2016年3月22日(火)
3月14日から3月18日の期間、アメリカで開催された“Game Developers Conference 2016”で、『スペースチャンネル5』や『Rez』などを手掛けたゲームデザイナー・水口哲也氏による講演“Classic Game Postmortem:Rez”が行われた。
▲現在はenhance gamesの代表を務める水口哲也氏。 |
本講演では、ワイヤーフレームとトランス音楽が融合したほかに類のないゲーム性で、数多くの賞を受賞した2001年発売の『Rez』について、クリエイターの水口氏自身が当時の思考の過程やインスピレーションを語った。
水口氏はまず、『Rez』制作においてリスペクトした作品として、『ゼビウス』(1982年)、『ゼノン2』(1989年)の名前を挙げた。どちらもサウンドが特徴的なシューティングゲームということで、『Rez』の開発に与える影響も大きかったようだ。
水口氏がセガ(現セガゲームス)入社後、最初に開発にかかわったのはアーケードゲームの『セガラリー』。レースゲームの開発をいくつか行うなかでスイス・チューリヒを訪ねたとき、別名“テクノパレード”とも呼ばれるチューリヒの夏の大イベント“ストリート・パレード”に出会った。
このストリート・パレードはテクノ音楽の大音響のなか、世界中から訪れた参加者が、奇抜なコスチュームを身にまとい、ダンスをしたりパレードをするお祭り。色や音の融合――“Synesthesia(共感覚)”という言葉がふと頭に浮かんだ瞬間だったと水口氏は語る。
▲当時生まれたインスピレーション。“ゲームと音楽の融合”、“敵を撃ち落とすことで音楽が生まれる”、“振動が音楽とマッチする”、“音楽がビジュアルに影響する”など、『Rez』の根幹にかかわる部分だ。 |
ここから『Rez』制作の長い旅は始まった。“音楽はどこから生まれるのか?”、“DJとは(本質的に)いったい何をしているのか?”など、根源的な疑問と向き合い、ひとつほとつ水口氏なりの答えを出していったという。
▲開発スタッフでクラブや音楽イベントにリサーチに赴き、イメージの共有を図った。 |
そして行き着いたのが“Quantization”という概念。プレイヤーが刻むバラバラのリズムをプログラムが整えて同調させることで、快感を生み出すというものだ。
セッション後半では、『Rez』のストーリーの裏設定が語られた。“サイバースペース上でのハッカーとの戦い”というテーマに加え、“精子が競争を勝ち抜き、卵子と出会う旅”というテーマも込められているそうだ。
▲“Rez”の名前に込められた意味。 |
そして『Rez』誕生から15年となる2016年、バーチャルリアリティ(VR)システムの商品化にともない、水口氏の世界がついにモニターという狭い世界の制約から解き放たれる。『Rez infinite』はPlayStation VRのローンチタイトルとして発売するべく、鋭意制作中と語り、セッションは締めくくられた。
▲『Rez infinite』で追加される新しい2つのエリアのコンセプトアートも公開された。 |
▲講演終了後、ファンに囲まれる水口氏。サインの要望などに気さくに応じていた。 |