2016年3月28日(月)
スクウェア・エニックスとトライエースのタッグで贈られるPS4/PS3用RPG『スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-』。
今回は、『スターオーシャン』を語るうえでは欠かせないサウンドに関するインタビューをお届けします。お相手はシリーズ作品のサウンドすべてを手掛ける桜庭統さんです。
4月27日に発売される『SO5』のサウンドトラックの聴きどころや曲作りで意識された部分など、ファン必見の内容となっています。
――『スターオーシャン5』の発売が目前に迫ってきましたが、今のお気持ちは?
このシリーズが今まで続いてきたということ自体が、感動的ですね。今回のお話を頂いた時も、“やっと来たか”みたいな感じで、とてもうれしかったのを覚えています。しかもサウンドトラックまで発売されることになって、すごくありがたいですね。
――サウンドトラックには、全72曲がCD4枚組で収録されるとのことで、『SO』シリーズでも屈指の楽曲数となっています。作曲の際は苦労されたのではないですか?
今回はシリーズの過去の曲も同時に使っているので、新しい曲を作る際にはあまり差が出ないように気をつけました。でも、それが大変だったかというと……そんなに大変ではなかったんですけど(笑)。
最初はけっこう気にして作っていたんですけど、作業の後半になると、気にしなくてもあんまり変わんないじゃん、というのがわかってきて。だからそれも、苦労というほどではなかったですね。
――楽曲を制作するにあたって、シナリオなどを確認されたのでしょうか?
細かくは見ないですけど、大まかな話の流れは最初に聞きました。
――開発中のゲームをプレイされたりは?
それはないですね。フィールドなどの画像がある場合には、それを見せてもらったりはしますけど。
――ちなみにサントラの曲名は、トライエースさんがつけたのでしょうか?
そうですね。どの曲もすごくピッタリなタイトルだと思います。
――桜庭さんのほうで曲名をつけることは?
ゲーム中の曲に関しては、ほぼ100パーセントないですね。僕がつけるよりも、シナリオや内容をよく理解している方がつけるほうが、絶対にいいと思うので。
――『SO5』のサウンドトラックで特にお気に入りの曲をお教えください。
いつもそうなんですけど、戦闘系とかボス系の曲が好きなので、そういった曲になりますね。あとはテーマ曲の『Star Ocean Forever』は、シリーズを通してずっと登場する曲なので、これは外せないですね。
――今回はバトル曲がすごく多くて、実際にゲームをプレイしていても、バトルごとにどんどんと曲が変わるのが楽しいですね。
そうですね。過去のバトル曲も使っていますし、数は多いと思います。
――バトル曲を作る際に意識していることはありますか?
プレイヤーさんが曲にノって遊べるように、ノリを重視しています。それとボス戦の場合は、そのボスがどれだけ強いのかというのを、なるべく曲に反映させたいと意識しています。強そうなボスには少し複雑な拍子を入れてみたりして。
あとはボス戦だけじゃなくて通常戦闘でも、メロディーがしっかりしている曲を目指して作っています。
――バトルの曲はゲーム中に何度も繰り返し聞くことになると思いますが、やはりそこは意識されているのですか?
今回は、特に気をつけてはいないですね。曲ができるままに任せた、みたいな感じです。
――『スターオーシャン』シリーズは、今年で20周年を迎えます。桜庭さんご自身は、この20年で『SO』への向き合い方が変わりましたか?
向き合い方はずっと変わっていないですね。自分では、20年経ったっていう意識もほとんどないので。
僕はこのシリーズのSFが入った感じが好きで、この作品に携わるのが本当に楽しみなんですよ。今後もずっと続いていってほしいなって思っています。
――トライエースの五反田さんや小川浩さんは、開発のコンセプトに“王道”や“原点回帰”を挙げられていました。楽曲にもこうしたコンセプトは反映されていますか?
特に自分では意識していないですね。ただ、昔からやってることはずっと変わらないので、結果的に原点回帰になってるかなという気がします。
――確かに僕らも、桜庭さんの曲を聴くだけで“『スターオーシャン』だなぁ”って感じますからね。ところで、シリーズの第1作目を手がけた当時のことは覚えていますか?
少しだけ覚えています。あの当時はけっこう大変でしたね。昔はツールのある現場で曲を作らなきゃいけなかったので、トライエースさんの社内に一晩中いて、いろいろ調整とかしていたので。
――機材自体も、今とはまるで違っていたと思うのですが、そこはいかがでしょう?
音の種類も今ほどは入らないし、それ以前に完成形の音を直接作れないんですよ。
とりあえず違う音源で作って、それをコンバートしたものを聞いてみたら、“あっ、これは違う”って。それを何回も何回も繰り返すんです。ボリュームのバランスなんかも全部変わってしまうので、そこも調整していました。
――それは大変ですね! でも今となっては、表現したいことが比較的自由にできるようになったのではないでしょうか?
たしかに、やりたいことが表現できるようにはなったんですけど、今はオーケストラが演奏したものを録音したりするようになったぶん、時間やお金は昔よりもずっとかかるようになってますね(笑)。
――そんな苦労が……(笑)。スーパーファミコンからPlayStationにハードが変わった時に、“音がすごく違う!”って思ったのを覚えています。
音数はもちろん、音色自体の質も上がりましたから。でも、その時代でもまだ、音を作るのは大変でしたね。ハード内蔵の音源を使っていましたからね。
――『スターオーシャン』シリーズは外伝も含めて、各作品が別のハードで出ているので、音の進化もすごくわかりやすいですよね。
あまり意識していなかったですけど、言われてみればそうですね。
―――過去の作品といえば、e-STORE専売の『SO5』ULTIMATE BOXには、サントラボーナストラックCDとなるdisc 5が同梱されていて、そちらに過去作の楽曲が収録されているそうですね。
そういうことなんですね。その詳細も今、初めて知りました(笑)。
――ボーナストラックCDに収録されている過去の『スターオーシャン』や『ヴァルキリープロファイル』(※)の楽曲は、桜庭さんが改めてアレンジされたものですか?
※過去の『スターオーシャン』、『ヴァルキリープロファイル』の楽曲は4月27日発売のオリジナル・サウンドトラックには収録されません。
アレンジを加えている曲もありますし、昔のゲーム機の音をそのまま収録しているものもあります。
アレンジする場合はともかく、昔のゲームそのままの音だと“今だったらもうちょっとマシにできるのに”って、毎回思いますね。機材の面もそうですし、音作りの面でも、昔は若かったので“ちょっと音がぶつかってるな”とか思ったりするので。
――では、そちらの楽曲についてもいくつかお話をお伺いします。
●disc5-1『For Achieve(SFC ORIGINAL VERSION)』
――こちらはシリーズ第1作目のバトル曲です。
スーパーファミコンの音源そのままですね。こういう音ですけど、当時実際に遊んでいた方には、懐かしいものじゃないかと思います。
●disc5-13『SO&VP Arrange Album: For Achieve』
――そしてこちらが、前出の楽曲のアレンジバージョンです。こうして続けて聞くと、20年の進化がよくわかりますね。
これは今回、新しくアレンジして収録したものです。ドラムを僕が自分で叩いているので、ちょっとヨレてるのが気になるんですけど(笑)。
●disc5-9『未確認神闘シンドローム』
こちらは『ヴァルキリープロファイル』の曲ですね。
――特典のコードを使ってBGMを切り替えた動画が公開されているんですが、それを見ると違和感がまったくないので驚きました。
▲こちらはPSP版『ヴァルキリープロファイル』のパッケージ。 |
●disc5-15『SO&VP Arrange Album: 未確認神闘シンドローム』
――そしてこちらが、前出曲のアレンジバージョンです。
こうして聞き比べてみると、アレンジバージョンのほうは若干テンポが遅いのがよくわかりますね。じつは僕が、オリジナルのテンポでドラムを叩けなかったんですよ(笑)。オリジナルはかなりテンポが速いので、難しくて……。
――ちなみにですが…『SO5』の初回購入特典で、バトルBGMを前述の『ヴァルキリープロファイル』の楽曲に変更できるコードが付属するということですが、こちらの選曲には桜庭さんもご意見を出されたのでしょうか?
じつはその話を僕は、ネットのゲームニュースで初めて知ったんですよ。“あぁ、そうなんだ”って(笑)。
――えーっ!? じゃあ、楽曲のセレクトはどなたが?
プロデューサーの小林さんと、ディレクターの小川さんとで、話し合って決めたのかなと……。僕のほうはもうお任せで、ぜんぜん問題ないですよ(笑)。
――そんな過去の作品の楽曲なども楽しめるULTIMATE BOX同梱のサウンドトラックにも注目ですね。最後に『SO5』の発売と、桜庭さんのサウンドを楽しみにしている読者のみなさんに向けて、メッセージをお願いします。
今回は、過去の『スターオーシャン』や『ヴァルキリープロファイル』の作品も入っていて、新しい曲との違いや共通している部分など、いろいろな発見ができると思います。これまで以上に楽しめる作品になっていますので、ゲーム中やサントラでぜひ聞いてみてください!
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