樹がどんな子なのか。徐々に明かされていくのを、私自身も楽しみにしています。
――仕事一筋だった立花が、仕事を辞めたことで下町の洋食屋“紫苑亭”のメンバーとの交流が始まります。食事シーンが魅力的に描かれていますが、そこにはどんな想いが込められているのでしょうか。
食べることは生きる上での基本ですし、食べることを楽しめている人は“元気”だと思います。それを描きたかったことが一つ。
もう一つは、この作品を書く前に、舞台をどこにしようかと考えながら人形町を歩きました。そのとき、予備知識なしで歩き回ったのに、美味しい食べ物にたくさん巡り会えたのです。
取材しているはずだったことも忘れて「美味しいものがある街は楽しい!」と浮かれながら下町散策を満喫したので、それを作品の中にも活かしたかったんです。
――どの部分が評価されて《大賞》を受賞したのだとお考えですか?
これは正直、自分ではよくわからないのですが……電撃小説大賞にしては珍しいテイストの作品だったと、チラリと小耳に挟みました。
また、下町と金融という一見ミスマッチな組み合わせがよかった、と選評でも目にしました。
スッキリ楽しんでもらえるような読後感の良い作品を目指して書いたので、その点も好意的に受け取っていただけたのかな、とも思っています。
――読者の皆さんへメッセージをお願いいたします。
金融を題材にしていますので、ちょっとした豆知識が身につくかもしれません。決して難しくはなく、ライトに読んでいただけるものですので、頭を空っぽにして、ついでにお腹も空かせて、どうぞ事件を楽しんでください。
メインテーマは、「どんな人生にも、逆転はある!」です。
――最後に、これから株を始めようしている読者に、立花からアドバイスをお願いします!!
「始めるからには、真剣勝負よ。金融市場は世の中の動きに先行する。未来を予測して、ドンと勝負なさい! いい? 大事なのは、勝負を楽しむことよ。金儲けを楽しんで!」
“下町”と“金融”の意外な組合わせが「痛快」「癖になりそう!」と選考委員に絶賛されました! 迫りくる悪の手など、なんのその。事件解決のため下町を全力で走り抜ける主人公・立花の姿は、「明日がんばろう!」というカンフル剤になること間違いナシです!
角埜杞真(かどの こま)
●東京都出身。生粋の都会っ子だが、心のふるさとは岐阜県関市。遠い昔に新青梅街道でひったくりに遭い、パトカーに乗って連行されたのが唯一の武勇伝。
(C)角埜杞真/KADOKAWA CORPORATION 2016
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