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2016年3月11日(金)

【電撃PS】『ライフ イズ ストレンジ』話題のタイムリープADVの魅力を総まとめ! 開発元・DONTNODへのインタビューも

文:電撃PlayStation

 3月3日に日本語版が発売され、ミステリアスでせつない物語とプレイアビリティの良好さが話題となっている『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』。本作は、時間を巻き戻す能力を授かった高校生の少女・マックスが、5年ぶりに再会した親友・クロエとともに町で起きた事件にかかわっていくジュブナイルアドベンチャーです。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

 その最大の特徴は、作中に何度も発生する選択肢のどれを選ぶかで物語の展開や登場人物との関係が刻々と変化していくことと、“時間を巻き戻してその選択をやり直せる”というシステム。

 時間を巻き戻しながらいくつもの選択肢を試し、その結果がどんな変化をもたらすのか、その後の状況を鑑みて、自分でマックスの未来を“選んで”いく……。自分自身の選択が物語を形作っていくという感覚を強く味わえるのは、本作ならではの魅力と言えます。

 ちなみに、日々の選択は、誰かと仲よくすれば別の誰かと疎遠になったり、パッと見はベストに見えてもあとあとその選択が問題になったりと、一筋縄ではいかないものも多数。とにかく何度も悩み、何度でも間違い、異なる回答の先に待つドラマを楽しみ、そして時間を戻して選択をやり直しながら物語を進めていく……。そうすることで作品世界の持つ深みを存分に味わえる。それが本作の醍醐味なのです。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』 『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

 今回はそんな本作の魅力を凝縮してお伝えするとともに、フランスの開発会社・DONTNOD Entertainmentの方々へのインタビューも掲載! 本作の開発秘話に迫っています。

 なお、インタビューの一部は3月10日発売の電撃PlayStation Vol.610にて掲載されていますが、ここではその全文を掲載しています。

過去、現在、未来――複雑に絡み合う謎を紐解く物語

 本作の物語は、美しくもどこか寂れた町にあるブラックウェル高校の女子生徒・マックスの視点で描かれるジュブナイルストーリー。彼女は写真を学ぶため5年ぶりにアルカディア・ベイの町に戻ってきたはいいものの、周囲との関係は良好とは言いがたく、学校の“女王様”ビクトリアとその取り巻きたちからは無根拠な軽蔑の眼差しさえも向けられている様子。

 彼女自身も、写真に打ち込む新たな高校生活のなかで自分を変えていきたい思いを抱きつつ、内省的な性格が災いしてなかなかそれが実現しないことに言外の悩みを抱えているようです。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』 『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

 そんなちょっとブルーな日々を送るマックスですが、学校のトイレで少女が銃で撃たれる事件に遭遇し、その“死”を回避すべく――思いがけず不思議な力を発揮します。気がつけばさきほどの“発砲事件”の十数分前……。今のは夢なのか? なぜ時間が巻き戻っているのか?

 混乱する頭を抱える彼女は、壊れたカメラを時間逆行で“壊れていなかった”ことにするという実験をへて、自分に“時間を巻き戻す”能力が備わってしまったのだと悟るのでした。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』 『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

 その後、時間を巻き戻して未来を変え、“発砲事件”から被害者の少女を救ったマックスでしたが、そのせいで、学校内に暗く影を落とす、とある問題と接点を持つことになってしまいます。

 それは、発砲事件の加害者――町の実権を握るプレスコット家の長男・ネイサンにまつわる問題。彼はスクールカースト上位の子を中心に構成されたパーティサークル“ボルテックス・クラブ”で、口に出せないことを好き放題やっている様子。マックスの友人・ケイトも彼の被害にあっており、何やら極度に思いつめているようです。

 それと前後して、マックスは5年ぶりに親友・クロエと再会しました。2人は数奇な運命に驚きつつも旧交を温めるのですが、そのなかでクロエは、マックスのいない5年の間、親友として彼女を支えてくれたという少女・レイチェルが数カ月前から行方不明であること、そしてそこには件のネイサンが関係していそうなことを語ります。

 それらの事件とかかわるなかで、あるいは日々のちょっとした問題を解決するなかで、マックスは幾度も能力を使います。そして能力を極度に酷使した際、たびたび町が嵐と竜巻に襲われる白昼夢を見るのですが……幾度目かの白昼夢で、彼女はどこかから飛んできた新聞の日付を見て、驚愕することになります。その日付は、“今”から数日後のもの。それでは数日後、実際に町が壊滅する……? 回避方法は? 自分の能力との関連性は? 確かめようがない謎を前に、マックスは思い悩むことになります。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』 『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

 過去に起きたレイチェルの失踪事件、現在問題となっているボルテックス・クラブにまつわる事件、そして近い未来に起こるであろう、町が壊滅するほどの嵐――。本作の謎は、このような過去、現在、未来にまたがって複雑に入り組んでおり、マックスは物語を通じて、ときに絡み合いながら展開していく事件の1つ1つと向き合っていくことになります。

 そのストーリーテリングの手法と、BGMの使い方も相まった没入感の演出は、まさに秀逸の一言。洋画や海外ドラマを楽しめる人はもちろん、ミステリー好き、ジュブナイル好きな人にもぜひプレイしてほしい内容の作品となっています。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』 『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

抜群の遊びやすさとわかりやすい翻訳

 もともと海外で先行販売されていた本作ですが、日本で発売されるにあたり、当然、日本語化が施されています。その翻訳が素晴らしい。映画と違って翻訳者の名前が大きく出ることはないものの、個人的には本作の最大の功労はこの“訳”なのではないかとすら思えます。

 キャラクターたちのセリフはもちろん、選択肢の文章や、ゲーム中に確認できるさまざまなチラシ、メニューから読めるマックスの日記まで、全体の文脈を簡潔かつ的確に理解できるうえ、登場人物同士の会話ではセンスに富んだやりとりも見られます。彼らの個性に思わずニヤリ……なんてこともあり、この“訳”が物語への没入感を高めてくれているのは間違いないでしょう。

 また、翻訳だけでなく、快適な操作性も、ゲームに没頭できる大きな要因といえます。とくに時間を巻き戻す際の手軽さは、何度もいろいろと試してみようという気にさせてくれます。さらには日記に写真や情報を収集していく要素もあり、やり込み派にも十分満足できる、しっかりとしたゲーム性となっているのも嬉しいところ。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』
▲一度クリアしたエピソードをシーンごとにやり直す、パラレルプレイ機能も搭載。これまでのプレイの選択フラグを変えずに、”別の選択ではどうなっていたか”を確認することができます。
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』 『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』
▲とにかく豊富な情報メニュー。プレイの進行によってさまざまな情報が追加されていきます。ゲーム中に送られてくるメールがヒントになっていることも。

 さて、物語の本質についてもっと深いところまで語りたいのはやまやまなのですが……これ以上はネタバレとなってしまうので、レポートはここまで。このあとはぜひ、本作を実際にプレイして体感してみてください。

『ライフ イズ ストレンジ』の開発秘話に迫る、スタッフミニインタビュー!

 以降は、本作をプレイした担当が思ったことを、ネタバレにならない範囲で開発スタッフの方々にインタビュー! さまざまな質問に答えていただいたので、ぜひご覧ください。

 今回のインタビューに答えていただいたのは、本作開発元のDONTNOD Entertainmentチームの方々。

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』
▲左からプロデューサーのLuc Baghadoust氏、共同ゲームディレクターのRaoul Barbet氏、共同ゲームディレクター&アートディレクターのMichel Koch氏、DONTNOD Entertainment CEOのOskar Guilbert氏。

――編集部でも物語の評価が非常に高い本作ですが、今回のように物語性の強いアドベンチャーゲームを制作するに至った経緯をお聞かせください。

Raoul:ご好評いただきありがとうございます! 以前制作した『Remember Me』にも物語性の強い部分はありましたが、スピード感のあるアクションゲームでは、戦闘などの最中に物語性が削がれてしまうことがあります。『Life Is Strange』のプロジェクトをスタートさせたとき、この作品では物語や登場人物にもっとフォーカスするべきだと私たちは考えていました。

 私は大のアドベンチャーゲーム好きでして(Lucas ArtsやFuncomの古き良きポイント&クリックタイプのものから、Quantic DreamやTelltaleに代表される新しいタイプのものまで)、この方向性で行こうと決断するまでに、ほとんど時間はかかりませんでしたね。

――タイムリープをテーマにされた理由をぜひ教えてください

Michel:最初は、『Remember Me』にあった人々の記憶が混ざるという部分を拡張したらどうか、ということを話していました。それから、小さな行動の1つ1つが大きな結末を導く、というコンセプトが生まれ、これはゲームプレイ全体を引き締めるだろうと確信しました。そして、ゲームシステムとして、そのコンセプトのメタファーとして、主人公の成長物語の語り口として“時間の巻き戻し”が決まりました。

 子供から大人への成長、人生には過去を振り返るのは止めて前へ進まなければならない時もある、というのが本作のテーマのひとつなのですが、色々な作品からインスピレーションをもらいました。私たちは3人とも30代で、10代のころの記憶とポップカルチャーに強く影響を受けています。

 例えばTVドラマなら、『Twin Peaks』、『The X-Files』、『Buffy the Vampire Slayer』、『Veronica Mars』など、映画だと『Donnie Darko』や『The Butterfly Effect』、写真やフレーミングの表現などは『Another Earth』をはじめとするアメリカのインディー映画を参考にしました。本で言うとStephen Kingですね。私たちは彼の大ファンで、現実と同じ舞台設定に超自然的な事象を持ち込むという彼の手法は素晴らしいと思っています。

――舞台のアルカディア・ベイやブラックウェル高校のモデルになった場所はありますか?

Michel:ロケーションを聞かれれば、アメリカ北西部の太平洋沿岸と即答できます。非常に特徴的な場所ですし、詩的な雰囲気が本作のテーマにピッタリです。インターネットや実際にオレゴン州に行ったりして、参考資料を集めていきました。本作の脚本家はサンフランシスコ在住のアメリカ人なのですが、よりリアルな物語にするために、年に何回もオレゴン州のポートランドまで行っていましたね。

――主人公マックスの人物像に、モデルはいますか? また、とくに“こうあるべき”とこだわった部分はございますか?

Luc:特定の人物はいません。主人公のキャラクターを創り上げるのはとても大変でした。しっかりとした個性を持たなければならない一方で、プレイヤーが共感できる人物でなくてはなりません。また、主人公はプレイヤーの分身ですから、個性の一部分はプレイヤーの選択によって決まるようになっています。

 皆さんが選んだ選択によって、クロエとの関係によって、そして目まぐるしい一週間で直面する数々の問題を乗り越えて、マックスは成長していきます。だから冒頭ではシャイで危なっかしい女の子なのです。彼女は、私たちが経験してきたように、高校生活で多くの問題を抱えています。そして、もっとしっかりとした人間に成長していくのです。端的に言うと“大人になる”ということです。

――ココを見てほしい(もしくはここがお気に入り)というシーンはどこでしょう?

Luc:これは難しい質問ですね。ネタバレは避けたいですからね! まだゲームをクリアしていない方はこの部分を読み飛ばしてください(笑)。私は、マックスが大変な思いをして、クロエにそれを一生懸命説明したのに、クロエがイマイチわかってくれない場面でしょうか。とてもエモーショナルなシーンです!

Raoul:アーティストの楽曲が流れるシーンはどれも素晴らしいと思います。例えば、いくつかのエピソードのエンディングなどですが、画面の構図と音楽とボイスと…すべてを意味あり気に、よい雰囲気の中でまとめあげるのは大変な作業でした。

Michel:私はエピソード3のクロエの部屋で目覚めるシーンですね。プレイヤーは、クロエの横で寝ていても良いですし、音楽を聴いたり、やさしい朝日の光の中でまどろんでいても構いません。“その瞬間を楽しむ”という意味で最高のシーンだと思います。プレイヤーがなかなか“起き上がる”を選ばないのを見ると嬉しくなりますよ。またここは、マックスとクロエの関係においてもターニングポイントになる場面です。

――マックスの使っているカメラはインスタントカメラですが、彼女はインスタントカメラ(インスタントカメラで撮る写真)にこだわりがあるのでしょうか?

Michel:写真は本作においてとても重要なテーマです。巻き戻し能力や郷愁のメタファーとしても使われています。写真というのは過去の瞬間の切り出しで、写真を見るというのは、過去の瞬間を思い出すということでもあります。

 それから、デジタルではなく、アナログのインスタントカメラというのは、マックスのキャラクターに大きくかかわっています。現在を受け入れて人間として成長していくというテーマがあるわけですが、彼女は古いものが好きで、ある意味過去にとどまっていたいと思っているところが面白い点です。もちろん、インスタントカメラには彼女の個性を際立たせる役目もあります。プレイヤーと主人公のつながりを強くするため、主人公は他のキャラクターよりも特徴的でないといけませんから。

――Syd mattersほか、複数のアーティストの楽曲が要所でドラマを演出していてとても印象的ですが(また、Syd mattersのメンバーもBGMのスタッフとして参加しておりますが)彼らに依頼することになった理由や経緯など語れることがありましたらぜひ教えてください

Raoul:試作段階ではすでに、ゲーム全体や特定のシーンを際立たせるために、実際の楽曲が入っていました。ゲーム内で使いたい楽曲を書き出して、それから各アーティストにコンタクトをとっていきました。

 Syd mattersというバンドのヴォーカルで作曲も担当しているJonathan Morali氏に、『Obstacles』と『To All of You』を使わせてほしいとコンタクトをとった時、彼自身がゲーマーであることを知りました。そして本作のために曲を作ってくれるという話になりました! こんなに嬉しい話はないですし、完成した楽曲も素晴らしいものでした。

――時間巻き戻しのギミック(トリック)を作るにあたって、世界設定的、あるいはゲームシステム的にとくに工夫したところはどこですか?

Luc:巻き戻しのギミックを入れるのは大変なチャレンジでした! ゲームデザイン面で言えば、各所と矛盾しないようにしなければいけませんし、ゲームを通して刺激的な要素である必要があります。とくに難しかったのは、時間を巻き戻す時の演出で、キャラクターの動きや視覚的効果なども一緒に巻き戻るようになっています。正直ものすごく大変だったので、皆さんにこのシステムを気に入っていただけると嬉しいです!

――日本語ローカライズ(翻訳そのもののほか、システム周りのフォントなど各所のこだわり)が素晴らしく感じますが、本作日本語版についての印象をお聞かせください。

Luc:日本語版が出るなんて、こんなに嬉しいことはないですよ! 私たちのスタジオの作品を日本で出すのはこれが初めてですから! 私たちは日本語を話せないですが、コンタクトとして間に入ってくれた日本のスクウェア・エニックススタッフや、とくにローカライズディレクターの西尾勇輝氏と仕事ができてとても幸せです。日本語版の声優の方々については、ただただその才能に脱帽ですね。

――本作では灯台がとても象徴的に描かれていますが、そこに含ませた“意味”をお聞かせください

Michel:灯台というのは、ゲームや映画、もちろん現実世界においても非常にアイコニックな存在です。つまり“安心”のシンボルなのですが、例えば、夜の無限の闇を航海する船乗りは、灯台を見ることで、陸地に近づいてきた、帰ってきた、もう安全なんだ、旅はこれで終わりだと感じるでしょう。オレゴン州には11以上の灯台があり、その多くが現役で使われているそうです。実際に灯台を見に行ったとき、安心感と、何と言うか希望みたいなものを感じました。それが灯台をシンボルとして登場させている理由です。

――続編の可能性はございますか?

Raoul:本作はマックスとクロエの物語で、マックスの成長を描いています。その先のストーリーについては、プレイヤーの皆さんに自由に想像して欲しいですし、そのほうが次の物語を作るよりもいいでしょう。

――最後に、本作をプレイする日本人のファンに向けて、ぜひ一言お願いします

Michel:本作のメッセージのひとつは、過去に執着するよりも、現在を受け入れて未来へ進まなければならないこともある、というものです。人生は完璧にはいかないですし、悪いこともたくさん起こるでしょう。自分の選択に責任を持って次へと進み、人生の選択に良し悪しはなく、今まで選んできたものが現在を、そして未来を形作っているということを感じてもらいたいと思います。

Raoul:私たちは、日本や日本文化のファンなので、本作が日本で発売されて心から幸せです。欧米ではすでに多くのユーザーがこのゲームを楽しんでいるので、同じように、ストーリーやキャラクター、世界観が日本の皆さんの心をつかめたら良いなと思っています。あとは、世界中から寄せられるファンアートやコスプレ写真、ファンメイドのショートストーリーなどを楽しんでいるので、才能あふれる日本の皆さんにもぜひ作品を作っていただきたいですね!

『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』

Life Is Strange (C) 2015, 2016 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by DONTNOD Entertainment SARL. Life is Strange is a trademark of Square Enix Ltd. Square Enix and the Square Enix logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co. Ltd. All other trademarks are property of their respective owners.

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.610』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2016年3月10日
■定価:657円+税
 
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