2016年3月22日(火)
現在アメリカ・サンフランシスコで開催中の“Game Developers Conference 2016(GDC2016)から、2016年6月30日発売予定のPS Vita/3DS/PC『ZERO ESCAPE 刻(とき)のジレンマ』(以下、『ZERO ESCAPE』)でディレクター・シナリオを務める打越鋼太郎氏のインタビューをお届けする。
▲スパイク・チュンソフト所属のクリエイター。過去には『Ever17』や『12RIVEN』などといった作品を手掛けている。 |
――『極限脱出ADV 善人シボウデス』(以下、『善人シボウデス』)から『ZERO ESCAPE』の発売まで4年の間が空いた理由を教えてください。
もともとは『善人シボウデス』と『ZERO ESCAPE』は同時に開発する予定でしたが、諸事情があり『ZERO ESCAPE』は保留することになってしまいました。ただ、海外のファンを中心に『善人シボウデス』の続編を望む声が大きく、このままずっとお待たせしてしまうことが申し訳なかったので、2014年に「申し訳ありませんが続編は作れません」とメッセージを伝えました。
――発売中止を明確に伝えたんですね。
ただ、そのあとファンのみなさんから僕や社内に熱いメッセージがたくさん届いたんです。それによって、「これだけ待っていてくれる人がいるならば……」と『ZERO ESCAPE』を作ることになったんです。
――『2』と『3』を同時に作ろうと構想していたときと、現在では、作品の内容も異なるのでしょうか?
キャラクターが3チームに分かれることと、『善人シボウデス』の悲劇的な未来を変えるために行動するといった骨格の部分は同じですね。ただシナリオを執筆しているうちに、キャラクターたちが僕の考えていたことと違う“動き”を見せてきて、内容は変わってきていますね。
――淳平や茜、シグマやファイといったシリーズおなじみのキャラクター以外の人物は、企画が再起動したタイミングで考えられたのでしょうか?
そうですね。全体のバランスを考えながらひとりひとり作りました。
▲シリーズファンにおなじみのキャラクターが登場する『ZERO ESCAPE』。 |
――『ZERO ESCAPE』の内容について詳しくお聞かせください。今回、タイトルに『極限脱出』がつかなくなった理由というのは?
さまざまな理由があるのですが、タイトルをスッキリさせたかったというのが大きいですね。『ZERO ESCAPE』と『刻のジレンマ』で2つありますからね(笑)。
――たしかに『極限脱出ADV ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』だと少しクドいですね(笑)。
あと、『ZERO ESCAPE』は洋ドラ(洋画ドラマ)的な雰囲気にしたかったんです。タイトルに『極限脱出』とつければ脱出モノだとわかりやすいのですが、本作は洋ドラを楽しむ感覚でプレイしてもらいたんですよね。
――サブタイトルの『刻のジレンマ』にはどういった意味が込められているのでしょうか?
今回は時間をテーマにしたので“刻”の文字を入れました。あとは究極の選択という意味で“ジレンマ”という言葉を選択しました。“時”ではなく“刻”にしたのは、言葉の重みとしての選択はもちろん、3つのチームに分かれる、死体が刻まれる、疑心暗鬼で人々の絆が刻まれてしまうなど、いろいろな意味が込められています。
――キャラクターデザインが前2作の西村キヌさんから友野るいさんに変わった経緯というのは?
西村キヌさんのイラストは自分も大好きなのですが、シリーズ自体の雰囲気をリニューアルしたかったんです。ユーザーさんに見た目の変化を与えたかったんですね。友野るいさんは本作のシネマティックな雰囲気に合っている絵柄を描く方だったので、起用させていただきました。
――なるほど。本作のメインビジュアルはダイアナがシグマに銃を突きつけているものになっていますが、この2人がメインキャラクターになるのでしょうか?
▲本作のメインビジュアル |
非常に重要なキャラクターではありますが、ほかの全チームも同じぐらい重要です。シグマたちはもちろん、第1作をプレイした方なら茜と淳平のチームが気になるでしょうし、新キャラクターだけのチームも新鮮でしょうし、全チームに注目してもらいたいですね。
――シリーズ完結編となる本作ですが、前2作をプレイしていないユーザーでも楽しめるのでしょうか?
前2作をプレイしていたらより楽しめるのはもちろんですが、未体験でも遊べるように工夫しています。最初、シグマたちのチームはシグマを主人公にしようとしたのですが、途中で新キャラクターのダイアナに変えました。シリーズを初めて遊ぶプレイヤーと未来をすべて知っているシグマでは情報量が全然違うので、ついていけなくなってしまうと思ったんですよね。あえて何も知らないダイアナを主人公にすることで、シリーズ未経験者でも楽しめるようにしました。
また、シグマとファイの会話で『善人シボウデス』のストーリーもおさらいするので、全体の概要は理解できるし、初心者の方でも楽しめると思います。
――現在、10人と1匹のキャラクターが判明していますが、今後、新たなキャラクターが公開されたりすることもあるのでしょうか?
いえ、一応、これですべてとなります。
――過去シリーズには、すぐに死んでしまうキャラクターもいましたが、今回は全員がメインキャラクターとなるのでしょうか?
そうですね。第1作の“9番目の男”のような、かませキャラクターはいません(笑)。今回はいろいろなルートがあるので、1つのルートで早めに死ぬことになっても、ほかのルートではずっと生きているといったこともあります。
▲3人一組で行動する本作。なかには新キャラクターだけで構成されたチームも。 |
――同じスパイク・チュンソフトの『ダンガンロンパ』シリーズもデスゲームを題材にしていますが、意識されている部分はありますか?
僕も『ダンガンロンパ』は大好きなのですが、『ダンガンロンパ』みたいなものはぼくが百人集まっても作れないでしょう。作者の小高(和剛)さんは天才で、今の時代にすごく合っているクリエイターだと思うんです。僕はそこに追いつくことはできないので、逆に“彼とは違ったことをやろう”という意味で『ダンガンロンパ』を意識することはありますね。あとは『ダンガンロンパ』もハードな作品なので、「ここまでやっていいんだ」というハードルの参考になりますね(笑)。
▲ゲームに参加する9人のうち、生き残れるのは3人。かなり重いストーリーが展開することになるだろう。 |
――過去シリーズの脱出パートはギャグやツッコミなどの軽いノリも目立ちましたが、今回もコミカルな部分はあるのでしょうか?
はい。今回もメインストーリーに比べて脱出パートはギャグが多いですね。
――今回、イベントパートが“Cinemaパート”というシネマティックな表現に生まれ変わりましたが、その意図とは?
アドベンチャーゲームというと、どうしても文字を読むだけというイメージがついてしまっているので、その敷居を下げたかったんです。
――なるほど。
『ウォーキング・デッド』のゲーム版をプレイしたときに「こういう表現もできるんだな」と知って、そこからインスパイアされました。
――ほかにストーリーや脱出パートで特徴的なシステムはありますか?
システムではないのですが、今回脱出パートに『鈴木爆発』などで知られる四井(浩一)さんに参加していただきました。かなりオリジナリティのあるトリッキーな仕掛けになっているので楽しみにしていただきたいですね。
――脱出パートは四井さんが作られていると。
もうひとり、佐々木さんという方が参加されていますが、こちらは硬派な脱出ゲームになっています。四井さんと佐々木さんのお二人はまったくテイストが異なるので、バラエティに富んだ内容になりましたね。
▲多彩な仕掛けが用意されており、まったく退屈せずに楽しめるとのこと。 |
――前2作は打越さんが脱出パートも手掛けていましたが、今回はお二人に任せる形になったのでしょうか?
はい。部屋の内容やシナリオ上で絶対に必要なもの、脱出時の状況などをお伝えして、あとは出来上がったものを監修していく形でした。
――ゲーム内容にハードによる違いはありますか?
スペック以外はありませんね。
――プレイ時間についてお聞かせください。前作の『善人シボウデス』もかなり長かったですが……?
前作よりも少しだけ短いと思いますが、その分かなり濃縮した内容になっています。
――本作はシリーズ完結編ということですが、エンディングは1つなのでしょうか? それともマルチエンディングに?
そもそも物語のエンディングとは何なのでしょうか?
――え!?
今、言えるのはそれだけです。
――わかりました(笑)。最後に発売を楽しみにしているファンに一言お願いします。
シリーズの謎が解けるのはもちろんですが、それだけではおもしろくないのでビックリするような仕掛けを用意しています。ぜひ楽しみに待っていてもらいたいですね。そして『ZERO ESCAPE』からプレイする人はこれをきっかけに前2作もプレイしてもらえるとうれしいです。
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